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従魔様々です

『これにて全ての試合が終了しました!皆様お疲れ様ー!それで、各優勝者の方々は中央へお集まり下さい!繰り返します、各優勝者の方々は中央へお集まり下さい!』


午後15時を少し過ぎた辺りで、ソルトの声が

歓声の中で響き渡る。

たった今、闘技大会の全試合が終了し、観客達はそれぞれが各試合の感想を話したり、席を立って帰ろうとしている人達もちらほらといた。

周りが話している内容的には、最後の華々しい戦いぶりで勝利を収めた、アーサーさん達のチームの話題が殆どである。


そんな中、俺はちょっと焦っていた。


「そうか、表彰式があったのか。すっかり忘れてた。唯さん早く行きましょう!」


近くで呑気にお酒を飲んでいる唯さんを左右に揺すりながら、早く早くと急かす。

俺が焦っている理由は簡単で、ここは観客席の1番外側だから、ここから控え室を通って下の集合場所に向かわなくてはならないからだ。

さらに、空に浮かんでいるパネルには、フロアにぞろぞろと人が集まっているのを見て、

余計に早く行かなければと焦ってしまう。


「ンクッンクッぷはぁ。ん、それじゃあ行こうか。灰白達も付いてきてね?」


「あぁ!はやっ、ウェイ!えっ、ちょっと、唯さん!」


飲み終わった缶をグッと握り締めて、缶の耐久値を0にして消してから俺の前に立つと、「早くと行きましょう」と、言おうとした俺をヒョイっと下から掬い上げて高くジャンプして、観客席からフロアへと真っ直ぐに走り出した。


「キャーーーー!おーろーしーてー!」


「ん?これが1番早いし、今下ろしたら下に落ちるよ?」


もちろん、さっきまでは目の前の至る所にプレイヤーの人々がいる訳で、その人達が邪魔だからジャンプして空中を走っているんだろうけど、その分俺達の注目度が高まり、「何だあれは?」だの、「最強にお姫様抱っこされているぞ!」などなどが聞こえる。


もちろん遠方ではアーサーが、「あぁー!俺もそれやりたいー!」などと言って駄々をこねて、自身のお仲間の皆さんに「うわぁ」と引かれているか、苦笑爆笑されている。


「もう、無理。恥ずかしい」


そんな中、俺はいくら最強とは言え、女性にお姫様抱っこされているこの状態が恥ずかしくなり、顔を両手で抑えて早くこの状態が終わって欲しいと切に祈る。

そんな俺と周りの声を無視して、唯さんはスタタターと空中を走り、数メートルの高さを軽々とジャンプして着地すると、堂々とした足取りでフロアに立ってから俺を下ろす。


「はい、到着。うん、灰白達も来たね」


「はっ、そうだった!ごめんごめん、すっかり忘れてた」


あまりの恥ずかしさに、灰白さん達の存在をうっかり忘れていたが、俺達に追い付いた灰白さん達は、俺を攫った唯さんの周りに集まり、ガウガウキャンキャンブーブーなどなどの抗議の鳴き声をあげている。

後から真司に聞いた話だと、唯さんが俺をお姫様抱っこと言う名の拉致をした後に、一瞬呆気に囚われていたが、ハッ!とすぐに気がつくと、灰白さんとこがねはプレイヤーの間を潜り抜けつつ走り、真白はそんな灰白さんに咥えられてやって来たらしい。

紅緒と露草は空を飛べるので、唯さんの後を慌ただしく付いて来たようだ。


「それじゃあ、各階級に並ぶから、私達は隣になるね」


灰白さん達に文句を言われても、マイペースな唯さんに指摘されたので、皆を整列させようとする。


「あっはい。分かりました。ほら、皆も落ち着いて」


いや、俺自身もかなりの注目を集めているので、恥ずかしいので早くここから帰りたいがそうもいかないので、「もう、いきなり何なのさ!」ってワンワンキャンキャン文句を言っている皆を宥めつつ整列すると、全員がフロアに揃ったのか、東京担当の菜々緒さんがやって来た。


