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ゲーム内SNSの活用法

なんと、ブックマークが4.000人を突破しました!

有難うございます!


 従魔達との相性診断を終えて、俺達はクリスティーナとエリザベートに見送られながら、今回のクエストの依頼主である宋雲の元へクエストを達成した事を報告する為に、また明治神宮の方へと向かう。


「また、遊びにおいでねー!」


「勝手にくたばんじゃないよ!」


「お世話になりましたー!」


「また遊びに行きまーす!」


 お互いの姿が見えなくなるまで手を振った後、しばらくは川伝いで下山しつつ森を抜けるまで、俺達はNPCであるクリスティーナ達や宋雲について話していた。


「クリスティーナとエリザベートって良い人達だったね。どっかの誰かみたいにおちょくってこないし」


「ブッ! どんだけ宋雲の事根に持ってんだよ!」


「昨日の今日で忘れるとか出来ないからね! それに、このクエストの報酬を貰うには依頼主である宋雲に会わないといけないから、その時に……はぁ、また俺だけおちょくられそう」


「まぁ否定はしないが……ユッキーが会うNPCのキャラって色々濃くね? 魔女の所は飯の量が半端ないし、宋雲はあれだろ? それに、爺さんは孫バカだったし」


「確かに! アリアちゃんだけあの中だとマトモかな? クリスティーナは大量の料理さえなければ満点なのに……いや、ありがたいんだよ! ありがたいんだけど、別れ際にこんなに渡さなくても良いと思うんだ」


 実はあの時に、テーブルに出ていた朝食のパンとスープは食べ切る事が出来なかったのだ。そして、その時にクリスティーナが「良かったら、ここにあるの持って行く?」と、余っているパンとスープをお昼用にと頂いて、その時にスープの作り方も聞いておいたので、次回から好きな時に自分で作る事が出来るのは良いんだが、ついでとばかりにあれやこれと、ジャムやハチミツもポイポイと渡されてしまっていたので、俺のアイテムポーチはパンパンになっているのだ。


「真司ー。何か袋的な物持ってない?」


「何で?」


「別れ際にジャムとかいっぱい貰っちゃっただろ? そのおかげでアイテムポーチの空きスペースがヤバイです」


 ゲームの使用上、アイテムポーチ内に入るアイテムには上限が決まっていて、同じ種類の物なら「薬草×99」の様に表示がされて、100個目は「薬草×99」の下に「薬草×1」と表示される。

 そして、アイテムの名称がちょっとでも違うと別物になってしまう為、さっき貰ったジャム類は1個ずつ違う種類で、イチゴ、ブルーベリー、イチジク、ウメ、ビワ、マーマレード、トマト、人参、カボチャのジャムとハチミツを小瓶に分けて貰ったので、10個分のスペースを使われてしまっていたのだ。

 たかが10個かも知れないが、意外とモンスターを討伐した時に出る素材アイテムがバカにならなくて、1匹に対して3〜6個ほどのアイテムが手に入るのだ。

 それに俺の所には従魔が10匹もいるのだ。その分の消耗品類も俺のアイテムポーチに納めなくてはならない為、少しでもアイテムポーチを節約しなくてはならないのだ。


「なるほど理解。……あいよ」


「サンキュー」


 真司から手渡された麻袋に、ゴソゴソとジャムが入った小瓶を全て詰め込んで纏めたら、またアイテムポーチへと戻す。

 そうすると「ジャム類が入った麻袋×1」という風になって、9個分のスペースが開くのだ。


「まぁ、このまま友好な関係が続くんだったら、2人の連絡先が聞けるかもなー」


「へー」


 この、NPCからの連絡先というのは後々に重要になるかも知れない機能のことで、プレイヤーで言うフレンド登録の様なものである。

 フレンド登録の場合には、プレイヤーがログインをしているかの確認や、メッセージや電話が出来る機能が付いている。

 そして、NPCの場合ではSNSの様な感じで近況などを報告しているらしいのだ。


「ユッキーの周りだと、あとはマリアと宋雲も聞けるかもな」


「げっ! 宋雲もかぁー」


 宋雲の顔を思い出したら、あの人をバカにする様な笑顔(しかもかなり良い笑顔)が思い浮かんでしまった。


「いやいやいや、ぶっちゃけユッキーは他のプレイヤーからしたら、かなり羨ましい状況だからな!」


 俺はげんなりとしてしまったが、真司にとってはそうではないらしく、かなりの勢いで宋雲の魅力を力説される。


 何でも宋雲の連絡先を知りたいプレイヤー(主に女性)にとっては、宋雲と仲良くなって連絡先を貰うのが至難の技らしく、掲示板にはその攻略法が出ていたりするほどなのである。

