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闘技大会予選3日〜6日1

『本日で予選の全試合が終了しました。これから20時までの闘技場はご自由にご利用下さい』


『うぉおおおおおー!』


フロアは既に、レギオン用のサイズになっているが、今から始まるのはレギオンの試合では無い。

では、何が始まるのかと、その時を待つ。


6日目の今日。

全ての予選が終わった会場には、沢山のプレイヤーが残っていた。

皆帰るのではなく何かを待っている様子で、それはすぐにやって来た。


だんだんと闘技場が薄暗くなって行き、見上げれば天井が閉まりつつあったのである。


「えっ?これから何があるんですか?」


「これから、さっきの3人によるライブが始まるのよ!」


そう言われ、完全に天井が閉まり真っ暗になった時、カッ!とフロア全体が輝きだした。




闘技大会3日目から、6日目の予選終了までに起こった事を、ザックリと思い出すとこんな感じの事が起こっていた。


闘技大会3日目。


遅くなったお昼ご飯を食べ終わった後に、白薔薇さんから2匹の従魔を紹介された。


「それじゃあ、唯。この子達をよろしくね。そんなにLvが高い方では無いから、ついでに躾けておいて」


「ん」


そう言って、白薔薇さんから預かった従魔2匹が唯さんの所をスルーして俺の所へ来た。


「えっと…」


「うん!さすがだね!もう、これは様式美だよね!」


サムズアップしつつウィンクをする舞姫さんに、そんな事を言われても困ってしまう。

それに、スルーされた唯さんは顔を逸らして見えない様にしているけど、肩がフルフル震えているから、あれは絶対に笑っている。


「ガウガウ!」


「ハッハッハッハッ!」


俺の足元でお座りをして、頭をグリグリしてたり、時折手を舐めて来るホワイトタイガーが清白(スズシロ)


サラサラで白髪のボブカットで、スレンダーな女性?が白菊(シラギク)

実は白菊は普通の女性では無く、下半身が何頭もの狼の顔が付いているスキュラって言うモンスターである。

最初見た時は、その形態にかなりビックリした!

海・陸兼用で活動出来るモンスターで、前は狼で後ろはイカかタコの足っぽい物がうねうねするらしい。

確かに、背中側からうねうね触腕が出てる。


「うぉー!良いな良いなー!ユッキー羨ましいなー!俺にもモフモフのお裾うぇい!」


「グルルルルルル」


俺の所へと来た2匹を撫でようと、真司が手をワキワキさせてこっちに来た瞬間に、白菊の触腕で宙づりにされてしまったけど、それはしょうがないだろうと思う。

だって、俺もこっちに来ようとした真司が気持ち悪かったからね。

女性の白菊ならなおさらであろう。


「モフモフでは無いけど、この感触もまたいい!うへ…うへへ」


「うん!それじゃあ、白薔薇。この子達借りて行くねー!よっしゃぁ!皆行くわよー」


「行ってくる」


「行って来ますね」


「うん。頑張って来てね。君達もちゃんとお世話になるんだよ」


「うへへへへ」


軽く挨拶を交わして、舞姫さんに先導されつつ、いつもの事だと割り切り、真司をそのままの状態にして、闘技場よりやや離れている場所へと移り、俺達の特訓が開始した。



「よし!ヨシタカ君はそろそろログアウトの時間かな?」


時刻は18時頃で、辺りは薄っすらと暗くなりだしていて、太陽が沈んでいる方にだけは、まだ夕焼けの状態であった。

闘技場が見える場所で特訓をしていて、時々白薔薇さんから、メールで面白そうな対戦があると連絡をしてくれていた。

その度に休憩として、その試合を観戦しつつあーだこーだと、感想を言い合いながら知らないスキルなどを色々教えて貰い、次の特訓に生かして行った。


特訓自体は、プレイヤー同士で決めたルールで行う、対戦モードを選択して、試合ルールと同じ10分間で区切り、1試合終わるごとに舞姫さんと唯さんから改善点を告げられる。

対戦モードは結構細かく決める事が出来て、

誰とどの時間、反則行為、どの時点で勝利にするかなどなどが決められる。


そうそう、現実世界であるならば、ここでも会場内の歓声が聞こえそうだけど、全く聞こえては来なかったので、白薔薇さんからの情報が無ければ、どこまで進んでどんな試合があったのか、全く分からない状態だった。


