日本食ダイスキ!
爽やか笑顔の青年の問いに何と答えていいのか分からず、青年と真司の顔をチラチラ見ていたら、隣に居た真司が「ハァ〜」と溜息を吐いた後、一歩前に出る。
「教えるのはいいんだけどさ、先に飯食わして貰っていい?そろそろ体力が半分切るんだよね」
真司は外人さんでも、なんのそのこれしき!って感じで普段通りに対応している。
俺だったら無理だな。たとえ相手の日本語がペラペラだったとしても身構えてしまうだろう。
「あぁ、そっか!こっちだったら、ちょうどお昼ごろなのか!……何だったら、僕達も付いて行くから、一緒に食べようよ!それに、僕達社会人だから教えてもらう代わりに、君達2人の分は奢るよ。ゲーム通貨でも課金でも大丈夫だよ!」
「おっ?マジで?だったら、その提案「あっと、ちょっと待って下さい!」
「ん?何だい?」
外人さんの提案に、ノリノリな真司を止めて重要な事を話さなければならない。
ここに居るのは俺と真司だけでは無く、俺と真司の4倍の数の従魔が居るのである。
この事を話さなければ、大変な事になるだろう……と言うよりも、ここまで俺にベッタリな灰白さん達に、気付かなかったのだろうか?
「俺達だけじゃないんです。この灰白さん達も仲間なんです!」
「ワフ」
灰白さんの頭に、ポプンと手を置きながら紹介すると、青年以下2名の目がキラキラして居る。
「えっと、君テイマーなの?」
「あっはい。そうです」
「本当に君テイマーなんだね!フゥーーーー!」
俺がテイマーである事を肯定した瞬間に、青年はガッツポーズを取り、上半身を使って上下運動をしだした。
えっ?大丈夫か、この人?真司と同じ人種ですか?
「ちょっと、何してんのよ!早くしなさいよ
ね。このっバカ!」
「あっイタ。ちょっと、抹茶止めてよ!分かった分かったから!ちょっと待っててね。仲間と相談するから」
1人テンションが高い青年に、女性が「このっバカ!」の部分で肩パンを食らわして、少し俺達と距離を取り、外人さん3人でヒソヒソと相談しているようだ。
ならば俺もひっそりと、真司に質問してみる。
「なぁ、真司さんや」
「何だい?ヨシタカドン」
「あの人達って、別のサーバーから来た人達だよな?めっちゃ日本語上手くてびっくりしたわ」
「多分そうだろうな。ただ、日本語が上手いかは分からん」
理由を詳しく聞いてみると、日本以外にもアメリカや中国、ヨーロッパなどなど様々な国で遊ぶ事が出来るこのゲームでは、他のサーバーへ移る際に、自分が喋る言葉以外の文字や言葉は移った方の言語になる。
なので、ウィンドウや宿屋のメニューなどでは、外国語表記は一切無いのだ。
一見不親切の様にも感じるが、「awo」に参加している国の種類が多いので、いちいち全ゲーム内の表示変更機能を付けるよりかは、プレイヤー個人のプログラムを変更する方が、設定上楽なのではないかと言われている。
それに、いくら外国語表記がしてあっても、俺みたいに日本語以外アウトなプレイヤーもいるはずなので、どっちみち翻訳機能が無いと、その人達との意思疎通を図る事が出来ないのだ。
ゲーム内なので、翻訳機能を付けたら文字は一瞬で切り替わるし、こっちは普段通りに喋っているのに、相手には翻訳された言葉で聞こえて、相手も普段通りに喋っているのに、こっちには翻訳された言葉に聞こえる。
俺で例えるのならば、俺がアメリカに行った場合で俺が日本語で話していても、アメリカ人には英語で話している様に聞こえて、アメリカ人が英語を話しているのに、俺には日本語で話している様に聞こえるのだ。
なんとも便利な機能で、現実世界でも応用出来ないのかな?出来るのならば、外国語の勉強しなくて済むしな!
