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1周年記念番外編。その1

「モンスターにモテ過ぎたので、テイマーになります!」の1周年記念の番外編です。


本編に登場するキャラクターの日常の一幕で、本編には登場していないキャラクターも出ています。


また、今回はBL的単語や微エロ要素が出ていますので、苦手な方は注意して下さい。


 

「乙女達の御腐(オフ)会」





「お帰りなさいませ。お嬢様」


「はーい、ただいま〜。舞園家のお嬢様が帰って来たわよー」


「はい。いつもの席へとご案内しますね」


 とある執事喫茶に、タイプの違う3人の女性が、優雅な午後のティータイムを満喫する為にやって来た。


「五条を呼んでもらえる?」


「はい、お嬢様。少々お待ち下さい」


 出迎えた執事に従い席に着いた3人に、先にお店に来ていた客達と、フロアにいる執事達がチラチラと3人を見てしまう。


 1人は清楚系お嬢様風の女性で、夏にピッタリの白いノースリーブのワンピースに、刺繍が入った淡い水色のストールを羽織っていて、このジメっとした夏の中で、彼女の周りは涼やかや雰囲気が醸し出されている。

 髪型は、緩くウェーブかかった髪に、耳の上の部分から編み込みがされており、両方合わさった所で自身の髪よりも薄いブラウンの、大きなリボン型のバレッタで止められている。


 そんな彼女は優雅な微笑みを浮かべており、時たま視線が合った執事達にニッコリと微笑みかけては、純情な彼等を赤面させている。


 そんな彼女の右側に座っている女性は、この暑い夏の季節なのに全身黒のゴシックで、袖先と膝丈のスカートの先端がレースになっており、驚くべきはグッと絞られたウエストであろう。

 あまりにも細く、簡単に折れてしまうのではないかと不安にさせると共に、店内に居る他の女性達からは、羨望の眼差しが向けられている。

 そんな彼女の髪型は、黒のストレートで鎖骨付近の毛先が内側に、クルンっとカールになっている。


 そして最後の1人は、大きな胸を強調するかのごとく、ハイウエストジャンパースカートのディアンドルタイプの服を着ているもんだがら、ちょうど生地が無くなるウエストの上部分から溢れんばかりの乳が、テーブルに着いている両腕の上に、デンッ!と鎮座させて居る。

 それをチラチラと執事達が見てしまうのは、男の性なので、もはやしょうがないのである。


 そう、ここにいるのは女性達は、舞姫、ノバラ、マチであり、彼女達は決して抜け出すことの出来ない腐海に、ズブズブとハマってしまった乙女達でもある。


 時期的には、闘技大会の打ち上げから数日後のお昼頃で、集まった理由は、この前のアレでヨシタカの許可が下りた(ただし、他人から見てヨシタカだと分からないように加工する事が条件)そのお祝いと、今後のスケジュールの話し合い。

