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羽田ポータル探検隊!

 羽田ポータルにて、アメリカ出身の日本食大好きトリオと出会い、お昼ご飯を奢って貰う代わりに、始まりの町の場所を教える約束をしていた。

 そして、お昼ご飯を食べ終わったので、今度はこちらが3人に教える番であった。


「ユッ……ヨシタカ、地図出して貰っていい

 か?」


「ジーーーー」


 真司から地図を出して欲しいと言われたのだが、その前に、人前ではユッキーって呼ぶのを禁止したのに、ついうっかり言いそうになった真司をジト目で見つめた。


「テヘペロ!」


「お前がやっても、可愛くねぇよ!」


「うん?」


 そんな俺達の会話を、和食さんがキョトン顔でこっちを見ているが、目の前にあったトレイに乗った食器が全部消えて、テーブルの上には何も無くなったのを確認してから、ウィンドウを操作して地図を表示した。

 和食さん達にも良く見えるように少し拡大して、さらに反転表示にして3人の前に出すと「おぉー!」と言う歓声と共に、3人が地図を凝視する。

 久しぶりに俺が表示している部分を見たのだが、まだまだ埋まっていないのが分かる。


「それじゃあ、サクッと説明するぞ?」


「「「OK!」」」


「そっちの国と同じかは分からないけど、まず、地図はギルドカードの中に入っていて、始まりの町に行って登録すれば、地図機能が手に入るはず。そんでーーー」


 そう言って真司が和食さん達に、俺と真司が出した地図を使いながら説明をし始めた。

 俺の地図が拡大図で、真司の地図が東京の全体図である。

 それをツツツーと指でなぞりながら説明をしている。


 今回、何故和食さん達が始まりの町へと行かなければならないかと言うと、日本版のギルドカードを貰うためである。

 別に日本のギルドカードを持っていなくても、普通に遊ぶ事は出来るのだが、ギルドカードを持っていれば、何をどの位倒しただとか、称号をどれだけ入手しただとかが記載されるのだが、やっぱりギルドカードの最大の恩恵は地図があると言う事だろう。

 地図が無いと、現在地とか目的地が分からないからね。


 ちょっとしたゲーム内の常識なのだが、海外から日本に来た場合は、どんなに高Lvプレイヤーであっても、羽田ポータルに着くようになっている。

 もちろん俺達が日本から海外に行く時も、向こうの最初の攻略場所の空港に着くのである。

 大体は首都に着くので、アメリカであれば

 ワシントン近くの空港になる。

 なので、お昼ご飯を食べている時の雑談で、俺と真司がアメリカではどんな感じなのかを聞けば、こんな感じと言いつつ8割以上埋められた地図を見せて貰い、「実は……」と言いつつ、和食さん達のLvが700〜800だと言っていたので、それを聞いた真司は「うわっちょっと廃人に入りかけてるな!」なんて言っていた。


 何故和食さん達が廃人かと言えば、上がりにくい近辺の部分も、くまなく埋まっていたからだ。


 日本なら、Lv50になると東京と隣接した県に行けるのだが、その次に隣接した県に行くまでに必要なLvは100なのである。

 大体1つの県をぐるっと回る位で100位にはなるのだが、100に近付くほど経験値が入りにくく、同じLv帯の県ではLvが100以上になると、ほとんど上がらないのである。

 だから、Lvが上がったら直ぐに次のLv帯の県に行って強いモンスターと戦うのも良いし、じっくりと同じLv帯の県を攻略するのも良い。

 俺の場合は後者かな?色々な観光地見て回りたいからね。


「って、感じだな。徒歩で行くにはちょっと遠いいから、馬かなんかで真っ直ぐ上に北上するのが良いと思うぜ。他に何か質問あるか?」


「いや、大丈夫だよ。この地図スクショにしても良いかい?」


「大丈夫ですよ」


「thank you!」


 その後、俺の地図の写真を撮り終わった和食さん達と共に1階に降り、彼等を見送りする為に俺達も外に出ていた。


「今日は楽しい時間をありがとう! とりあえず僕達も、東京の観光巡りしているから、また何処かで会えたらいいね!」


「そうね。抹茶系の食べ物があったら、いつでもいいからメッセしてちょうだい! 飛んで行くから!」


 お昼ご飯を食べている時に、「こっちの知人があまり居ないから、よかったらフレンド登録したいんだけど、いいかな?」って言われて、和食さん達とフレンド登録をしていたのだが、早速抹茶さんは有効活用をしようとしている。


