チーム鳥!
「うぅん…暑い」
10時頃にログインした俺が、1番最初に思ったのがこれである。お腹の上に真白と雀達が乗っかっており、両腕と体の間に灰白さんとこがねが、ピタッと引っ付いて寝ていると言う事は、毛皮が密着していると言う事で、見た目も相まって暑いのである。
これが冬場など、寒い時期なら大歓迎だなぁと思いつつ、お腹に乗っかっている分を退かして立ち上がる。
退かしている間に、俺が起きた事に気が付いた皆が起き始めて毛繕いをし始めた。
「皆、おはよう。さて、真司は来ているかな?」
今日の予定をざっくりと説明すると、雷門で馬を買いに行ってから、始まりの町に戻ってチャンさんの所でこがねの分の装飾品を買い、その後真っ直ぐ南下する予定である。
なので、最初の雷門までは真司と相乗りさせて貰うつもりなので、フレンドリストで真司が来ている事を確認してから外に出る。
「よっす!俺達が最後っぽいな。これは舞姫からだ」
真司に言われて辺りを見渡すと、確かに俺達以外のテントは無くなっている。
昨日の掲示板で、他の皆は8〜9時ごろに来るみたいな事を言っていたので、人が居ないのはしょうがない。
ただ、昨日まで所狭しとあったテントが無くなり、川辺は広々としているので少し寂しく思いつつ、皆起きるの早いなぁーと思いながら、舞姫さんのお弁当を真司から受け取り、朝食を食べてテントを片付けた。
舞姫さんから貰ったお弁当の中身は、鮭と梅干のおにぎりが各1つずつと、唐揚げとと卵焼き、それに柴漬けが少しと、これでビニールに梱包でもされていたら、コンビニにも売ってあるようなラインナップであった。
今回は葉っぱに包まれている。
ちなみに、昨日出た夕飯は昨日のうちに全て食べ尽くしてしまっている。
「とりま、最初は雷門だろ?んで、次にチャンの店で良いんだよな?」
「むぐっ…そう。付き合って貰って悪いな」
「良いって事よ!パーティの組み合わせはどうする?」
朝食を食べつつ、真司がこの後についての確認を取ったので、初心者の俺に付き合わせて悪いと謝ると、ウィンクとサムズアップをして応えてくれた。
「さて、それでは雷門へ向けてしゅっぱーつ!」
今回のパーティ編成は、俺が真司の馬に相乗りさせて貰う事になっているので、俺を外せば、ちょうど残りの従魔達が6匹で1パーティ分になると言う事で、テイマーなのに従魔無しの状態で雷門へと進む事となった。
「うはっ!この場面見たら舞姫とか喜びそうだよな」
この場面とは、俺が真司の後ろで馬に跨り、腰を両手でギュって抱いている状態だからだろう。しかし、走っている馬にバランス良く乗るには、これ以外にどうしろと言うのだ!
「何馬鹿な事言ってんだ!「イタっ!」それじゃあ、灰白さんをリーダーとして無理しない範囲で頑張ってくれ!」
真司の頭を軽く叩き、俺を見上げつつ並走している灰白さん達に、進む際の注意をする。
「ワン!」
まるで「お任せを!」とでも言うように、灰白さんが吠えたあと、俺達を左右で守れるように、こがねと挟み込むような並びになった。
真白と雀達は長距離移動が苦手なので、それぞれ半々になるように分かれて、背中に便乗して移動していると、前方から何かが接近して来た。
「前方11時の方向からウルフ2接近!距離およそ100!」
「ギャウ!」
左を並走していたこがねが迎撃に向かって行き、絡み合う様にウルフに突撃をしつつ雷撃で攻撃し、ぶつかり合う前に背中降りた真白とさえずりが、残っているウルフに対して総攻撃を繰り出した。
とどめはウルフの下に回り込んでからの、急所である腹部に強烈な蹴りを繰り出した真白
の攻撃と、ウルフの首元に噛み付き窒息死させたこがねが、討伐し終わると「今の見てたー?褒めて褒めてー!」と言うようなテンションで戻って来た。
それと同時に、俺の所へ討伐アイテムが送られて来た。
今回は、雷門に着くまでの間にモンスターが出たら、俺と真司は何もせずに灰白さん達で倒してもらう事になった。
理由としては、真司が所有している馬は戦闘が出来ないからで、いちいちモンスターに会う度に乗り降りをするよりも、灰白さん達に倒してもらう方が早いのと、今後似たような場面が出る事もあるのでその慣らしも兼ねている。