「3日間で戦闘と連携を鍛えるから、脳がパンクしない様に、今日は早めに休んだ方がいいよ」


「そうそう!それに、最初は慣れていないから、あまり詰め込みすぎると後で効率悪くなっちゃうからねー」


「特に、明日っからお昼挟んでガッツリ鍛えるからな!なるべく無茶はしない方が良いと思うぜ」


「うん。分かった。…うへぇー疲れたー」


3人からそう言われて、今日はここまでにする事にした。

午前中は予選もやっていたし、昼食後からは結局何十回も対戦をし続けていたため、そろそろ限界であったのだ。

体力的には、ゲームの補佐があるのでまだまだ元気だけど、精神的にはクタクタだ。


「どうする?ここでテントでもやっちゃうかね?」


と、舞姫さんが言い、特に反対意見も無かったため、その日は平原でのログアウトとなったのだが、ここで問題が発生した。

俺のテントに灰白さん達が入って来るのはまだ良いのだが、清白と白菊も俺のテントの方へ入ろうとしたのだ。

まぁ、そんな予感はあったのだが…


「それはダメ。こっち」


「ッ!?」


「がうー」


結局、2匹は唯さんにズリズリと引き摺られて行き、そのまま躾モードに入ったので、これ幸いとその日はそのままログアウトした。



闘技大会4日目。


「さぁ、今日は特訓の前にお昼ご飯を作っちゃおう!」


10時頃にログインして、1番最初に言われたのがこれであった。


「ちなみに、ヨシタカ君は料理出来る人?」


「簡単なのなら、一通り?は大丈夫だと思いますけど」


そう、両親は共働きであるため、簡単な料理位は中学生から何と無くやって来たのだ。

だって、あの時はすぐお腹が空くし、冷蔵庫の中の物なら何使っても良いって母さんが言ってたし。

その後で何を使ったのかは連絡をしないと怒られたけど。


「そっか!なら、ちょっと手伝ってよ!」


そう言われて舞姫さんを手伝う事になった。

ちなみに、真司と唯さんが誘われなかったのは、真司はおおざっぱな所があり、唯さんに至っては壊滅的なんだそう。


「あれ?でも、真司は薬師だったと思うんだけど…」


「いやー。薬の方は手を抜くと簡単に失敗するけど、料理だったらそんな事にはならないから適当になっちゃうんだよなー」


「ねー。こんな感じだから、前に料理一緒にした時なんて、材料繋がったまんまとかあったんだよー!そんなの、2次元でしか見た事無いわ!」


そんなこんなで、平原に舞姫さん持参の調理台とテーブルをセットして、調理を開始し

た。

テントもあるし、パッと見はキャンプしているみたいだ。

さて、舞姫さんに何を作るのか聞いたら、極太サンドイッチとオニオンスープだそうだ。


「それじゃあ、はい!これとこれとこれをお願いね!」


手渡されたのは多めのレタスときゅうりとトマト。

言われた通りに、レタスはちぎり、きゅうりはヘタを落として斜めに薄切り、トマトもヘタを包丁でグリッと取ってから輪切りにし

て、それぞれのボウルの中に入れていく。

舞姫さんは玉ねぎを薄切りにして、どんどん山盛りにしていた。


それにしても、ゲーム世界の野菜だから、どれも形が同じなのがやりやすいな。

たまにきゅうりとかトマトだと、すごく曲がっていたり、凹凸が激しいのがあるから見た目を気にすると切りにくいんだよね。

あっ!あと、玉ねぎだと目が痛くならないのも便利かも!

あれ毎回目が滲みて大変なんだよなー。


初期設定での五感は、痛覚系は普段20%まで軽減されているのである。

なので、「玉ねぎで目が滲みる事はないよ!けど、試合は80〜100%だから、あの時の真司は結構キツかったんじゃないかな?初級なら普段通りだけどね」って舞姫さんが言ってた。


対戦でも、痛覚の設定は変更出来るので、今日は数値を弄ってみようかな?


「へー!ユッキー上手いな!」


ヒョイっと真司が手元を覗き込んだ。

他の皆は邪魔にならないように、唯さんと一緒に遊んでいる。


「別にこれ位慣れれば普通だと思うよ?それと、ユッキー言うな!」


「おっ?全部出来た?なら、今度は玉ねぎ炒めちゃってて!」


「どれ位ですか?」


「とりあえず、茶色くなるまでで!」


と、手渡されたボールには、山盛りの玉ねぎの薄切り達。

結構時間かかりそうだな。


玉ねぎを炒めている間に、舞姫さんは食パンにバターを塗り、俺が準備した材料を次々に乗せて行く。

チーズと蒸し鶏とアボカドのボールが出来ていて、それもどんどん乗せて行った。

俺が材料を切り終えるまでに、玉ねぎを切り終わったから、他の材料を準備したんだろうな。


「えっ!てか、溢れそうですけど、それ大丈夫なんですか?」


「大丈夫だよー!下に紙引いてるし、それに包んで形整えちゃうしねー!」


そう行って手の平サイズになったサンドイッチを、紙でクルンっと包み込みグッと、上から順に軽く押し潰して行く。


「よし、こんなもんかな?あっ、そろそろコンソメスープ入れちゃおう!」


だいぶ茶色くなった玉ねぎにコンソメスープを注ぎ、軽く沸騰するまで待つ。


「それじゃあ、皆ご飯だよー!」


その一声に、遊んでいた面々がテーブルの周りに集まって来た。


マグカップにオニオンスープを注ぎ、分厚いサンドイッチを半分にカットして、それぞれ半分ずつを皆の前に並べて行く。


「では、いただきーす!」


「「「いただまーす(ます)」」」


半分だけでもかなりのボリュームで、上から

順に鶏肉、レタス、チーズ、アボカド、トマト、きゅうりになっていて、極太と言うだけあるサイズになっていて、果たして口に入れるのだろうか?


