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Consideration

 ちょっと厨二じみてます。

 後半の部分はのりのりで書きました。後悔はしていない。

 ―――物語は終わり、本は閉ざされ、世界への扉もまた閉ざされる。本というのはその世界へとつなぐ扉であり、そこから文字を通してその世界をのぞき見る。

 思考の中にもまた世界が広がり、他愛のない幻想ですら、世界を作り出す。

 夢、想像、妄想……なんだっていい。そうすることで世界は創られ、具現する。

 世界を作り出すのが神ならば、夢を抱き、想像する人は、その己のうちに多いか少ないか、大きいか小さいかは別問題として、世界を創り出せる。

 ならば、人が神であるのもまた、間違った思考ではないだろう。

 ―――装うなかれ、社会的なしがらみに縛られて、それから身を守るために己の内の世界を滅ぼしてはならない。そのとき確かにその世界は存在しているのだから……。



 慎吾は目を覚まし、すぐに己の精霊に文句を言う。

『今の、お前か? 厨二の戯言みたいなものは』

『ああ、だが戯言というのはいただけないな。あれは真実だ。お前はまだ世界を滅ぼしていないからな。滅ぼす前に警告を入れただけだ。それにその証拠は我自身だ。我は人の概念が創り出した精霊だからな。確かに全て本当というわけではないが、ほぼ真実だぞ。詳しい説明がほしいか?』

『もちろんだ』

『ならば問おう。お前は意志の力を感じたことがあるか?』

『ないとは言わない。物理的な力としてみたことはないが、人に行動をさせるのは意志の力だろう』

『ああ、意志の力は、己の内にのみ働く力だ。それは人を行動させ、その精度を変える。だが、それだけではない。意志の力は己の内の概念や夢、想像、妄想に力を与える』

『おいおい、それじゃあ厨二のやつらはみんな無駄に強くならないか?』

『何を勘違いしている。あくまでも意志の力は己の内にしか作用しない。その力が形を変えても物理的な力にはなりえない。厨二のやつが全員己の内の世界を具現する力を持っていれば話は別だが、そういった力を持つものは今度は別の法則によって意志の力が弱くなる』

『法則? つまり自分の中の意志が弱くなるってことか?』

『ああ、そういった力を持つものは、何百という妄想を繰り広げる。それぞれに意志の力が分けられればそれだけ一つあたりの力の割合は少なくなる。よく考えれば分かるはずだ。人は現状では満足できない。そして、唯一つだけではあきてしまう。そうなれば次にいく。そうすればまた新しい世界で妄想を続け、また次に、次にといって最終的には何百という数になるんだ』

『そうならない奴もいるだろう』

『お前もそうだがな。そうならないやつはそんなにいない。そしてその力を固有魔法という。固有魔法は基本的な一本軸から派生していく。その派生はどんどん根源に近づくタイプと、どんどん膨らんでいくタイプがいるが……お前はどうやら前者らしい』

『何でだろう。先ほどまでそんなやつは厨二病だとかいろいろ思っていたが、自分もそうだって言われると思わず前言を撤回したくなる』

『気持ちは分かる。だが、お前は厨二秒のタイプではない。固有魔法も概念タイプではないからな』

『概念タイプ?』

『概念タイプはどういう自分だったらいいなといった妄想が形を成すタイプで一番数が多いが、固有魔法では一番弱い。精霊のようなものならいいのだが……。ほかにはトラウマタイプとか、夢想タイプとか、一番使いにくいのが世界タイプだな。ちなみにお前はこれだぞ』

『使いにくいのかよ』

『世界タイプはお前の場合は夢に見る世界を具現するものだ。固有結界とかいろいろ言われるものとは少し違うが、そのあたりの説明としては、固有結界は心象風景の具現と近いものではあるのだが、固有魔法の場合は違う。固有魔法は己の夢の世界をこの世界の上に広げるというのは似ているが、大きく違う点が固有結界はあくまでもそいつの心象風景。それを力技で現実にあらわすから簡単に崩れ去る。だが、固有魔法の場合はそれもまた真実の世界。術者の思いのままにはしにくいが、その分一度広げたらそこから抜け出すことは難しいし、崩れにくい。まあ、お前の魔力じゃ一生かけても具現化できんが』

『それ、何の意味があるんだ?』

『大いにある。世界の具現はできずとも、世界の中身をこの世界に具現することはそこまで難しくない』

『つまり世界の中の都合のいいやつをこの世界に引っ張り出すってことか……それにはとりあえず自分の世界に入らないとだめだろう。夢で見ることはあるけど、中に入ったことはないぞ』

