闘技大会予選side唯
今回の内容が唯とヨシタカに別れています。
その方が色々説明しやすかったもので…
「そう、それで合ってる。弾幕から攻撃するのが基本。で、この後試合あるみたいだから行ってくるね」
1週間とはいえ、私が手ほどきした真司に勝つだなんて彼は中々戦い慣れしている。
彼はサモナーでもあり、普段なら鳥を上空に待機させているのだけれど、今回はソロでの戦いだったからね。
今日の様な戦い方になったのだろう。
まぁ、私自身が敵討ちをしようにも、彼が無差別級に上がって来ても、私が今年で殿堂入りにされるから無理なんだけどね。
しょうがないから真司に地獄の特訓でもさせて、リベンジさせてあげるかな?
などと考えつつ控え室へと向かう途中で、すれ違うプレイヤーの注目を集めているのだけれども、いつもの事なのでスルーで。
だっていちいち相手にするの面倒さい。
『さぁー!やって来ました!このゲーム最強と言えばこの人!数々の2つ名はを持つ美少女戦士!唯だーーーーー!』
去年と同じ様に運営の指示に動いて、闘技場の戦闘フロアに向かうと、司会者のソルシュガー(ソルト・ピクルド・シュガーの略)が何か言っているけれども、まぁ、美少女かどうかは置いといて、だいたい合っているからいいかな?
ポツンと立って相手が来るのを待っているのも暇だったから、ちょっとボソッと一言。
「はぁ…お酒飲みたい」
一応お酒を飲んでも、酔わないとはなっているけれど、気分的に酔った状態での戦闘とかは嫌なので我慢ではあるが、舞姫達が飲んでいるのに私だけって思うと、ちょっと気分が落ち込む。
それに、リアルだとお酒なんてもう飲めないしね。
この際余ったポイントで酔拳でも入手しようか検討していると、見知ったプレイヤーがフロアに上がって来た。
「あちゃー!初戦って唯さんですか!」
目が合った瞬間に、額に手を当てて天を仰がれるけど、そんな事は気にしない。
何故ならいつもの事だから。
私と対戦するプレイヤーの反応は2つ。
彼女の様になるか、好戦的に襲って来るか。
「久しぶり。蜂蜜」
彼女事蜂蜜は、名前の通りの蜂蜜色のふんわりした髪を顔のラインの長さにしており、両サイドの耳を出している。
顔は、名前や髪色みたいな甘さは無くキリリとした雰囲気の女性だ。
スピード重視の軽装備な蜂蜜の2つ名は「Queen killer bee」蜂蜜→蜜蜂+女王蜂で、この様な2つ名になっている。
攻撃力の高いスズメバチじゃないのは、蜂蜜を作る主な蜂が蜜蜂だからである。
「はい!お久しぶりです。負けるの確定ですが、全力で戦うんで反省点があったらお願いします!」
「ん。了解」
そう言って蜂蜜の方から拳を突き出して来たので、ご挨拶をする。
一応試合開始までの暗黙のルールがあり、両者が揃い、30秒たったら試合が始まる。
何故30秒なのかと言うと、フロアに立っていきなり試合だと、後から来た方が不利だし、私のように大振りの武器を戦闘可能状態にして歩くのって、色々と邪魔だからこそのルール。
だから、遅れた方から30秒が戦闘準備期間。
それで、もたもたしていたら武器も抜けずに袋叩きに遭う。
さて、試合前のご挨拶。
両者の拳を上下に打ち合わせ、最後に正面に叩き合う。
某ゲームが元で、アニメになった男の子2人の挨拶の仕方である。
こっちの場合は、Lvが高い方が上からとなっている。
まぁ、仲が良くないとやらない事も多いけどね。
そして、目の前にカウントが表示されて、蜂蜜との試合が開始された。
ーーーバチバチバチ、キュイン!
