記念SS 擬人化ー灰白versionー
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総合評価1万記念
擬人化SS灰白version!
本当は本編の方をやろうと思っていたけれど、時間が足りなさそうだったので、先にこっちを上げておきます。
注意!
BL描写が苦手な方は飛ばして下さい!
「灰白さん、飲んでくれる?」
俺は近くにあった擬人薬の1つを持ち、ちゃぽんと揺らしながらテーブルに両手をついて、フンフンと擬人薬の匂いを嗅いでいた灰白さんに聞いてみる。
「ワン!」
灰白さんは間髪入れずに返事を返してくれたのは良いが、「さぁ、どうぞ!」とでも言わんばかりに、あーーと口を大きく開けて待っている。
珠子の時と同じように、悩むそぶりもなく心の準備は万端のようだ。
「うん。やる気満々だね」
「それはそうにゃっ! 大好きにゃご主人様にお願いされたら、誰だってあぁーなるにゃ!」
大口を開けた灰白さんを見た白薔薇は微笑みながら言い、白薔薇の膝の上にすっぽりと収まっている珠子は顔を白薔薇の方に向けつつ、灰白さんを指差しながら気持ちを代弁する。
「ねぇねぇーヨシタカ〜。早くしないとヨダレ垂れてきてるよーー」
両肘をテーブルについて、掌で顔を支えながら俺達のやり取りを見ていた舞姫が、灰白の口の端から垂れ始めたヨダレを見つけたようで、俺に教えてくれた。
「うわっ、マジだ!」
垂れ始めたヨダレを見た俺は慌てて擬人薬の蓋を取り、大口を開けて待っている灰白さんの口の中に流し込んだ。
「ゴクン。……ッ!」
「うわっ」
擬人薬を飲んだ灰白さんを中心にボフンと白煙が発生したかと思うと、隣にいた俺まで白煙に包まれてしまった。
「けほっけほっ」
白煙から逃れるように横にずれつつ、まだ漂っている白煙を手で払う。
「おぉーい。どうだ、大丈夫かー? 人間になってどこか……うぶっ!」
狼である灰白さんが人間形態になったことによる、体の不調などが無いかを聞いている最中に、まだぼんやりと漂っていた白煙から2本の腕がにゅっと飛び出てきたかと思ったら、そのまま俺の体に巻き付いてきた。
「……ちょっ! ちょっと、はっ灰白さ……うひゃあ!」
突然抱きつかれたことに驚いた俺は、たぶん灰白さんだと思う相手の背中をドンドンと叩いたのだが、灰白さんは俺の要求を無視してそのまま俺の首筋に顔をスリスリと埋めたかと思うと、「スーーーー。ハーーーー。スーーー。ハーーーー」と、思いっきり俺の匂いを嗅ぎ始めた。
首筋に毛が当たってくすぐったいのと、匂いを嗅がれると言う羞恥プレイに我慢出来なかった俺は、灰白さんの耳元で怒鳴った。
「灰白! おすわり」
「はいっ!」
俺が注意しなければ、ずっと俺の匂いを嗅いでいただろう灰白さんの名前を怒声で呼んで、更におすわりと命令すれば、俺に抱きついていた灰白さんはパッと離れて、ビシッと効果音が付きそうなほどに上半身をピンと伸ばして座り直していた。
「えっと、灰白さん?」
やっと正面から見る事が出来た目の前の青年に声をかけると、言葉よりも先に尻尾が反応して左右に大きく揺れる。
「はい、そうですよ。ヨシタカ」
やっぱり目の前の青年は人間になった灰白さんのようで、見た目とは裏腹に、ふんわりと柔らかく微笑んで俺を見つめている。
「ふぇぇぇー。灰白さん……イケメンかよ」
俺は運営に文句を言いたかった。
だってそうだろう。俺の目の前にいる灰白さん(擬人化)は、ピンと立ったモフモフの立派な耳と、キリリとした瞳。スッと伸びている鼻先に、にこりと微笑んでいる口先。髪は灰色から白のグラデーションになっていて、サラリと長く襟足は胸元にまで伸びている。
さらに、狼の時よりも太く逞しくなったモフモフの尻尾が付いているのだ。いまはゆったりと左右に揺れているが、動く度にファッサファッサと音が聞こえそうだ。
「パッと見のイメージとしては、中二病全開の金髪イケメンギターにも見えるし、あぁ、いやいやいや。オールバックじゃ無いけれどバンド松の四男バージョンみたいな髪型でもあるわね。でも勘違いしないで、決して逆髪バージョンの方では無いので悪しからずよ!」
「舞姫。君は誰に、何を言っているんだい?」
急に独り言を言い始めた舞姫を、不審な物を見るような眼差しを向ける白薔薇。
「ううーん。言わなきゃいけないと天の声を聞いた気がしたの」
「はぁ……」
帰って来た回答がイマイチ意味の分かるものでは無かったが、それ以上は何も突っ込まないようだ。
でだ、俺が何を言いたいのかと言えば、はっきり言って擬人化バージョンの灰白さんはカッコよかったのだ。それも俺が羨むほどのキリッとしたイケメンさんだ。
