アリアちゃんの本気!
書き方を変えてみましたが、どうでしょう?見やすくなったでしょうか?
「きゃー!たかーい!」
「アリアちゃん!危ないから両手を離さないで!」
俺達はなんとか無事に羽田ポータルに到着する事が出来た。
それで、今何をしているのかと言うと、前にアリアちゃんと約束した乗馬体験をしている真っ最中なのである。
アリアちゃんを鞍の前の方に乗せて、俺が後ろで補助をしつつ適当に楕円形を形作るようにクルクルと回っている。
ただ回っているだけではアリアちゃんが飽きてしまうと考えたので、障害物もないのに、時々ダッシュやジャンプを織り交ぜているのだが、ジャンプの時にテンションが上がったアリアちゃんは、バンザーイの格好でキャッキャと楽しそうにしていて、こっちとしては落馬するのではないかと、ハラハラしっぱなしである。
そんな中、灰白さん達が何をしているのかと言うと、俺達が回っている円の中で日向ぼっこを満喫したり、欠伸をしてウトウトしていたりと、各々がのんびりとした時間を過ごしている。
結局、セーフゾーン内に全員無事に到着する事が出来た訳だが、濡羽としじまだけがちょっぴり擦り傷を負った位で、他の皆はノーダメージでクエストをクリアしたのだが、今の所、護衛クエストの報酬は貰って無く、到着後すぐに報酬を貰えるのかと思いきや、どうやらアリアちゃんのお願いであった、【夜空に乗馬】までがクエストの範囲内だったみたいで、「それが終了したら報酬を出そう」と、大司教様に言われてしまったのだった。
そんな俺達を眺めつつ、祖父馬鹿と化した大司教様とモフモフお馬鹿さんは、教会の付き添いである2人と一緒に、仲良くお茶を楽しんでいるようで、俺だけがクエストクリアのために翻弄されているのだ。
ちっくしょう!
俺だけ、ハラハラする追われてた一難が去ったのに、今度は別のハラハラが来たよ!
アリアちゃん、危ないから夜空の上でピョコタンピョコタンとジャンプしないで!
「お兄ちゃんありがとー!夜空もありがとー!」
しばらくアリアちゃんのお願いに付き合ってあげると、十分満足出来たようなので、アリアちゃんを夜空から下ろ、大司教様の元へと連れて行った。
「おじいちゃん!すっごくたのしかったー!」
「フォフォフォ、それは良かったのぉ。いやはや、わし共々随分世話になったの。では、これが報酬じゃ。受け取れ」
おじいちゃんにダッシュして抱き着いたアリアちゃんを、デレッデレな顔で受け止めた大司教様は、そのままデレッデレの顔のままで俺達に向けて言い、報酬を受け取った。
受け取った護衛クエストの報酬は経験値、報奨金、スキルポイント、そして今回、クエスト報酬の1番の目玉である1枚の許可証を受け取ったのである。
「その許可証は、僧侶、または付与術師を伝授する際の用紙でな、修得したい方を記入して教会か寺院へ持って行くと、そのスキルを伝授する事が出来るのじゃが、他者へ受け渡したりした場合は、その許可証が無効となるから注意するのじゃぞ!」
「アリアもお兄ちゃんたちにプレゼント作ったんだよ!お手てだしてね。はい、これ!」
そう言って俺の手の中に、大量の花冠と指輪サイズの花輪を渡して、真司にも指輪サイズの花輪を手渡していた。
「では、さらばじゃ。主らに神の御加護があらん事を」
「また、あそぼーねー!」
別れ際、アリアちゃんは灰白さん達にそれぞれぎゅっと抱き付いてから、大司教様に手を繋がれて、空いている方の手をブンブンと振っていたので、俺と真司も手を振りながら去って行くのを見届けた。
「よし、これで次に向かう場所が決まったな!あと、アリアちゃんは加護持ちっぽいなぁー」
大司教様達が乗った馬車の姿が見えなくなったので、羽田ポータルの入り口へと向かいながら、チケットサイズの紙をヒラヒラさせながら真司が言ってきた。
「ん?加護持ちって何だ?ゲーム用語なんだよな?」
「そうそう。加護持ちってのは、ユッキーのようなユニークスキルの事だよ。プレイヤーはもちろんNPCもユニークスキルを持っているのが居るんだよ」
「えっ!そうだったの?」
「んで、正式名称はユニークスキルって呼ぶんだけど、長いから、加護持ちって略される事もあるんだよ。ほら、ちびっ子に貰った指輪見てみろよ」
すでに自身の薬指に付けた花指輪を見せつけながら言ってきたので、俺も手の中に大量にあるのを鑑定してみると、これまた凄い事が書かれていた。
「白花の指輪」×1
・アリアちゃんお手製の、白い小さなお花で
作られた指輪。
装備している間、ちょっとだけいい事が起こりそう。
「白花の花冠」×9
・アリアちゃんお手製の、白い小さなお花で作られた花冠。
装備している間、一度だけHPが0になった後に、全回復して復帰する事が出来る。
と書かれていて、アリアちゃんの動物愛が凄まじいほどに溢れているアイテムであった。
それが2種類の全10個。
もちろん俺が指輪で、灰白さん達が花冠のはずだ。個数的に。
「チュン」
「(フォォォォ!早速良い事キターーー!)」
何が起こったのかと言えば、さえずりが真司の頭の上にちょこんと座り込んだのだ。
普段ならそんな事しないのに、この指輪の効果なのだろうか?
