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A boy transfer to school of magic. 1

 サブタイトルの英文が間違ってたらすいません。

 暑い、何が暑いかといえばこの教室の温度だろう。


 ―――魔術実践室。


 寒い、寒いのはこの教室の温度だ。


 ―――魔術実験室。


 まず、火系統の魔術を見学した。

 次に、そのまま水系統の魔術を見学した後、風の魔術の見学をした。

 何度か“目”を使ってしまったが、さして問題はない。

 何よりも理解した。


 ―――この目使ったら筆記テスト100点取れる自信がある。


 見えないところも認識できる。それはつまりほかの人のテストの答案や、先生の持つ答えなどを盗み見れるということだ。

 ―――別にやらんが……。


 この学園で最も重要なのは実技、それで点数が取れるかといわれれば……。

「うん、無理だね」

 それはそうだろう、僕みたいな特別鍛えているでも運動してるでもない青年がいきなり剣で戦っても勝てるわけがない。魔術で先に倒す?そんなことできるものなら剣なんて持たせないだろうに。

 つまりはそういうことだ。

 皆さん魔術を使って物の数秒で間合いをつめまーす。

 最初は20メートル程度はなれているものの、間合いをつめるのに要する時間は1、2秒。

 単純計算秒速10メートルから20メートルである。対応できるわけがない。

 こちらに行くと決めて、雫に最初に言われたのは『魔術さえ使えるようになればそれでいいから』とのこと。

 あの雫がこういう風に言うということは絶対に落ちこぼれると思っているということだ。

 まあ、それもそうだろう。

 僕の魔術特性は知識、すなわち知ることに特化し、戦うことは苦手だということだ。

「っへ、そんな魔術も出来ないのかよ。クズ」

 ゆえに、どれだけのことを言われようともともとそこまで大きく傷ついたりしないが、今回の場合はまったくといっていいほどになんとも思わなかった。

「無視か? おいおい、そんなことしていいのかよ。俺がちょっとやればお前なんて魔術世界では生きていけないんだぜ」

 言う男は一応名家の長男で力もある。恐らく今戦えば負けるのは必須。負けるというより、瞬殺されるといったほうが正しいかもしれない。

 だが、一つだけいえる。

 ―――殺し合いならば、こいつを殺せると。

「はっはっは、お前はどうやらそんなことできないと思っているらしいな。だがな、俺は百家の一つ、藤崎家の長男だ。一般的な魔術師の就職先にはコネを持ってる。お前一人路頭に迷わせることぐらい朝飯前だ」

 ふんぞり返る男、だが、その姿は隙だらけで、雫に一週間でも剣術を叩き込まれた慎吾としては一歩、歩み寄るときに魔術で剣を作り出し、そのまま相手を一刀両断できる自信があった。

 ―――身体強化の強化倍率は、魔力浸透率と元の身体能力に比例する。

「ちなみにいいことを教えておいてやるよ。俺の魔力浸透率は25パーセント。御三家に匹敵するからお前ごときの身体強化じゃ俺の不意をつけてもダメージを通すことなんて……」

 ―――ゆえに、慎吾は身体強化において、魔力浸透率というでかすぎるアドバンテージがあり、それを考慮すると、世界で5本の指に入るほど身体強化で強くなるのだ。

 一歩踏み出し、手刀を作って魔力を込めて使う部分だけを強化する。

 一瞬で手は音速を超え、そのまま手刀は男の持つ剣を叩き折った。

「…………っえ?」

 男の取り巻きが背後から魔術を発動させようとするのを振り返らずに知覚し、分解しよう(バラそう)としたが、雫に止められたのを思い出し、寸前で回避して男にぶつけさせた。