ビジュアル系っぽい見た目だから、それっぽい化粧なんかもしたら、さらに映えるであろう外見をしている。
「んで、俺よりも座高が高いと」
「うん?」
俺がボソリと言ったことに対して、首を傾げる灰白さん。必然的に見下ろされている。
「ううん。こっちの話」
上記の他にも俺の隣に座っているから分かるのだが、どう見ても身長は俺よりもデカイし、さらに程よくガッチリと均整の取れた筋肉のおかげで、俺が最初に装備していたのと同じ防具を身につけているにも関わらず、何故か異様に似合っている。
それ故に、灰白さんが擬人化した瞬間から、灰白さんの事を遠巻きにチラチラと盗み見ている人達がいて、そのほとんどが女性っぽい。
ただ、灰白さんにとっては周りの人間は興味が無いようで、俺の事を熱い眼差しで見つめている。
「はぁ……。ふふっ、ヨ・シ・タ・カ」
胸に両手を当てて熱いため息を吐いたと思ったら、語尾にハートが付きそうなほどの甘い声で俺を呼ぶ灰白さん。
「ん? 何、灰白さん?」
「いいえー。呼んでみただけです」
俺が返事をした事に満足なのか、蔓延の笑みを零しながらそう言う灰白さんに、俺はなんだそりゃと思いはしたが、狼である灰白さんにしてみたら、普段俺の事を名前で呼ぶだなんで事は出来ない訳で、そんな風に俺の名前を呼んだだけで灰白さんは喜んでしまえるのかと思い、俺は思わず笑ってしまった。
「ぷっ……あははははっ! なんだよそれ。俺の名前を呼んだだけで満足なのか? あと1時間も無いんだぞ。他にやりたい事があるんだったら、早めに言わないと出来なくなるぞ?」
『俺の名前を呼ぶ』
たったこれだけの事にこんなにも喜んでいる灰白さんに対して、わしゃわしゃと狼状態の時の灰白さんと同じように、今の灰白さんの頭を撫で回しながら言うと、灰白さんはハッとなり、制限時間がある事を思い出したようだった。
「あっと、そうでしたね。ついつい他の人達のように、ヨシタカの事を名前で呼んでみたかったのです。いつも、ヨシタカの事を名前で呼んでいるアレとかが羨ましかった」
後半になるにつれ、段々と唇を尖らせて拗ねるような表情になっていたが、灰白さんが言ったアレってなんだ? あっ、アレってもしかして真司の事か? おいおい、名前さえ呼んでもらえないだなんて、真司って本当に動物に好かれないんだな。
「まぁ、いいや。そんな事より、他に俺と一緒にやりたい事とかは無いのか?」
真司の事を可哀想だとは思うものの、いまは灰白さんが最優先だ。
「そうですね。では、1つ。お願いがあります」
顎に手を添えて軽く考えたあと、灰白さんは指を1つ立てて言うが、それよりも、いま気づいた事実が1つ。
「って言うか灰白さんって、その見た目で敬語なんだな」
一方その頃の真司は、
「ぶぅええーーっくしょん! ……何だぁ? 誰かが俺の事を噂してんのかね? ズビズビ。まぁ、いいや! そんな事よりも灰白タンのお土産に買うお肉、どれにしようかなー? ヨシタカにはあんまり脂身の多いのはやめろって言われているけれどぉー、実は灰白タンって脂身の甘さが好きだって事は、俺は知ってるんだよなぁー。それに、牛よりも厚めに切った豚肉が好きでー、骨は分厚くて、噛みごたえのあるやつが良いんだよなー。おっ! おっちゃん、このあばら肉3本頂戴!」
「あいよ!」
「うへへへー。これで、モフモフの対価をゲットだぜー!」
灰白をモフモフするための対価を買っていた。
○
「ふんふんふふーん」
「随分とご機嫌だな」
「はい! それはそうですよ。普段ヨシタカにしてもらっていることを、今度はこっちからも出来るんですから」
自分の足の間に俺を座らせた灰白さんはかなりのご機嫌のようで、鼻歌を歌いながら俺の色んなところを撫で回している。
『俺の名前を呼ぶ』
たったこれだけのことに、かなり喜んでいた灰白さんからのお願いは、
「ヨシタカを満遍なく撫で回したいです」
であった。
しかも、俺達の正面に座っている白薔薇と珠子を見て、自分達もあのような感じに座りたいと指差しながら言ったあと、自分の太ももをパンパンと叩きながら「さぁ、ここに座ってください!」と、期待のこもった眼差しで見つめられながら言われた俺は、恥ずかしかったので「いや、無理」と、即答してしまった。
「えっ……。もしかして、ヨシタカは私のことが嫌いですか?」
俺に拒否られた灰白さんはかなりのショックを受けたようで、しょぼんと眉尻が下がり、うるうると潤んだ瞳で悲壮感漂う感じに言われてしまった。
「ぐっ! 違う。違うんだよ」
俺はもう一度NOとは言えなかった。
「それじゃあ、お邪魔します」
「はい、どうぞ!」
