プロローグ(2)
ぐるぐるぐるぐる回転している。なんだこれ。寝起きにこれはヤバイ。一周回って興奮する。いやそれより吐き気がヤバイ。危うく喉に逆走してきて──。
◆
歪なログインを体験した俺が降り立ったのは闘技場だ。視界の端に表示されている時間は11:55でかなり時間が危うい。
既にここには人が溢れている。なるほど、トップギルドのチーム戦だけはあるな。とか他人事のようにいってる場合じゃない。
適当に観衆をかき分け受付であるNPCに辿り着いた。
「すいません。ギルド【極振り】のおっさんです」
NPCに話しかけた。
「はい、決闘の参加ですね?」
NPCの無機的な笑みに頷きで返したところ、後ろから先輩に話しかけられた。
「今日は遅れなかったようだね!」
「誉めてくれると喜びます。誉めてください」
先程の電話の主である。リアルだと俺に敬語だけど、こっちじゃ気さくに話しかけてくれる。ちなみにアバターというか容姿はめっちゃ好みです。高すぎず低すぎず絶妙な身長であり、ほつれがない、キレイでいい臭いが絶対しそうなそのセミロングな髪からピョンと飛び出た耳が──
◆
チーム戦の説明をすると、五分間における3:3の決闘である。勝敗の判定はチームの全滅あるいはタイムアウト時の総HPだ。
注意が必要なのは残りHPが八割をきると戦闘不能になることぐらいで、他は大まかに常識である。
◆
──くそ! 転送された!
「おう、おっさん。間に合ったのか」
先輩の隣にいた筋肉が話しかけてきた。通称店長。必然ルール上三人必要なわけで。当然もう一人必要なわけで。俺と先輩の愛のチーム戦が……。
「先輩のモーニングコールで起きました。ごめんっす」
切り替えて、素直に謝る。
「別に間に合ったならいいさ!」
がはは、と快活に笑い、俺の背中を叩いた。ははっ痛い、痛いよ、痛いです、痛いって──
「──ダメージ受けてます!」
洒落にならん。1割削られた。馬鹿力め。
和やかな雰囲気と反転、先輩は前を見据えて、一言呟いた。
「──そろそろ始まるよ」
こちらの空気も一転。遊びといえど、遊びじゃない。さながら格ゲーマーのように、どれだけ普段温厚でもやってる最中は最低一人を殺してそうな本気であるように、凍った。
心拍数がはねあがる。
──開始の合図が鳴った。