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An innocent observer

 この結末をバッドエンドと呼ぶかどう呼ぶかは人それぞれです。


 ―――F-01からF-00000までの魔術式を解析、整理、変換、設置の完了。


 ―――I-01からI-00000までの魔術式を解析、整理、変換、設置の完了。


 ―――問題発生、R-0101の変換に失敗。新たな理論の想定……完了。理論検証……Rタイプの全てのパターンにおいて相互使用の可能を確認。以下Rタイプにおいてこの理論を使用する。また、旧タイプは念のため保存。


 ―――分類不可のタイプの出現、以下これをXタイプとおき、それぞれ固有の理論の解析を始める。


 ―――αタイプの理論を更新、仮説を実証するため、それぞれにおいて確認を行う。


 ―――統一理論の可能性を発見、解析を最優先事項として設定。


 ―――X-1の解析に失敗。他の方法を持って解析を開始する。


 ―――Xタイプを除く、全てのパターンにおける魔術理論の基盤の完成。それに基づき、新たな魔術を実験的に作成……想定の範囲内の結果。以後、誤差の修正を急ぐ。




 ―――基本魔術理論を更新。計算を行い、新たに魔術を生み出して理論の実証を行う。

 ―――千パターンの結果、誤差をコンマ0001未満までにすることに成功。当面はこの魔術理論を使用してXタイプの解析を最優先に設定。



 ―――X-1の解析に失敗。他の方法を持って解析を開始する。



 ―――X-01において基礎理論を反転させた結果、理論の上に当てはめることに成功。以後、基礎理論の変換によってXタイプの確認を急ぐ。


 ―――X-001からX-0000までの理論を基礎理論からの変換によって理論上に当てはめることに成功。ただし、それ以外のものは誤差の範囲ですまないレベルでの違いを観測。基礎理論の変換以外の方法の使用をもってその他の理論の解析を開始する。



 ―――X-1の解析に失敗。他の方法を持って解析を開始する。




 ―――X-000000の解析に成功。



 ―――X-00000001の解析に成功。





 ―――X-1の解析に失敗。他の方法を持って解析を開始する。


 ―――X-1の解析に失敗。他の方法を持って解析を開始する。



 ―――X-1の解析に失敗。他の方法を持って解析を開始する。




 ―――X-1の解析に失敗。他の方法を持って解析を開始する……。



 ―――X-1の解析に失敗。以上をもってX-1の解析を断念し、魔術理論による魔術の方式化を終了する。


 ―――継続してXタイプの考察に移る。


 ―――Xタイプのパターンのうち、基礎理論の変換、付加理論の改変、応用方式の合成によって解析できなかったものはX-1のみである。故にこのタイプをケース0とし、Xタイプよりはずし、基礎理論の変換をX₁、付加理論の改変をX₂、応用方式の合成をX₃とする。


 ―――Xタイプは総じてあらゆる共通理論からであり、Xタイプから共通理論の発見の可能性を提唱。理論実証のため、Xタイプによって共通理論を確認。これの確認をもってこの考察を終了する。




 ―――Xパターンによる共通理論の確認を終了。誤差を従来の千分の一にすることに成功。この誤差は観測上観測しきれないものによるものが強いと思われるため、理論による誤差修正を終了する。また、これをもって世界を用いた実験を終了し、整理された情報を保存。


