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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
99/450

第九十九話 ご愁傷者様カス雑草




この程度の内容でここまで長引くなど、誰が予想出来ただろうか……

―前回より―


「(本当はスコップがありゃ良かったんだが、今は贅沢など言っちゃあおれん。蚊に刺されねーように気を付けながら、奴の根を重点的に潰してやらねぇと!)」

 執拗に地面を斬り付けては爆破して、リューラは地中深くに眠るアルポの根を探る。

「(物理はアレだが、生物の授業ならちゃんと覚えてんだ。植物細胞は光合成で栄養素をこそ作り出せるが、動物細胞のように自分で魔力を製造・供給するっつー機能は原則として備わってねぇ。葉脈種を形作る第三次こそ例外だが、被子植物を形作る第二次は能動的に魔力を作るって事が事が出来ず、地衣類や裸子植物を形作る第一次に至っては溜め込むという機能さえねぇ!)」

 ※あくまで科学理論にファンタジーを織り交ぜた中途半端な世界観での設定なので真に受けないように。


「(奴が幾ら頭良くて魔術の才能があろうと、モトを正せば結局は単なる知恵の付いた木。となりゃ、魔力を供給する手立ては地中から吸い取り続ける他にねえって訳だ。つまり奴の根さえ掘り起こしちまえば、あとは貯蓄分の魔力が尽き果てるのを待てば良いだけの話になる。まぁそれをやった所でまだ『奴の魔術を封じた』というだけの話なんだがな。今のところは無事だがあの蚊共が繁達を襲わないとも限らねぇし、場合によっちゃアルポ自ら皆を殺しにかかるかも知れん……まぁそん時はまた策を練るさ。どの道奴にそこまでの頭はねぇ!)」

 剣と弾幕の強さ故か、それともリューラの怪力故か、アルポの根を覆う土はどんどん削られていき、遂に外骨格で覆われた太い根が露わになった。

「おっし! 根が出たッ!」

 口々にやめろやめろと叫ぶ蚊の頭を尻目に、リューラはアルポの外周を渦巻き状に掘り進める。本体に攻撃を当てて障壁を発動させないように、しかし近距離を何度も何度も、ヒトを逸したスピードとパワーで迅速に地面を掘り起こしていく。

 そして僅か1分後、アルポを地中から支えていた六本の根を掘り起こしたリューラは、アルポの周囲を跳ね回りながらその根を剣で力任せに殴りつけ、そして無理矢理引き抜いていく。一本の根が引き抜かれる度に蚊の頭一つ一つが悲鳴を上げ、傷口からはよくわからない色合いの体液が流れ出ては土に吸い込まれていく。

 アルポを支える根を全て引き抜いたリューラは、未だ謎の体液が流れ続ける傷口目掛けて髑髏型弾幕を放つ。そして当然アルポはそれに対抗せんとして、魔術で障壁を展開する。障壁以外に何か使う魔術は無いのか等と突っ込んではいけない。所詮蠱毒の作った噛ませキャラである。

 少々の間は何とか障壁で爆発を凌ぎきっていたアルポであったが、魔力供給の要たる根を失った以上最早それにも限界が来てしまう。


「くそ!」

「くそっ!」

「魔力が!」

「魔力がない!」

「障壁が!」

「出ないっ!」

 六つの頭で途切れ途切れに叫び続けるアルポに、リューラは言った。

「どうした? 魔力が無くなったらそれで終いか?」

「黙れ!」

「黙れ!」

「黙れ黙れ黙れ!」

「この下等生物如きが!」

「我を殺そうなど!」

「烏滸がましいにも程があるぞ!」

「蚊になり損なった雑草の分際で一々五月蠅ぇんだよ。さっきから聞いてりゃ『黙れ』だの『下等生物』だの、それしか言うことねぇのか? まともな語彙力も無ぇ癖して一丁前に領主気取ってんじゃねぇよ」

 そう言ってリューラは剣の一振りで周囲に群がる蚊20匹余りを瞬時に斬り殺しながら、ゆっくりとアルポに歩み寄っていく。アルポは尚も蚊の群れを量産して立ち向かおうとするが、根の喪失と破殻化状態での体液流出に伴う養分欠乏が原因で、次なる実を産み出すという行為そのものが出来なくなってしまっていた。


