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これは、誰が買うのだろうか?

先週は色々とバタバタしていたため、執筆する時間が取れなくて投稿出来ませんでした。


ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。

 awoで着る服は防具とは違っていて、防具には防御力が必ず付いている。

 それ以外にもステータスに関係する何かしらの効果が付いているものはあるが、防具の下に着る服類は防御力は無く、ステータスに関係している効果のみが付いている。

 ゆえに、扱いとしては装飾品の中に入っている。


 何故、服系に防御力が付いていないかと言えば、防具はウィンドウの設定で不可視効果が付いているからである。

 この不可視効果のおかげで、例えばメイド服や巫女服をコスプレ感覚で着たいのに、装備する防具が可愛く無いだとか、合わせると変になるだとか、それとリアル世界にあるショップがデザインした服などがゲーム世界にあるので、「防具を装備して可愛い服が見えなくなるのが嫌!」ってコメントが複数上がったからだそうだ。


 なので、ゲーム内では防具屋と服屋が分かれているのである。

 もちろん両方揃えているお店もあるが、それは少数派で、裁縫や鍛治師のスキルを両方持っていれば1人でお店が開けるのでいいが、片方ずつ持っているプレイヤーがいた場合だと、両方の商品が入る店舗と両方の売り上げが半々位で、それぞれが維持が出来るだけのお金がないと、後々いざこざが起きてしまい中々成立しないのである。


 そんな中で、このアパレルショップ「キャリー」は防具では無く服類の専門店であり、服以外にも小物類の装飾品も充実していて、メンズとレディースがシンメトリーで半々に分かれているショップであった。

 キャリーはその中の店長兼店員さんであり、彼女は1人でお店を回している。

 そんなキャリーであるが、現在の彼女は猫耳尻尾以外にも特徴的な格好をしていて、上は白で順々にグラデーションになる様に濃くなり、毛先などは赤薔薇の様な色をしているミディアムヘアを緩くウェーブさせている。

 そして耳と尻尾も似た様な色合いをしており、耳と尻尾は先端になる程に濃くなっていた。

 現実世界では、まずお目にかからない様な髪色で、さらに服は髪色と同じ色合いのロリータファッションで、厚底の靴を履いていて俺よりも頭半分ほど小さいので、本来の背の高さはかなり小さいはずだ。


「その猫耳ってオリジナル? 前来た時にはしていなかったよな?」


「これ? そうだよー。私の髪色と合わせたの」


 真司に指摘されたキャリーは、耳をピコピコ尻尾をフリフリした後に、くるんと一回転してポーズを決めた。


「おおー」


「ほほー。……ヨシタカも俺とお揃いで猫耳尻尾買うか?」


「えっ?」


 俺はパチパチと拍手をして、回った事により、ふわりと広がったキャリーのスカートが落ち着いた頃、真司から期待の込められた目で見つめられながら、突然肩をガシッと掴まれて突拍子もなくそんな事を聞かれた。


「普通のだったら両方合わせて5.000Gで、カラーバリエーションや毛の長さとかをカスタマイズするなら50.000G。オーダーメイドの特許を取るんだったら500.000Gだよー」


 さらに追い討ちをかける様に、キャリーから猫耳尻尾の商品説明を言われたのだが、最後のやつのお値段高っか!


「さらに猫耳尻尾の特典で、装備すれば俊敏、聞き耳、気配察知、隠密のスキルが習得出来るよー」


「ほらほら、お得じゃん? 可愛いじゃん? 買おうよー。いっそプレゼントしようか?」


「いやいやいや、ちょっと待て。普通に考えてみてほしい。俺が猫耳尻尾を付けていても似合わないだろう?」


 グイグイと向かってくる2人の顔面に手を出して、一旦距離を取ってから冷静に俺が付けた場合の似合わなさを言ってみたが、真司とキャリーはお互いの顔を見た後に、真面目な顔で同じタイミングで言った。