だとしたら、恐るべしアリアちゃんの本気!
そして、ヨダレは拭こうぜ、真司!
「…ふと、思ったんだけどさ」
「うん?」
「これって加護持ちじゃ無くても作れるんじゃないのか?武器とか防具とかと似たような感じだろ?」
そう、チャンさんの様に武器や防具を作れるのならば、この花輪の様な装備品も作れるのではないかと思ったのだ。
「あー…いや、同じ花輪は作れるぜ。もちろん。ただ、これと同じ様な性能にはならないぞ?だってこれの素材、雑草だもん」
「ん?どゆこと?」
どうやら、俺は勘違いをしていたみたいで、真司曰く、基本的に効果が付くアイテム類は、元の素材になっている物の効果が反映されているのだそうで、例えば俺が着ている一式防具だと、飛びウサギの素材が使われているので、飛びウサギの高い防御力の性能がスキルとして防具に反映されるのだ。
それ以外にスキルを追加するのなら、付与術師のスキルで、スキルを付与しなければならないのである。
なので、元の素材が雑草であるこの花輪は、仮に俺が作った場合だと、
「白花の花輪」
・ヨシタカお手製の、白い小さなお花で作られた花輪。
少し形が歪
に、なるのだと真司は言う。
うるせーやい!少し形が歪って何だよ!ちゃんと綺麗なの作るわ!
それはさておき、せっかく作って貰ったアリアちゃん渾身の力作を灰白さん達に装備させつつ、真司にお金を渡したりしているうちに、羽田ポータルの中へと入って行た。
ちなみに、今回貰った報酬の内容はこんな感じだ。
経験値はそのまま経験値で、これの数値が上がって行くほど行ける範囲が広がって行くので、隣の県に行くための四獣討伐目標値であるLv50になるまでは、東京の観光地をブラブラする予定だ。
報酬金は、全額で82.500Gで俺が8万G近く貰ってしまっているので、半分真司に渡したのだ。
テイマーである俺の場合、灰白さん達がプレイヤー枠に入ってしまうため、従魔の分は全部、俺の所へと来てしまうのだ。
これがテイマーとサモナーのデメリットであり、理解あるプレイヤーじゃなければパーティに入れてもらえなかったりする部分なのである
なので、そんな事しなくてもいいと言われていたのだが、こちらが頑として聞き入れず、真司に折半するように言ってあったのだ。
その代わりと言っては何だが、真司が灰白さん達に何かを買ったり、奢ったりする際は、お礼として、真司から避けないでモフモフさせてあげなさいと言っている。
元々今回の報酬は1人5.000Gであったのだが、アリアちゃんのおねだりで1.5倍の7.500Gになったので、本当にアリアちゃん様々である。
スキルポイントは通常のクエストでは入手する事が出来ず、入手するにはLvを上げれば2ポイントが必ず入り、今回のようなイベントクエストを攻略するか、闘技大会のようなイベントの上位入賞。あとは、天国や地獄の名有り(天使・神・悪魔・魔王)のモンスターを討伐しないと入手する事が出来ない。
今回貰ったスキルポイントは7ポイントで、東京の場合は基本的に貰えるポイントが1〜5なので、アリアちゃんのおかげ2ポイント分多めに貰えた事になる。
余談ではあるが、つい最近唯さんが掲示板に驚きの情報をぶち込んだのだ。それは、スキル「天地双界」の必要スキルポイントで、なんと驚きの500ポイントだって事で、しばらくの間プレイヤーの達の阿鼻叫喚が立ち込めたとか何とかだったそうだ。
どれくらい凄いのかと言えば、他のスキルの場合で「戦乙女・闘神」「武芸者」の必要スキルポイントが共に250であるのだから、その入手難易度がよくわかると言うものだ。