「ほっと」
私の関節目掛けて来た20cmほどの針を上空で躱しながら、蜂蜜の隙を伺う。
試合開始と共に蜂蜜が所持していた針、約10本ほどが雷を纏って宙に浮き、私目掛けて飛んで来た。
闘技大会のルールではフロアの場外に出ると失格になるけれど、そこの線引きはフロアの平行線以下に足がついたら負け。
なのでそのラインより上ならば宙を駆けていても大丈夫。
まぁ、フロアの外を10秒以上いても失格になっちゃうんだけどね。
さてさて、今は針の数は驚きの50本となっている。
さらに厄介な事に、蜂の針は毒を持っているって事で、あれ一本一本に毒を塗り込んであるはず。
「けど、私の敵ではないかな?」
蜂よろしく包囲攻撃系を潰す方法は簡単。
盾で叩き潰し、根元を破壊するだけ!
襲い来る針を盾で全て弾き飛ばし、私が出せる最高速度で蜂蜜の背後に回り込み、背骨を縦に割る様に私の愛剣が突き刺した。
「ゴフッ」
刺したままでは見た目が、と言うかイメージが悪いから、剣を引き抜くのと同時にこの勝負は私が勝利した。
ゲーム故に、血反吐などを吐いたりはしないけど、攻撃されたダメージの衝撃は凄まじいものだろう。
苦渋の表情のまま地面に倒れこむ蜂蜜を、急いで盾に剣を収納してから、ヒョイっと肩に担いで控え室に向かう。
地面に私が着地した時に出た土煙が、辺りにもうもうと立ち込めていたのだ。
女の子ならばそんな所に居たくない。
「うぅー。やっぱり負けたぁー!」
「HP1割しなかいんだから…大人しくしててくれないと…」
肩の上でジタバタされて、落っことして間違えて踏んづけて、死に戻りさせちゃうから大人しくしててほしい。
○●○●○●○●
「え?空飛ぶんですか?」
観客席で唯さんが出て来るまでに、ハル君から無差別級の凄さを教わってみたら、その内容は中々に常識離れしていた。
「そうだよ。僕は出来ないけどね。舞姫ー!舞姫は空飛べるよね?」
「空ー?出来るよー!やり方は人によって違うけど、多いのは結界師になって足場に結界を作るか、氷とか土とかを宙に浮かべて足場にするか、あとはスキルの浮遊と精密操作を鍛える事かな?ちなみに私は足場に氷を作るタイプー!」
そして、その場でヒョイっと片足で宙に浮かんで見せる舞姫さん。
実際には、足の下にちゃんと氷が浮遊している。
「まぁ、やろうと思っても結構難しいみたいだけどな。基本的に舞姫が言ったスキルほぼMAXにしなきゃ戦闘では使い物にならないみたいだし、練習するのにかなりの時間使うみたいだし」
ひょっこりとモフモフから顔を出した真司の追加説明を聞き、無差別級の人達は人間離れしているなぁーと思う。
「あぁー!試合早すぎて何してたのか分からなかった!」
唯さんの試合時間は1分もかからずに終了していて、特に最後は唯さんが消えたと思ったら、いつの間にか相手身体に大剣が突き刺さっているのだ!
