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県境ループ

ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。


ちょっと長いです。

 水着に着替えてから、日焼け止めクリームなどを塗ったヨシタカ達は、AWOでの初心者組と古参組とに別れていた。


「ヨシタカ君。その、大丈夫?」


 スノウは恐る恐るヨシタカに声を掛ける。

 (もしかして、さっきの日焼け止めクリームを塗っている間に何かあったのかな?)と思って声を掛けたのだが、ヨシタカからの返答はスノウが思っていたのとは違っていた。


「うん。今からこの後の恐怖に、悟りを開いただけだから」


 感情がこもっていない返答をされたスノウは、困惑して聞き返した。


「えっ、それってどう言う事?」


 スノウは疑問に思ったが、その理由はこの後に予定しているイベントに関係しており、参加をしない古参組の、特に唯のせいであり、それによりヨシタカの目は死んでいた。と言うよりも、諦めの境地に至っており、遠くを見ていたと言った方が正解なのかもしれない。


 古参組である真司や舞姫、唯に白薔薇は、ヨシタカ達が県境に行っている間からお昼までの諸々の準備を受け持ち、その間に初心者組が県境ループ、海の幸狩りレースをする予定だ。ただ、後半の海の幸狩りレースでは舞姫達の3人だけが不参加となって、真司は人数合わせで参加となっている。


 すでに海の幸狩りレースの組み分けは済んでおり、男女で別れてくじ引きをしたので、1〜4組にそれぞれ男子が1人ずつ入り、女子は均等に別れている。


 1組目はヨシタカ、紅葉、ココア。

 2組目は真司、リリ、ミキ。

 3組目はキース、トト子、サキ。

 4組目は右近、スノウ、左近。


 となっていて、灰白さん達はお留守番である。県境ループはプレイヤーやNPCだけに有効となっている為、灰白さん達を連れて行っても、県境を普通に通り過ぎてしまうのである。


 ただ、なぜ真司が最初のに参加しないかと言えば、県境ループに必要なLvを完全に超えているからであり、海の幸狩りレースには、「舞姫や唯に白薔薇も参加をしても良い」と、スノウは言ったのだが「お留守番は必ず必要だろう」と言われ、更に「戦闘経験の違いから極端な差が出るだろう」と説得されてしまえば、それ以上は言えなかった。


 その後、お昼へと進んで一旦休憩を挟んだ後に、海と言えばで思い浮かぶスポーツを色々とやる予定で、最後の締めにと近場にある温泉で疲れを癒し、そのまま泊まって締めくくる予定である。


「準備させちまって、悪いな。真司」


 ヨシタカは海に浮かび、着々と用意されている乗り物から強引に目線を逸らし、お留守番をしてくれる真司に詫びる。


「気にすんなって、そんな事より楽しんでこいよ」


 ヨシタカの目線の先を知っている真司は、これから起こるであろう事を確実に把握しており、ニヤニヤ顔でヨシタカの事を見ていた。


「それにしてもさぁー。別にアレに乗らなくても良いんじゃないの?」


「俺、泳ぐの得意だぜ!」


 右近と左近が指差す先には、舞姫と唯により準備されているバナナボートが2隻と、そのバナナボートの先端に付いている縄の先には、唯の飛竜ことドーラが居た。


「俺も、出来ればアレに乗りたくは無いかな」


 とある日に、ドーラに乗った真司が気絶していた事もあり、絶叫系以上の迫力があるだろう事を、ドーラに乗るメンバーの中ではヨシタカだけが知っていた。


「あぁ、ヨシタカ君が見ていたのってアレだったの? うーん。私は楽しそうだと思うけど……」


「なら、君達の疑問には私が答えようかね。舞姫と唯はあっちの準備に掛かりつけのようだからね」


 ヨシタカとスノウの会話に白薔薇が入ってきて、ヨシタカ達を集めて解説を始めた。


「まず、第一に制限時間がある事。第二にHP的な問題がある事だね」


 白薔薇は指を1つ2つとしながら、問題点を言った。


「一つ目の時間制限は、県境ループと海の幸狩りレース、更に昼食の用意を含めると、今の時間から大体三時間以内に、この全てを終わらせなければならない」


 この説明を受けて、キースはポンっと手を叩く。


「あぁ、なるほど。いくら僕達の人数が多くても、海中での戦闘になってしまえば余計に時間がかかるって事ですね」


 その続きをサキとミキが補足する。


「「ハハァ〜ン! 確かに、いくら近場って言っても、ここから県境まで泳ぐには、結構遠いいかも!」」


 キースとサキミキコンビの言っていることが合っているのか、白薔薇は一回頷くと、そのまま説明を続けた。


「東京と千葉の県境は、大体荒川の幅の半分辺りに境界線が引かれているんだ。その荒川の先の海であるここも、境界線は延長線上にずっと続いているからね。大体往復で数キロほど泳ぐ事になるかね?」


