初めてのお誘い
お待たせしました。
3話です。
後書きにおまけ付きです。
皆の防具買うのにお金がいるし、またクエストをやろうかな。
クエストを受注しないで討伐だけだと、経験値だけ上るんだよな。
まぁドロップしたアイテムを売ればお金が手に入るけど、まだ全然取れてないしね。
よし!行くか!
今度はどのクエストにしようかなぁー
「おっ!ユッキー発見!やっと始めたのかよー!こっちで会うの待ちくたびれたぜー」
あれ?この声は…
「真司!うぉっ、スゲーカッコイイなその格好!…って言うかね、待ちくたびれたって言ってもさ、誕プレでこのゲーム買って貰うから夏休みに入るまで待っててって言ったじゃん!それと、ユッキー言うなって」
目の前でニカッと笑っている男は、俺の友人の村瀬真司。
このゲームを猛烈に進めてくれた人でもある。
「まぁまぁ、いいじゃねーの!かわいい系のお顔立ちしてんだから、由貴じゃなくて、ユッキーでいいじゃねーの!」
「良くない!一応、気にしてんだからなー」
ほっぺに両手を当てつつ、うにうにする。
「へっへっへっー、そ・ん・な・こ・と・よ・り、うっしょおおおおお!さっすがユッキーじゃん!もう、モンスターに好かれてやがる!はぁーーーん!モフモフですなぁー!
あっ、イテッイテテテテ」
「グルルルル」
「ブーーーーー!ブーーーーー!」
「ピチョチョチョ!」
ガバッと抱き付れそうになり、ビックリした3匹は真司に威嚇し出した。
突かれたり、噛み付かれそうになっているのに当の本人は満遍の笑みを浮かべている。
…あぁ、なる程ね。
真司が俺にゲームを進めてくれた意味が分かったわ。
俺と真司は大学で知り合った友達なんだ。
席が隣だからって事で、とりあえず話してみたんだけど、そうしたら結構面白い奴でさ、すぐに友達になったんだ。
そんな真司が、何で俺にゲームを勧めたか分かったわ。
こいつ俺の体質が目当てだったんだな!
そう、俺の体質ってのは何故か動物に好かれるって事だ。
別に動物に好かれるって言っても、もの凄い数に迫られるって訳じゃないんだけどね。
ただ、お互いを認識すると寄って来るんだ。
よく、散歩しているワンちゃんや野良猫とかに擦り寄られる事が多いかな?
どうしても目が合っちゃうからね。
あと、たまに大学とかのベンチで休んでいる時は雀とか鳩とかが寄って来る。
エサとか持って無いんだけどね。
何で寄って来るんだろう?
匂いかな?くんくん。
あっそうそう、そんで真司は大のモフモフ好きなんだ。
よく、
「俺は世界一のモフラーなのだ!」
とか言って、俺に寄ってくる犬とか猫を見るとハァハァって言いながら近寄って、逃げられてんだよね。
逃げても俺の側から離れないあいつらも、どうかしてると思うけど、確かに、両手をワキワキさせてハァハァ言いながら近寄って来られたら、気持ち悪いもんな。
友達の俺でさえあんな状態の真司は若干引くってのに。
まぁ、そんな真司だからこそ、このゲームでもモフモフしたいが為に俺を呼んだって事だろう。
はぁ、とりあえず目の前でワチャワチャしている1人と3匹を大人しくさせますか。
「こら!皆メッだろ!人を傷付けてはいけません!たとえこいつが気持ち悪かったとしてもだ!」
唸っている灰白さんは撫でて宥めつつ、足ダンをしている真白をヒョイっと掬い上げて、灰白さんの背中に乗せ、真司の顔辺りを飛んでいた紅緒は、下から掬い上げて手の中で落ち着かせる。
原因の真司は軽く蹴っておいた。
「あれ?なんか俺の対応ヒドくね?」
「ヒドく無いです。自業自得だから!全く、見た目はカッコイイんだから、もったい無いぞ!いろいろと!」
そう、今のこいつの格好はカッコイイのだ。
一括りにされた長髪が尻尾みたいにゆらゆら揺れてて、服装は和装なんだけど、足だけブーツなのかな?
ってか、こいつ短髪じゃなかったっけ?
