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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
83/450

第八十三話 これは水着回ですか? X.はい、更新遅れてごめんなさい



予告通りの水着回!(母親に外食誘われた所為で更新遅れたorz)

―前回より―


 繁と合流した一行は、ニコラの希望により海へ向かった。

 希望者であるニコラの目的は『水着選びに参加しなかった繁に女四人の水着姿を見せつけてみる』というものだが、そう考えているのは当然彼女だけであった。


 先ず香織だが、彼女の目的とは『少々変則的な海水浴』であった。

例えば一般的な20代女性の海水浴というと、水泳・日光浴・ビーチバレー等が主な行動なのではないか。しかし香織の行動はほぼ水泳―というよりも、アクサノの美しい海に潜る事と決まっていた。

 目当ては海棲のあらゆる生物群の他、美しい海の風景そのものや海底に潜む古代の遺物などであり、特に古代の遺物は中学時代より歴史好きが転じて人類学・考古学に熱中した香織にとっては一種の浪漫でさえある。


 次に桃李と羽辰。この二人の目的についてはもう説明するまでも無いであろうが、『アクサノの有毒海洋生物』である。シーズン2で言及したとおり根っからの毒物マニアである桃李と、妹を守る内に彼女の影響を受けていた羽辰の二人は、あらゆる生物の内とりわけ何らかの毒を内包した種をこよなく愛する。

 特に水圏、取り分け海という環境は元よりありとあらゆる動物種が存在しており、その中には有毒の種も数多く存在している。

 地球より環境や生物種の多様化が激しいカタル・ティゾルともなれば、例え二人程のマニアでなくともどんな動物が居るのか気になる方は居られるのではないか。


 続くリューラとバシロの目的は、気性の激しい二人らしく『素潜り漁』である。というのは繁が次の行き先を発表するより数日ほど前、テレビを見ていた二人は偶然にも六大陸全土で人気沸騰のバラエティ番組『驚愕!戦慄伝説』を目にする。

 そしてその番組に出ていたヤムタ出身のお笑いタレントが海でモリを振り翳し、魚介や巨大蛸を捕らえる様を見た二人はその姿に感銘を受け、自分達でも同じような事が出来ないかと強く思っていたのである。


 最後に繁の目的だが、何かと託けて変なことをしたがる彼にしては珍しく『海釣り』という至って普通のものであった。繁自身、魚釣りは大学の実習で野山へフィールドワークに向かった際同級生から簡単なものを教わった程度であった。しかしそれでも魚釣りというスポーツを少々魅力的に思っていた彼は、これを機に改めて真面目な海釣りに挑戦してみようと考えていたのである。