 さらに、お金に物を言わせてオタクショップでの買い物をこの後予定しているのだ。

 とりあえず今は、『腹が減っては戦はできぬ』ので軽食を食べに、良く通っているお店に来たのであった。


「プシュー……やっぱり、こっちは暑いっすよー。ノバラ良くそれで平気だよね?早く向こうに帰りたーーい!おっぱい蒸れるー!」


 だる〜んと脱力して、テーブル上に上半身をうつ伏せの様な状態にして、マチは顔だけ全身真っ黒のノバラの方を向きながら聞く。


「暑いに決まっているでしょ。けど、こう、見えない所で冷感スプレーとか、冷えピタとか貼って頑張っているのよ!あと、おっぱい言わない。胸って言いなさい」


 実際に貼っていると思われる所を指差ししながら、如何に自分が努力をしているのかを言うが、最後は自分の中での常識を押し付ける。

 ノバラ的にはおっぱいよりも、と言われる方が誤解が無く良いのだ。


「おっぱい分かるわ〜。垂れてくるんだよね、汗が。それがまぁ、気持ち悪い事気持ち悪い事」


 そんなノバラの指摘を華麗にスルーして、やっと引いて来た汗の感覚に、ホッと溜息を吐きながら、舞姫はマチに同意する。

 どうしても胸元と背中に垂れる汗の感覚が苦手な舞姫にとっては、楽しい事はいっぱいであるが、日本の蒸し蒸しとしたサウナの様な夏は苦手な季節なのである。


「そうなんすよねー。いっその事こう、こうやっておっぱいの谷間にタオル挟もうかって感じ」


 そう言って、タオルを胸元に押し込む様なジェスチャーをすれば、ノバラがズビシッ!とマチに指差して言う。


「だから、おっぱいおっぱい言わないでよ。【雄っぱい】って、頭の中で変換されちゃうんだから!それに何?絶壁の私に対する嫌味か!」


 知っている人達には今更な単語であるが、雄っぱいとは男性の胸部の事である。

 スラーとした胸部では無く、ムッチリとした胸筋の事を指す単語であり、ノバラはムッチリ系が好きなのである。

 そんなノバラは残念な事に、この場に居る舞姫達の中では思わず顔を背ける程に真っ平らで、「あれ?今時の小学生の方があるんじゃね?」って思わせる位の絶壁さんであるのだった。


 そんなおっぱい雄っぱい言っている舞姫達の元に、ちょっと生意気そうな執事がやって来たのを確認した舞姫は、会話を中断してその青年に手を振ると、こっちが手を振っている事に気が付いた青年も、手を振り返しながらテーブルに近付いて行く。

 そんな青年に他の執事達は、嫉妬や羨望の眼差しを向けていた。


「いくら端っこの席だっつっても、下ネタはどうかと思うぜ?」


「あはっ!聞こえてた?」


「いや、ジェスチャーで何と無く?胸関係でホモホモしてただろ?」


 伝票用紙が挟まっている黒い伝票挟みで、トントンと肩を叩きながらやって来た青年が発した第一声は、舞姫達の事をよく知っている発言であった。


「いやいやー、ひーくん違うんすよ?外暑かったから汗が谷間に垂れるねーって話!」


「まぁ、ホモホモ話はしていたんだけどね」


「あぁ、成る程ね。それで、お姉様方はご注文は決まったのか?」


 マチとノバラの弁明を聞きつつ、ここの執事喫茶は時間制限が設けられている為、「さっさと選ばないと時間が勿体無いぞ?」と、暗に言ってくる青年に、各々注文をしつつ軽く挨拶を交わしていった。


「お久だねー。いつものやつで私は珈琲に、ついでに季節のシャーベット付けて。ってか、日向受験生でしょ?受験勉強とかしなくて大丈夫なの?」


 季節は8月の後半で、この時期の受験生は、受験勉強を理由としてバイトを辞める傾向にあったので、自分が受験生の時を思い出した舞姫は聞いてみたのだが、青年は伝票と共にフリフリ手を振って否定した。


「それはお嬢様が心配する事ではありませんよっと。まぁ、せっかく慣れて来たのにそれはちょっとね。それに、時給いいし、ここの人達優しいから。それと、俺馬鹿じゃ無いから、ちゃんとしっかりと勉強してるからご心配無く。

 それで?ノバラ嬢は紅茶で、マチ姉はアイスコーヒーので、いつものでいい?」


「うん。大丈夫」


「はーい!大丈夫だよー」


 青年執事の言葉に、ノバラはコクリと頷き、マチは左手を高く上げて返事をする。


 この会話でも分かる通り、舞姫達と仲の良い青年の名前は、五条日向。現実世界では、(主に母とゲーム世界の女性陣に)ひーくんと呼ばれている青年だ。

 苗字で分かる通り「五条菖蒲」ゲーム名「白薔薇」さん家の長男さんで、現実世界でもゲーム世界でも、この舞姫達とは母親経由で知り合い、なんだかんだで3年以上のお付き合いなので、この様に仲が良いのである。


 それと、日向が働いているお店では、基本的にお客様の事をお嬢様(または旦那様など)と呼ぶのだが、お客様からの「こう呼ばれたいです!」って、ご指摘があれば、執事はそのご要望にお応えするが、ここだけの話、舞姫達が執事喫茶内でお嬢様以外の愛称で呼ばせているのは日向だけである。