俺は色々と諦めて、両手を広げてウェルカム状態の灰白さんの足の間に座り込むと、さっそくムギュッと抱きしめられた。
「んふふ。ヨシタカが私の腕の中にいます」
「だろうな」
すっぽりと収まってしまったあとは、ただひたすらに色んなところを触られた。
「今度は右手を出して下さい」
「はいはい」
灰白さんのウルウル攻撃に負けてしまった俺は、ただいま絶讃撫でられ中な訳で、俺の右手を灰白さんが両手で弄りまくっている。
「うひゃっ! ちょっ、灰白さん。そこくすぐったい」
スルッと指の間を撫でられた俺は、くすぐったくてパシッと手を払ってしまった。
「あっ! 逃げてはダメですよ。ふむ、ヨシタカは指の間を撫でられるとくすぐったいのですね。……それにしても、ヨシタカの手はふにふにしていますね」
『ただ手を揉んでいるだけなのに、なんだかエロい』
しかし、すぐに灰白さんに捕まってしまい、ふにふにと掌を揉まれる
「えー。俺の手ってそんなに柔らかい?」
「はい。私の手と比べてたら柔らかいですよ? それに、さっき触ったヨシタカのほっぺも、むにむにしていて美味しそうでした」
「えー、何それ。俺、食い物じゃないよ」
「あはは、分かっています。食べませんよ」
『別の意味で食べますけどね。ですか!』
掌の前は、髪、耳、頬など顔の周りのパーツを触られていたのだ。
「あっ、あとは、ヨシタカの髪の毛はふわふわしていて柔らかいのですね。私のとは全く違います」
灰白さんはそう言うと、俺の髪と自分の髪を触り比べたので、俺も灰白さんの髪を1束掴んで自分のと比べてみる。
『ファーー! イチャイチャしているよぉ〜!』
「あっ、本当だ。俺のと比べると硬いし剛毛なんだね。それに、手もガッチリしていて血管とか浮いてるし……。はぁ、良いなぁー」
見た目にかなりの差があれど、年齢的には同じくらいである俺と灰白さんの差に、羨ましいと思ってしまう。
「そんなに羨ましがることですか? 私はいまのヨシタカの方が触り心地が良いので好きですよ?」
ズイっと近寄って来たイケメンのアップに、俺は思わず顔を晒してしまう。
「おいおい、あんまりこっちをガン見しながら言うな」
「ドキッとするだろうが」なんて言葉は出せない。
そんな事を言おうもんなら顔を晒した先にいる、さっきからちょくちょく小声で茶々をいれており、爛々とこちらを見ている舞姫が発狂乱舞してしまいそうだからだ。
小声で言っていたつもりだろうけれど、全部聞こえているからな!
それに、これ以上俺と灰白さんで舞姫が期待するような展開だなんて、ある訳ないしね。
「おや、ヨシタカは照れているのですか? 私は本気ですよ!」
晒した顔を自分に向けるように顎クイをされてしまった俺。ただ、その瞬間に舞姫の絶叫がこだました。
「うぴょーーーーー! もう無理限界ーーーー!
ブプァーーーと鼻血を撒き散らしながらぶっ倒れる舞姫。
「うわぁー! ちょっと、舞姫大丈夫か!」
俺は慌てて舞姫の元に駆け寄ろうとするが、灰白さんに腕を掴まれて止められてしまう。
「ちょっ、灰白さん! 舞姫がーー」
「待って、ヨシタカ。最後にこれだけは覚えておいて下さい。私はあなたを選びました。生涯を共にしたいと思ったのはあなたなのです。どうか、どうかそれだけは忘れないで下さい」
そう言い終わると、再びボフンと白煙が舞い上がり灰白さんは元の狼形態に戻っていた。
「ガルルルルー。ワン!」
舞姫に邪魔された腹いせか、元の姿に戻った灰白さんは倒れている舞姫の元まで向かうと、鼻血を撒き散らしているにもかかわらず、恍惚とした顔でいる舞姫の顔面に、ブミッと肉球を押し当てる。
「ふごっ! ふごふごふごふごふふごふごふごふごふごふご。ふごふごふごふごプハァ! ご褒美です!」
サムズアップでビシッと言い切る舞姫。どうやら、舞姫を喜ばしただけだったようだ。
「クゥーーーン」
思わずがっくりと項垂れてしまう灰白さん。
そんな灰白さんを見ていた白薔薇が、俺に近づいて囁く。
「ねぇ、ヨシタカ。君は知っているかい? 狼は番うと決めたパートナーを一生大事にするそうだよ」
「えっ?」
最後の最後に来た爆弾発言に、俺は思わず灰白さんの方を見ると、灰白さんも俺のことを見ておりバチっと目線が合う。
灰白さんが言っていた最後の言葉。
『生涯を共にしたいと思ったのはあなたなのです』
確かこんな事を言っていたような気もしないでも無いが……。
「まさかね」
「ワウン?」
私スマフォでこれを執筆しているのですが、書いている最中に2回も強制終了になってしまいまして、あわやと思ったけど間に合って良かった。
あと、活動報告にお知らせがあります。
ご興味のある方は是非に。
次回予告
多分真白。




