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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
82/450

第八十二話 暴虐!ムシ男



*注意書き*

今回は表現がむやみやたらに過激です。

別に何時もそうじゃねぇかって言うとそうなんですが、何か今回はとりあえず注意書きでも書いておいた方がいいんじゃないかと思いまして……えぇ。

―前回より―


「あれで良かったんでしょうか」

『不安ですねぇ、冗談抜きで』


 ラドラムの案内で辿り着いたレストランにて『必殺虫グミ-ゴキブリ』なる、精巧に作られたゴキブリ型のグミが盛られたコーンフレークを眺めていた桃李と、それにミルクを注ぎ終わった羽辰が不安げに言った。因みにグミの味はコーラとミルクチョコであり、中に同じ味付けのされた水飴状のシロップが仕込んであるという手の込んだ代物であった。


「どうせなら私らも一緒に残りゃ良かったんじゃねーかな……」

「だよな……まぁ、加減間違えて殺してもアレだがよ……」


 等とぼやくのは、泡立つ透明な液体の中に透明標本のようなカエル型のグミが入ったコップ―『スケルトンサイダー-アクサノアオガエル(上陸直後)』という歴とした店のメニュー―にストローを突き立て、中身を吸っていたリューラとバシロ。こちらのグミは透明な部分こそ単なる白砂糖味だが、青い部分にはアクサノ固有種の香草から抽出した染色液が使われており、これはある種のハーブに似た爽やかな香りを放つものである。


「ま、どうなろうがアタシがどうこう言う事じゃないさ。聞けばあの子、幼い頃から中々のやり手だそうじゃないの。ねぇ、狐のお嬢さん?」


 等とニコラに話題を振りつつ、ラドラムはフォークに刺した蒸かし芋―この喫茶店名物『パンダ印の蒸かしヤムイモ』を自慢の(クチバシ)で器用に啄む。


「いや、私も詳しくは知りませんよ。そこは香織ちゃんに聞いてくれないと。ねぇ、香織ちゃん?」


 等と言うニコラが突いているのは緑色の毛虫型グミが盛られたアイス―レストランのメニュー『必殺虫グミ-イラガ(幼虫)』をバニラアイスに盛っただけのものを食べつつ言う。因みに三種類あるグミの味はそれぞれメロン、青リンゴ、マスカットである。


「いやー、何て言うか繁の方は別段心配要らないんですけどね? 寧ろ心配なのはあの自称吸血蝙蝠とか言いながらどう見ても顔つきがオオコウモリなバカの方で。しかも繁って『ハーレムの男主人公に嫉妬』とか『リア充爆発しろ』とか『クリスマス中止』みたいな考えを無駄に毛嫌いしてまして……あー、そう考えるとあのバカ大丈夫かなぁ。何か逆に心配になってきた……」


 その言葉に思わず絶句する六人を尻目に香織がナイフを入れているのは、『司法解剖ケーキ』なる、腹を切り開かれた霊長種を模したケーキである(オーダーすれば特注でどんな種族のものでも作ってくれる)。メニュー開発担当が血液を表現しようと調子に乗って投入したイチゴソースの処理に戸惑う事で有名な品であり、見た目のインパクトや精密な作り込みから根強い人気を誇っていた(香織が食べているのはSサイズの男性型)。


―一方その頃、街道にて―


 香織の予想は的中していた。


「ゥをイどらしたぁ!? 闇夜の吸血蝙蝠ってのはその程度か!? 観光客の霊長種相手にヘバってちゃあ、地元民の面目丸潰れだなぁ!」

「黙りやがれこの三下がぁ!」


 ゼンヲウの振り回すナイフを奇怪なステップで避けながら、繁は腹立たしい声と口調で罵り言葉を連発する。その様は自惚れが強く自己陶酔の激しい性根の腐りきったリスザルが、人間を心底バカにしたように立ち回るが如くであり、海馬(トド)の詰まり『途轍もなく鬱陶しい』の一言であった。

