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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
92/450

第九十二話 ほうそくっ!:後編


―読者の皆様へのお詫び―

前回掲載分に表記されていた『十一人目の被害者』の氏名を間違えてしまい、読者の皆様に多大なご迷惑をお掛けしていることを深くお詫び申し上げます。

―前回より―


「何だ? まだ法則があるってのか?」

「あぁ、ある。さっきは日付の話をしたから、次は時刻について話すとしよう」

 バシロの問いかけに答えた繁は、更なる法則性を証明するため時計盤を模した紙束を手に取った。

「連中の殺しが『夜明け前』と『日没後』―つまり、太陽の出ていない時間帯に行われるって事はもう分かり切ってると思う。だがそれだけじゃ情報としては不十分だ。夜明けと日没をそれぞれ午前と午後の六時と仮定しても時刻の特定は不可能だし、12時間交代ごとに交代で被害者候補を見張るなんざほぼ不可能な話だ。だが、殺害時刻の法則性は十分絞り込める」

「何をどうすんの?」

「それを今から話す。とりあえず、こいつを見てくれ。これは一人目の被害者が殺害された時刻を図示したものだ。時針を緑、分針を黄色で表してある」

 紙製の時計盤には確かに、緑と黄色の線が1時19分を指し示すように描かれていた。

「次に二人目が殺された時刻は3時26分、三人目は18時20分、四人目は21時8分、五人目と六人目は23時15分、七人目は2時45分、八人目は19時03分、九人目は20時9分、十人目は0時56分、そんでさっき報告のあった十一人目は2時36分。この時点で判ることは精々、各位数値の和が全て11になるという事だけで、このままじゃまだ不十分だ。しかしこの図面をちょっと工夫して、分針を0まで戻した図面にしたのを重ねてみると……こうなる」

 繁が殺害時刻の図示された半透明な板の束を重ね合わせると、時針を表す緑色のラインが大きく四方に分類出来る形となった。

「つまりそれぞれ気まった時間帯に殺しを行うって訳だ。一回目、五回目、九回目は23時から翌1時台、二回目、六回目、十回目は2時から4時台、三回目、七回目は若干推測も入るが17時から19時台、四回目、八回目はこの流れから言って20時から22時代…」

「つまりその四パターンを順番に繰り返してるんだな?」

「そういう事だ。言い表し方がよくわからんが、時計盤にある三の倍数を起点にした前後二時間の間とでも覚えておきゃいいだろう。無論、日の照ってない時間帯でな」

「シカシ何故ソンナヤヤコシイ時間帯ニ殺シヲ?」

「さてな。そこは計りかねるが、法則性がまだあることは確かだ」

「日付、時間帯と来ましたが……次は何についての法則性です?」

「次の鍵は被害者の名前だ」

「名前?」

「そう、名前だ」

 そう言って繁は小振りな紙を差し出した。紙面にはアルファベットで表記された十の人名が縦に並んでいる。以下がリストアップされた人名の一覧である(尚、前回表記されていた11人目の名前は誤りであったため急遽修正した)。


 Thierry Etowaruzu(ティエリー・エトワルズ)

 Nathalie Toramonto(ナタリー・トラモント)

 Anna Campbell(アナ・キャンベル)

 Luri Eto(江藤瑠璃)

 Tara(タラ)

 Emmy (エミー)

 Nancy Tagami(田上ナンシー)

 Ally Cranston(アリー・クランストン)

 Lena Elliott(リーナ・エリオット)

 T omie Ejima(江島富恵)

 Nora Trudeau(ノーラ・トルドー)


「これが今までに殺害された被害者の名前だ」

「さっき死体が見付かったヒトのまで書いてるじゃん。何時の間に?」

「大急ぎで書き加えたんだよ。で、何で俺が被害者の名前を態々アルファベットに書き換えたか判るか?」

『さて……何故です?』

「それじゃまだ判んねぇな……もう少し判りやすくなんねぇか?」

「判った。んじゃ少し待ってろ」


 繁は白い紙とシャープペンシルを取り出し、一枚目の紙に書いてある被害者達の名前を迅速に書き写していく。

「よし、出来た!」

「早っ!?」

 その間、僅か20秒。幾ら何でも早すぎである。

「これで判りやすくなったろ」

 そう言って繁が差し出した紙には、以下のように書かれていた。


 Thierry

 Etowaruzu

 Nathalie

 Toramonto

 Anna

 Campbell

 Luri

 Eto

 Tara

 Emmy

 Nancy

 Tagami

 Ally

 Cranston

 Lena

 Elliott

 Tomie

 Ejima

 Nora

 Trudeau


「お、何か見えてきたような……」

「縦読みがヒントのようですね。何かの文章でしょうか?」

「或イハ単語群カモシレンナ」

「もう少し答えに近付けてみるか」

 そうして繁が手を加えた紙は以下のようになった。

「これでそれぞれの名前の頭文字を読んでみな」


Thierry

Etowaruzu

Nathalie

Toramonto

Anna

Campbell

Luri

Eto

――――

Tara

Emmy

Nancy

Tagami

Ally

Cranston

Lena

Elliott

――――

Tomie

Ejima

Nora

Trudeau


「[T],[E],[N],[T],[A],[C],[L],[E]……」

「テン…タ……ティーン、テイ……」

「…[Tentacle(テンティクル)]……触手って意味だねぇ。もしかして、これが答え?」

「そうだ。被害者のイニシャルを繋ぎ合わせると、刺胞動物や軟体動物が持つ『触手』を表す[Tentacle]という単語になる。これが現時点で判る最後の法則だ」

「成る程。つまりここから次の犯行日時と被害者をある程度限定的に割り出せる訳ね」

「そうだな。但し注意すべきはそれでも限定的であるという事と、諸事情で名字を持たない者の場合は複数一度に殺されるという点だな」

「……そう考えっと、ミドルネーム持ちとかも狙われるんじゃねえか?殺した奴のイニシャルでテンティクルって単語作れればいい訳だしよ」

「確かにその可能性も捨て切れませんね」

「良し……あとはこの事を供米神官やムチャリンダ市長に報告して……っと」

 繁は説明に用いた紙類を仕舞い込みながら言った。

「こっちはその間に、秋本の隠し財産を探さねえとな……」

次回、秋本の隠し財産を探す繁達の前に新たなる脅威が!?

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