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54 三つ子の魂百まで

結局のところ飛天に都合の良い夢を見てるのは、直接あれと関わった事のない一部の上層部の人間だけさ、と殿下が嘲笑混じりの笑いを溢した。


確かに飛天の雷は強力だし軍事目的で利用できたならこの上ない切り札になるだろう。


だけど自分より遥かに脆弱な生き物である人間の指図を受ける事は、飛天とって多分業腹以外のナニモノでもない。

獣が自らの意に染まぬ行為を強いる相手を生かしておく理由など何処にも有りはしないというのに。


上の連中、自分は絶対死なないとでも思ってんのか。

あれの雷が地位や身分を考慮して放たれるとでも?

本気でそう考えてるとしたら、馬鹿すぎる。






「取り合えずあの子には後ろ楯が要だと思うんだ。それもなるべく力のある」


殿下が昨晩泊まった客室に3人分の朝食を運び込んでの小会議。

ちょっと他の隊員には聞かせられない話もするからと言ったら、ノッティが尻込みして逃走を計った。

当然連れ戻して一蓮托生の刑だ。


「今んとこ都市警備隊の預かりになってるっスよ?」


「ノッティ、期限があるんだ。特例措置で保護した場合最長で一年間。その間にきちんとした保護者を見つけてやらないと、問答無用で施設行きになる。そもそもあの子には市民権が無いから、まともに扱われる保証も何もない」


「――――滅茶滅茶ヤバイ感じ?」


「しかも下手な奴に横からカッ拐われたらかなりまずい事態になる」


利用される云々(うんぬん)以前の問題で、ライディーンがぶちギレてそこら中を焦土にして回り兼ねない。


「つまり……あの馬モドキが納得するような保護者を用意しろと!?」


一般人ではまず守りきれない。

それなりに身分があって、出来れば政治の中枢から離れている人物が最良だろう。

ライディーンと相性が良ければなお良し。


「無理無理無理無理!『今ならあの凶悪生物がもれなくセットで』とか言われたら普通の人間はケツ捲って逃げるし!!」


何のキャッチコピーだそれは。


「そーなんだよね…はぁ。相手は慎重に選ばないと」


自分から話を振っておきながら何の解決にもならなくてゴメンと殿下が眉を下げる。

昔のままのアホの子ではあるけど、殿下のこういうところは嫌いじゃない。


多分ライディーンも。




空になった食器を下げる為に客室を出ようとした際に、殿下が僕を呼び止めて何やら手招きをした。

ガサゴソと制服の隠しに手を突っ込んで取り出した物を、ぽんと僕の掌に置く。


「必要ないかとも思ったんだけどね。状況次第では入り用になるかもしれないだろ?」


だから渡しておく―――――――そう言って、悪戯が成功した時の子供みたいにニヤリと笑った。













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