 この説明を受けて、ココアはビシッと手を上げて宣言するかのごとく言った。


「それは困る。ココア、100m泳ぐのでもギリギリ!」


「私も困るかなー。遠泳ってやったことないや」


「それにあれでしょ? モンスターも出てくるんでしょ! いやー、うちには絶対に無理無理!」


 ココアに続けて紅葉も不安そうな顔で言い、トト子は右手をブンブン振りながら言った。


「そう。トト子君の言う通り、モンスターも出てくる。しかも、そのほとんどが水中行動を得意としているモンスターばかりだから、君達が泳いで逃げるのは中々に難しい」


 他の面々も、往復で数キロを泳いだり、その際にモンスターと遭遇しても、戦わずに逃げ切るのは難しいと言われては、ちょっと自信なさげである。そんな中、真司が更に追い討ちをかけた。


「そうなんだよなぁー。しかも、ついでに言うとだな。水中行動の時の体力と満腹度は、陸地に比べると3割〜5割くらい早く減っていくんだよ」


 そう言われてしまっては、誰も自力で泳いで行くとは言えなかった。


「けど、あれで安全なんすかね?」


 白薔薇と真司の言っていることは納得したトト子だが、ふと疑問に思った事を言った。

 確かに自分達が泳いで県境まで行くと大変な目に合うかもしれないが、だからと言って、いま準備されているドラゴンのバナナボートも安全なのか不安だったのだ。


「それは安全と言えるね。元々ドラゴン自身に差はあれど、ドラゴンの種族値がここのモンスターとはかけ離れているから、ドーラが相手だとすると、ここのモンスターは戦闘になる前に逃げ出すはずさ」


 白薔薇の言う種族値とは、各モンスターの種族のランク付けの事であり、ここにいる従魔では、ドラゴンのドーラが8。灰白さん、こがね、しじま、濡羽、夜空が2。真白、紅緒、露草、さえずりが1である。


 基本的に草食動物が1で、肉食動物や草食動物だけど、夜空の様に大型の動物がモデルのモンスターは2になる。ただし属性持ちは1つ上のランクに上がるのだが、元々属性無しモンスターがいない場合は、1つ下のランクになる。


 つまり、もし灰白さんや夜空などと同じ種族だが、何らかの属性が付いていたら1つ上の3になり、逆にこがねや紅緒達は、元々属性無しモンスターが存在がしないために、属性持ちだがランクが1つ下になっている。


「へー、なるほと。勉強になりました」


「そっか、ヨシタカはテイマーだもんな。だとしたら、テイムする時の種族値って結構気にするよな」


 ヨシタカは種族値についての説明に、テイムのし易さや懐き度以外にもあった事を知り、同じ事を聞いた右近は、他のゲームでは種族値に結構拘っていたりするタイプだったので、ついヨシタカにそう言ったのだが、ヨシタカは軽く首を振った。


「俺は、そういうのはあまり考えないかな? 俺の元に来たいと思ったら、たとえ種族値が低くても仲間にするよ」


「まぁ、そのせいでこの状態な訳なんだけどな」


「クッ……。それを言われちゃうと」


 来るもの拒まずなヨシタカの事をよく知っている真司だからこその発言であり、それを真司に言われてしまうと、ヨシタカは言葉が詰まってしまって、何も言い返せなかった。

 ただ、確かにヨシタカは来るもの拒まずだが、その内の半分程はテイムの空きが出来るたびに、灰白さんが遠吠えで仲間を呼び寄せてしまっているからであり、それを追い返すわけにもいかないので、結局のところ責任はヨシタカと灰白さんで、半分半分だろう。