ザクッ、シャキ、じゅわ、とろん。

サンドイッチに入っているそれぞれの食感が楽しいし、胡椒が強目のマヨネーズ味で美味しい。

さらに、熱々のオニオンスープも玉ねぎの甘みが出てて、ペロッと食べ切れそうだ。


さすがに灰白さん達のサンドイッチはバラバラになってしまっているが、皆美味しそうに食べている。

唯一の人型の白菊も、小さいお口で一生懸命

極太サンドイッチを食べていた。


「よし、皆食べ終わったし、ぱぱっとここ片付けちゃうねー」


使い終わったテーブルや調理台を片付けて、その日も何回も対戦を繰り返した。



闘技大会5日目。

今日も昨日と同じく訓練に励んでいると、意外なと言うか、やっぱりなって人が来訪して来た。

あれだけ言っていたんだもん。

見つけたらそりゃあ、寄って来ますよ。


「やぁ!皆久し振りかな?それとヨシタカ君予選突破おめでとう」


「あっ、アーサーさん!お久しぶりです!」


キラキラと眩しい笑顔で、白馬に乗ってやって来たのは、アーサーさんだ。

ヒラリと着地するのも様になっている。


「おっ!アーサーじゃん!って事は今日からレギオンの予選か!」


「おぉー!優勝候補参戦か!」


実は、アーサーさんが率いているグループは同じクランのメンバーで構成されていて、しかも、他に2つのグループも参戦しているらしい。


そう言われてアーサーさんの後ろを見て見ると、ゾロゾロとかなりのプレイヤーも居るので、その人達と予選へ向かうのだろう。

確かレギオンが36人位だったから、普通に1クラス分位か。

それが3グループ分いるので、100人近いプレイヤーが集まっている事になる。

ちなみ、アーサーさんの所では、グループ分けは完全にクジ引きで決定されているみたいで、それも楽しみの1つなのだと言ってい

た。

それにしても、連携とか大変そうだな。


「それにしても、真司。やっと400になったんだな」


「まぁ、受験が2回もあったからなー。さすがにその時はゲーム出来ないわ」


「皆知り合いなの?」


和気藹々と、仲よさそうにしている皆を見てて、ふと疑問に思った事を聞いてみた。


「そうよ!基本あそこのメンバーも含めて、初期組が多いんじゃないかな?そうそう知ってた?」


そう言われたのは、ゲーム開始初期の話であった。

今このゲームへ初ログインすると、自動的に始まりの町の入り口へと飛ばされるが、最初は闘技大会の会場になっている修練の間に飛ばされていたらしい。

大人数を収納出来るので、発売当初は初ログインして来るプレイヤーのみが、修練の間に集まって来るため、自動的に周りのプレイヤーと仲良くなるのだと言う。

その間、運営はひたすらスピーカーで初期設定の説明を流していたそうだ。

俺が最初に書いたやつも、「ここで書いたんだよー!」って舞姫さんが言ってた。

発売日だし、かなり並ぶのでは?って思ったけど、運営総出での対処だったみたいで、結構早めに対処されていたみたい。


「どうせ今回も優勝すんだろ?」


「まぁね。それよりも、あぁ!今日も麗しいね君は!君を見れただけで、今日の僕は無敵さ!何故なら君は僕の…アイタ!」


「おバカ!挨拶にいつまで時間をかけているのよ!唯、いつもこのバカがごめんね」


アーサーのお仲間の女性が、パシン!ってアーサーさんの頭を叩き、唯さんに謝る。


「ん。大丈夫。慣れた」


そう、今まで唯さんが一言も話さなかったのは、会話するとアーサーさんが面倒な事になるからだそうで、ずっと無言でいたのであった。


「あーーー!まだ、唯ちゃんといるー!」


「うっさい!もう中入んないと失格になるっつの!さっさと行くよ!」


アーサーさんの襟を掴み、ズルズルと引き摺られて仲間の元へと帰って行った。

その間、アーサーさんが乗っていた白馬は、俺の髪をハモハモしていたけど、女性の「スー行くよ!」って言葉で、白馬も仲間の元へと帰って帰って行った。


「16時頃でレギオンかー」


「でも、途中で終わるかもよ?」


「一応、白薔薇に参加グループが半分過ぎたら知らせて貰う様に、メールしとくね」


「あっ、ついでに終わったらの連絡もお願いしよーよ!」


「ん」


アーサーさん率いるレギオンの面々は、最終グループなのだ。

なので、このグループが終わると全試合の予選が終わるのである。


「ん…白薔薇にメールした。それじゃあ、続きやるよ」


そのまま対戦を続けていると、18時頃に白薔薇さんからメールが来た。


「白薔薇何だって?」


「ん。1巡して終わりだって」


「マジか!なら、明日の昼から始まるな!」


ん?何が始まるんだろう?


「けど、今日はこのまま続けるよ」


「はーい!元の場所に戻ってー!」


「あっはい」


結局何も教えてもらえず、この日も対戦をして終わった。


1つにまとめると、かなり長くなりそうだったので、2つの話に分けさせてもらいました。


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