「えっ? 普通に似合うと思うぞ?」


「ん? 普通に可愛いと思うよ?」


 2人が俺に詰め寄って話しかけて来たので、必死になってこちらも対抗してみたが、どうやら無駄の様であった。




 真司とキャリーの圧に負けて、しょうがなくではあるが俺が三毛模様の猫耳尻尾で、真司が黒一色で長毛の猫耳尻尾をお買い上げした。

 俺の分は真司からのプレゼントなので、強引に押し付けられた様な感じだ。


 キャリーのお店では猫耳尻尾以外にも、犬耳尻尾と兎耳尻尾も売られていて、お値段は猫耳尻尾と同じであった。

 ショップに並んでいた猫耳尻尾達は、ありふれた色合いのものが多く、基本的にリアル世界で見る様な物が多かった。

 キャリーの様に好きな色や模様を自由に配置したり、さらに全体の長さや毛の長さも自由に選べるのが50.000Gのカスタマイズで、その更に上の値段を選択するとゲーム内での特許申請となり、世界に一つだけの自分専用の装備品となるのだ。

 ただし、この特許にも色々と制限があるのだが、この場ではあまり関係ないので割愛する。


「おおう! 長毛種にしたおかげ凄いもふもふですなぁー!」


 もふもふ好きな真司は、早速猫耳尻尾を装着すると、ぴこぴこフリフリと動かしつつ触り心地を確かめている。


 そんな時、キャリーが指先をあごに当てて、コテンと首を傾げながら聞いて来た。


「君達、今日は猫耳尻尾を買いに来たの?」


「「あっ!」」


 キャリーの見た目のインパクトや、真司の猫耳尻尾の熱意に、うっかりと本来の目的を忘れていたが、今日は海パンを買うんだった。

 真司もポンと手を打ってキャリーに訪ねる。


「あぁ、そうだった。キャリーの所で夏物セールしてるって書いてあったからさ、海パン欲しいんだけど、まだ残ってる?」


「海パン? メンズ用だよね? まだ残ってるよー。こっちこっち!」


 何故、わざわざメンズ用と聞いたのだろうか? まさか、男性で女性物の水着を着る猛者がいるとでも言うのだろうか?


 そんな思いを抱きながらキャリーの後を付いていくと、右に男性用、左に女性用の水着売り場へと付いたので、早速試着をしてみる事にした。


「はーい。鏡いる人ー?」


「「はーい」」


 これは何処のお店でもそうなのだが、場所を取るために姿見がお店の中に無いのだ。

 その代わりに、ショップの店員には専用スキルである「具現姿見」と言うのが習得出来る。

 習得条件はもちろん服飾関係の職業かつ、お店の店員両方を習得して入れば自動的に習得出来て、この際にスキルポイントは消費しないのである。

 ただ、どちらかを辞めてしまうと条件を満たしていない事になってしまうため、「具現姿見」のスキルが消失してしまうのだ。


 そんな訳で両方を習得しているキャリーからの提案に、俺達も手を上げて答えた。


「商品を選択してもらって鏡の前に立つと、試着って言うコマンドが出現するから、試着したかったらそこを押してね。それと……」


「ほら、これで試してみたら?」


「これ?」


 キャリーの説明を受けている間に、真司が適当な海パンを俺に手渡したので取ってみたら、目の前にウィンドウが出現した。

 ウィンドウには「この商品を試着しますか?」と「この商品を購入しますか?」と記されていたので、試着の方のイエスを押すと、さっきまで着ていた服が一瞬で無くなり、その代わりに海パンを装着していたのだが問題が発生した。


「ブアハハハハ!」


「うわっ! 何だこれ! ちょっ、恥ず!」


「ありゃりゃ、試着を押すとね、その服に着替えられるんだけど防具までは消えないから、やる前に防具は外すか不可視設定しておいた方がいいよ」


「先に言ってよ!」


 真司が爆笑している原因はキャリーの説明の通りで、ぱっと見で俺の格好が裸に防具を着ているように見えてしまっているからだった。

 一応海パンを履いてはいるので、裸エプロン的にはなっていないが、あまりのカッコ悪さに俺は急いで防具設定から不可視を選択して、防具を見えないようにした。


「くそう。辱めを受けた」


「絶対……やると思ってた!」


 肩を震わせ腹痛が出てしまったのか、お腹を押さえながらも笑い続けてサムズアップする真司。


「この借りは必ず返すからな!」


 海パン一丁なので威厳もクソも無いが、一応仁王立ちをして真司に指を指して宣戦布告をしておいた。

 絶対にこの復讐を何処かでしてやる!