「おいおい、それはお前ソロで行けよ。俺達を巻き込むんじゃないぞ!」


「何よ! 別に良いじゃないのよ?あっそうだ。なら、あなたも丼系で美味しそうなのがあったら、メッセ貰えば良いじゃない!」


「何! それは名案だな!」


「「って訳だから、見つけたら課金でも良いから連絡して(しろよ)!」」


 最初は軽く言い合っていた抹茶さんと丼さんだったが、最後に息ピッタリに俺達に詰め寄って自分の願望を押し付ける様に、俺と真司は笑い、和食さんは若干苦笑気味だ。


「あはは。俺達はゆっくり攻略しているんですけど、見つけたら必ず連絡しますね!」


「ほら、早く行かねぇと日が暮れるぞ! こっちじゃあ、夜なると妖怪も出るしな!」


「えっ!?」


「えっ?いきなりどした?」


 いっ今聞き捨てならない事を言ったような気がしたんだが……


「妖怪って出るの?」


「普通に出るぞ?こがねがそうじゃん。出るのは逢魔時と丑三つ時の間だけど、ヨシタカ、それは後で詳しく話すから、今は見送ってやろうぜ?」


「そっそうだな」


 俺の不安を感じたのか、頭をポンポンと叩かれたのを皮切りに、皆が俺の頭をポンポンしながら別れの挨拶になった。


「今日は楽しい時間をありがとう! また、今度会おう!」


「さっきの約束忘れないでねー!」


「そっちが困った事があったら、俺達を頼れよ! 駆けつけてやるからな!」


「はーーい! 和食さん達もお元気でー!」


「また、会おうなー!」


 そう言って馬に乗って颯爽と草原を走り抜けて行く3人を見送った後、俺達はまた羽田ポータルの中へと入って行った。


 とりあえず、落ち着いて話が出来る場所って事で、1階のフロントロビーの椅子がズラーーーと並んでいる所の一箇所を占領して、さっき聞いた事を確認の為に、もう一度聞いてみた。


「さぁ、ここなら落ち着いて聞けるだろ?それで、さっきの妖怪云々って何だよ?俺のまだそれっぽいの見た事ないぞ?」


 別に妖怪とかが怖いって訳ではないぞ! 急に出て来たらビックリするくらいだからな! 本当に妖怪とか怖くないぞ! 


「多分ユッキーが見た事無いのは、まだここが東京だからだよ。東京の場合だったら日が暮れてから出てくるモンスターが変わる設定だったはず。だから、まだ見た事ないんじゃないか?一応、有名所を言うとーーー」


 そう言って、真司がウィンドウの討伐一覧から検索して、出てくる妖怪や幽霊系をピックアップして教えてくれたのだが、まだ、火の玉や動物由来の妖怪や幽霊だったら、見た目があまり怖くなく可愛い系だから良いのだが、ホラー映画とコラボしたのも出てくるらしい。

 例えば「TVからこんにちは☆」や「注意! 男の子を発見したら、その近くにあいつが出てくるぞ!」である。


 TVからは、ここにTV無いじゃん! って思ったのだが、どうやら会う確率は低いのだが、ウィンドウを使用している時にノイズが走ると、あれがウィンドウから出てくるみたいで、聞いて想像したらゾッとしてしまった。

