初めてのお買い物。甘やかすのは禁止です。
「うーん。何肉がいいのかなー?」
「何でもいんじゃね?」
朝食を食べ終えた俺達は、生産ギルドを通り過ぎて商人ギルド、通称商店街へと赴いていた。
今は、お昼にピクニックで食べる材料を買いに来ているのです。
どうやら、外でBBQをする予定みたいだ。
道具とかどうするんですか?って聞いたら、
「そこは大丈夫!ちゃんと準備して来たよ!何て言ったて料理人だからね!」
って舞姫さんに言われた。
灰白さん達も心なしか皆楽しそうです。
そうそう、商人ギルドの入口には綺麗なアーチで、「商店街へようこそ」って書いてあった。
そのアーチを潜ると大小様々なお店があって、プレイヤーやNPCが大勢いて賑わっていた。
大通りに沿っては何の効果があるか判らない小物を売っていた露店や、八百屋や肉屋などの市場がずらーって並んでいて、大通りから離れた所には、厳ついおじさんが店番している冒険者向けのお店とかもあったな。
生産ギルドと商人ギルドは両方共入口にギルドがあり、そこを中心として扇状に広がっている。
そこに様々な工房や商店が所狭しとしているのだ。
通り過ぎて行った生産ギルドと商人ギルドについて、疑問に思った事を聞いてみた。
「生産ギルドと商人ギルドって何する所なんですか?なんか漠然とした知識しかなくて」
一応真司から生産ギルドについてはざっくりとした説明は聞いたけど、詳しい事は聞いていなかったなーと思って聞いてみた。
「うーん。簡単に言えば、物を作るのが生産ギルドの管轄かな。僕の様に木で物を作ったり、真司君の様に武器や防具作ったり、舞姫の様に装飾品を作ったりだね。あとは、食べ物を作ったりするのも生産ギルドの管轄だよ。商人ギルドはそれを売ったりする場所って所だね」
「なるほど。でも、自分の工房を持っているなら、そこで売らないんですか?なんか工房付きのお店ってリアル世界では見かけますけど」
「出来なくは無いよ。ただ、物を売るのにどうしても商人ギルドから営業許可書を貰わないといけないんだ。だから、工房で作った物を売りたい人は、生産ギルドと商人ギルドの境目にお店を構えている事が多いかな。何かあった時に離れていると不便だしね」
「へーなんか色々と大変なんですね。ちなみにハルさんの工房はどこら辺にあるんですか?」
と周りをキョロキョロ見渡して、ハルさんのお店はどこかなと探した。
「僕の?僕のは京都に工房があるよ。今日はこっちにいるから、工房はお休みだね」
と、にっこり笑いながら答えてくれたけど、へ?京都?京都って言った今?
「…えぇー!ハルさんのお店、京都にあるんですか?えっ、だいぶ遠いいですよね?」
だって、修学旅行とかで東京から京都に行った時は新幹線とか使って数時間かかったよね?
このゲームはリアルと同じ時間軸だから、移動だけで何日もかかるんじゃ…
「あぁ、ヨシタカ君はまだ行ってないのか。なら、帰る時に一緒に教会の方へ行こうか。
詳しい説明はその時に言うね。それより、あっちをどうにかしないと、お昼全部お肉になっちゃいそうだよ。」
「…えっ?っておい!真司!舞姫さん!どんだけ肉買うんですか!」
「「いやー灰白ちゃんがお肉見つめていたからつい!」」
って、2人してテヘペロしても誤魔化されないぞ!その肉の山はなんだ!
それに灰白さんもキリッて顔してるけどヨダレ垂れてますから。
誤魔化しきれて無いぞ!
「もう、甘やかすのは禁止ですよ!食べきれない分は戻して下さい。」
「ふふん、ヨシタカ君。そこは大丈夫!」
と、言いながらゴソゴソとポーチから大きな布の袋を取り出したかと思ったら、おそらくはもう買ってしまったのだと思う大量の肉を
詰め込み始めた。
「よし、これをポーチに戻すと…ふんっ!こんな感じになるのです。ほい、ここの部分ね」
アイテムポーチ
あらゆる肉を大量に詰め込んだ袋1/1
あらゆる野菜を大量に詰め込んだ袋1/1
あらゆる果物をある程度詰め込んだ袋1/1
あれ?野菜と果物っていつの間に買ったんだ?
はっ!まさか真白か!
っておい、こっちを見なさい真白!
なに目をそらしているんですか!
じゃなくて…
「これって」
「そう!一種の裏技ってやつだよ!」
「こうすると、大量に持ち込めるんだぜ。ちなみにバラだと各々10個が限界値になる上に、種類や部位別で場所取るからな、纏めて突っ込んだ方がいいんだ。」
って言っても、さっき、ふんっ!とか言ってたしかなりの量があるんじゃないのかな?
「えっと、大量にあったと思うんだけど、腐らないの?」
「それが不思議と腐んねーんだよ。だから、遠征とかに行く時は、パーティーメンバー全員がさっきみたいに食べ物をポーチの中に突っ込むんだ。」
「まぁ携帯食でも良いんだけど、その土地の食べ物を食べたい時はそうしてる感じかな。舞姫、一応野菜も買ってたんだね」
「ふふん当然でしょ!真白ちゃんにウルウルされたらそりゃーね!」
やっぱり、真白が犯人か!
それにしても、3人共このゲームをやり込んでいるんだな。
俺も早く皆みたいになる様に頑張らなきゃ。
「ワンワン!」
「ん?どうしたんだ灰白さん」
何やら、灰白さんが俺の袖をグイグイと引っ張りだした。
こっちに来て下さい!って言ってるみたいだ。
「んー?どうしたのかな?付いて行ってみるかい?」
顎に手を添えて思案顏のハルさんが俺に聞いてきた。
「でも、買い物は大丈夫なんですか?」
一応舞姫さんと真司に聞いてみた。
「一応、食べ物系は買ったから大丈夫だよ!