「ごめんねー。先に言えば良かったねー」


「いえ、あいつが悪いんです。他に説明とかは無いですか? また、さっきみたいなのは勘弁なので」


「プププププー……あぁ、痛い! 耳痛い!」


 ペタンと耳と尻尾が垂れているキャリーに謝られたが、どちらかと言えば悪いのは真司だと思うので、ふざけた笑い方をしている真司の耳を思いっきり抓っておいた。


 それと、またさっきの様な事はごめんだと、他に注意する事がないかとキャリーを促してみると、なんとも物騒な話題が出て来た。


「んー? あとは、試着したままお店の敷地外に出ても、着ている商品が消失して元の装備に戻るだけだから気をつけてね?

 それと、これはオススメしないけど試着の他にもう一つ「窃盗」ってコマンドが出るの。これを選択すれば商品を盗む事が出来るんだけど、その代わりに賞金首になっちゃって全プレイヤーとバウンティハンターって言う、すっごく強い人達が狙いに来るから気をつけてね?」


「えっ窃盗? 賞金首? ……さっき俺が商品を持った時には、窃盗なんて文字なかったぞ?」


「そりゃーそうだ。スクロールの下の下に表示されてるんだから。ほれ、これ持って試してみろよ」


 そう言われて新しい海パンを真司から手渡されたので持ってみると、先ほどの選択肢がウィンドウに表示された。

 そのウィンドウを下に下にとスクロールしてみれば、確かに「この商品を盗みますか?」と表示されているではないか!


「間違ってもイエス押すなよ? 賞金首になって厄介なことになるから」


「私も真司の意見に賛成かなぁー?」


 そう言われたので、真司とキャリーに詳しく聞いてみた。


 賞金首発生はゲーム内での要素の一つで、一種の賭けの様なものであり、キャリーの言う「バウンティハンター」とはNPC限定で、職業の一つである賞金稼ぎの事だ。

 プレイヤーの場合だと、普通に「賞金稼ぎ」となる。

 もし、プレイヤーが職業である賞金稼ぎを習得したい場合は、賞金首を発見、戦闘、勝利まですれば職業選択の中に選択肢が出て習得出来る。

 つまり、賞金首を見つけて戦っても、負けてしまえば賞金稼ぎになれないのである。


 そして、プレイヤーまたは稀にだがNPCが窃盗をした場合に、盗んだ合計金額と盗んだ場所のLv帯で賞金首になっている期間が決まる。

 この期間中であるが、ゲームにログインしていなければ減っていかない仕組みとなっているので、ログアウトしたまま賞金首の期間を過ぎ去ろうとしても、出来ない仕様となっている。

 そして期間の間、死ぬ事もなく逃げ切る事が出来た場合、賞金首から外されるのだ。

 その逃げる期間の成功率を上げるために、偽装や隠蔽、気配遮断や隠密とかのスキルを所持していると成功率が上がるとかなんとか。


 ただ、今の所完全に成功したのは10人にもみたないのだが、その分賞金首になった人達は多いみたいで、累計1000人を超えていると言われて驚いた。

 俺には多いのか少ないのかが分からないが、この4年間で考えてみると結構多いのかな?