「なぁ、和装って動きにくくない?あと、なんで長髪なの?似合ってるけど」
「あぁ、これ?慣れれば大丈夫。長髪はキャラメイキングの所で変えられるぞ。って言ってもギルドランクを上げるか、金を払わないとダメだけどな。あと、ついでに登録よろしく!」
『真司からギルドカードを貰いました。』
『真司からフレンド申請が来ています。許可しますか?はい/いいえ』
おっ、何か来たな。
「これ、はいを押せばいいの?」
「おけ!」
フレンド申請の「はい」を押して、真司のギルドカードを見てみた。
ギルドカード
1/10
名前 真司
ギルドランク Lv382
生産ギルドランク Lv132
職業
冒険者/侍(刀/小刀)
鍛冶師
薬師
2/10
武器
紅キ鳥ノ炎刀
蒼キ龍ノ流刀
白キ虎ノ小風刀
防具頭 紅キ鳥ノ簪
防具胴 黒キ龍ノ胸当
防具腕 黒キ龍ノ籠手
防具腰 黒キ龍ノ腰当
防具足 黒キ龍ノ臑当
装備品
舞姫印の着物一式
舞姫印のロングブーツ
天狗の羽織
天狗の扇子
3/10〜7/10
総討伐数
14792
個別討伐数
ウルフ 245
飛びウサギ 85
ゴブリン 126
:
:
:
白虎18
青龍24
黒龍 57
朱雀18
うおっ、なんか色々と凄いぞ。
討伐数とか1万超えてるじゃん!
俺なんてウルフ3なのに…
ちなみに、上に書いてある数字はページ数だ。
8が称号、9が武器・各スキルの熟練度、10が踏破した場所に色が付いた日本地図になっている。
「ほらほら、ユッキーもギルカくれくれ」
「あっごめん。えっと、これで送れた?」
俺はウィンドウのギルドカードの欄を操作して、真司に送ってみた。
「大丈夫!次はこれな」
『真司からパーティーに誘われています。
許可しますか?はい/いいえ』
「説明してあげよう!パーティーは6人で1組なんだ。そのパーティーとパーティー同士が組むのがユニオン。ユニオンの制限は無いけど、参加人数で経験値や報酬を割るから、ユニオン組む時は新規エリアか、イベント参加の時じゃないと、割りに合わないから滅多にやらないぜ」
「へー、じゃあ、俺が5匹のモンスをテイムしたら1パーティって事?」
「そゆこと。サモナーと違って、モンスターの出し入れ出来ない所が、テイマーの短所で長所な所だろ。テイマーだと、蘇生スキルのある奴か、それ系のアイテムがあれば、たとえ戦闘で死んでも復活出来るしな。サモナーだと、戦闘不可になった瞬間に、召喚モンスも全部戦闘不可になって消えちゃうからなー」
へーそうなんだ。なる程。なる程。
そんな便利なスキルもあるなら、いつかゲット出来たらいいかな?
今はこのゲームに慣れるのに、てんやわんや
ですよ。
あっそうだ、ちょっと分かんない所あるから聞いてみよ。
「あのさ、ギルカが俺と違う所が色々あるんだけどさ、どゆこと?」
「違う所?どこ?」
「職業とか防具とか装備品とか?」
「あぁ、それな。まぁ、簡単に言うとだな…」
真司のウィンドウを見ながらの説明は、こんな感じだった。
まず始めに、始まりの町に付いて説明しておこうと思う。
始まりの町は、日本地図で言えば皇居と同じ場所にあるんだ。
面積もほぼ一緒みたい。
そして、冒険者ギルドが真ん中だとすれば、北から右回りに生産ギルド、宿場、教会、商人ギルドの順に大まかに分かれている。
次に、生産ギルドランクについてだ。
生産ギルドランクとは、生産ギルドに登録→各々の生産スキルを持ったNPCに師事→条件を達成→スキル習得、という流れみたいだ。
真司の場合は鍛冶師と薬師になる。
習得したスキルは、熟練度を上げる事でレア度が高いのが作れたり、品質が上がったり、制作時間を短縮出来たりするらしい。
ギルドのランクは、信頼度になっている。
高ければ高いほど、いい場所に工房を持てたり、作った物を売る時に便利だって事だ。
次に、職業の侍についてだ。
これは、戦闘スキルの刀の熟練度を上げる事で習得するらしい。
侍の特徴は、装備武器を3つまで持てる事だ。
あと、小刀は刀の派生スキルになるんだって、そもそも、戦闘スキルってのは、普通は武器での戦闘経験が無いからって事で、攻撃する時の補正としてのシステムみたい。