 それに、彼の役職効果もあるのだそうで、そういうNPCの連絡先を知りたいプレイヤーはたくさんいるらしい。


「でも、NPC系の連絡先を聞いてもどうするんだ?」


 プレイヤー同士ならフレンド登録をすればメッセージ機能を使えば電話やチャット、メールを送ったりすることも出来るが、いまいちNPCとやる利点が分からないのだ。


「うーんとだなぁ。取り敢えず、NPCと連絡先を交換するとだな、近況報告が分かる」


「それだけ?」


「まさか! それ以外にも色々あるけど、見てもらった方が分かるだろ? いま俺が知っているNPCだとこんな感じ」


「ほいっ」と真司から見せられたウィンドウには「Mutter」と記されていて、その下にはSNSの様にキャラクターのアイコンと名前の下に、それぞれのつぶやきが記されていた。


 ・ロッテ(微睡み亭の看板娘)

「毎月6が付く日は、AとB定食が割引デーです。皆様おいで下さいませ! また、今月は新商品も販売しておりますので、気になる方は是非微睡み亭へ!」


 ・磯爺(磯丸の船長)

「お前らに依頼じゃあ! 明日の5時から漁をするから手伝え! 報酬は取れた物の中から適当に選べや! ついでに、朝食には俺の嫁の自慢のあら汁定食が付くぞ!」


 ・キャリー(ショップ店員)

「皆様、夏は満喫しているでしょうか? そろそろ秋に突入すると言うことで、夏物処分セールを開催します! 日時はショップ情報からご覧下さい。最大70%オフの大サービスです!」


 ・才蔵(鍛治師)

「最近、嫁の態度が素っ気なくて寂しい。誰か対処法を知らないだろうか? あれか? 俺が何日も工房に潜っていたのが悪かったのかな?」


 ・涼子(才蔵の嫁)

「旦那が数日間工房に籠もりがちで寂しかったので、仕返しをしてみたら効果は抜群だった! ふふん。どれだけ私が寂しかったか思い知らせてやる!」


 お店での割引やクエストの依頼の様なものから、ただの愚痴の様なものまで様々な書き込みをスクロールしながら軽く読んでみた。


「いま載っているロッテやキャリーの割引サービスとかは全員が受けれるもので、これの他にも連絡先を知っているプレイヤー限定の割引や、クエストの発注とかもあるぜ。そう言うのは報酬にちょっと変わった物とかレア物が貰えたりするんだ」


 他にも、レア物のモンスターの生息地の近くにいるNPCと連絡先を交換していれば、そのモンスターの目撃情報が貰えたり、逆に大量繁殖してしまったモンスターの討伐依頼なんかも出たりするらしい。

 大抵の大量繁殖の場合には、近くにキングやクイーンなどがいるので、その素材を狙いたい時には欠かせないのだとか。


「とまぁ、ざっとこんな感じ? あとはおいおいで」


「なるほどねぇー」


 ただ、たとえ便利だとしても簡単に連絡先をNPCから聞けると言う訳では無いらしく、そこに至るまでにはかなり好感度を上げなくてはいけない。

 これがなかなかに大変だったらしく、日数的なのはもちろんの事、仲良くなるまでに色々とアレコレしなくてはならないらしいのだ。

 ちなみに、1人1人違う対応が必要とされているみたいで、真司が聞けた先程のNPC達の場合は以下の通りである。


 ・ロッテ

 宿屋の手伝いや食材を提供したり、デートに誘って可愛いアクセサリーをプレゼントすると良いらしい。


 ・磯爺

 漁の手伝いや備品なんかの手伝いをすると良いらしく、さらに奥さんラブな人らしいので、奥さんを褒めるのも良いらしいが、逆に奥さんの好感度を上げ過ぎると嫉妬してしまい、下がってしまうらしい。


 ・キャリー

 キャリーのお店に売っている商品を数点買うと良いらしく、さらにファッションについての会話をするとなお良いらしい。


 ・才蔵と涼子

 この人達は、真司が鍛治師になる時に修行した所だったみたいで、知らないうちに連絡先を交換して貰えたらしく、何が良かったのか分からないらしい。


 この様に好感度を上げて連絡先を貰えば、さっき真司から見せて貰った「Mutter」に連絡やお知らせが来るのだが、逆にNPC相手に高圧的な態度や横暴な対応をしてしまうと、逆に好感度を下げてしまうらしく、そうなってしまうとゲームを進めて行く上で障害が発生してしまうらしいのだ。そうなった時は本当に大変な事になってしまうそうで、特に、NPCが運営しているショップでの売買や、宿に停めてもらう事が出来なくなるみたいなのだ。