 ―――これをもって全工程を終了する。




 目を覚ます。

 しみ一つない天井と、なにやら調理するような音。

 身体に異常はなく、頭の中はすっきりしている。体内時計が狂っているのか、朝日を夕日と間違えた。どうやら半日ぐらいずれているようだ。

 ずっと前から何の反応もない“目”に意識を移し、ようやく気付いた。

「―――あれ?」

 いない。あのラプラスの悪魔がいないのだ。最後に話したのはだいぶ前。しっかりといなくなった時期は覚えていないし、別にいなくてもいいが、一応気にはなる。


 ―――回想すること十分。ようやく思い出した。


「ああ、あの天使に襲われてからか」

 すっかり記憶から出ていたあの天使との対決。はっきり言って今なら多少は打ち合えると思うが、勝てるかと聞かれたら首を傾げるだろう。

 扉の向こうに人の気配を感じ、そちらに顔を向けるとレオナが入ってきた。

「あら、起きたの」

 そういう声になぜか疑問も驚きも何もない。

 まるでこいつは今日僕が起きることを知っていたかのようだ。

「ああ、心配かけたか?」

「うん」

「それはすまなかった」

 中身のない会話。この会話に形式以外の何意味もない。

「“前は無理やり押しかけたみたいで悪かったな”」

「そうね、これからは気をつけてほしいわ」

 この受け答えで、瞬間的に理解した。

「―――何年待たせたかはわからないが、いろいろとすまない」

「―――そうね、本当に長く待たされたわ」

 このとき、お互いに記憶を持っていることを理解した。否、確認した。

「はぁ。

 僕はなんかよくわからないけど、そっちは何で記憶を持っているんだ? こことは違った可能性の世界の記憶を」

 その問いに答える声は軽かった。

「特異体質みたい」

 慎吾は頭を抱えてため息をついた。



「さて、お互いに情報を交換したところで、そっちから僕のこれに対する考察を聞かせてほしい」

 議題は慎吾のうちの“観測者”について、害は全くないのだが、それが何であるかを考察し、アタリをつけることに意味はある。

「そうね……まず前提条件として、その記憶は一回分なのね」

「ああ」

 この世界から読み取れる記憶は一度の人生分でしかない。

「それじゃあ、その観測者があなたのうちに入ったのは恐らくそのときの人生で……観測者に心当たりはない?」

 ―――あるといえばある。ないといえばない。

「――――――――――」

「黙っててもわからないんだけど、心当たりはあるみたいね」

 そういうとレオナはこちらに近づき、鼻と鼻がくっつきそうになるぐらいまで近寄ると、

「この距離なら、私があなたを拘束するほうが早いわよ」

 この台詞を聞いた瞬間、本能的に土下座して話し始めてしまった。

「―――えっと、たぶん、僕です」

 考えられる“観測者”は刈谷慎吾自身。

 ―――レオナ曰く、最後にあってから七千年と少ししたところで急に意識が飛んでこの世界でまた意識を取り戻したそうだ。

 それは刈谷慎吾がそれを切り裂いた時期とも一致する。

 それからの記憶はないが、そこで何かしらがあったのであれば納得できなくもない話である。

「“観測者”についてはもう何もいえないわ。

 ―――で、解析できなかったっていう0って何の魔術なのかいい加減に言いなさい。それがわからなかったら何故それが解析できないのかも見当がつかないでしょう」

「―――――――」

「……………」

 黙っているとレオナはなにやら立ち上がり、

「ゴフッ!!」

 一瞬で距離をつめ、鳩尾に拳を入れ、目の前でひざを寸止めすると席に戻った。

「ゴホッ、ゴホッ……物理法則無視の上級基礎魔術だ」

 物理法則無視……これだけ聞くとものすごくすごそうに聞こえるが、実際のところある程度までの威力のものになるとこの魔術が組み込まれる。故にある程度のレベルの魔術師なら誰しもが使える魔術でもある。

「え? それって魔術として使用できたの?」

「できなくはない。正確にはできるけどやる必要性と効率と結果を考えるとやらないほうがいい」

 通常状態でのこの術式を使う理由…基本的になし。

 また、効率…結果がほぼゼロのため最悪。

 さらに結果…何度も言うようだがほとんどなし。

「―――使えないわね」

「単体だとどうしても…な……」

 人は物理法則を無視したとしてもそれほど大きな成果を挙げられないのだ。

 ちなみにこの物理法則無視の魔術だが、速度的な制限解除がほとんどであり、重力などは別の魔術に分類される。よく使うのが早い魔術で音速を超えるものによく使ったりするものだ。慎吾はよくお世話になっている。