」
「良し、なら行ってみるか!」
と、皆で灰白さんのあとを付いて行った。
灰白さんはこっちですよ!とこっちをチラチラと確認しつつ前へ前へと進んでいく。
「あれ?確かこっちってさー」
「何かあるんですか?」
途中で、舞姫さんが「あれー?ここら辺だったけー?」とウンウン唸りだした。
何があるんだろう?と思った時、するっと何かが足元を通った。
「うわっ!何だ?」
「にゃ〜ん」
下を見たら、尻尾が2つに別れている猫がそこに居た。
えっと、尻尾が2つの猫は猫又って言うんだっけ?
あれ?この子のマーカー緑色だ。
「あれ?この子白薔薇の所の子じゃない?…やっぱり!おーい、しーろーばーらー!」
と、辺りをキョロキョロ見渡した舞姫さんが、ある一点を見付けて両手をブンブン降り出した。
俺もそっちに目線を送ると、ちょうど100mくらい先の方に白髪の女の人が居た。
その女性もこっちに気付いたのか、手を振り返して来る。
あれ?
よく見ると、その人の周りには数匹の動物達がいる。
って事は、サモナーかテイマーって事なのかな?
「ワン!」
あっ、灰白さんがスタタターと行って、そこのお店にお座りしてこっちを待っている。
って事は、あそこが灰白さんが行きたかった所のなのかな?
「ようこそ。いらっしゃい。」
俺達も白薔薇さんと言う方のお店へ向かった。
白薔薇さんは、西洋のお姫様みたいな感じの人だ。白髪の髪をお団子にしてて、その周りを三つ編みの髪がぐるっと一周になっている。
男の俺から見たら謎な髪型だ。
どうやったらああなるんだろう?
服装は白のふんわりとしたワンピースだ。
うん、名前の通り全身が白いな!
俺の所の真白と一緒だ。
お店に着いたら、なんで灰白さんがこのお店へ俺達を連れて来たのかが分かった。
成る程、店内をぐるっと見渡すとリアルのペットショップみたいなお店だった。
○○のエサみたいたのは売ってないけどね。
その代わりに、服やおもちゃなんかが綺麗に陳列されている。
つまり、おもちゃが欲しいって事ですか?灰白さん。
いや、そんな期待の込もった目で見られても…
ぐぬぬ、真白も紅緒も揃ってキラキラした目でこっちを見られても困るぞ!
と言うか、ウサギと鳥のおもちゃって何?
何で遊ぶつもりなの君達!
「おや?従魔が居るみたいだけど、誰かサモナーかテイマーになったのかい?」
灰白さんの頭を撫でつつ、こっちを見ながら問われた。
「白薔薇さん、久しぶりっス!俺の友達がテイマーなんすよ!」
「あっ、初めまして。ヨシタカって言います。真司から誘われて昨日からこのゲームをやり始めました。よろしくお願いします!」
真司にドン!と背中を押されて、前に出された俺は、そのままお辞儀をしつつ挨拶をした。
「そう、よろしくね。私は白薔薇。テイマーでもあるし、この店の店主でもあるよ。君に懐いているそこの猫又や、店にいる子達は全て私がテイムした子供達だ。それにしても、そのLvでテイマーか…ユニーク持ちなのかな?」
俺と同じテイマーの人発見!
「あっはい。そうなんです。ユニークスキルの…」
「あぁ、それ以上は言わなくていいよ。」
途中で止められちゃった。
なんでだろ?
「ああ、そっか。ユッキーあんまLv高くないもんな。」
えっ何?
どゆこと?
「おいこら真司君。君の友人なら、きちんと説明してあげなさいな。」
「イテッ!」
おお!見事なチョップが真司な頭に直撃だ!
「ふう、なら同じテイマーのよしみで私から
説明しよう。ユニークスキルの持ち主は基本、その事を外部に言ったりはしないんだ。何故なら、そのスキルを欲する人間がどんな手段を用いて来るかが分からないからだ。ある程度のLvならば己の力で弾く事も出来ようが、まだ、君にそれは無理だろう?」
「はぁ…てか、ユニークスキルって何ですか?」
いきなりユニークスキルを取得しちゃったからな、ついでに聞いちゃおう。
「ふむ、簡単に説明するなら、リアルの自分の技能だ。例えば、そこの真司やハルは剣道とボクサーの経験者だからな、戦闘系のユニークを持っているのだろう。逆に私や舞姫あたりなんかは、生産系のユニークを持っている。とまあ、そんな感じかな?取得方法は各々違うのだけどね。さて、そんな事より、私の店に何か買いに来たのだろう?」
えっ…そんなつもりは全然無かったんだけど。
ちらっ、うーん。
「お買い上げありがとうね。また遊びに来たらいい。」
結局3匹のおもちゃを1個づつ買いました。
何が良いかが分からなかったから、白薔薇さんに選んで貰ったけどね。
おもちゃを買って貰って、灰白さん達は物凄い満足気だ。
結局俺も灰白さん達を甘やかしちゃいました。
白薔薇さんから、皆で一緒に遊ぶんだったらって事でそれぞれ大きさの違うボールをオススメされた。
「体格が違うからね。それぞれのボールを用意しておけば、問題も出ないだろう。以外と自分用ってのは嬉しいものなのだよ」
との事だ。
「さて、皆の衆!買う物は買ったしピクニックに行きますか!」
「「「おー!」」」
「ワオーン!」
「ピチュチュチュン!」
という訳で一同揃ってピクニックへと赴いた。