記念SS 擬人化ーprologueー
ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。
PV200万記念に擬人化SSです。
今回はプロローグです。
場所は始まりの町で、本編には今のところ絡みません。
「これが擬人薬ですか?」
俺に手渡された小瓶を軽く振ると、ちゃぽんと七色に光る液体が揺らめく。
「そう。やっと最近完成したんだ」
「運営も鬼畜だよねぇー! これ1つ作るのに、時間とお金と体力がかなり必要となったんだもん」
この擬人薬を俺に手渡したのは、白薔薇と舞姫だ。2人の共同作業だった様で、それぞれの思惑は異なるが、作るという事には合致したので、一緒に製作をしたらしい。
ちなみに、白薔薇の思惑が「人語を話せない子達との会話を楽しみたい」で、舞姫の思惑が「ぐふふ。ビーなエルで定番のケモ耳! ……良いっ!」と、よく分からない事を言っていた。
「それじゃあ、この小瓶って結構なレアだったりします?」
俺は2人の言葉に、擬人薬を落として割ってしまったら大変な事になるかもしれないと思い、そっとテーブルの上に置いた。
「そうだね。店頭小売価格で100万は欲しいかな?」
「ひゃっ! 100万!」
白薔薇が言った金額に、俺は思わず擬人薬から仰け反る。
「まぁ、これに使った素材を提供してくれるって言うんなら、割引にはするけれどね」
「って言っても、それでも20万は貰うけどね!」
Vサインをしながら言う舞姫に、擬人薬ってどれだけ作るのが難しいんだろうか? と思って、触れないギリギリまで擬人薬に顔を近づけて凝視する。
「それ、あげるよ」
「えっ?」
唐突に言われた白薔薇の言葉に、俺は驚いた。
「えっ、これ。だって高いんですよね?」
プルプルと震える指先で擬人薬を指差すと、コクンと1つ頷いて白薔薇は続けた。
「まぁね。でも、それで完成品ではないんだ」
「完成品じゃない?」
俺がおうむ返しで聞き返すと、舞姫は身を乗り出しながら話し始めた。
「そうなの! 擬人薬の効果は、最大で12時間ももつって書いてあったのに、私たちが作った擬人薬だと、1時間しかもたないんだよー!」
「つまり、完成品じゃないから売りにも出せないし、どうせならって事でヨシタカにあげるよ」
そう言いながら、白薔薇はテーブルに置いてある擬人薬を、ズイッと俺の方に押し付ける。
「でも、俺以外にも欲しい人はーー」
居るんじゃないのか? と聞こうとしたが、それよりも早く2人は首を振る。
「擬人薬のレシピって、最近あったアップロードで公開されたから、ヨシタカ以外のテイマーだったら、皆自力で作れると思うの」
「そう言うわけだから、テイマーの中では自力で作るのが難しそうな君に、この薬品をお試しで使って貰いたいんだ。まぁ、処分も兼ねているんだけどね」
そう言われて断るのもアレなので、ここは有難く貰う事とした。
「それじゃあ、私も使ってみようかな」
「あれ? まだ使っていなかったんですか?」
白薔薇の事だから、完成したらすぐに使うのかと思ったら、まだだったらしい。
「そりゃあ、すぐに使ってみたかったけど、効果が1時間しかないのなら、こうやって皆でワイワイする方が楽しいじゃないか?」
そう言うと、白薔薇は三毛猫の珠子に「やってくれるかい?」と聞いた。
「にゃーん」
珠子は快諾すると、白薔薇に擬人薬を飲ましてもらう。傾けられた小瓶から垂れる擬人薬をペロペロと全て舐めとると、ボフンと白煙が舞い上がった。
しばらくして白煙が無くなると、そこには小柄な女の子が座っていた。
「わっ! 私、人間ににゃってるーー!」
人型になった珠子は白髪の髪に、左右で違う色の猫耳をピクピクと動かしている。耳は右が黒で左が茶色だ。
なるほど、髪色が元々の体毛を表しているらしい。
「へー。服は初期装備なんだねえ」
舞姫が言うように珠子が着ている装備は、俺が最初に来た時と似たような格好だった。
「珠子」
「どうしたにゃ? 白薔薇」
白薔薇に呼ばれた珠子は、鼻と鼻をくっ付ける。猫の挨拶の1つである。
「ううん、何でもないさ。それより珠子。人間になって、やってみたいことはあるかな?」
「1時間しかないからねー」
「にゃにゃにゃ」
そうだ。白薔薇達が作った擬人薬は未完成品で、効果は1時間しかないのだ。やりたい事があるのならば、早めに行動しなければ薬の効果が切れてしまう。
「うぅーん。特に、にゃいかにゃー? ……あっ、頭を撫でて欲しいにゃあ」
珠子は、しばらく悩んでから答えを出したが、それは白薔薇と珠子が、猫の時でもいつもしている事だった。
「まったく珠子ったら、そんな事で良いのかい?」
「そんな事が良いのにゃあ」
ゴロゴロと喉を鳴らして白薔薇に甘える珠子を見て、俺の所もこんな風に甘えてくれるのだろうかと、思わず灰白さんを見た。
次回は、いつ頃になるかは分かりませんが、灰白の予定です。
次からは、達成した日の次の月の始まりに投稿しますね。




