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11 真名
短いです。最短です。
『名前を付けてあげたらどう?』
―――――そう言われてちょっと考た。
とても大事なものだからそう簡単には決められないし。
『大事なもの』
その言葉がスイッチになったのかもしれない。
日中の覚醒時だというのに『私』の記憶とでも呼ぶべきものがふと頭をよぎって、突然あることを思い出した。
『私』が大事にしていたもの。
『―――――あたしはあんまり好きじゃないわ、この名前。だって昔の女優みたいで古めかしいでしょ。“真珠”なんて』
『そんなこと無いさ、よく似合ってる。綺麗な名前じゃないか』
『でもあたしは、蘇芳ちゃんにはいつもの呼び方して貰う方が嬉しいよ』
「――――――『シュシュ』」
声に出したら少女は不思議そうな顔で上を見上げた。
「……君の名前、“シュシュ”にしよう」
瞬きもせずに此方を見詰める目。
今はケープの下に隠されている真珠色の一対の翼を思い浮かべながら、小さく囁く。
「僕の宝物だから、君にあげるよ」




