13・5 日常小話
《ある新人隊員の独白》
あたしが15番隊に配属されて何に一番驚いたかって、そりゃ職場にもんの凄い美人の男前がいたことでしょ!
取り敢えず目を疑っちゃったね!
男だらけのむっさい職場に、いたよ!
正に『掃き溜めに鶴』!
首から上だけ見てたら凛々しい美女。
なよっとした感じはこれっぽっちも無くて、端正な顔立ちに切れ長の眼が涼しげな正統派美人。
思わず『お姉さま』とお呼びしたくなりましたー!
それでいてそこいらの男よりずっと背が高く、一切の無駄な肉が削ぎ落とされた身体は思わず親指立てたくなる素敵筋肉!(見たんかい)
お洒落なのか単なる無精なのか肩の下辺りまである濃紺の髪は、女も羨むサラツヤの光沢。
コレだけ差を見せ付けられたら、女の矜持もへったくれもありゃしませんて。こんちくしょう!
で、普通これだけ容姿に恵まれてたら、鼻持ちならないナルシストか節操の無しの漁色家にでもなってそうなんだけど、不思議と色事には興味が薄そうで、じゃあ何?もしかしてソッチのヒト!?とか妄想してたら。
見ちゃいました。
あたしと同じ時期に他所の隊から配置がえで15番隊に来た男三人組が、先輩を見た目通り優男と判断してタチの悪いからみかたをしてるのを!
その容貌で男と何人寝たとか、一遍相手をしろだの聞くに堪えないタワゴトを抜かす相手に先輩は、いっそ優しい微笑みを浮かべてこう聞き返しましたよ。
「君達は男と寝るのが好きなのかい?」
それを好感触と捉えた馬鹿共が「ああ」と返事をした瞬間。
―――――――美女がキレた。
近くで見てても何をどうやったのか分からなかった。
あっという間に男三人を床に引き倒した上でギリギリと肋を足蹴にしながら、実に涼しい笑顔で仰いましたよ。
「僕は何が嫌いって、男に欲情する輩がこの世で一番嫌いなんだ。―――――――悪いけど、その足の間にブラ下げてるもの、使いモノにならなくさせてもらうよ。残しておいても害悪にしかならないしね」
と!!!!
自分達から吹っ掛けておいて一瞬で立場を逆転された男三人は、「あれは嘘だ」だの「ただの冗談じゃないか」だのと見苦しく足掻いたものの、結果的には背中を丸めて股間を押さえるという非常に間抜けな格好でスゴスコと何処かへ消えて行ったのデシタ。
因みにナニをどうされたのかサッパリ見当がつかなかったので、あとから先輩と仲の良い人に然り気無く聞いたら―――――――。
「あいつ、また剣を使ったのか…」
と、渋いお顔。
「え、でも抜いてませんでしたよ」
「奴の剣は属性持ちなんだ。抜かなくても使いようはある」
属性剣てアレ?
物によっては国宝とかにもなっちゃうアレですか?
「因みに属性は?」
「……………雷」
………ああ。
ズドンと一発、デスか。
それで良いのか、国宝級。