 あとの執事には、全員「お嬢様」呼びで統一させている。

 ちなみに、今まで呼ばれていない舞姫の事を日向は、「姫姉」と呼んでいる。


「それでは、しばらくの間お待ち下さい」


 全員の注文を聞き終わった日向は、軽くお辞儀をしてから裏へと向かって行くのを見送った舞姫達は、早速今期アニメで注目しているCPの、ホモホモしい話に花を咲かせ始めた。





「ホッホッ。お嬢様方、お待たせしました。こちらがご要望の品々でございます。ご確認下さいませ」


「あれー?じいや、どうしたの?」


「ハウス・スチュワードからマチ姉に話があるんだって」


「ほえ?私?」


 注文をして、しばらく雑談に興じていた舞姫達の元に、初老の執事と共に日向がサービスワゴンを押しながらやって来て、ワゴンの上に乗っている品々を次々にテーブルの上に移動させいく。

 舞姫がいつも頼むのは、スコーンやクッキー、カップケーキなどが乗ったアフタヌーンティーセットで、3段の器にはそれぞれが綺麗に乗っている。

 そして最後に、舞姫達にとっては初見となる新作の季節のシャーベットを目の前に置くと、早速とばかりに先程の初老の執事、舞姫達からは「じいや」と呼ばれている執事が、マチに向かって「此度の決勝での戦いは、残念でしたな」とお辞儀をしつつ言った。


「あれー?じいや、見てたんだ!えへへ、ありがとう」


「えぇ、えぇ、お嬢様の勇姿を見ようと思いたったのですが、いやはや。やはり、あの殿方達は強うございましたな」


 そう、この老執事も、ゲーム名「じいや」でawoをやっているのである。

 このじいやもまた、舞姫繋がりで知り合った内の1人である。


「おやおや、私としたことが。ついつい話し込んでしまいましたな。それではお嬢様方、ごゆっくりとお楽しみ下さい」


 全員が同じゲームをしているという事もあり、この前の闘技大会の感想を話し合っていたのだが、制限時間が決められていると言う事もあり、じいやはサクッと話し合いを終わらせて、お辞儀をした後、担当執事の日向を残して席を離れて行った。



 そして、舞姫達が退店する時。

 今日も変わらないやり取りが繰り広げられていた。


「ひーくん、ひーくん!じいやに、今日食べたシャーベット最高だったって伝えといて!」


「マチ姉、分かったから離れて。乳が遠慮も無くグイグイ当たってるから」


「はぁ、ひーくんスベスベ。これが若さか」


「イバラ嬢、俺の手スリスリしないで」


「うぅーん!やっぱりひーくんは、良いお尻してるよね!」


「姫姉、それセクハラ」


「「「……ぐへへ、つい」」」


「はぁ〜。これ、毎度の事だけど飽きないの?」


「「「全然!!」」」


 お帰りの際の日常茶飯事で、日向が舞姫達を担当している時には、毎回この様なセクハラを受けている。

 日向本人にしてみれば、もうこの手の絡みには慣れているので今更感があり、飽きない3人に若干呆れている位なのだが、それを遠目で見ているお仲間の執事達にとっては、裏山けしからん!状態の日向に、「五条。そこ代われ!」と、いつも内心で吠えているのである。


「それじゃあ、お嬢様方。お気を付けて、行ってらっしゃいませ」


「「「はーい、またね。ひーくん!」」」


 笑顔で見送った日向に、元気良く返事を返した彼女達は、そのまま次の戦いの場であるオタクショップへと、颯爽と余所行きの仮面を付けて向かって行ったのだった。




「巻き込まれた青年のその後」



「はぁ、今日も疲れた。ただいまー」


 執事喫茶でのアルバイトが終わり、家へと帰って来た日向は、いつもよりもグッタリと疲れていた。

 それもそのはず、日向が帰る間際に先輩達から、「彼女達のLINE知ってるんだろ?教えてくれ!」や「俺の事を彼女達に紹介してくれよ」だとか、彼女や妻子持ち以外のフリーの男性陣からの質問責めにあっていたからであった。


