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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
95/450

第九十五話 超独裁的矮小領主アルポ


ダルク・アルポの不遇はまだまだ続く。

―前回より―


 それからというものの、アルポはリューラを始末しようと次々と眷属達を(けしかけ)けたが、何れも悉く惨敗を喫していった。


 あるものは察知され攻撃に失敗し、あるものはリューラに踏み潰され、あるものは飛びつこうとするも失敗しそのまま転落死。酷いケースでは、背中に飛びついての吸血を企てるも服に染み付いていた薬品の所為であっけなく死亡するという者まで居る始末。

 かくして散々な有様の元に敗北し醜態を晒していく眷属達の姿は、アルポにとってしてみればこの上なく不愉快であった。


《ええい、何と言うことだ! 何故我が眷属達の力を以てしても全く歯が立たないどころか、逆に劣勢に追い込まれる!? あの霊長種、あれは一体何者なのだ!? 我が力が及ばないばかりか、我が支配下を堂々と闊歩するなど! 一体どういう事なのだ!? まるでわけがわからんぞ! この草原こそは我が領地にして帝国! 即ち我こそが法規であり、我こそが神であらねばならない! 故にこの地に足を踏み入れし不届き者は、余さず裁かねばならない! 即ち、我が手で覚めること無き永久の眠りに苦しめられる義務があるのだッ! それだというのにあの霊長種、我が裁きを受けて尚我が領土を土足で踏みにじるするばかりか、兵達の黄金より尊き命までも奪いおってからに! 許さん……断固、決して、必ず、絶対に、何があろうとも、例え宇宙の法則が乱れようとも、貴様だけは許さんぞ雑兵めが! 我が帝国を荒らし回った貴様は、我自身が直々に裁いてくれる!》


―同時刻・草村―


「……はぁ……結局収穫無しか……」


 あれから暫く探索を続けたリューラだったが、結局有益な調査結果は得られなかった。

「ごめんなぁ皆、どうも私じゃ駄目だったらしい。せめてバシロが返事してくれりゃ、何か変わったかも知れねぇんだが……」

 座り込んで落胆するリューラだったが、ふとここである事を思い付く。

「そうだ、外部だ。供米のおっさんに電話して助けに来て貰おう。いや、直接人を寄越してもらうのは駄目だ。そうしたら援軍までこいつらの二の舞になりかねんし、おっさんの部下は今処女殺し対策に回してるかもしれん。今の私に必要なのはあくまで情報だ。情報優位性アドバンテージさえ手に入れればどうにでもなる!」

 早速リューラは携帯電話を用いて供米に連絡を取った。

『もしもし、供米ですが』

「もしもーし。供米のオッサン?」

『その声は嶋野殿ではありませぬか。一体どうなされたのです?』

「や、今ちょっと厄介な状況に陥ってんだよ」

『厄介な状況、とは?』

「単刀直入に言うと、私以外全員が熱帯雨林の中で意識を失っちまった」

『何と!?』

「多分敵の攻撃だろうが、黒物体まで返事が出来ないレベルまで押さえ込まれてんのはどう考えても可笑しい。巻き添えを食らう危険性も考慮して増援を寄越せなんて贅沢は言わねぇ。そっちで誰か、情報収集の得意な奴に状況の調査を頼みたい」

『畏まりました。私の部下に最適な者が居りますので、至急調査に当たらせましょう』

「恩に着るぜ、供米のおっさん」

『いえいえ、最早ここまでお力をお貸し頂いた以上あなた方は最早セルヴァグルの市民と言っても過言ではありません故。ただ此方からもお願いが御座いまして、そちらの状況について少々詳しい説明を頂けませんか? 例えば現場の状態や風景等、如何に些細な情報でも構いませんので』

「それなら言われるまでもなくこっちから伝えようとと思ってた所だ。そうさな、まず風景についてだが――」


―同時刻・市役所二階・処女殺害事件対策臨時本部―


 通話を終えた供米は、再び据置電話の受話器を手に取った。

『もしもし、神官様ですか?』

 受話器の向こうから聞こえてきたのは、少々儚げだが澄み切ったように美しい女の声だった。

「あぁ、私だ。突然で悪いが、お前の力を貸してはくれないだろうか?」

『私の力、ですか?』

「そうだ。お前の力が必要になったのでな」

『「書架」……ですか?』

「何か問題でもあるのか?」

『いえ、問題など何も。ただ、例の怪物や殺人犯についての情報は何処にも見当たりませんでしたので、お役に立てるかどうか……』

「それでも構わん。今回調べて欲しいのは、処女殺しの犯人でも謎の怪物でも、ましてや空き家に潜む何かについてでもない。恐らくは魔術によるものであろう、ちょっとした怪奇現象についてなのだ」

『魔術による怪奇現象、ですか。その程度ならばお役に立てるやも知れませんね。少々お待ち下さい。今そちらへ向かいますので』

「あぁ、待っているぞ」


 通話を終えた供米は、背後に向き直って言った。


「さてお前達、早速だがそろそろ仕事にかかれ」

「はーい」

「御意」

「オウ」


 供米の呼びかけに答えたのは順に、煌びやかな極彩色の羽根を持つ華奢な羽毛種、山羊とも鹿とも駱駝ともつかない偶蹄目らしき禽獣種、重厚感溢れる原始的な外観の竜属種の三名であった。彼らはハピ達と同じく供米の運営する児童養護施設で育った孤児達であり、彼の教えを色濃く受け継いでいた。


「トッビィ、来客だ。茶と茶菓子の準備を頼む」

「はいは~い」

「茶葉は来客用と書かれたものの右隣を使え。茶菓子は冷蔵庫にある草餅か栗羊羹だぞ」

「判りました~」

 煌びやかな極彩色の羽根を持つ華奢な羽毛種こと、極楽一族と呼ばれる血統の末裔であるトッビィは、供米の指示を受けて早速給湯室へ向かう。

「アルマ、お前には客人を迎えに行って貰いたい。頼めるか?例の女なんだが」

「承知致しました」

「宜しく頼む。送り迎えには公用車を使え。くれぐれも事故の無いようにな」

「はッ」

 偶蹄目らしき禽獣種ことアルマは供米から公用車の鍵を受け取り駐車場へ向かう。

「神官、神官、俺様ノ仕事ハ何ダ? 俺様ノ仕事ハ?」

「落ち着けライコーダ。お前の仕事は……そうさな……」

「マサカ何モ考エテナクテ、ソノ場ノ流レ的ニ俺様モ込ミデ呼ビ付ケタナンテコトハナイダロウナ?」

「そんなわけがあるものか」

「デハ早ク仕事ヲ寄越セ! 待タセルナ!」

「お前こそ保護者をそう急かすものではないわい。待て、今探しとる」

「探シテイル!? 探シテイルトハドウイウ意味ダ神官!?」

「だから慌てるなと言うんだ。取り敢えず外に群がっているマスゴミ共をどうにかしてこい」

「ソレガ仕事カ?」

「そうだ。さぁ、早く行け。思う存分暴れ回ってこい」

「心得タ!」

「ただしブレスの類は使うなよ。あと誰一人として殺すな」

「判ッテイルゥ!」


 かくして竜属種・ライコーダをも送り出した供米は来客―基、部下のとある女を待ち続けた。


「頼むぞクアン。この一件にはまさしくお前が適任なのだ」

次回、クアンが持つ力の実態とは一体何なのか!?

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