確かに…俺だと、どの武器も使い方が分からないから、ブンブン振るだけになっちゃいそう。
次に装備品についてだ。
装備品は、防具以外で身に付けてる物になる。
防具との違いは
防具:防御力と耐性
装備品:補助スキル発動
となっている。
ちなみに、俺が来ている装備品は「皮で作られた服上下」だ。
ちょっと理解するのに時間がかかったけど、だいたいこんなもんだ。
一応パーティーのお誘いは、真司の説明を聞いてる時に、はいを押しておいた。
「さってと、だいたいこんなもんだ!そんじゃモフモフさせて下さい。」
「あっうん。ハァハァしないで優しくすれば、…たぶん大丈夫だと思う。だから、とりあえず、土下座はするな!皆も露骨に嫌そうな顔するんじゃありません!」
○
「はぁーモフモフ癒される〜」
俺達がいるのは、草原の始まりの町からあまり離れていない所だ。
場所を草原に移動した理由は2つ、まず土下座をした真司のせいで周りの目線が痛かったのと、あとは灰白さん達の防具を買うための資金稼ぎに来ていたためです。
町からあまり離れなければ、モンスターとの戦闘にならないみたいで、
「ある程度稼いだし、ここなら良いだろう!なっ!」
って、真司の我慢が限界に達して、灰白さん達をモフモフ撫でているって訳だ。
一応、高Lvプレイヤーである真司がいたからな、無茶しない程度にはサクサクっとクエストをクリアしている。
ただ、真司は武器を変えていた。
理由は、
「あっさりと倒しちゃうのつまんないだろ?
それに俺Tueeeーしたい訳じゃないしな。」
という訳で今は俺と似たようなLvの武器だ。
今は休憩と言う名の、真司のワガママを聞いている所です。
最初、真司に撫でられるのを嫌がっていた3匹も、真司が何回もお願いして、しぶしぶ仕方ないなーって感じで撫でられている。
さっきまで何回も戦闘してたから、俺はギルドランクが、灰白達は種族Lvが上がっている。
表示するとこんな感じ。
ステータス
名前 ヨシタカ
体力73 満腹52
ギルドランク Lv9
職業 冒険者(片手剣/テイマー)
所持金 10,200G
使役モンスター
灰白(ウルフ)Lv12
体力68 満腹58
攻撃力160
防御力80
紅緒(紅雀)Lv7
体力89 満腹62
攻撃力95(火)
防御力95
真白(飛びウサギ)Lv7
体力85 満腹68
攻撃力60
防御力135
と、こんな感じなりまし…あれ?
「げっ!もう18時か。10時頃から始めたから…大体8時間も経ってるって事か!う〜ん、そろそろ戻らないとヤバイかな?…って訳で真司、悪いけど今日は落ちるね」
視界の左上端に表示させて置いといた時計の数字が、17:58を示していた。
真司に便利だからって言われて、ウィンドウの設定で時計の機能をonにセットしていたのだ。
「なん…だと。貴様、俺からモフモフを奪うのか!」
「あっ、そうゆうの間に合ってるんで大丈夫です。確か、ここでテントを敷けばログアウト出来るんだっけ?」
真司を華麗にスルーして、テントを張ろうと
したけど、そういえば灰白さん達はどうすんだろ?
一緒にテントの中に入れるのかな?
「ヒドし!確かにログアウト出来るけど、明日もログインするんだろ?だったら、俺の知り合い紹介したいし、宿取ってやるから、そっち行こうぜ!」
「えっ知り合い?」
「おう!気の良い奴らだぜ。そして、俺と一緒でモフラーなのだ!ほらほら、そうと決まれば宿へ行くぞー」
「えっ!ちょっと待ってよ」
先に行ってしまった真司を、慌てて追いかける。
こうして、ゲーム世界の最初の日は終わったのだった。
おまけ
撫でられている時の各々の反応。
上がヨシタカ、下が真司
灰白の場合
・尻尾フリフリ、目が合うとお顔ペロペロ
・ただひたすらに骨に噛り付いていた。
紅緒の場合
・頭撫でられて、うっとりスリスリ
・そこじゃない!と突かれる。
真白の場合
・じっと撫で終わるまで動かない。
・蹴る。
真司は動物は好きだけど、動物に好かれない系の男の子です。