 何故これ程までに先輩達が躍起になっているかと言えば、夏服となり(ノバラは例外だが)肌の露出が大胆になった舞姫達の事を、

 密かにひっそりこっそりと好意を寄せている男性陣の数が多くなった為である。


 特に清楚派、巨乳派、スレンダー派での上位に位置している3人に、是非ともお近付きになりたい!と思っているのである。


「先輩達の見る目無さすぎだろ。まぁ、中身がアレで良いなら別だけど」


 ただし、彼等が見ているのは舞姫達の外面だけであり、普段の内面も知っている日向からしてみれば、舞姫達は残念なお姉さん位にしか思えない。


 何処が残念かと言えば、オタ活動の締め切り間際には、スッピン、冷えピタ、スウェット又は下着のみの格好で、時たま奇声を発している姿を見てしまえば、外での舞姫達のあの姿が、幻想だと言うのが分かるからだ。

 よくもまぁあれだけ擬態したもんだと、日向は思っている。


 何故日向がそんな姿を知っているかと言えば、オタ活動時、寝食の時間すら惜しい時に、おにぎりやサンドイッチなど手軽に食べる事が出来る物を日向に買って来て貰ったり、適当に部屋の掃除なんかもお願いしているので、うっかり部屋の中にある下着なんかも見る事があるのだ。

 もちろん舞姫達は、この時にはバイト代を支払っている。


 そんな事を、「羨ましい、羨ましい」と言って絡んでくる先輩達に言っても、「下着姿で出迎えてくれるだなんて、そんな美味しいシチュエーション、俺だったら挙手してでもやりたいわ!」なんて言いそうで、余計に言い難い。


「ただいま」


「兄ィおかえりー」


「ひーくん、おかえり。夕飯食べる?それとも先にお風呂に入る?」


「先に風呂入るから、夕飯出しておいて」


「はーい」


 リビングでは、ソファに座ってドラマを見ている妹の皐月と母の菖蒲が、今話題の恋愛系のドラマを見ていて、日向の方を向く事無く声を掛ける。

 その事に別段腹をたてる事も無く、ベタッとした汗を早く洗い流す為に、自分の部屋に一旦行って変えの寝間着を準備してから、お風呂場へと向かった。



「ふぅ…いただきます」


「おかえり日向」


「ん。ただいま」


 風呂から上がった日向はテーブルに着くと、早速遅い夕飯を食べ始めた。

 目の前には晩酌している父の信夫がいて、父は父でおつまみの柿ピーを食べながら、あまり興味も無さそうにドラマの方を見ている。

 本当だったら、この時間にやっている野球の試合を見たかったのだろうが、女性陣の方が強かった様だ。

 ただ、録画が2つ機能しているので、今見れない野球は撮っていて、後で見るのかもしれない。

 もう1つは、今菖蒲達が見ているドラマである


 普段よりも遅い夕飯を食べているが、普段はもっと早い時間に食べている。

 これはもうバイトあるあるで、最後の時間までバイトがある日は、大体22時頃のこの時間に帰ってくる事になるのだ。

 人によっては学校からバイト先に行く間に食べるか、もう一層の事夕飯は食べない!なんて人もいるだろう。


 ただ、育ち盛りの高校生男子となれば、空腹は天敵なので、日向は体重や健康などを気にせずに夕飯を食べている。


 夜でも蒸し暑いこの時期の五条家の夕飯は、基本的に素麺などの麺類が多く、今日の献立も素麺であるのだが、普通の麺つゆでは無く冷汁であった。

 妹の皐月が「麺つゆ飽きた!」と言ったので、変わり種として冷汁で素麺が出て来たのだ。

 それと豚しゃぶサラダの夕飯で、全体的にアッサリとしているそれをサラッと食べ終わったら、歯磨きをして直ぐに自室に戻り、自分専用のゲーム機を装着して起動させる。


「んぅー!それじゃあ、今日も最後にもういっちょう頑張りますか!」


 伸びをしてベッドにダイブすると直ぐに、仲間達が待っているゲーム世界へと旅立って行った。

 今日は仲間達と共に、地獄への門番を突破する予定なので、たとえバイトで疲れていようがそんな事は些細な事で、日向にとっては関係無いのだ。






 そんな日向と主人公のヨシタカが出会うのは、……当分先の事になるかもしれない。


次回予告


「とあるおっさん達の日常」




なろう先輩の「異世界食堂」と「ナイツアンドマジック」のアニメ化おめでとうございます。

放送はもう皆さんは見たのかな?

深夜の飯テロに怯える日になりそう。


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