「ああぁぁぁぁぁ……………」

 男は呆然としたところを魔術の雨に襲われ、気絶していた。ざまあみろ。

「お、お前!」

 取り巻きの一人が怒りをあらわにするも、そんなことは無視だ。だって無視しても何も変わらないから。―――足が震えているぞ。

「そうそう、そいつに伝えといてよ。あんまりやるとはげるぞって。

 ―――いや、もう手遅れか……」

 最後のほうはほかの人には聞こえないほど小さくなっていた。恐らく同情からだろう。

 それを聞くと取り巻きは必死になってうなずき、逃げ出していった。

 ―――こいつ置いてくなよ。

「―――あまり校内で喧嘩はやめてほしいんだが……」

 一人に顔立ちのととのった男が現れ、ため息をつく。

 このクラスの代表である。

 この問題児だらけのクラスにおいて代表としてがんばっている白髪の目立ってきた青年だ。

「まだ白髪はないぞ!」

「まて、僕は口に出していないはずだ」

 思わず反論すると、

「目を見れば分かる」

 さすがは言われ慣れているだけある。白髪よりはげの方が可能性は高いが……。

「それはそうと、慎吾、お前に呼び出しが掛かってるぞ。姫から」

 姫、もしくはロリ、それか幼女様。これが我らの生徒会長の一般的な呼び名だ。

「ああ、あの幼女様か……そんなまずいことやったか?」

 ちなみに、この呼び方で分かることがある。

 姫と呼ぶ人は会長に敬意を少なくとも表面上は持っている人。

 ロリはまったく持っていない人。

 幼女様は面白がっている人。

「お前はこの一週間で一週間の規則違反の数の歴代記録33を上回った兵だからな。呼ばれる理由が分からないことはないだろう」

 そう思うのは間違いだ。なぜなら……。

「―――逆だ。これだけやってきて呼び出しは幾度となくあったが、職員室に呼び出される以外のことなんてなかったからな。どれが原因かわからないんだ」

 ―――現在、木曜日。

 規則違反数、48件。内、職員室の呼び出し14件。

「それ、おかしい」

 ため息が聞こえてきた。



 ―――慎吾のやった規則違反は半分ぐらい仕方ない。

 48件の規則違反のうち、29件が決闘示唆である。

 決闘示唆とは、成績下位者が上位者を挑発し、決闘を申し仕込ませてそれを断るというものだ。

 決闘システムは、お互いの意見の食い違いなどを遺恨を残すことなく解決する方法で、上位者によるいじめを警戒して上位者の申し込みを断れる権利を下位者が持っているというものだが、それを利用して下位者が上位者を挑発して決闘を断った場合、それが客観的に見て悪質であれば違反となる。