「ちなみに、種族値×Lvが私達のLvに匹敵するよ」


 白薔薇の言葉に、キースはある事に気が付いた。


「へー……って事はですよ。仮にあのドラゴンのLvが10だと仮定すると、僕達が討伐する際の適正Lvは80になるという事ですか?」


「そういう事だね。ちなみにだが、1番弱いドラゴンでもLv15くらいはあるよ」


 キースが言った事は正解だった様で、更にこの場にいるメンバーに追加情報を与えると、サキとミキの声が響いた。


「「えーーーー!! って事は……えっと?」」


「120よ」


 ちょっとだけ計算が遅いサキとミキの為に、スノウが先に答えを言う。


「「ええー!? 半分以上あるよーー!!」」


 2人は自分達とのLv差に、双子ならではの同じポーズを、シンメトリーでしながら驚いていた。


「みんなお待たせー! 準備出来たよー!」


 そんな話をしていたら、ついにバナナボートの準備が出来た様で、舞姫が皆を呼びに来たのだ。


 そこには、プカプカと浮かぶ3人乗りのバナナボート2隻と、目を閉じてひんやりする海の感触を、楽しんでいるドーラがいた。

 ヨシタカ達からは見えないが、バナナボートはドーラの尻尾に括り付けられていて、更にお互いのバナナボートがぶつからない様に、板を真ん中ら辺に付けて距離を取っていた。


「乗る順番はどうしようか? グーパー?」と言う舞姫の言葉に、代表でヨシタカ達男子が選ばれて円陣になる。


 ちなみに舞姫の言うグーパーとは、ジャンケンのグーとパーしか出すことが出来ないので、2組に分かれたい時などに使う、ジャンケンの亜種みたいなものだ。さらに地域別のルールや呼び名がかなりあったのだが、舞姫の言ったグーパーで、ここにいるメンバーの全員は、ちゃんと舞姫が何を言いたいのかを理解している。


『グッとパーで別れましょ! ホッ! ホッ!』


 何回かあいこを出して決着が付いた。


「最初はバナナボートか」


「おーい! 落ちるなよー!」


「ヨジダカー!」


 先にバナナボートに乗る事となったのはヨシタカ達とキース達で、真司の代わりに初めて海に来たと言うヴォル男が代わり、右近達と一緒にドーラの背中に乗って、ヨシタカ達に手を振っている。

先程のグーパーでも、ヴォル男がグーパーをしていた。

ヴォル男の所でも、お父さんの指示で作業が分かれる時に、よくグーパーをするのである。


「ツンツン。緊張するね!」


「うふふ。だねぇ〜」


バナナボートの1番後ろに座ったココアが、前にいる紅葉の背中をツンツンしながら言う。


「ツンツン。ヨシタカは?」


流石に紅葉よりも前にいるヨシタカの背中を、いくら腕を伸ばしてツンツンしても、当たったりは出来ないが、やり続ける。さらに、ヨシタカも後ろを向く事が出来ないので、ココアがヨシタカの背中に向かって、連続ツンツンしているのを見る事が出来ない。


「えー。俺ー? うーん。無事に生きて帰りたいかな?」


「「うん?」」


2人はヨシタカの言葉に、頭にはてなを浮かべた。


バナナボートの席順はヨシタカやキース達、男の子が先頭で、その後ろは背の高い順に乗っている。この席順の理由としては、なるべくヨシタカ達が前方からの波をガードしてくれって事である。


「僕、初めてバナナボート乗ったよ!」


「GUAOOOOOOooo!!」


「おれもっ……うわっ!」


「キャァ!」


「ンーーー!」


 ちょっと興奮した感じでキースがヨシタカに話しかけて、ヨシタカが返事をするのと同時に、ドーラが咆哮を放ち、それと共にバナナボートが動き出した。


 ドーラが咆哮を上げたのは周囲にいるモンスターに威圧と牽制を行なった為で、それによりヨシタカ達の周囲に居た生き物達が、時には水面を跳ねながら、我が先にとドーラから逃げ出して行く。


 そして、同じく近距離で咆哮を聞いてしまっていたヨシタカ達は、思わず両手で耳を塞いでしまったのだが、グングンとスピードを上げていくバナナボートから振り落とされない様に、慌てて手摺を掴むと同時に、ヨシタカとキースの顔面に波飛沫が襲いかかった。




