68 巡る輪の音
――――――――良いのかな。
あたしも好きだって、言っても良いのかな。
大好き。大好き。
そう感じるのが『あたし』なのか、それとも自分自身なのか、それももうわからないくらい―――――この人が好き。
すがりつくみたいに傍にいて、依存して、もう離れたら生きていけないと思うほど。
でも、それはあたしだけだと思ってた。
自分勝手な願いだって。
“声”が欲しい―――――いま、想いを告げる為の言葉が。
スォード。あたしもあなたが好きだって、言っても良い……?
いまは空色の瞳にみるみる涙が盛り上がり、それは後から後から溢れて頬を濡らす。
―――――…ああ、綺麗な涙。
真珠色の翅をそっと撫でれば、応えるかのように微かにふるりと震えた。
華奢な腕がそっと背中に回り、胸元に埋められた顔が僕を見上げる。
『―――…―――…』
唇が紡ぐ言の葉の形は、音無き言霊。
―――― あなたがすき。 ――――
それは君が僕の唯一になった瞬間。
君が、君だけが僕の鼓動を左右する。
例えば君が笑うとき。例えば君が涙を流すとき。
きっと僕は君の何気無い仕草にも心を動かし、想いを傾ける。
僕らが世界を違えてまで生まれ変わった理由を、今初めて知った気がする。
「…………出逢えて良かった」
此処が不安定な空の上なんかじゃなければ、シュシュを抱き上げてくるくると踊り出してたかもしれない。
とにかく、今はそのくらい幸せな気分。
だけど、僕がのんびり幸福感に浸っていられたのはごく僅かな時間だった。
突然馴染みの風切り音に混じり、ライディーンが低く警告を促す声が耳に届いたからだ。
この一月の間に何度となく聞いたそれは、『敵』を感知した際に発する声。
「――――まだいたのか!!」
腕の中のシュシュが蒼い顔でカタカタと震えだした。
このままでは確実に戦闘に捲き込んでしまう。
「昼日中にお出ましとは想定外だよ!―――――ライディーン、下に!シュシュを下ろすんだ」