「うわぁ……。ってか、マジでそんな奴いるの? NPCつったって本当の人間みたいじゃん」


 俺が今までに出会ったNPCは、どれもNPCだとは思えないほどの存在感だった。

 ついさっき別れたばかりのクリスティーナとエリザベートだって、2人とも良いおばあちゃん魔女だったし、俺が初めて仲良くなった動物大好きなアリアちゃんも、灰白さん達と遊んでいる時はあんなに感情豊かだった。

 たとえAIでプログラムによって動かされているとしても、俺にはぞんざいに扱うだなんて想像出来ないのである。


「これがねぇー。勘違い野郎は毎年出て来るんだわさー。特に、入りたての初心者の中で、この世界観に慣れてきた位になると、俺強ぇーって勘違いしちゃうんだろうな。そう言うのは毎年出て来るんだよ。そんで、NPCの不況を買っちゃって「ゲームが成り立たない!」って運営に文句言う奴が出てくんの。んで、ちょくちょくそんな内容の掲示板が出来上がるな」


 そう言って真司から見せて貰った掲示板には、「【俺は】NPCが言うこと聞かないから、運営に文句言ったら逆ギレされた【悪くない】」と言うタイトルと、NPCやそれに対応した運営のクレームがわんさかのっていた。

 中には「悪くなった関係や印象は、NPCの手伝いをすると元に戻る」や「後悔する前に、早く謝りに行ってこい!」って教えて居る人も居る。


「これとか、こう言うのは脅迫だけど、基本町の中は戦闘行為が禁止だからNPCを殺すとか言っている奴は無駄なんだよな。逆にこっちのは運営を脅迫しているから、確かこのプレイヤーはアカ禁になったはず」


「バカだなぁー」


 あまりにも反応が子供じみていたので、俺は呆れてしまった。

 良い大人なのに、何やっているんだろう?


「だろぉー? しかも、最初に名前とか色々と書いちゃっているから、アカ禁食らったら

 2度とこのゲーム出来ないんだよ。ユッキーも気を付けろよー!」


「俺はそんな事しないし!」


「違ぇーよ! そっちは大丈夫だろうけど、そう言うプレイヤーがいたら気を付けろよってこと! すぐに運営に言えよー。ここだったら、すぐに拷問大好き菜々緒ちゃんが来るから」


 菜々緒ちゃんとは、運営側の人である。

 運営は各都道府県に1人ずつ配置されていて、東京は菜々緒が担当をしている。彼女は俺が初めて冒険者ギルドに行った時に対応してくれた人でもあるし、闘技大会の時に解説者だった人だ。

 俺は見た事は無いが、そんな運営の人達にはプレイヤーとは違った特製の戦闘スキルが存在していて、その性能があまりにもぶっ飛んでいることから、プレイヤー間の暗黙の了解で「運営が出てくる行為は絶対に止めよう!」と言うのがあるのだ。

 ただ、新参者にはそれを知らぬが故に菜々緒の餌食になるプレイヤーが毎年出るので、それはそれで一種の風物詩と化しているとかなんとか。


「まぁ、ちょっと暗くなる様な話はこの辺にして、ユッキーはあれを買わないとな!」


「あれ?」


 だいぶ崖の様な急斜面が無くなり、比較的歩きやすく歩道が出来ている所へと進んだ時に、俺の隣を歩いていた真司がタタタッと俺の前に来てピンっと指を立てながら、キラキラした顔で言う。


「あれだよあれー! 海に必要なあれー」


 海? 海って言えばスノウ達との約束の事だよな? そう言えば灰白さんは海でも泳げそうだけど、魔白や紅緒達は波が来たら溺れそうだよな……って事はだ。あれが必要になる!


「……? あっ、浮き輪!」


「そうそう、浮輪浮輪……って違うわ! 海パンだよ! か・い・パ・ン!」


「あぁ、そっちか! すっかり忘れてた」


「いやいや、絶対におかしい!」


 そうだった。真司に言われるまで気がつかなかったが、たとえゲーム内だとしても海に行くのならば海パンくらい持っておいた方がいいだろう。

 周りの皆が水着の中、俺1人だけ普段着って悲しいしね。


「全く。何で浮き輪になるんだよ。別にカナヅチって訳じゃあないんだろ?」


「いやぁ、そうなんだけど魔白とか紅緒は溺れそうなイメージだったから」


「あぁ、それは確かに」


 ちょっと、おっちょこちょいなイメージがある2匹に、真司も同じ想像をしたのか頷いてくれた。


「まぁそんな訳で、この依頼が終わったら買いに行こうぜ。ちょうど夏物セールをしているみたいだしな!」


「あぁ! あったあった! でも、海パン買う前に宋雲の所へ行かなきゃ」


 毎年思うのだが布面積が少ないのに、何故水着ってあんなに高いのだろう? と思いつつも、まずは宋雲に依頼達成の報告をしなければ!


菜々緒の戦闘シーンは後々に出るかな?

菜々緒出したら、他の運営も考えなければ……。



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