『皆さん優勝おめでとうございます!優勝商品の贈呈です!』


菜々緒さんが両手を上げて言うと、空に球状の光が浮かび、それが各リーダーの所へと飛んでくる。

ちなみに現在の並び順は、菜々緒さんから見て右から初級のソロで、左は無差別級のレギオンとなっていて、ユニオンから先はパーティ分の人数で横に並んでいる。


【運営から、初級パーティ優勝者限定引き換えチケット6枚と商品一覧表を貰いました】


光の玉を手に取ると同時にメッセージが届き、6枚綴りのチケットと1枚の赤いリボンで丸められた紙へと変わる。

多分、商品一覧から好きな物をチケットに書いて冒険者ギルドに持って行くと、交換してくれるシステムなのだろう。

ただ、俺としてはチケットの使い方が分からないので、答えが合っているかどうか後で唯さん達に聞けばいいかな?ちょうど隣にいるし。


『これにて闘技大会は終了となります。次回開催は来年となりますので、我こそは!と言う人はご参加下さい。それでは皆様お疲れ様でした』


「ヨシタカ君!先にギルドの方へ行こうか」


「了解です!真司達に連絡しなくて大丈夫ですか?」


「舞姫から、『準備はこっちでしておくから、主役の2人は先に換金に行ってきなよ!』って、メッセージか届いたから大丈夫」


菜々緒さんが言い終わると、盛大な拍手が鳴り響き、隣で普通に喋ると聞こえないので、唯さんが大きめの声で提案をしてくれたので、俺も唯さんの耳に近づけながら答える。


「それじゃあ、早く出口に行こう。アーサーが来ると面倒」


そう言って颯爽と歩き出した唯さんの後を追いつつ、出口の方へと向かった。




「一応保険で真司を呼んでおいたから」


「何の保険ですか?」


「おーい!こっちこっち!」


大勢の人に拍手され、手を振りながら答えつつ出口に向かえば、唯さんに呼ばれた真司が出口から少し離れた所で、両手を振りながら待機していた。

側にはさえずりも居て、俺達の姿が見えたらスィーーとこちらまで飛んで来て俺の肩に止まる。


「真司、馬持ってるよね?」


「そうだろうと思って、もう呼んでいますよ!」


そう言った真司の近くには、確かに標準的な馬が待機している。


「ん。私のやつだと処女厨拗らせているから、触らせるのは大丈夫だけど、乗せるのは嫌がりそうなんだよね」


そう、唯さんが愛用している馬は、馬は馬でもユニコーンなのである。

ってな訳で、唯さんがユニコーンを呼び、俺と真司が2人乗りで始まりの町へと向かう。

テイマーでは無い2人は、呼び笛と言うアイテムを使って馬を呼ぶのだそうだ。

そうすると、何処からともなく馬が出現し、返す時には放牧を選択すれば、何処かに向かって消えて行くのだという。

さらに、馬との友好度が高ければ、アーサーさんみたいに一緒に戦う事も出来るのだが、

唯さんの場合は、管理するのが面倒と言い、真司の場合は、何故か友好度が上がらないと愚痴っていた。

もちろん、一緒に戦う場合は6枠のうちの1つを使ってしまうので、馬を入れる場合はお仲間と計画的に、と真司が言っていた。


「それと、舞姫から伝言。今からだと、準備に1時間位掛かるかもしれないのと、途中で買い物頼むかもだって」


「はーい」


「んで、終わりは20時頃を予定の、2次会は無しで解散を予定」


隣合って真っ直ぐに始まりの町へと走りつつ、真司が俺達に必要事項を説明している間に、始まりの町へと付いたので、馬を野に返して冒険者ギルドへと向かった。




「それじゃあ先に、チケットの説明をするから、チケットと商品のアイテム一覧が書かれているの紙を出して貰っていい?」


「はい」


冒険者ギルドに着いた俺たちは、まず先にチケットの使い方を唯さんから教えて貰うために、空いているテーブルに座りアイテムが書かれた紙をにらめっこする。


「パーティ以上のグループだと、このチケットと一緒にその紙を貰ったと思うんだけど、そこに6人分のアイテムとお金が書かれているの。だから人数分でキッチリ分かるも良し、欲しいのをトレードするのも良し。ヨシタカ君の場合はパーティが従魔で構成されているから総取りだね」


と、簡単に言うとそんな感じであった。

注意点としては、期限内に受け取らなければ無効になる事と、俺の場合はアイテムポーチに余裕があるのか?って事だ。

なんせ6人分のアイテムを総取りって事になるからな。

ソロの唯さんの場合は、引き換えチケットのみなので問題も起きないが、アーサーさん達のようなレギオンだと、いつも分配に時間がかかるのだそうだ。


初級の商品一覧に記載されているのは、以下の通りである。


傷薬、回復薬、携帯食料、砥石、マナ回復薬、お買い物券、お食事券が各30個で、賞金も30万である。

1人大体5個ずつと言う事である。

あとはスキルポイントが60と、万能薬が18個付いていて、俺として物凄く気になるのは、1番下に記載されているこのカタログギフトだろうか?