 しかも、ちゃんと井戸から這って出て来る所からである。

 だって、深夜にウィンドウを操作してたら、急にあれが出てくるって事だろ?しかもノイズが走ったら最後、強制戦闘だって言うんだから笑えない。


 その他は、こがねのように昼夜関係無いものも居るのだが、大抵はモンスターとして夜に徘徊しやすくなるみたいだ。


「ユッキー大丈夫か?」


「……何とかね」


「それじゃあ気分転換に、ここを探検しようぜ! 俺小さい頃からこう言う場所探検するの好きでさぁー! ほれ、早く早く!」


 そんな話を聞いてしまいゲッソリとしてしまったが、気を取り直して羽田ポータル内の施設を探索しようと、今日限定の「羽田ポータル探検隊」が結成した。




「まず1階だな。1階は基本的に受け付けやロビーがメインで、銀行とかもここに入ってるぜ」


 ゲーム内にも銀行はある。その役割は、リアル世界の銀行の役割とほぼ同じで、ローンもちょっとやり方は違うが、似た様なのがあるみたいだ。


 ゲーム内のローンは、一括で払う事が出来ない時に使用が可能で、アイテム毎に決まっている分割方法を選択して、決まった金額を指定の日時までに支払えばいいのだが、ここで

 支払をしないと全プレイヤーに狙われる「WANTED(賞金首)」になってしまうのだ。


 他にも賞金首になる方法はあり、後払いのお店で無銭飲食をしたり、ショップで泥棒を働くと賞金首になる。


 賞金首になってしまうと、全プレイヤーに顔写真付きのメッセージが運営から届くのである。

 賞金首になっている期間は踏み倒した金額で決まり、大きければ大きいほど賞金首としての期間が長くなり、しかも、本人(賞金首)には運営からのメッセージが届かないので、いつ賞金首が解除されるのか分からないのだ。

 ただ、フレンドからメッセージが届けば分かるんだけどね。

 あと、もう1つ賞金首になると起こるイベントがあり、それはNPCの賞金稼ぎが出てくると言う事。

 この賞金稼ぎはただただ、賞金首を狙うNPCで、普段は出て来ないキャラクターで、しかも「物凄くやばい」「最強と同じく桁外れ」と言われるくらい強いらしい。


 ちなみに賞金首の期間は最低でも10日であり、この期間を逃げ切れば賞金首が外されるが、賞金狩りやプレイヤーに討伐されると、監獄行きになり特定のクエストを受けないと解放されないとか何とか。


 閑話休題



「ゲーム内金貨はカンストするからさ、そうするとそれ以上持てないから銀行に預けるんだよ。あとは、PKに会って負けた時に金が取られるから、それ予防もあるな」


「へー、カンストっていくらから?」


「大体一億」


「あぁー999〜ってなる感じ?」


「なる感じ」


 そっと俺が所持している金額を見て見たが、全然カンストする気配が無いな。むしろカンストまで行った人達がいる事にビックリだよ。





「おっ、あったあった。ユッキーこっちこっち」


 その後、2階から4階の飲食店やショップを冷やかしながら見て回り、「あれが美味しそう」だの、「この武器どうよ! 」などと話し合いしつつ見て回っている時に、真司があるアイテムショップを見つけると、そのお店の中に入って行った。


「ここはさ、NPCショップで1つのアイテムしか売ってないんだけど、結構重要なアイテムが売っているんだぜ」


「昨日言っていたやつか! 」


 店内には似た様な形で、様々なカラーバリエーションのアイテムがズラッと並んでおり、俺は興味本位で手近にあるアイテムを見てみる。


 完全版ポータル(赤) 500.000G

 ・完全版ポータルの赤色。

 通常フィールド、ダンジョン内などのセーフゾーン、ボス部屋以外で使用する事が出来る。

 使用時の広さは、MPの量に比例する。


「たっか! えっ?何これ高いよ! 」


「いや、それが適正価格になるんだよ。他にも簡易版とか劣化版もあるけど、買うんだったらやっぱり完全版の方がいいと思うぞ?」


 完全版の近くに置いてある簡易版と劣化版も見てみると、簡易版は使用期限1ヶ月の5.000Gで、劣化版は使用期限1日で250Gであるのだが、いくら真司が完全版が良いって言っても、これ50万だぞ?と言うか、これ何に使うんだ?


「いや、何に使うか分からないのに50万はちょっと……てか、何に使うんだ?」


「んー簡単に言うんなら安地作りのアイテムだな。東京はテントがあれば、大抵のモンスは攻撃して来ないんだけど、それ以外の県に入るとテントを攻撃して来るんだよ。それで、テントの耐久値が無くなると……どうなるかは分かるよな?」


「成る程理解。次にゲーム内に入った時には死に戻りしているって訳か」


「そう言う事。俺も一応持って入るけど、俺がいない時に、外でログアウトする時に持っていないと、せっかくの攻略が水の泡になるから、1人1個は持って置きたいアイテムだな」