それに、平原に出るモンスターはそこまで強くなく、さらに群れても2〜3匹程度なので圧勝出来るだろうと真司が提案したのである。
ただ、これは東京のみであり他の県では一段階強いモンスターが出てくるのだと言う。
とりわけ東京はプレイヤーの慣らしも兼ねているみたいで、様々な要素がプレイヤーに有利に働くものや、他の場所では適用されている規定も無いのだとか。
例えば、ボス系モンスターの討伐やクエストなんかに人数制限があったり、特定の補助スキルや戦闘スキルを使っていないと受注出来ないとか、あとはアイテム使用禁止などなどである。
そんな事を移動中に真司から説明されて、あっと言う間に雷門まで到着してしまった。
「それじゃあ、ここからは徒歩な」
町の中では、乗馬しながらの移動は出来ないので俺達は徒歩で雷門乗馬クラブへと向かった。
「おや?あんちゃんじゃねぇか!今日はどうした?」
大きく円を描くように作られた柵に向かうと、顔馴染みのコザックさんが俺に気付き、手を振りながら近づいて来てくれた。
ついでに柵の中にいる馬達も近づいて来た。
「今日はここの馬を買おうと思ってて、夜空ってまだ居ますか?」
「おう!おーい、夜空ー!」
コザックさんに呼ばれた夜空は「はーーーい!ヨシタカしゃーーーん!」って言ってそうなテンションで、尻尾をフリフリしながら俺達の所へと向かって来た。
「相変わらずモテるなー」
そう言って真司は近くにいる馬を撫でながら、ニヘラニヘラした顔をしていて、若干灰白さん達や馬達に「えっ?変態ですか?」って、引かれている。
「そうだな!これだけ馬に気に入られれば、俺達の言う事を良く聞きそうだから、世話が楽になるだろうな!」
「あはは!群がって来ちゃうんで逆に仕事の邪魔になるかも知らないですよ?」
「それはそうと買取だろ?道具込みで50.000Gだ!」
「はい、大丈夫です。お願いします!」
「ワオーン!」
「おっ!灰白さんも仲間が増えるのが嬉しいのか!」
灰白さんが一声吠えた後、ウィンドウに、馬を買い取るかどうかの表示がされたので、はいを押すと同時に俺の所持金から50.000Gが引かれて、新たにメッセージが表示された。
『夜空がテイム出来ます。テイムしますか?』
『鴉がテイム出来ます。テイムしますか?』
『梟がテイム出来ます。テイムしますか?』
「ん!?」
「おい、どうした?」
見間違いをしたのかと、目をギュッと瞑って
両目ともコシコシ擦った後に、もう一度見てもウィンドウの表示は相変わらずで、どう言う事なのかと呆然としつつ考えていたら、一向に夜空をテイムしない俺に疑問を持った真司が、心配して俺の側に寄り肩を揺さぶって来た。
すると、何処かからかバサバサバサっと羽ばたく音が近づいて来て、1羽のカラスと、スーーと音も無くやって来たフクロウが柵にストッと着地して、「カァーー!」「ホーー!」と、同時に一鳴きして俺の前に現れた。
「あれ?俺これデジャブ」
「…奇遇だね。俺もだよ」
「ん?どうしたんだ、お前ら?」
「ワン!」
コザックさんはキョトンっとしているが、こうなってしまったであろう原因の灰白さんを2人でジトっと見ても、本人の灰白さんは、胸を張ってドヤァ!と高らかに吠えた。
「なんで、昨日別れてすぐに馬以外に2羽もテイムしたんだよ!ウケるな!」
「面白くないですよ!ここまで来るの大変だったんですよ!」
チャンさんが言う通り、俺は夜空と共に鴉と梟もテイムしたのである。
ステータス
夜空(ホース)Lv10
体力100 満腹100
攻撃力120
防御力100
耐性
火0 水0 雷0 氷0 龍0 聖0 闇0
スキル
体当たり 突進 蹴り上げ 踏み付け 根性 ダッシュ
防具
無し
馬
類稀なる根性の持ち主であり、自身と同等かそれ以上の重さを長時間移動する事が出来るため、重宝されている。
また役割も多く、戦闘用、移動用、農業用など様々である。
ステータス
濡羽(鴉)Lv11
体力97 満腹80
攻撃力90
防御力100
耐性
火0 水0 雷0 氷0 龍0 聖-10 闇15
スキル
嘴撃 回避 爪撃 拾い食い お金大好き
防具
無し
鴉
朝方や夕方によく見かける黒い中型の鳥。
仲間意識と警戒心が強く、味方になると敵が接近した際に知らせてくれる。