なお、お買い物券とお食事券は、どんなお店でも細かいルールはあるが500円引きにしてくれるアイテムで、この様なイベントにしか発券されないある意味レアアイテムで、万能薬はあらゆる状態異常を治す効果がある薬である。

真司曰く万能薬の味は栄養ドリンクみたいな味で、他の薬に比べて美味しい!って言っていた。

他の、状態異常に効果がある毒消しの様なアイテムの場合は、それぞれがハーブティの様な味がするらしい。

ちなみに、毒消しはどくだみ茶の味だそうので、好き好きが分かれそうである。


「アイテムポーチにはまだ余裕があるんですが、30万も入るので一気にお金持ちになった気分。それと、このカタログギフトってなんですか?」


「あぁ、カタログは各個人限定で2000円分の商品を選べるんだよ。運営からのご褒美だね。最初にここで住所とか書いたでしょ?」


一緒に商品一覧を見ていた唯さんに聞いてみれば、なんと言うとこでしょう!

運営さん太っ腹である!


「へー、いいなぁー。俺だったら断然肉だな!」


「あっ、ただ注意事項があって、初級の場合は関東圏の商品しか選べないんだよね。階級が上がる毎に選べる範囲が増えるから、来年もどんどん参加してね」


つまり、初級のギルドランクが100までなので、東京とその周辺の商品しか選べないと言う事で、そこで他の階級との差別化を図っているのだろう。

さらに、2000円分と言うのが俺としては厄介で、家族と一緒に暮らしている俺の場合は、確実に家族で食べる事になりそうなので、無難に東京にある老舗のロールケーキにしておいた。


「引換券に書けた?なら、受付で交換しに行こう」


ちょうど引換券に全部書けたタイミングで唯さんに声を掛けられたので、一緒に受付に向かいアイテムとお金に交換した際に、受付で注意事項を言われた。


「カタログギフトの商品ですが、一斉に配送されるので、届くのが大体1月後になってしまいますがよろしいですか?」


「はい、大丈夫です」


と、言いつつ俺の事だから、うっかり存在を忘れそうだなと思いつつ、冒険者ギルドを後にした。


「どうする?また、俺と一緒に乗るか?」


「そうだなぁ、テイムしたい馬は居るんだけど、そこが雷門の場所にあるから、今から行くとしても時間的に難しいかも知れないからな、乗せて貰ってもいいかな?」


「OK」


「ん?ドーラに乗っていけば早いよ?」


「「いえ、遠慮します」」


せっかくの唯さんからの提案だが、シートベルトをしないでジェットコースターの様な飛行運転は、ガチで遠慮願いたいと、2人で速攻でお断りするのと同じタイミングで、舞姫さんからお使いのメッセージが届いた。

メッセージの内容は、なるべく大きめの受け皿を複数個買って来て欲しいという事だったので、適当な雑貨屋さんで買い物した後に川辺に向かった。




「おぉ!なんかすごい事になっているな!」


馬から降りた俺は、まるでキャンプの様な風景にテンションが上がって来た。

川辺付近には、大小・性別・種族が様々なタイプの従魔達が勢ぞろいしていて、日向ぼっこや川で遊んでいたり、人型の従魔達なんかは舞姫さん達のお手伝いをしている者もいるのだ。


ただ、予想より従魔の数が多いのは、基本的に今回はテイマー1人につき5匹までの1パーティ分だったのだが、マチさんが闘技大会に参加という事で、一気に従魔の数が増えてしまったという事だ。

なるほど、大きめの受け皿が必要って、従魔達が増えたからそれ用って事か。


「あっ!買い出しご苦労様ー!主役の優勝者2人は準備免除だから、時間が来るまでは自由行動で大丈夫だよー!」


「それじゃあ、お酒でも」


「こらこらこら!お酒は乾杯してからでしょ!」


打ち上げ会場へと付いて、こっちに気が付いた舞姫さんにそう言われた俺は、優勝者なので準備が免除されているのをいい事に、ゴロンと灰白さんを枕にして、開催されるまで川辺に寝転んだ。


「それじゃあ、あまりやる事無さそうだけど、向こうの準備手伝ってくるわ!」


グッとサムズアップしてから、準備している面々の方へ駆け出した真司を見つめながら、暫しの休憩と目を閉じた。

しかし、俺はまだ知らなかったのだ。

これから始まる規模を大きくした大乱闘があるという事を…

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