 何に使うかは分かったし、ゲームをする上での重要なアイテムだと言う事は分かったのだが、いかんせんお金が……


「俺、50万も持ってないぞ」


「何かお困りですか?」


 完全版ポータルをふみふみ揉みながら、現実問題金額が全然足りていないので、どうしようかと悩んでいたら、ここの店員であるダナンメイド服の女性が声をかけてきた。


「ここって、分割出来るよな?」


「はい、大丈夫ですよ! こちらを分割払いですか?」


「えっ?えっ?ちょちょちょっと待って、まだ買うか決めてないけど! 」


 いきなり真司と店員とて話が進みそうで、今俺が持っているポータルを買わされそうになったので、慌てて止める。


「そうでしか! これは失礼しました。何かご要望がありましたら、いつでもお声をお掛けください」


「……んで、ユッキーはいつまでポータルにぎにぎしてんだ?」


 一礼してレジの方へと戻って言った店員を、ホッと安堵の溜息をつきながら見つめていると、俺がまだ持っているポータルを指差しながら真司が言う。


「……いや、何か揉み心地が良くてついうっかり」


 そうなのだ。丸い球体が2つ重なった形をしているこのポータルは、何とも言えない柔らかさで揉み心地抜群なのだ。

 他にも雫型とか、キューブ型のもあるが、試しに近くにある雫型をツンツンと触ってみると、どれも同じくらい気持ちが良い! 


「癒される……ッアイタ! 」


 思わず本来の目的を忘れて、近くにあるポータルをひたすらモミモミしたり、ツンツンして癒されていたら、ズビシと頭にチョップを喰らってしまった。


「痛いなー。何すんだよ! 」


「何しているのはこっちのセリフだよ。他にも案内したい所があるんだから、さっさと選びなさい! 」


「……はい」




 俺はキューブ型の紺色を選び、1番支払が優しい1ヶ月に5万の分割払いにして、さらに、追加での返済も可能にしておいたので、どんどんクエストやモンスターの素材を売ってお金を稼がなくては! 

 追加返済は、1ヶ月に5万を払うのとは別に、お金が多目に入った時などに、追加で返済出来るシステムである。

 なので、5万、6万、5万、10万みたいに決まった金額+αでの返済が可能となる。

 今は夏休みなのでゲームし放題だが、それが終わると夜や休日くらいしかゲームが出来ないので、後々のことを考えて月に5万Gの返済にしたのだ。





 その後、ポータルの購入が済んだので、5階を飛ばして7階の屋上を見に行く事にした。

 5階の談義室は、1階の受付で部屋の内容とかを見れるので、そこでどんな部屋があるのかを確認する事にしたのだ。

 ついでに今日はここに泊まる予定なので、一緒に受付で済ませる予定だ。


「うわぁーー! 真司、見てみろよ! 空めっちゃ綺麗! 」


 屋上へとやって来た俺の目に映ったのは、太陽はもう既に、地平線の彼方に沈み見え無くなっているのだが、太陽が沈んで行った方の空はまだオレンジ色で、そこから段々と夜の色にグラデーションして行く風景であった。

 あともう少し経てば、完全に夜になるのだろう。濃い紺色の夜空には星がキラキラと輝いて見えて、ゲーム世界だからか、現実世界に比べると星の数が多いように見える。


「どうだ、綺麗だろ?今までユッキーは夜になる前にログアウトしていたじゃん?だから、こんな風景もあるって事をユッキーにも知って欲しかったんだよな」


「真司……」


 しばらくの間、屋上から見える夕焼けから、星降る夜空に変わって行く空に心を奪われていたのだが、ふと屋上に人が集まって居るのに気が付いた。

 何だが、至る所に恋人同士と思われる人達が集まって来ている気がする。

 真司が真っ直ぐ俺を見ながら言うので「ヤベェ! 真司が普通にカッコイイ! 」なんて思ってしまったが、もしや、何かに嵌められた?


「真司さんや」


「何だい?ヨシタカどん」


「俺の気のせいでは無かったら、俺たち以外のプレイヤーのカップル率が、異様に高い気がするんだけど、これは気の所為かな?」


「ふふん! ここって以外とデートスポットでさ、ほらあっちのカップル見てみろよ」


 真司が指差した先のベンチでは、2人が近距離で手を握り合ってラブラブしていたり、あっちの手摺ではああぁあぁあキッキスしてるよ! しかも大人のキスではないですか! 


「あらやだ、何赤くなってるのよ。プークスクス」


「なっ! 何言ってんだバカ! 早くここから離れるぞ! 」


 恋人同士の絡みに顔を真っ赤にした俺を揶揄う真司の手を取り、周りの雰囲気に居た堪れず一刻も早くこの場を離れるために、出口に向かって走り出した。


投稿1周年記念として、来月は番外編を投稿します。

本編早せんかい!って方は申し訳ありませんが1ヶ月お待ち下さい。


ってな訳で次回予告。

「乙女達の御腐(オフ)会」

「巻き込まれた少年のその後」


本編には登場していないキャラクターも出て来ます。


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