 成功者はかなり少ないみたいだけど。


 それと、賞金首になって成功すればタダで物が手に入る分、失敗すればそれなりの代償が必要となるわけで、まず、所持金の8割が没収されて戦闘に参加してしたプレイヤー達に分配される。

 その他にもアイテムポーチに入っている物も、ランダムに報酬で配られてしまうのだ。

 なので、一か八かの勝負なのである。


「はー。俺には一生縁の無い話だな。やるプレイヤーの気がしれん」


「スリルを楽しみたいんじゃないか?」


「そういうもん?」


「さぁ?」


 そこでこの話は終わりとなり、本題の海パン選びとなった。


 下半身のみのマネキンに展示されているものや、ハンガーにかかっている海パンをプラプラと歩きながら見ていて、ちょっと奥まった所に出た俺は、衝撃的な商品を発見した。


「こっ……これは!」



「ん? 何か良いもんでもあったか? ヨシタカ?」


 俺の動揺した声を聞いて、こっちにやって来た真司にその商品を指差す。


「あっ……あれ!」


「なっ……あれは!」


 真司もその商品達に驚いたのか、驚愕の声を出して固まってしまう。


「あれー? 2人ともどうしたのー?」


 そこへ店内を見て回っていたキャリーがやって来たので、その商品を指差せば、キャリーはヒョイっと俺たちの目の前に商品を持って来てしまった。


「こっちがブラックのブーメランで、こっちがラメ入りのパープルだよー」


「ちなみに、あっちのは?」


「あっちはレディースので、マイクロビキニのヒョウ柄だね。その隣のはブルギニの水着で、こっちはゼブラ柄だよ」


 キャリーの両手に持っているものそうだが、その隣にある女性体型のマネキンもまた凄いのを着ていたのだ!

 マイクロビキニの布の部分はかなり少なくて、着ていてもズレてしまわないかとか、ちゃんと隠れているかとか気になってしまう様なビキニだ。

実際はゲーム仕様でズレる事や外れるとかは無いので、その心配はいらないのは分かっているんだけどね。

 もう1つのブルキニだなんて、全体が覆われているタイプの水着であり、こんな両極端な水着が並んでいたのは、もはやネタなのかと思ってしまった。


 ネタもネタなら、今キャリーが手に持っているブーメランもそうだ。

 ブラックの方は光沢があり、ツルツルとした材質に対して、ラメ入りパープルの方は光の加減でキランキランと光り輝いていて、どちらも自己主張が激しい。

 そして、その2つを平然と持っているキャリーは、まさに店員の鏡である。


「なんでか知らないけど、この4つは中々売れないんだよねー」


「うーん」と悩むキャリーに、それはそうだろうと思ってしまった。

 アニメや漫画でさえ、中々にお目にする事のないそれらは、ネタや罰ゲームでも無ければ誰も買おうとは思わないだろう。

 もし、好んで買う人がいるのであれば、よっぽどの勇者かただの変態である。


「結局、2人とも無難なの選んだんだねぇ」


 衝撃的な水着を発見してしまったが、俺達は自分用の海パンを無事に買うことが出来た。


「さすがにブーメラン水着を着るのはキツイぜ」


「あれ? 何だったら、俺が真司にブーメラン水着プレゼントしようか? ブラック? パープル?」


「いやいやいや、絶対にいらないから! ヨシタカにプレゼントされても、絶対にタンスの肥やしならぬアイテムポーチの肥やしになるわ!」


 せっかく俺が、さっきの仕返しとばかりに真司にブーメラン水着をプレゼントしようとしても、全力で拒否されてしまった。

 まぁ、俺もこんな水着を買いたいとは思わなかったので、ほぼ冗談だったけどね。


 他にも色々と服や装飾品を買い込んだり、真司からプレゼントされた猫耳尻尾を「せっかく俺がプレゼントしたんだから、付けてみろよ!」と言われて、擦った揉んだなんて事があったが、今日はいい買い物が出来たと思う。


 ホクホクと、アイテムポーチの中に入っているさっき買ったばっかのアイテム達を、どうやって使おうかな? なんて考えていたら、ウィンドウにメッセージが届いた。


『【賞金首発生!】

 賞金首が発生しました。

 場所は東京。

 期限は10日間。

 賞金首の顔写真は次のページにあります。

 バウンティハンターは3人投入」


 なんともタイムリーなメッセージである。





今年も残す所あと、1月!


ますます寒さが厳しくなってきて、最近手荒れが酷くなってきました。

カサカサし始めてしまったので、保湿クリームが手放せない!




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