「おっ……落ちるかと思ったぁー」


 バナナボートの先頭に乗っていた為に、ドーラの尻尾が作り出す波や水飛沫をモロに喰らっていたヨシタカは、到着すると同時に安心したからか、バナナボートから滑り落ちた。


「ヨシタカ君。大丈夫?」


「なんとか〜」


「楽しかった!」


 全身の体の力を抜き、浮力で海面に浮かんでいるヨシタカに、同じバナナボートに乗っていた紅葉が心配をして声を掛ける。

 ココアは1番後ろに乗っていたこともあり、ヨシタカほどの波飛沫を受けていない為、このバナナボートを楽しんでいた。


「ふぅ、僕もダメかもー。ちょっと休憩させてー!」


 ヨシタカと同じく、バナナボートの先端に乗っていたキースも、先程の荒々しい運転に応えたのか、バナナボートに体重を預ける様に、グデーンと前屈みになった。


「GYAo?」


 当のドーラはヨシタカがグロッキーになっている事に、困惑していた。

 実は、途中でわざと荒々しい運転をしていたのだが、これはただ単にヨシタカ達に楽しんでもらおうと思っていただけなのである。

 前に同じ様な事があった際に、もっと荒々しい運転を唯や舞姫にお願いされていたので、今回もそうした方がヨシタカが楽しんでくれるかな? と思ってしまったのだ。

 ただ、あの時よりも運転は大人しめにしておいたのだが、ヨシタカとキースには強すぎってしまった様だった。


「帰りは俺の番か……」


「オデ、楽シミダ!」


 ヨシタカとキースのグッタリ具合に、右近は顔を青ざめるのだが、ヴォル男は楽しみなのか、お座りの状態からぴょこんぴょこんと、ドーラの背中で飛び跳ねた。




「もう大丈夫なのか?」


「ばっちり!」


「大丈夫だよ」


 ヨシタカとキースの体調が整うのを待ち、ついに県境ループを体験する。


「あそこからね、透明な壁みたいなのが見えるの」


 リリが指差す先に透明な壁の様なものがあり、それは左右どちらを見ても、ずっと先まで続いている。


「本当だ」


「と言う事は、あそこが県境って事になるのかな?」


 キースの言う通り、この透明な壁が県境となっており、ここを通り抜けるにはLvが50以上なくてはならない。

 また、一度通り抜ける事が出来たなら、それ以降のこの透明な壁の、可視、不可視をウィンドウで選択できる様になる。


「多分、そうだと思うんだよねー。2人がダウンしている間に行けるところまで行って来たんだけど、この壁が途切れている所は無かったよ」


「反対側も同じだったぜ」


 左近と右近が、それぞれの名前にちなんで偵察に向かったのである。


「それにしても、右側に行けば行くほどモンスターのLvが上がっててビビったわ」


 海のモンスターのLvは陸地のモンスターとは異なり、種族値によって変動してしまうので、簡単に説明するためにヨシタカ達が討伐する際の適正Lvで説明したいと思う。

都道府県のLv÷10+陸から離れた距離となっているので、東京であるここであったら東京のLvが50なので、浜辺付近だったらLvは5〜10。そこから100m単位で離れて行くごとに10ずつ増えていくのだが、ある一定の所を過ぎると、そこから一気にLvが上がる。


閑話休題。


「それ大丈夫だったの?」


「大丈夫じゃなかったら、ここに俺はいないだろ?」


 右近は200〜300mですぐに帰って来たので、モンスターに襲われる事は無かったし、遠くにいるモンスターのLvが、ギリギリ見える距離まで行って確認出来たら、それ以上は深追いせずに戻って来たのだ。