「くそっ!」

「くそっ!」

「よもや我が!」

「至高の存在である筈の我が!」

「こんな下等生物如きに負けるなど!」

「有り得ては――っがァァァァァァ!」


 アルポの幹に現れた頭の一つを、リューラの剣が刺し貫いた。


「至高の存在……か。テメェがそう思ってんならそうなんだろうぜ、テメェん中ではなぁ!」


 そう叫びながら、リューラの剣が彼女から見て右側の頭を切り落とした。


「ま、まだ解らぬのか!? 貴様はヴァーミン保有者に刃を向けて――

「それがどうしたぁっ!?」

「アッー!」


 リューラは更にその隣の頭を左手で掴み言う。


「私はヒトの肩書きについちゃとやかく言うが、それだけでそいつを評価したりはしねぇ主義なんだよ。そういうのって何か、つまんねえだろ?」


 問い掛けつつもリューラは、掴んだ頭を力任せに引き抜いた。


「びぎゃぁぁぁぁぁ!」

「そんな事言ってっからよォ……」

「な、何だと言うの――

「テメェは何時まで経っても『木』止まりなんだよ!」

「めぎゃぁぁぁぁぁ!」


 続く頭を拳で正面から叩き潰したリューラの暴虐はまだ止まらない。


「あ、悪魔だ! 貴様こそまさしくっ! この悪魔めが!」

「悪魔?この私がか?おいおい、止せよ。そんなオルドビス紀の売れないギャグ、今更使った所で寒いだけだろうが。私はあくまで平和主義者だ。それもステレオタイプ、まさに平和主義者のテンプレぶち込んだようなタイプのな」

「平和主義者だと!?」

「どの口が抜か――

「はい、アウトォー!」


 その一声と共に、残る二つの内の頭一つがリューラの右脚によって蹴り飛ばされた。


「いいかぁ? 平和主義者ってのには二つあってな。普通の意味合いじゃ『場の空気を和やかに保つ事で平和を維持しようとする奴』の事だがだが、時と場合によっちゃ『平和のために全力で暴力的になろうとする奴』の事をも言うんだよ。んな事も知らねぇでよく私を下等生物なんて呼べたもんだなオイ。大人しく光合成して酸素作ってりゃ平和に生きられたかも知れねぇのによ」

「だ、黙れ! お前に我の何が判る!? 知性を持った植物の何が判るというのだ!?」

「何もわかんねぇよ。理解する気さえねぇよ」

「何だと貴様ぁ!? 大気を汚し水を濁し地を腐らせる知的生命体が植物に向かって――

「その話題からして既に終わってんだよバカ雑草がァ!」

「な、何!? 貴様環境問題を蔑ろにする気か!?」

「黙れ雑草。植物の分際で偉そうな口利くんじゃねえ。大人しく光合成してろっつたろうが。そもそもテメェが出てから何か蠱毒の執筆に対するノリが悪くなって閲覧数も四日前から下がり調子、話自体も何か微妙になっちまってんだよ」


 確かにそれは事実だが、作者の個人的な事情を敵キャラクターの所為にするというのは如何な物だろうか。


「何をわけのわからない事を言っている!? それに三日前はパソコン検定に合格し、昨日は欲しかったカードを安値で購入、試しに回した手札も絶好調と状況そのものはさほど悪くも無いだろうが! そもそも話が面白くなくなったのは蠱毒成長中(このアホ)自身の責任であり、我には何の罪も無いは―

「五月蠅ェェェェェいっ!」


 壮絶な叫び声と共に、リューラの振り翳した剣が残された最期の頭を幹諸共両断した。そしてアルポの絶命を引き金に、それまで寂れた草村だった土地が驚くべき早さで密林へと姿を変えていく。それと同時にリューラの右半身も元の異形然とした姿に戻る。どうやらモスキートの能力は解除されたらしい。


「土地が本来の姿を取り戻したってか? まぁこの際んな事ぁどうでもいい。それより皆だ。おいバシロ、何時まで寝てる気だ? さっさと起きろ」


 リューラが右肩に語りかけると、ファスナーが開き中から何時も通りのバシロが現れた。


「よう、リューラ……何か草村入ってからの記憶が無ぇんだけどどこに落っことしたか知らねぇか?」

「敵に持ってかれたんじゃねえのか? さっきまでお前ら、敵の攻撃で眠ってたし」

「何、敵だと?」

「おう、ついさっきぶっ殺した」

「ぶっ殺した……? 一体どんな奴だったんだ?」

「それについては追々話す。それより先ずはこいつら叩き起こすぞ」

「そうだな。こんな所で寝てたら風邪は引かねぇでも何か別のもんになりそうだしな」

「それと秋本のクソ野郎が隠した遺産だ。それがそもそもの目的だしな」


 かくしてリューラの活躍により無事アルポの麻酔攻撃から解放された一行は、繁が搾取した記憶を頼りに遺産探しへと繰り出した。

次回、遂に廃洋館の主が姿を現す!?

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