プロローグ
いつまで続けるのだろうか?この怠惰な日常を。
少年は思う。
自分には力がある。このぬるま湯につかりきった日々を破壊し、黒く染めてやるだけの力を持っている。
ならば何故それを行使しないのか?
生物的欲求に従い、破壊と殺戮のかぎりを尽くせばいいではないか。
それが本来の自分にふさわしい。
……見栄をはるのはよそう。
正確には「持っていた」が正しい。
今の自分には、かつての力はないのだ。
きっと、普通の十六歳男子となんら変わりないと思う。
……言い訳をしよう。
だから自分は、平穏な日々に身をおいている。
破壊者である自分が、平和を満喫できるわけがない。
そんなことはわかっている。
なのに、繰りかえす。昨日と変わらない平穏を今日も望む。
明日も続けばいいのに、なんて考えてしまう。
自分は変わったのだろうか?だとしたら彼のせいにちがいない。
……だが、もう何度目かもわからないこの葛藤は、もう終わる。
破壊者としての本能が察知している。
平穏は終わる。自分の意思に関わらず、幕を閉じる。
新たな幕開けは、きっと本来の自分にふさわしい舞台だ。
そのとき自分は、どうするべきなのだろうか?
自分を堕落させた彼を――どうすればいいのだろうか?