最後は、このチケットサイズの許可証である。
「特別戦闘スキル許可証(僧侶・付与術師)」
・特別戦闘スキルの僧侶または付与術師の
許可証で、特定の場所に持って行けば、選択したスキルが解放される。
表と裏に必要事項が書かれていて、表の上の方に俺の名前が、真ん中は(僧侶・付与術師)と書かれており、どちらかを選択する様だ。
そして、その下の所には大司教様のサインが書かれている。
裏を見れば、そこには使用方法と禁止事項が載っていて、使用方法はさっき大司教様が言った通りで、日本にある教会、または寺院に持って行けば、使用可能と書いてある。
禁止事項は、他のプレイヤーに受け渡し・売買行為禁止と書かれている。
とりあえず大切な物なので、無くさないようにポーチの中へと仕舞っておいた。
以上が、今日の護衛クエストで貰った報酬である。
「それで、次に向かう場所って何処になるの?始まりの町に戻る感じ?それとも雷門?」
どこの教会・寺院でも有効と書いてあったので、俺が行った事のある場所を言ってみるが、真司はノーと左手を振る。
「いやいやいや!東京で1番有名な寺院って言ったら明治神宮でしょ!とりあえず、先に飯食いに行こうぜ。腹減ったー!」
「あーそうだった。うっかり忘れてたけど、どこの食べるの?俺現金あまり無いから、課金系のは無理なんだけど?」
「そうだな。俺も久しぶりに来たし、全部の場所把握してないから、あそこの案内板でも見るか」
と、言う訳で昼飯を食べる事にしたのだが、羽田ポータルの中は広く、入り口近くに設置されている案内板を見て見ると、羽田ポータルは7階建となっている様だ。
俺達がいる1階は受け付けやコンビニ系列の売店などが並んでおり、2階には飲食店、3階から4階には武器や防具、アイテムなどの売店が入っていて、5階が大小様々な談義室になっている。そして、6階が宿泊施設で7階が屋上である。
「基本的に2階の飲食店のここからこのエリアが課金系の店だから、行くとしたらここら辺かな?あっでも、ここのユッキーに見せたいんだよな。…でも、灰白タン達連れて行くと破産するし…」
ブツブツ何かを言っている真司にお店選びは任せて、始めて来た羽田ポータルをぐるっと見渡して見る。
1度空港へ行った事のある人や、ニュースを見ている人ならわかると思うが、受け付けには長蛇の列が出来ていたり、あちらこちらに行き交う人々がいたりと、そんなイメージ通りに、ここでも似た様な感じで、お店がたくさんあり行き交う人々も多く、ちらちらと周りを伺うとある違和感を感じた。
いや、リアルの空港であるならば普通の事なのだがと、そんな事を考えていたらポンポンと肩を叩かれたので後ろを振り向くと、そこには金髪碧眼の好青年が立っていた。
「すいません。少しお伺いしたい事があるのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」
「へっ?」
「ん?」
流暢な日本語を話すこの青年の外見は、どこをどう見ても外国人さんである!
さらに、その彼の後ろには黒人でザ・ボブ!って感じの人や、ボン・キュ・ボンなナイスバディの姉さんもいる!
「僕達、これから始まりの町へ行きたいのだけど、こっちの地図を持ってなくてね。どこで貰えるのかな?」
そう言って、乙女ゲームに出てくる男性キャラクターの様な、爽やかスマイルを出しながら、俺達に訪ねて来たのであった。