 因みにガイドのラドラムは七名と定期的に連絡を取り合いながらそれぞれの場所へ適当に顔を出す事にしたらしい。


「そんじゃ今が11時だから15時集合とするか。そんぐれぇありゃ何とか行けるべ」

「そうだね。そうと決まれば早速お昼買いに行かなきゃ。海の家どっちだっけ?」

「確か北北西と南東に一件ずつあった筈ですが」

『北北西は甘味、南東は粉ものに定評があるようですね』

「じゃあとりあえず南東の方かな」

「バシロ、ちゃんとモリ持って来たよな?」

「勿論だぜ。序でに水中眼鏡と魚籠もこの通りだ!」

「おぉ、流石はバシロ。気が利くじゃねぇか」

「この程度の四次元沙汰も出来ねぇようじゃあ黒物体の名が泣くってモンよ!」

「よっしゃ、そんじゃ15時までにはここへ戻ってくるように。解散」


 適当に予定を語らいあった一行がそれぞれの目的地へ向かおうかという時。ニコラとラドラムを除く六名の後頭部に、輪ゴム銃の弾が当たるような痛みが走った。


(いて)っ」

(あた)ッ」

()ッ」

ite(イテ)ッ』

「うぎっ」

「救命阿ッ!」


 一体何事かと後頭部さすりながら振り向く六人に、目の死にかかったニコラが言った。


「……みんなさぁ、空気読もうよ……空気っていうか……流れっていうか……こう、ラノベめいた雰囲気というかさぁ……」


 その顔からは何時ものような無駄に有り余る生気が消え失せていた。


「何を言いたいのかさっぱりなんだが……」

「要するに女衆の着物について触れてやれって事じゃないかね。若いもんの感性はさっぱりだけども」

「おぉ! そういやそうだったぜ!」

『ドクターに連れられて水着を買いに行っていた事をすっかり忘れていましたよ』

「え、何? 話には聞いてたけどあの時お前らが買ったのって今着てるコレだったの?」

「うん、一応ね」

「ドクターがどうしてもと言うので仕方なく、ですが」

「まぁ料金はニコラ持ちだったし、結果的には良い買い物が出来たんじゃねぇかな。で、どうだ?」

「どうだってか?そうさなぁ……」


繁は女衆の水着について冷静に分析してみた。

とは言っても、元々ファッションにあまり固執するわけでもない彼の分析など大したものではないが。


「(先ずは香織だが……)」

 香織が身に付けているのは、俗に『チューブトップ』と呼ばれる肩紐を廃したデザインのトップ(上半身部位)にホットパンツ型のボトム(下半身部位)で構成されていた。主軸の色は明るめのスカイブルーであり、深紅の長髪と対称的で映える他『青色薬剤師』という源氏名を体現していると言えた。更によく見れば水着全体には呪文式―近代魔術理論で用いられる呪文の配列・構成を表す、魔術版化学式に相当するものが描かれている。

「成る程。肩出して放熱した上で、敢えて肩から下の露出を控える事で落ち着きと知性を演出したって訳か」

「いや、別にそこまで意識した訳じゃ無いんだけどね?」

「しかも色と絵柄のチョイスが神がかってんな。空色に黄緑で呪文式とは……」

「あー、呪文式は買った後に自分で入れた。魔術で」

「マジで? 万能型だなお前……一家に一台欲しい従姉妹になりつつあんぞ…」

「そうかなぁ?」

「そうだとも。まあ誰にもやらんがな」


「(で…次はニコラか……)」

 ニコラが自分用に買い込んだのは白い『タンキニ』というデザインのものだったが、此方も医療関係者らしく麻酔薬の化学式やサイケなアレンジのされた内臓等が所々に描かれていた。

「何時も白衣に白パジャマだなと思ってたらまた白水着か。お前白好きだな」

「白は終焉と再起、そして医学を象徴する色だからね。本当は青緑とかクリーム色とかで悩んだんだけど」

「やっぱり白ってか?」

「うん。青緑はやっぱり柄じゃないし、クリーム色だと毛色と被るし」

「何時も思うが、汁物喰う時大丈夫か?」

「大丈夫よ、問題ないわ」


「(…お次は桃李だな……)」

 桃李が着込んでいるのは紺色の『スクール水着的なもの』だったが、如何せん問題はその絵柄にあった。言うまでもなく予想は付いていると思うが、彼女の水着には全体を通してあらゆる有毒生物が描かれていた。

 その絵柄のラインナップは主にクサリヘビ、ゴケグモ、イモガイといった動物類からトリカブト、ドクウツギ、ウバタマといった植物類、更にはカラフルに染色された細菌類までもが前衛的なアレンジの元に描かれていた。隣に佇む兄・羽辰もどういうわけか同じような競泳水着を着ていたが、此方は毒素の化学式が描かれていた(主にサリンやアルカロイド系)。

「徹底して毒か。もう何か此処まで来ると清々しいな」

「何処に何を配すべきかかなり迷いましたね」

『私も、毒素の化学式は全て暗記しているのですがどれも格好良くて……』

「OK、お前らが毒物好きなんだって改めて良く判った」


「(最後はリューラか……)」

 リューラの水着はスタンダードな『ビキニ』であり、左半分が黒、右半分が銀の布地で構成されていた。左右で色が違うのは恐らくバシロ寄生を配慮しての事であろうが、確かにこれは名案なのかもしれないなと、繁は思った。

 下半身には深緑のパレオが巻かれており、半身が異形と化しているリューラの容姿と相俟ってどこかシュールな美しさを演出していた。

「案外ストレートだな」

「いやぁ、これでも結構苦労したんだぜ?何たって私の場合、シモのブツが最大の問題だったからなぁ」

「あー、そういやお前両性具有だったな」

「最初は俺がカバーするって手も考えたんだが、どうにも抵抗感があってな。そこへ来て店に来てたカップルが勧めてくれたのが『ディノミスクス』っつーブツでよ。こいつを穿くと無理無く股ん所のを隠せるんだと」

「あぁ、あるよなそういうの(わりかしガチのフタナリが居るこっちの方じゃなかなか需要あるんだな)」



 かくして女衆の水着について語り合った一行は、それぞれの目的地へ向かった(ニコラ、ラドラムは一先ず香織に同行する模様)。

次回、それぞれで海を満喫する一向に新たなる脅威!?

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