『何を言う、入るのはもっと簡単だ。いつも入りかけているじゃないか』

『いつ?』

『考え事をしているとき』

『思考の海に沈んで、そこで考えているが、そのとき入りかけているといわれても』

『さらに深くもぐれば難しくない。そのときは入れるのは精神だけだが、それでも問題はないだろう。恐らくはその世界は我がお前の中に入ったときに蓄えられた知識に反応してできたお前の夢だからな。そこでは魔術によって何でもできる。そこでできない魔術はない魔力要らずの魔術式たち……それこそがお前の固有魔法の真髄だ』

「やったー! もう完璧」

 思考の外で彩香が騒ぎ出す。

「璧の点は抜けてないだろうな」

 そして、慎吾は精霊との会話をやめ、現実に戻った。




 ―――いま、ここに男の尊厳をかけた戦いが勃発していた。

「貴様にはそんなこともできんのか!!」

 大声を出して身振り手振りでその主張を戦わせる男子生徒。

「お前は、あれの屈辱がわからないからそんなことがいえるんだ! やってから出直して来い!!」

 慎吾もまたその戦いの中心で力説を始める。

「だが、たかが一人の屈辱で、あれの許可が下りるのならば……慎吾! お前を倒して俺は理想郷(アガルタ)に行く!!!」

 ほかの男子生徒は武器を構え、慎吾を倒してでもその意見を突き通すつもりでいた。

「やれるものならやってみろ! あれを白紙に戻すためなら……クラスメイトが血祭りになろうと、容赦はしない!!!」

 どんどん白熱する場に、一滴の雫が落ちる。

「いや、だったらこの話自体をなかったことに……」

「「「いいから口を出すな!!」」」

 だが、この白熱した場にたかが一滴の水は何の役にも立たない。まさに焼け石に水である。

「いいか野郎ども! これは聖戦だ!! 俺たちの理想郷のため、この邪悪な異端者を打倒するのだ!!!!」

「「「うおおぉぉぉぉ!!!!」」」

 そういって士気は最高潮まで高まる。それに対する慎吾もまた。

「っは! 数をそろえれば良いわけではないんだよ! 僕は、僕のプライドを守るため、この戦いに負けるわけにはいかないっ!!!」

 そうして、先生が現れ、生徒会が現れ、ほぼ全ての教師が動員されたところでこの騒動は終息した。



 ―――事のはじめはこうだった。

「えーと、文化祭で何をやるか決めまーす。やりたいことがある人は挙手」

 間延びした声でやる気なさそうに進行を始める代表。

「はい」

「どうぞ」

 一人の女子生徒が手を上げ、意見を出す。

「女装男装コンテストをやりましょう」

 一瞬の静粛の後、何事もなかったかのようにその意見は黒板に書き出され、次の意見を待つ姿勢になった。

「はーい」

「どうぞー」

 次に男子生徒が手を上げ意見を出す。

「喫茶店をやりましょう。表の学校ではよくやってるらしいですよ」

 ―――うちの学校では禁止されてたが……。

「もう意見はありませんか?

 ―――無いようなので決議に移ります」

 そうして決議され、“ほぼ同数”で喫茶店に決まった。

「喫茶店についてもっと詳しく決めていきましょう。提案者は司会をしてください」

「まず、俺が勧めるのは“メイド喫茶”だ!」

 バンッ! と効果音が聞こえて男子からは拍手、女子からはブーイングが飛ばされる。

 そのまま話し合いは男子対女子で進み、結論として『男子からもメイドと執事を出し、女子からもメイドだけでなく執事も出す』という女装男装が込みのもので落ち着くと、今度は誰が女装をするかで戦いが始まった。

「女子としては刈谷君には出てほしいと思います」

 という女子からの発言で始まり、あのバトルに移るということだ。



「―――えーと、つまりメイドの格好をしたくなかったから抵抗し、こっちはメイドの格好をさせたかったからこうなったと……」

「そうです」

 幼女様は一つため息をつくと。

「一日だけなんだからやってあげればいいじゃない」

「あなたは僕のプライドを何だと思っているんですか?」

「塵芥」

 その回答に、慎吾は涙した。

「ああもう面倒くさい! 生徒会長の名の下にこの企画を許可し、刈谷慎吾はメイドとしてこの企画に参加することを命じます!」

 こうして、刈谷のプライドは砕け散った。


                        BAD END?



「―――まあ、こんなことで砕け散るプライドなんて持ってないんだが……」

 慎吾のプライドが砕け散るのならもうすでに砕け散っているだろう。

「刈谷君、衣装合わせするから来て」

「―――了解です」

 しかし、その心に大きすぎる傷跡を残した。



 報告

 刈谷慎吾を捕らえるのに先生十四名、生徒会役員四名が使われた。しかし、その状態で刈谷は四十分逃げ続けるという荒業をやった。

 逃げに徹すると相当捕らえるのは難しい模様。


 反省はしている。後悔はしていない

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