 慎吾は、喧嘩による隙を突いての瞬殺は得意だが、正々堂々と言う勝負は圧倒的に苦手だ。隙を見つけにくい。

 ゆえに決闘は転校してきたばかりで最下位にいることを利用して喧嘩になりそうになっても決闘システムを上手く使って逃げようとしてきたのだ。

 逃げるが勝ち。まさしくそのとおりだと思っているのだ。少しは同情の余地がある。

 5件が校内での無断魔術使用。

 これは知らなかったから仕方ない。仕方ないったら仕方ない。

 残り14件は喧嘩。これは全て職員室呼び出しのおまけつき。

 今回のように奇襲で全滅させた場合のこと。ちなみにそろそろ本気で怒られる。少し前までは大目に見てもらえたのに……。



「幼女様、なぜ僕は呼び出されたのでしょうか?」

 生徒会室につくなり開口一番でそういった。

 目の前の大きないすにちんまりと座る少女が頭を抱えて、

「開口一番にそれ? まず謝罪とかじゃなくて?」

 大きないすに小さいのが座るから余計に小さく見える。

「そもそも、ちょっと(・・・・)規則違反をしただけで生徒会室に呼び出されるというのは理解できません。ここに来るのにどれだけの苦労があったか……」

 生徒会のメンバーは治安維持などの関係で一部の生徒に恨まれている。そういった生徒の対策にここに無断で入るのはとてつもなく難しいのだ。

「―――じゃあ何で正面から入ってこないの? というかよく無事で来れたわね」

 これた理由は“目”を使ったからである。

「だって、正面であの怖い人が目を光らせて待ってたから、正面から行ったら逃げれなくなるな……って思ったんだ」

 怖い人→生徒会書記、慎吾がちょっと前に喧嘩で吹っ飛ばした人。

「だからといって忍び込めることに驚きだけど……まあ、いいか」

 一つ息をつくと、

「とりあえず、呼ばれた理由は分かる?」

 その問いにはすでに答えができている。

「もちろん! 知らない」

 ガタッ!といすから滑り落ちる幼女様。なぜあの体勢から転げ落ちるのか理解できない。

 よろよろと立ち上がり、

「あなたはこの一週間で一週間の規則違反の数の歴代記録33を上回ったの。呼ばれる理由が分からないことはないでしょう!」

 そういってこちらに詰め寄ってくる幼女様。

 おお、デジャブ。

 もちろん、これに対する答えも用意されている。

「これだけやってきて呼び出しは幾度となくありましたが、職員室に呼び出される以外のことなんてありませんから、どれが原因かわからないんですよ」

 そういった瞬間、慎吾は背後から迫る面倒ごとの気配をかぎつけ、二歩右に動く。

「このくそ野郎が!!」

 だいぶ言葉遣いがほころび始めた藤崎家長男、これじゃあ決まっている婚約を解消されてもおかしくないような状態である。

 見るからに目は血走り、口からは少々よだれがたれ、すでに剣は抜いておりそれを振り切った状態で固まっていた。

 恐らくは慎吾を攻撃しようとしたと思われるこの行動も、現状的に見て、『ロリコンの変態が狂って、凶器を持って幼女を誘拐しようとしている』としか見えない。

 ゆえに、思わず慎吾は卓上の電話を使って職員室に内線をかけて、

「すみませんが、生徒会長室にロリコンの変態と思われる人が突撃して来ました」

 通報していた。

「はあ? あなたは誰、何組? 犯人は?」

 こんな意味不明の電話にきちんと対応する先生もすごいだろう。

「ちょっと、明らかにそれは嘘……と言い切れない……」

 少々後ろでなにやら幼女様が言っているが、そんなことは気にせずに続ける。

「僕は刈谷慎吾で2‐Fです。犯人は2‐Aの藤崎真太郎。恐らくはいつも生徒会で顔を合わせている会長に欲情し、とうとうそれが爆発したのだろうと思われます。

 しかし、残念なことに僕はこれに対応できるだけの力がないので、このまま退避し、応援を呼ぼうと思います」

 そういうと一方的に電話を切り、窓を開けてそこから逃げ出す。

 幼女様も、生徒会長という立場があってそれを止めれず、変態を食い止めることになる。

「藤崎、あんた変態じゃなかったら落ち着きなさい!」

「コロスゥゥゥ!!!」

「だめだ、何があったか知らないけど完全に理性を失っている……」

 何があったかというと、ちょうど慎吾が会長に会ったとき、藤崎もそれに気付いた。

 だが、ちょうどそのタイミングで言伝を頼まれた取り巻きが慎吾の言った台詞を全て伝えたのだ。

 そう、言伝を頼まれたやつは地獄耳で、なおかつ聞き逃さないように集中していたので慎吾が最後に言った『―――いや、もう手遅れか……』という部分まで伝えたのである。

 言伝を頼まれたやつは知らなかったし、本当にそうだとは思ってもいなかったが、藤崎はハゲだった。

 原因はもともと幼少期から皮膚が弱く、皮膚病で髪が薄くなっていたのだが、そこにストレスが合わさってはげていた。

 ずっとかつらでごまかしてきたが、暇つぶしで“目”を使っていた慎吾にとって、それはすでに知っていたこと。だから藤崎にどれだけ言われようと先にハゲという事実を思い出し、それのやつ当たりだろうとおもって無視することに決めたのだ。

 だから、何を言われてもなんとも思わなかったのである。だが、そのストレスが原因でさらにハゲが進行したという事実については、慎吾は知ろうとしなかったので知らなかった。

 今まで誰にもばれていなかったハゲという事実をよりにもよってあんなやつにばれるとは思ってもおらずしかもそれについて恐らくだが同情までされていたということと、もともと抱いていた怒りと合わさって、否、掛け合わさってここまで暴走したのである。

 要するに、幼少期からのトラウマ(ハゲ)を掘り返され、さらにその傷口にハバネロ(同情)を塗られたのだ。

 自尊心の強い彼にしてみればそれは発狂するほどのものだったのだろう。

 まあ、そんなほとんどどうでもいいことはさておき、変態(ロリコン)の烙印を押された彼は、変態(ロリコン)といわれたことをまったく知らずに邪魔者をどかそうとしていた。

「がああぁぁぁ!!!」

 対する我らが生徒会長幼女様は引いていた。

「何でこんな変態の相手をしないといけないの!!」

 変態は剣を叩きつけるも避けられ、そのままの勢いで振り下ろしたため折れてしまう。

 とっさに周囲を見渡し、壁にあった甲冑の槍をつかむと邪魔者に突き出す。

「何でこの変態は槍をこんな狭いとこで使うのよ!」

 幼女様が懸念したのはこの部屋の中にある幼女様の私物やら、私物やら、書類やらが槍に引き裂かれないかというものだったが、案の定、槍はあたりのものを引き裂いていく。

 もし仮に藤崎が正気で振り回していたらこんな風に室内に必要以上のダメージは出ない。

 だが、正気を失っている変態に、そんな精密なコントロールは期待するだけ無駄であろう。

「ああ、私のお気に入りが!」

 幼女様のお気に入りタマゴボーロが地面に散らばる。

 そこで幼女様は考える。なぜこうなった?と。

「がああああぁぁぁぁ!!!」

「黙ってろ!」

 そういって雷を変態に落とすと考える。

 なぜこんな状況になったか。

 それは、この変態がここに現れて暴れたからだ。

 ならばなぜここに変態が現れたか。

 それは、刈谷がこいつを叩きのめしたからだろうか? 否、さすがにそれだけの理由でここまでするやつだとまでは思っていない。

 思考が止まる。これ以上自分には理由が出せない。

「ああ、幼女様。お疲れ様です。はい、タマゴボーロ」

 そういって慎吾はポケットからタマゴボーロの袋を出し、与える。

 その様子はどう考えても子供にお菓子をあげる高校生の図だった。

「わーい、ありがとう。それはそうと刈谷……」

 そういってタマゴボーロを受け取ってそのまま慎吾の手をつかむ幼女様。

「何でしょう? 手を離していただきたいのですが」

「なぜ彼がこうなったか知りませんか?」

 そうじっと目を見てたずねる幼女様に、

「さあ、知りません。よく撃退できましたね。慣れてますか?」

 と返す慎吾。

 幼女様には嘘をついている人を見分けるぐらいの自信はあったが、慎吾は本当に知らなかったし(予想はついていた、嘘をつきなれているのでそれがばれることはなかった。

 それを少々不満に思いつつも、

「そうそう、こいつ相手は初めてだけど襲われるのは何十回とあるの」

 そういって慎吾の手を離し、にこりと微笑む幼女様だった。


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