 なにやら哀愁漂う中、話は戻った。

「で、だ。話を戻そう。

 0…要するにこの物理法則無視の魔術だが、これだけその他すべてにおいてほかの魔術との関連性が見えていたんだが、この魔術にその気配はない。

 これだけがもともとある法則の無視だからだと思うのだが、それにしてもつじつまが合わない。

 この魔術だけ妙に負担が少ないし、式も結果に対して簡単だ。解析しようとしてもできないのは“あまりにも簡単すぎる式”であるからだ」

 例えば、ファイアボールを使うのに使う要素は大まかに分けて三つだ。

 1 温度の上昇

 2 炎の顕現

 3 炎への速度の付与

 大体これらの三つになる。もちろんこの三つ以外にもあるのだが、それをすべてあげるとそれだけで百を越すので割愛させていただく。

 これはより上位の魔術を使うとこの要素は増えていく。

 例としてはフレイムランスというものの要素は大きなところではこれ以外にさらに三つ。

 4 炎の固体化

 5 炎の質量増加

 6 着弾時に起爆

 さて、これで計六個だ。それでもかなり簡単にだが、本来であれば三百以上の要素がある。もちろん意識して使ってはいないが。

 これ以上上位の魔術になるとほかの魔術と併用して使われる。

 まあ、細かく言ったら“おおよその魔術は他の魔術との複合である”がここでは一般的に使われている魔術の複合という意味で使わせてもらう。

 例としてはファイアストームだ。

 これはファイアボールとウィールウィンドの複合魔術で風の上に炎を乗せる魔術である。

 これに使われる要素はファイアボールとウィールウィンド、そして物理法則無視の要素をあわせたものだ。

 言ってしまえば、物理法則無視の魔術はほとんどの場合において複合魔術にしか使われない。

 魔術同士を複合するときの拒絶反応をなくす意味がある。だが、それ以外でも身体強化とともに使う人もいる。

 この魔術を構成する要素はたった二つ。

 1 法則の無視

 2 世界による修正の無視

 これだけだ。それに2はどの魔術にも使われているものなので事実上一個だけといえるだろう。

 また、要素をこうやって挙げた理由はそれが術式に関係してくるからだ。だが、この魔術だけは法則性がまったくなく、あるところでは複合魔術においてAの働きをし、アルマ術式ではBの働きをするのだ。さらにはその優先事項などに一貫性はなく、気まぐれといっても過言ではないレベルである。

「―――理解はしたけど納得できない。それだけなら何で分類できないの?」

「そう簡単に言うな。まるでこれだけ別の言語で書かれ……」

「どうしたの?」

 途中で慎吾は黙る。

 ―――そうだ。何故想定しなかった?当然気がつけた問題だ。というよりもあの言語が全てをあらわすとは限らないんだからそれ以外で示されたものがあってもおかしくない。

 魔術の体系が全て同じでないのと同じようにそれを構成するものが全て同じでなくてもおかしくはないのだ。

「なんだか、すごい思い違いをしていたのかもしれない」

 冷静になって、少し時間がたって答えが浮かんでくる問題があるように、この問題の答えは実はとっても単純なのかもしれない。



 ―――丘の上には巨大な魔術式が描かれ始める。

 これは証明であり、ありとあらゆるものを観測するために与えられた英知の結晶であった。

 ―――これだ、これを僕は求めていた。これだけを無限に続くループの中で探し続けていた。これこそが魔術の深淵、あらゆる魔術の真髄、根源。

 届かぬが追い続け、ようやく追いついたモノ。それはこの世界をもってしても抱えきれる知識の量ではない。

 だが、そこに何の問題があろう。ここにあった。ここにその英知を顕現させることができた。その地点で、この物語の存在意義は全て失われたのだから。



 後悔はしない。この結末は最初から決めていました。(途中経過は別として)

 ちなみに、この結末も、本編の結末も気に入らないあなたへ、慎吾が幸せに死ぬ結末はありません。何があっても刈谷慎吾という人物は不幸とその性格の所為で最後は絶対にこれ以上にひどい死に方です。

 例えば罪人として処刑、その場しのぎの生贄、権力者の暇つぶしに殺される、見てはいけないものを見て口封じに殺される等。

 その辺りに比べれば今回と本編の結末はなんとも幸せに死んでます。

 本編:目的が達成できたかはおいておいて攻撃まではできた。

 今回:知りたかったことが知れた。

 なんといい結末でしょう! 我ながらこいつがこれ以上幸せに死ぬなんて考えられません。(つうかこれ以上幸せにしてやるもんか)


 いろいろとネタバレ?なことも含めて書きましたが、たぶんこれで刈谷慎吾について書くことはないと思います。修正などはするかもしれませんが、次の作品で会いましょう。

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