 更に驚くべき事に、ゼンヲウと向かい合って以降繁は能動的な攻撃を一切繰り出していない。


「てめえはっ! てめえは絶対に泣かすぅっ! そんで、そんで、その後思いっ切りぶっ殺してやるっ!」

「オォゥ! スッゲェや! 流石地元民、威勢がいいねェ! 最も威勢がいいだけなんだろうがなぁ!」

「黙れ、バカが! こっ、この、このドサンピンの糞童貞野郎がぁぁぁぁ!」

「地元民の癖に萌え豚みてぇな事言ってんじゃねえよ。どうせテメェも毎晩喧嘩とオナニーぐれぇしか楽しみの無ぇアホなんだろ?」

「うがああああああっっ! ぎぎぎあああああああっ!」


 その言葉が図星だったのかどうかは定かでないが、兎にも角にも怒り狂ったゼンヲウはガムシャラに言葉にならない叫び声を上げながら向かってくる。しかし繁はさして身構えるでもなく、ポケットから何かの瓶を取り出し、そのフタを外して待ち伏せる。

 そしてゼンヲウが繁の眼前へ来た所で繁は咄嗟に瓶を盛った腕を振り上げ、その中身――結晶体のような白い粉末――を、ゼンヲウの顔面目掛けてぶちまけた。

「っぐあああああああ! しょっぺええええええええ!」

 ゼンヲウは絶叫しながら目元を押さえのたうち回る。

「見たか!これが塩の力だ!」

 そう言って繁はその辺で拾ってきた食塩の瓶(硝子製)をゼンヲウに投げつけ、未だ塩に苦しめられ続けるゼンヲウの胸倉を掴んで持ち上げると、間髪入れずにその顔面を壁面に叩き付けた。

「ぐぶげがっ!」

 更に尚も容赦しない繁は追撃とばかりに仰向けで倒れ込んだゼンヲウの顔面を力強く踏み付ける。

「ぐぼがあっ!」

 並みの霊長種ならば普通この辺りで死にそうなものだが、それでも尚生きているのが禽獣種の生命力である。それを見越している繁は、警察が来たときの言い訳を考えながらゼンヲウの胸倉を掴んで無理矢理立たせると、何処から奪ってきたのか携帯式のガスコンロ(強火)をその顔面に無理矢理押しつける。

「っぎゃああああああああああ!」

 そのまま投げ倒されたゼンヲウは激痛の余り顔面を押さえて転げ回るが、尚も繁の攻撃は止まらない。一種の興奮状態に陥った町民達はそれを一種のショーか何かのように楽しみ始め、挙げ句の果てには

「手を休めるんじゃないよ!そいつのライフはまだ半分も減っちゃいない!」

 等と言い出す老婆が出始める始末である。

 こういった町民の反応から、このゼンヲウという男がどれだけ嫌われていたのかが手に取るようにお判り頂けるかと思う。声援もあって尚も攻撃を続けようとする繁は、ゼンヲウを押さえつけその口を無理矢理こじ開けると、大型の工業用ペンチを用いて彼が持つ一際大きな犬歯を引き抜いた。

「っがあああああああああああああ!」

 口から大量の血を流して苦しむゼンヲウは、とうとうその場から逃げ出そうとする。しかしそれを繁が見逃す筈もなく、肩を掴んで彼の身体を拘束すると、そのへんで拾ってきた謎のボトルに入っていた得体の知れない液体を無理矢理彼の口の中へ流し込む。

 当然必死で抵抗するゼンヲウだが、得体の知れない液体はどんどん彼の体内に入り込んでいく。そしてボトルが空になったところで、繁は彼の腹に強烈な膝蹴りを叩き込んだ。

「ぐぼぇあぁああっ! けぼべあぇっ!」


 腹を蹴られたゼンヲウは口から胃の内容物を大量に吐き出し地面に倒れ込む。倒れ込んだ地元民を繁は尚も容赦せず、彼が身に付けている装飾品の類を次々と無理矢理引きちぎっていく。その装飾品というのは当然彼の全身に装着されたピアス類も当然含まれており、結果としてゼンヲウは体中のあらゆる部位の皮や肉を引きちぎられてしまった。

 最早『闇夜の吸血蝙蝠』という名前も形無しである(元から形があったのかさえ定かではないが)。


 かくしてゼンヲウを散々痛めつけた繁はただ一言、


「あとは皆様にお任せします」


 とだけ言い残し、従姉妹の携帯電話に連絡を入れながらその場を去った。

 この後、ゼンヲウがどうなったのかは読者諸君のご想像にお任せする。

次回、遂に水着回!(の、予定)

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