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26 慟哭

何故もっと気を配ってやれなかったのか。


やっとの事で笑顔を見せてくれるまでになったのに。

漸く馴染んだ居場所から勝手に連れ出しておいて不安にさせて。


見知らぬ場所に一人きりにされたら、心細さで怯えぬはずがない。


「……ごめんっ…シュシュ…」


振り絞られる悲鳴のような叫び。

こんな声を聞きたかったわけじゃ無い。








*******************








だれか   が    いて   いる






『――――――――死んじゃやだぁ…っ!』


死ぬって、誰が?


『蘇芳ちゃん、蘇芳ちゃん!!――――――駄目ぇっ………!いやあぁぁぁっ!!


(――――――――真珠…………?)


……………………いつもの…………夢……?


初めて見る、『あの場面』の続き、だ。


これは、『誰』の、視点ゆめ……?





路面に倒れ伏した『私』の姿。


そのすぐ傍に転がるのは、破損した大きな店名入りの看板ボード

あれに直撃されたら確かに終わりだろう。


即死か、『私』。


何処か現実味が薄いのは、苦しんだ記憶が無いからか。


それに。


これはただの夢だ。


例え幾度繰り返したとしても、自分がどれほど感情を入れ込んだとしても。


それはけして『僕』の記憶ものじゃ無い……はずなんだ。


『蘇芳ちゃんっ!!――――蘇芳―――…』


………ああ、そんなに泣くんじゃないよ。

死んでも死にきれないじゃないか。

真珠が笑うのを一生ずっと傍で見ていたかった、なんて、女どうしにしては重たい本音を生前うっかり漏らしてたらどうなってただろう。


真珠あのこは引くかな?それとも笑う?


――――それでも泣かれるよりは、ずっと良い。









 



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