「ヨシタカ君。ヨシタカ君。それなら、ここにリプレイってのがあるから、ここを押してスローの選択をして、動きが分かるまでスローにすれば良く見れると思うよ?」
「えっと…あっ!出来ました!」
えっと…うん。
映像を見た感想は唯1つ。
「敵に回してはいけないな!」である。
そう思わせるほどの躊躇いのない綺麗な攻撃でした。
○●○●○●○●○●
2戦目の相手は私より先にフロアに立っていた。
「なめこー!」
「んふふー!」
手を振り名前を呼ぶと、向こうもこっちに気づいたのでご挨拶。
彼女は見た目は普通?の女性で、主に双剣と僧侶と結界師使っているプレイヤーである。
赤色のさっぱりした髪型で、両耳に複数のピアス型の装飾品を付けている所が普通の女性
か?って所なんだけど、服装とかは至って普通の軽装備なので、一応「普通?」って事になっている。
まぁ、探せばもっと濃いプレイヤーはゴロゴロいるしね。
僧侶の効果は主に回復系なのだが、この僧侶のスキルを上げて行くと、結界師のスキルが解放される。
まぁ、結界師の方は完全にイメージで追加したのでは?と思っている。
だって、ゲーム関連の僧侶って、牧師やシスター、坊さんとかで、アニメとかだと結界術っぽいの使えるの多いんだもん。
なので、高Lvな彼女も結界師のスキルを所持している。
さて、そんな彼女の名前は、とあるキャラクターの顔文字で、そんな名前を付けた理由はそのキャラクターが好きだからである。
お気に入りのキャラクターが出たならば、そのグッズを入手もしくは製作するという、そのキャラ限定のオタクさんである。
挨拶だけ「んふふー!」で、それ以外は感情の昂りが無ければ普通に会話をしている。
さて、そんな彼女との勝敗はもちろん私の圧勝である。
さすがに結界師なだけあって、さっきの試合の様に1分を切ることは叶わなかった。
試合前に、「私も同じスタイルで戦ちゃおうかな?」って冗談交じりで呟いたら、「あはは…絶対にやめて下さい!そのままのスタイルでお願いします!むしろ熟練度の差を見せつけられてガチへこみしますんで!」って真顔で息継ぎもせずに言われた。
そして3戦目。
「ぶぅあーはっはっー!最強!俺と肉弾戦勝負だーーーーー!」
私よりも先にフロアに立っているこの男の名前は「真摺牡泥」で、ボディビルダーの様に「フンッ!フンッ!」って言いながらポージングを決めつつ無茶振りを言ってくる。
「おま…暑苦し」
「どうしたぁー!俺と肉弾戦は出来ぬか!臆病者めー!ちょっと強いだけで最強と言うのは、周りからチヤホヤされているだけなのではないかー?」
見た目と性格にうんざりしていたら、聞き捨てならない事を言ったかな?
「臆病者?チヤホヤされている?この私が?…いいよ、その勝負乗ってあげる。お前を完膚無きまでに叩き潰してあげる」
「そうと決まっウゲフッ!」
『おおっとー!3戦目の唯選手!試合開始と同時に相手の後頭部に飛び乗り、そのまま後ろへ叩き落としたー!』
『さらにトドメとして、相手の首に足を巻いて、肩に相手の足を担いで見事なシャチホコのポーズにしてますね』
『鬼畜ですね』
『まぁ、彼が良からぬ事を言ったのだと思うんですけどね』
のほほんと司会をしている2人だが、唯と仲が良くないほとんどのプレイヤーに、最強の名を最恐に変える試合を見せ付けて3戦目も圧勝で幕を閉じた。
○●○●○●○●○
「えっと…俺たまーにアニメでこんな動きをするの見た事あるけど…」
「うん。言いたい事は良く分かるよ」
3戦目の唯さんは、まさに修羅とか鬼神とかがピッタリの形相で相手のプレイヤーに挑んで行った。
さらに試合時間は驚異の8秒で終了である。
普通に見てる分では動きの無い最初と最後しか分からないので、スローで確認してみる事にしたのが間違いだった。
まず、試合開始と同時に駆け出してから飛び上がり縦回転をし、相手の頭上でちょうど真っ直ぐになる様にして、右手で相手の頭を掴み反転しつつ後頭部に足を絡ませる。
肩車の状態になったら、そのまま後ろに剃る様にして倒れこみ、ちょうど相手の頭に直撃する様に叩き落とす。
さらに、相手がうつ伏せに倒れた状態になっているので、そのまま背中に寝そべるようにして、足は首を絞め上げつつ、両肩に相手の足を担いで座る。
唯さんを除けば、見事なシャチホコになっているのだ!
そんな事をされている、ムキムキのおじさんには悪いけど、あんな事されたら死んじゃうって!
怖っ!なんでこんな試合になったか分からないけど、唯さん怖いよ!