 それは左近も同じで、ドーラの存在によってそれくらいの距離にいるモンスターは逃げ出して、あまり近付こうとはしまうのである。


「それじゃあ、2人の体調も戻ったし、せーの! っで、一緒に入ろうーー」


「うわぁぁぁあー!」


 スノウが県境ループを皆で一緒にやろうと言っている最中に、ヨシタカの悲鳴が上がった。

 何が起こったのかと声のした方を見れば、ポーンと投げ飛ばされたヨシタカが、透明の壁に吸い込まれたと思ったら、同じ場所からポロンとヨシタカが出て来たのである。

 そして、そのまま海に落ちた。


「ぶわぁぉ! ドーラ! いきなり何すんだよ!」


「GOU?」


 このやり取りで、皆は何が起こったのかを把握した。ドーラがヨシタカをどうにかして捕まえて、壁に向かって放り投げたのだ。

 そりゃあ、いきなり放り出されたもんだから、ヨシタカが怒るのも納得であるが、当のドーラは「へっ?」って顔で、キョトンとする。

 無論、これも唯や舞姫と遊んだ際によくやっていた事なので、ドーラは悪気があってやった訳ではないのだが、そんな事を知らないヨシタカは、ドーラにお説教をする。


「GOU……」


「分かったの、ドーラ! いきなりあんな事をしちゃあダメなんだよ!」


「すげぇな。ドラゴンに説教してるぜ」


「いやぁ、誰でもいきなりあんな事されたら怒るんじゃない?」


 右近と左近が言うように、巨大なドラゴンに恐れもせずに説教をするヨシタカは、他のメンバーから見ても驚きはもちろん、可笑しな事にもなっていた。


 そんな空気を破ったのは、ヴォル男の一言であった。


「ヨジダカ、次! 俺モ、ソレヤリタイ!」


「うえっ? あぁー、まぁ、うん」


 ヴォル男のおかげで少し冷静になったヨシタカは、改めてドーラの方を向く。ドーラの方も、ヨシタカが喜んでくれるかと思ってやった事が裏目に出てしまった事に、ションボリしながらもヨシタカの顔を見る。


「ドーラ」


「……GYAO」


「次にやる時は、何かしらの説明をしなさい」


 ヨシタカから思いがけないほど優しい声で言われたドーラは、恐る恐るヨシタカの顔にすり寄る。そんなドーラの事をもう許しているヨシタカは、「ヨシヨシ」と撫でたり叩いたりして慰める。


「GUuuu」


「もう、怒ってないよ。それじゃ、ドーラ。ヴォル男を放り投げちゃえ!」


「GYAOOO!」


ヨシタカに慰められて元気を取り戻したドーラは、背中にいるヴォル男を尻尾ではたき落とて海に落とし、海面に浮いているヴォル男を下から掬い上げる様に、尻尾で打ち上げた。


「ウォオオオオー!」


一種のアトラクションの様な体験に、ヴォル男は雄叫びを上げながら山なりに空を飛び、そのまま海にダイブした。

ヴォル男はお父さんの従魔なので、県境の壁を通り抜けないよう、壁とは反対側に打ち上げられた。


「おおー楽しそー! ヴォル男の次、俺ー!」


「むむむ! なら、その次ココアー!」


右近やココアの様に打ち上げてもらい人は他にもいるが、ドーラの尻尾は大きいので、一度に2〜3人まとめて打ち上げる事が出来る。


「いぇーい!」


「おぉーー!」


「きゃーー!」


先程やりたいと言った右近とココア、さらにスノウがドーラの尻尾に掬い上げられて、打ち上がる。


「ちょっとー! スノウ半目になってる」


「あはは。変顔ー! ヨシタカも見るー?」


「あはっ! 右近すげえドヤ顔」


サキとミキが次に打ち上げて貰うのを待っている間に、打ち上げてられている3人を写真に撮って、その写り具合を見て爆笑していた。

ヨシタカもミキに誘われたので見て見るが、3人が3人とも変顔をしているシュールな写真になっているようで、ヨシタカも思わず笑い声を出してしまう。


「よぉーし! ドーラ、次は俺達ね!」


ヨシタカはドーラに話しかける。

1回目はいきなりだったので楽しむ余裕が無かったが、今度はヨシタカも楽しむ事が出来た。


「はーい。皆、そろそろいい時間だから帰ろうか?」


しばらくドーラに打ち上げて遊んでいたら、キースが手を叩き皆の注目を集めてから発言をする。


「あぁー。もう、そんな時間かぁー」


楽しい時間とはあっという間に過ぎていくもので、帰りの時間となってしまった。


「って事は、次は右近がバナナボートか」


「あっ、ヨシタカ。俺の代わりに乗ってもいいんだぜ?」


「断固拒否する!」


「えーーー!」


右近と乗る、乗らないと擦った揉んだあったが、ヨシタカ達は真司達がまつ浜辺へと戻って行った。

各評価と、総合評価がそろそろキリの良い数字なので、突破したら記念SSを書こうかと思っています。


内容は皆大好き擬人化かな?

本編には全く絡まないですけどね笑


第一弾は灰白。

第二弾は真白。

第三弾は紅緒。

です。

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