なので、俺が言ったように、自身の努力で日本語がペラペラの場合があるかもしれないが、それとは違い、課金アイテムの翻訳機能を付けている可能性があるのだと言う。
翻訳機能は日本円で月1.000円で、年間購読にすると、10.000円になる。
羽田ポータルから海外のサーバーに移る際に、受付で翻訳機能を買う事が出来るのだが、これは日本だけの話なので、海外では幾らになるか、行ってみないと分からないみたいだ。
一応、だいたいどの国も1.000円位で多少上下する。
もちろん、羽田ポータルだけでなく、日本国内の全ポータルでも購入出来る。
「それ関係の掲示板とかに載っているのかもしれないが、日本から出るつもりはないから知らん!」って、真司は言うので、俺もそれに同調していると、相談が終わったのか青年達がこっちに向かって来た。
「いやぁ、ごめんごめん!僕達の周りでテイマーが居なかったからさ、つい興奮しちゃったよ。自己紹介が遅れたけど、僕はアメリカ出身の和食だよ。こっちが抹茶でこいつが丼」
紹介される時に、抹茶さんは俺達に「ハ〜イ!」と投げキッスをして、丼さんは「ヨッ!」って片手を上げて挨拶してくれたので、今度はこっちが自己紹介をする番だ。
「俺は真司。こっちがヨシタカで、ここら辺の従魔は全部こっちのだから」
「ヨシタカです。えっと、ここにいるのが灰白とこがねと夜空と真白。こっちの雀達が紅緒と露草とさえずり。それでこの2羽が濡羽としじまです」
「やっぱり私もテイマー取ろうかしら?貴方の可愛いわね!」
それぞれを指差し紹介する時に、「ワン!」や「チュン!」と鳴いてアピールしているのを見ていた抹茶さんが、灰白さんを猛烈に撫でくりまわし始めた。
向こうでは、まだテイマーを使用しているプレイヤーが少ないらしく、また、使用出来る戦闘スキルが日本と少し変わっているのだと言う。
こっちでは、戦闘スキルの銃を解放するのに色々と手順があるのだが、さすがアメリカは銃社会なので、最初から選択肢に入っているのだ。
その代わりに戦闘スキルの刀が入っていないみたいで、彼の友人の刀愛好家は、「何故、こっちだと刀が無いんだ!日本にはあるんだぞ!もういい、俺日本に行くから!」って、今こっちの何処かにいるみたいなので、そんな彼を探すのも今回こっちに来た目的でもあるのだが、最大の目的と言えばこっちであった。
「アハハハハ!見てよこれ、おかゆの中に人の顔が入っているよ!僕これ知ってるよ。おかめって言うんだろ?」
「おぉ、見てくれよ!天丼、海鮮丼、親子丼それにまだ俺が食ったこと無い丼があったんだぜ!おいおい、日本よ!俺に丼以外食わせない気か!」
「あぁ、素敵!こんなにも抹茶のデザートがあったのね!見た目も綺麗だしどれから食べようかしら?」
彼等の名前を見てピンと来た人がいるのかもしれないが、名前の通りそのまんま日本食が大好きな人達あり、自分が好きな食べ物を、ゲーム内のキャラクターの名前にするほどの人達であった。
現在俺達が居るのは、2階のフードコートのような場所で、建物の壁側に各種様々な店舗があり、線で仕切られた円の中に飲食スペースがある。
仕切り線と店舗はだいたい2〜3メートル程の距離が開いているので、多少の行列が出来ても人が歩けるスペースが出来ている。
店舗も和食、中華、洋食、カフェなどに分かれており、そこから更に細かく店舗ごとに分かれている。それと、俺達は入れないのだが、3階にはバーと居酒屋が入っているみたいだ。
自己紹介を終えた後、早速昼食を食べる事になり、和食さん達がそれぞれのお昼代を奢ってくれる事になった。
俺と真司と灰白さんを和食さんが、こがね、濡羽、しじまを抹茶さんが、真白と雀達と夜空を丼さんがご馳走してあげると言う。
「テーブルはこんなもんでいいだろ?」
それで、2階のフードコートにやって来たのだが、最初に4人〜6人掛けのテーブルをくっ付けたりして、全員が座れるスペースを確保してから、トレイの持ち運びが出来ない灰白さん達を、場所取り要員として残しておく。
「そうだね。それじゃあ、行列店とかもあるだろうし、ここに戻って来た順に食べようか?皆もそれで良いかな?」
和食さんの提案に、皆賛成である。
お店によっては行列が出来ていたりするし、それに分類はされているが、一通り何を売っているのかを確認してから決めたいので、各自戻ってきた順に食べる事に決まった。
「おう、それでいいぜ!丼が俺を待っているんだ!もう、行っていいだろ?」
「あんたってやつは…」
「それじゃあ行ってくるから、場所取りよろしくな」
「ワフン!」
「お任せを!」って感じに吠えた灰白さん達を残して、全員で買い物に行って戻って来たという訳だ。
戻って来た順は和食さんグループ、丼さん、抹茶さんの順番である。
俺達が選んだのは、真司が「ここ!ここオススメ」って言った場所で、某あぶらとり紙のあのイラストがおかゆに描かれているのだ!