多少腐ったものでも平気で食べる。
光物が好きなので、たまに拾って来る事がある。
拾い食い
適当に落ちている食べ物を食べた際に、一部のステータスが上がる。
お金大好き
落ちている光物を集める事が出来る。
お金、鉱物、宝石などを低確率で入手する事が出来るが、大抵はゴミである。
ステータス
しじま(梟)Lv11
体力100 満腹90
攻撃力100
防御力90
耐性
火0 水0 雷0 氷0 龍0 聖0 闇0
スキル
嘴撃 回避 飛翔 爪撃 隠密 暗殺
防具
無し
梟
鋭い嘴と爪を有した猛禽類で、暗闇の中でも移動する事が出来るので、暗殺者などと呼ばれている。
夜道で会う際は背後に気をつけるべし。
耳の様な羽がチャームポイント。
隠密
移動する際に発生する音を、極限にまで減らす。
暗殺
敵が気づいていない時に、急所を攻撃した場合クリティカルヒットとなり、その一撃で全HPを奪う事が出来る。
ただし、自身よりも相手のLvが高くなる毎に失敗しやすくやる。
以上が、新しく俺の従魔になった夜空と2羽のステータスだ。
濡羽は、そのまま見た目にちなんで名付けて、しじまは静かに飛行する事から関連付けて名付けた。
それぞれにチャームポイントがあり、夜空は
全身が紺色で、つぶらな瞳とクルンってカールしているまつ毛が可愛らしく、濡羽もつぶらな瞳をしており、あとはトテトテと歩いたりぴょんぴょんと跳ねる仕草が何とも言えず可愛らしい。しじまは鋭い眼光で、濡羽よりもずんぐりとした体型だが、頭にぴょこんって耳の様な毛が生えているので、そこがギャップとなっていて可愛く思える。
「ここに来るまでにパーティ決めでもめてもめて」
「なんじゃそりゃ?何があったんだ?」
そう、合計で従魔の数が9匹になり、俺と真司を合わせると11人分になる。
なので、パーティ編成をする時も大変だったのだ。
雷門から少し離れた後、俺達はパーティ決めの相談をしていた。いかんせん予定していなかった事態になっているからである。
「俺は夜空に乗るから、必然的にあと4つ分しか空きが無いけど、どうする?」
「いっそここまで鳥系が居るんなら纏めちまえば?」
ちょうど雀達と濡羽、しじまを合わせると5羽になる。
「けど、真司はどうするんだよ?」
「えっ?今度はユッキーの後ろに乗させてもらおうかなって!ちょっとやりたい事もあるしな!」
「えー!けど、雀達はどうするんだよ?長距離飛べないぞ?」
おそらく、鴉と梟は気流に乗ってしまえば長距離は飛べそうなので、ここでは話題にしない。
「夜空の空いているスペースとかに乗ってもらえば大丈夫だろ?濡羽としじまも疲れたら適当に休むだろ?」
と、言われてしまえば特に反論も無かったので鳥だけのパーティが出来た。
「良し、そうと決まればって…しじま何処だ!」
「あれ?マジだ!何処行ったんだ?」
俺達がパーティの編成で相談している隙に、しじまがいなくなってしまった!
探しに行かなければ!って思っていた時に、ウィンドウにモンスターを討伐したメッセージが届き、それと同時にスサーーとしじまが帰って来た。
「ホーー!」
帰って来たしじまはドヤァと鳴いて、鞍の後ろにちょこんって座り、空いているスペースに濡羽も収まる。
雀達はそれを見て、前の空いているスペースに3羽共収まった。
どうやら、鳥同士では意思疎通が出来ているようだ。
「とりあえず行くか」
「…うん、そうだね」
そうして、始まりの町へと戻って来たのである。
ところが、今度は町に入った途端に、濡羽がいなくなってしまったのだ!
またも、いなくなった事に慌てた俺達だったが、すぐにウィンドウにメッセージが出た。
『500G拾いました』
「カーーー!」
ウィンドウにメッセージが出るのと同時に、濡羽が戻って来て俺の手にコインを落とすと、こちらもドヤァと鳴いてから元のスペースに収まる。
「…って感じで、ここまで来るのにどっと疲れた感じです」
「とりあえず、ちゃんと躾とけ?」
「…はい」
鳥系ってどれも便利だけど、めんどくさい。
先週のお願いの後に、ものすごい勢いでブックマークが付いて作者ビックリと同時に、皆様ありがたやぁーな気持ちです。
今後ともよろしくお願いします!




