22 君を連れて
結果的に僕が副長からもぎ取った休暇は4日間になった。
警備隊員には届け出無しで守護する都市を離れてはならないという規則がある上、長期の休暇になると緊急時に備えて所在も明らかにしておかなければならないため手続きが非常に面倒臭い。
因みに“長期休暇”は5日以上からで、今回の休暇申請は紙切れ一枚で済んだ。
「おやまあ!スォード坊っちゃんじゃありませんか――――――んまぁ!大きくおなりで」
「久し振り。急に押し掛けて悪いねバーサ、部屋は空いてるかな?」
「ホホホ、当然でごさいますとも。オーナーのお身内の方々が何時なんどきおいでになられても良いように、常に別棟のご用意は致しております」
市街地から馬車を南に走らせて数時間。
やって来たのはエムローザの郊外にある風光明媚な湖沼地帯。
都市部からそう離れていないにも関わらず美しい景観が楽しめると評判の、長閑な観光地だ。
あのまま街中で過ごしていたら、絶対何かしら理由をつけて仕事に引き戻される可能性が高かったから、さっさと支度をして逃げて来たわけなんだけど。
一緒に連れて来られたシュシュは状況が呑み込めていないようで、車中ではずっと身を縮こめて不安そうに僕にしがみついて離れなかった。
「シュシュ、降りておいで」
ちょっとした旅行のつもりで身内が経営する宿に予約無しで押しかけたのは良いんだけど、馬車が停まった途端肝心のシュシュが座席の隅っこに蹲って動かなくなってしまった。
あー…、今更になって言葉が通じないのがこれほど歯痒くなるとは。
「言葉がだめ……となれば…」
このところスキンシップは我慢してたからなぁ。
主にシュシュの思春期疑惑で。
「シュシュ」
もう一度馬車に乗り込んでその身体を膝に抱き上げる。
突然知らない場所に連れてこられて混乱してるんだろう。
本人は目的も何も理解出来ていないんだから、仕方ない。
なるべく力を入れないようにそっと抱いて、髪を撫でる。久し振りの手触り。
何度も梳いてから目元に滲んだ涙を指で拭うと、今にも捨てられそうな仔犬のような目でうるうると見上げられて、思わず悶絶しそうになった。
「………………………っっ!!」
あー…もうっ、何コレ!この破壊力!!
人目がなかったら迷わず獣と化して頬擦りしまくってること受け合いだよ!
「…………シュシュは何処にもやらないし。此処へは休暇を一緒に過ごそうと思って来たんだよ。綺麗な場所がいっぱいあるから、のんびりしよう?」
いつものように視線を合わせてゆっくり話す。
どれくらい理解されているかは分からないけど、安心感だけでも伝わるように。
お互いの目にその姿を映して、笑って。
やっとの事でシュシュを馬車から抱いて連れ出すと、かつての伯爵家の使用人であり今は宿の女主人を務めるバーサが神妙な顔付きでおかしな事を言い出した。
「………成人した殿方の御趣味に口を挟むのは気が引けますが……随分とお可愛らしい方とはいえ、そのように年端もゆかぬお嬢様にご無体な真似をなさるのはバーサは感心致しませんよ」
違うし!!