おかゆが入ったお椀の蓋を開けて、中身を見た和食さんはさっきから大爆笑であるが、残念ながら、それはおかめではないのです。
抹茶さんが選んだのは、やっぱり抹茶系の食べ物で、お昼ご飯と言うよりかは、もはやデザートであるが、こがね達にはちゃんとお肉がメインの昼食を買って来てくれていた。
デザートで抹茶系を売っているお店をハシゴしていた様で、この中では、戻って来るのが1番遅かった。
丼さんが選んだのは、こちらもやっぱりの丼であり、大きな身体なのでよく食べるのだろう、丼定食を3つも買って来ていたので、お味噌汁や漬物がダブっている。
「ワン!」
「そうだね。それじゃあ、俺達も食べようか。頂きます」
灰白さんは、俺の合図があるまで待ての状態で待機していたので、許可を得たら一目散に器に顔を押しつける様にして食べ始めた。
灰白さんは俺と同じおかゆなので、お椀に入っているおかゆを舐めとる様に食べ進めて、時々俺の足にテシと前足を乗せては、小鉢に入っている味変の梅干しなどを指定するので、それを入れてあげる。
真白と雀達と夜空は、真白と雀達が同じのを食べているのだが、食べているのは旬の野菜たっぷりの天丼であり、夏野菜であるピーマンやナス、アスパラにインゲン。そして、大きな海老がドーーーン!と中央に乗っかっている。
雀達は基本お米大好きなので、顔の至る所に米粒が付いていて大惨事になっているが、本人達は気づいていない。
真白はそんな雀を無視して、野菜の天ぷらを両手で器用に持ち食べている。
「海老天食べる?切り分けようか」
一向に海老天を食べる様子が無いので聞いてみると、4匹共顔をフルフル降って拒否したので、この海老天は俺が美味しく頂きました。
ついでに雀達の顔に、ご飯粒が付いている事を伝えた。
「ブルフフフン」
「ちょっと待ってな……はい、これで足りるか?」
真白達と同じ天丼を食べていた夜空には、ちょっぴり足りなかったらしく、お代わりを所望されたので牧草を、普段使っている夜空専用のお皿に入れてあげる。
こがねと濡羽としじまが食べているのは、牛タンと卵かけ御飯で、最初に卵かけ御飯を作ってあげると、こがねが俺に「ギャウギャウ!」言うので何かな?って思ったら、どうやら牛タンを一切れお裾分けしたかったみたいだ。
なんていい子や!
ちなみに、濡羽としじまは同じのを時々喧嘩をしながら食べていて、同じ肉の両端を嘴でグイーーー!っと引っ張り合っている。
量的に一人前の半分個位が2羽にとって、ちょうどいい量になるので、喧嘩をしているみたいだが、本気では無いので、このままでいいのだ。
何となくこの2羽は、悪友とかそんな感じの雰囲気なのだ。
「ご馳走様でした」
「いいえー。それにしても、テイマーって大変だね」
「そうですかね?何だかもう慣れちゃいましたし、プレイヤー同士のいざこざは無いので気楽ですよ」
「なるほどねー」
お昼ご飯の始まりから終わりまで、俺が灰白さん達のお世話をしていたのを見ていたみたいで、和食さんから苦笑されながら言われたのだが、なんだか言ってこの状況には慣れているので、それほど大変だとは思っていない。
前にやった事のあるオンラインゲームでは、効率厨、暴言や妨害、寄生虫と言ったプレイヤーとかが居たので、プレイヤー同士のいざこざやギスギスした雰囲気とかは皆無な、灰白さん達の方が無条件で俺の事を信頼してくれているので、俺としてはこっちの方が随分と楽なのである。
そのゲームは有名タイトルだったので買ったのだが、俺の性には合わなかったので、しばらく遊んでみたのだが、やめてしまった。
それに、俺の知り合いって言ったら真司を除けば、舞姫さん達のような高Lvプレイヤーだろ?あとは、スノウ達の女の子のグループ。あとは、リリ家のメンバーだし、一緒に回るのはちょっと……舞姫さん達には何か悪いし、女子のグループや家族の中で遊ぶのは、中々の勇気がいるのだ。
たまにだったら良いんだけどね。
あっ、そう言えばキース君はソロプレイしていたみたいだけど、今何処に居るんだろうか?
「そんじゃあ、奢ってもらった代わりに今度はこっちの番だな!」
ふと考え事をしていたが、そうだった。そんな約束事をしていたんだっけ。
羽田空港のレストランにはいろんな店があるんですね(笑)
調べているうちに、例のお粥を発見したので、ヨシタカ達に食べてもらう事にしました。
私は、画像を発見した時吹き出したので、興味ある方は是非見てください!