「いやー!やっぱり唯っち強いねー!しかもあと1回で本戦かー!」
「うふふー!唯ちゃんには悪いけど、もう一本開けちゃおー!」
「唯の事だから、向こうで「お酒飲みたい」なんて言ってるんじゃないかな?」
「「あはは!言ってそうー!」」
後ろでは、さっきの試合の印象なんて御構い無しに、呑んべいの3人がにこやかに会話している。
「さっきの試合…結構周りがドン引きしているんですが…」
「うん…そうだね。まぁ、酔っているってのもあるけど、舞姫とかは唯ちゃんと仲が良いからね。そんなに気にしてないみたいだし、それに次の試合はさっきみたいにはならないよ」
4戦目の相手を見た時、ハルさんがガクッと落ちた。
「…なんて言ってたけどごめん。多分次の試合も荒れちゃうかも」
「えっ?」
それは、周りを見ても明らかで、中には祈りのポーズをしている人たちまでいた。
○●○●○●○●○●○
「唯さん、お久しぶりですわね!今日の勝負で、今度こそ私がアーサー様に相応しいと証明してみせますわ!むしろ、良い加減アーサー様の側をうろちょろして、彼に迷惑をかけるのをお辞めにやって頂きませんこと?」
「うわっ…最悪だ」
何が最悪だって、目の前の自称アーサーの嫁「グィネディア」が相手であると言う事だ。
いかにもな悪役令嬢の雰囲気を醸し出す彼女だが、意外と腕は良いので、長引けば長引くだけ私がイライラしてしまう。
アーサーの周りを私がうろちょろしているのでは無くって、あっちが私の周りをうろちょろするんだって言ってるのに、この女全然人の話聞かないよね。
一応アーサーの弁明をさせて頂くと、唯が抱いているアーサーのイメージは、ご主人様の娘を溺愛する執事なイメージで、会えば取り敢えずは会話をする程度の仲の良さだと思っている。
故に、アーサーに対しての恋愛感情は今の所皆無である。
それに、あんだけ散々「好きだ!愛してる」なんて言っていても、ストーカー行為は一切していないのでスルーしていた。
所が、アーサーにベタ惚れしているグィネディアは、会うたびに唯にちょっかいを掛けて来て、しかもこっちの話を聞かない迷惑ぶりを発揮しているので、唯の中の面倒くさい相手ランキング上位にいたりする。
閑話休題
「さぁ!正々堂々と私と勝負ですわ」
「うん。ちゃちゃとやっちゃお」
そう決めるが早いか、試合開始と共に私自身が持てる最高スキルで圧勝させて貰う!
使うスキルは女性限定スキル「戦乙女」で、
さらに「武芸者」も追加する。
ちなみに、男性が使うのならば「闘神」である。
スキル「戦乙女」は戦場での行動に補正がかかるスキルで、「武芸者」は使う者の任意の場所に、自信が持っている武器を出現させたり回収したりと、使う事の出来るスキルである。
「武芸者」のイメージとして、「雑種!」が口癖の王様の攻撃スタイルをイメージして頂くと解りやすいかも知れない。
「ガハッ!クッ…今回は私の負けですわ。ですけど次こそは〜」
無視無視。
面倒くさい相手には、関わらずにサッサと離れるべきってね。
取り敢えず、アーサー主催のクランに入れないって時点で察しろっての!
多勢に無勢な展開を見せて、宣言通りに圧勝して見せて、やっと予選が終了した。
「ふぅ…やっとお酒飲めるー!」
崩れ落ちるグィネディアを無視し、観客にドン引きされつつも、やっとお酒が飲めるとあって、ルンルン♪とスキップしつつ観客席に戻って行った。
今回ネタが多いです。
顔文字の部分はあの顔なんですが、普通に文字化けしたのとか含めて載せませんでした。
最近発見して、「ああ!顔文字になってるー!」って思ってw
ちなみに作者はこれのゲームとガチャをした事がある程度です。




