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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
90/450

第九十話 メイデンコープス



衝撃の事実を知った繁達は……

―前回より―


「……とんでもねぇな」

「うん……あんな展開になろうとは思いもしなかったよ」

「まさか師匠があんな研究をやってたとはねぇ……」

「何にせよ、このデータは絶対外部に流しちゃならんな」

「そりゃそうだ。外に漏らさないよう、ちゃんと管理すると誓うよ」

「あぁ。俺らも全力で捜査にあたる」

「絶対に解決するとは言わないけど、力の限り頑張らせて貰うから」

「有り難うよ。くれぐれも気を付けてね」


 かくして供米を呼び付けた二人は、彼に連れられ地下施設を後にした。


―同時刻・廃洋館内部―


 青白く発光する虫を詰め込んだ空き瓶を明かりに、謎の生物達が円卓を囲んでいた。その中には前々回に姿を見せた緑の肥満体と奇妙な骨格の生物も居り、果実や鳥囓りながら会話に興じている。


【以上が本日の報告事項になります】

 青い甲殻を持つアシナシトカゲのような細い生物は報告を終え、席に着く。

【うむ、御苦労であったなイリーよ。さしたる異変もなく、母上様も平穏なる日々を謳歌しているようで何よりだ】

【少し前までは生きるので精一杯だった母上様が自ら進んでお料理に挑戦なさるだなんて、何とも微笑ましい事だわ】

 などと語らうのは、それぞれ黄金色と白銀色の外皮を持った肉食恐竜のような生物二匹であった。黄金色の方は筋肉質な男性的なフォルム、白銀色の方は艶やかな女性的フォルムがそれぞれ特徴的だった。

【母上様の笑顔が増え、更なるヒトらしさを取り戻しつつある事は大変喜ばしい事と思います。しかしだからといって不安が無い訳ではありませんが……】

 等と不安げに語るのは、何処か虫を思わせる外観のヒューマノイド。背中をマントのようなもので覆っており、外見だけなら凄まじい威圧感がある。

【何を言ってやがる。俺等がそんな弱気でどうすんだよ? 元より後が無かった俺等に存在意義をくれたのは母上様だ。となりゃ、是が非でも母上様の為に戦って死んでいくのが俺等の定めて奴だろ?】

 八本足の赤い巨獣が強気に言った。元々血の気が多く好戦的な性格なのであろう彼は、既に戦場にて敵兵をその剛腕で薙ぎ払う自らの姿を思い浮かべているようだった。

【ヴィクター、貴方の勇猛さと志はまさに我が一派一と言えるでしょう。しかしながら、むやみやたらに死に急ぐ事が美徳であるとは思わないで下さい】

【そうですよヴィクターさん。幾ら母上様を守り切れても、肝心の私達が死んでちゃまるで意味ありませんし】

 ヴィクターと呼ばれた赤い巨獣に、赤銅色のヒューマノイドとイリー――先程席に着いた青いアシナシトカゲのような生物―が穏やかに諭す。

【それもそうだわな。まぁ俺も母上様取り残して勝手に死のうなんて馬鹿な事を本気で考えてる訳じゃねぇさ。要するに心意気って奴だよ。俺はおめーら程賢くねえから、戦略とかそういうのはあんまし考えねぇ。だが腕っ節とやる気だきゃあ何時でも派閥イチでありてぇんだよ。イチでありてぇっつーか、イチでなきゃなんねぇって方が正しいのかもしれんが、兎に角そんな感じだ】


―約二時間後・ホテル内ロビー―


「さて」

 再びロビーに集った繁達は、今日の間に得られた情報を交換し合っていた。

「以上が、俺と香織で確認できた情報全部だ。んで、そっちはどんな感じだ?供米神官から情報を貰ったとは思うが、身辺調査は進んだか?」

 問いへ最初に答えたのは桃李であった。

「まず私どもから、最初に殺害されたティエリー・エトワルズさんについて」

 そう言って羽辰がテーブルの上へさっと写真を差し出した。

『見ての通り、彼女は典型的なアクサノ民(アクサノイド)型の山猫系禽獣種です。17歳の高校生で、休日も欠かさず毎日朝早くから部活動の練習に行っていたそうです』

「因みに所属していたのはチアリーディング部であり、副部長として部員達から絶大な信頼を受けていたのだとか。校内で行われるミスコンでも毎回上位に食い込んでいまして、当然ながら思いを寄せる殿方も多かったのですが……」

『温厚で勤勉な平和主義者の彼女は、今の状態で恋愛などすれば自身の多忙さから周囲に迷惑をかけてしまうだろうという理由で「進路が決まるまで恋愛はしない」などと公言していたようです。よって年齢がそのまま恋人不在歴に直結しておりまして、病院から彼女が処女であるという旨の証明書まで発行されておりました』

 そう行って羽辰はそれらしき書類を差し出した。日付は命日の一週間前であり、定期的に証明書発行をしていたのだという事が判る。

「検死の結果、死亡推定日時は6月27日午前1時19分。現場の草村には藻掻いたような形跡が見られることから、何らかの手段で家の中から連れ去られ屋外で殺害されたものと見て間違い有りません」

「有り難う、桃李さん。じゃあ次の報告は誰にする?」

「あぁ、じゃあ私らが行こうか」

 そう言って立ち上がったのはニコラとヌグであった。

「デハ、四人目ノ被害者『江藤瑠璃』女史ニツイテダ」

 ヌグは鋭い爪の先端で顔写真を器用に摘んで差し出した。

「霊長種ノ彼女ハ24歳。ヤムタ首都圏カラノ旅行者ラシク、7月ノ頭頃、コノ近辺ノ宿ニ留マッテイタラシイ。ヤムタ在住ノ知リ合イニ聞イタ話デハ、謙虚デ心優シイ人物トシテ評判ダッタヨウダガ、同時ニ積極性ヤ闘争心ガ著シク欠如シテオリ卑屈デ臆病トノ声モアッタ。ソノ性格カラカ保守的デアリ恋愛経験モ全ク無イラシイ。力ヲ込メ過ギルト直グニ壊レテシマウヨウナ、脆弱ナ雰囲気ダッタトイウ」

「ただ、根はいい人だったから宿での評判は良かったらしいよ? 調理師さん曰く癒し系で、もうちょっと元気があればいい嫁さんになりそうな人だったって言ってたし。検死で判明した死亡推定時刻は7月12日午後9時8分、部屋から物音がしたのを掃除係の人が駆け寄ったらもう死んでたみたい。遺体の特徴として特筆すべきは、何と言ってもその肥大化した両乳房。私も長らく医者をやっていた身の上だけど、霊長種の身体でこんな事が出来る訳無いし正直驚いたね。写真の通り元からかなりの巨乳だったみたいだけど、そもそもどうやって膨らませたんだって話でしょ」

 かくしてそれぞれの報告会は過ぎていく。

次回、処女怪死事件に新たなる犠牲者が!?(出るかどうかは判りません)

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