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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
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第七十九話 おまたせ☆ラプトル




時は再び夕食時。

―前回より―


「さて」


 夕食時、またも一同に会したメンバーに、繁が言う。


「皆、今日はお疲れ様。大概の奴は今日で大まかな準備を済ませたろうが、もしかしたら買い逃しなんかがあるかも知れん。明日一日はそういった諸般の確認作業や各々現地で使う事になる機材・道具類の調整、予定立てなんかを済ませたら、なるべく早くに戻ってくれ」

「具体的には何時頃までに戻るべきでしょうか?」

「そうだな…遅くても22時45分には準備万端の状態でここに居られるようにしておいてくれ。その15分後、23時にはアクサノへ発たにゃなんねぇからな」

「飯は昨日今日みたく全員一緒に喰うのか?」

「いや、好きにしてくれて構わねぇ。移動中でも喰えるしな」

「移動は海路? それとも空路?」

「空路だ。とは言っても当然公式的に認可された奴じゃなく、出発十五分前までにアクサノから迎えが来る予定になってる」

「到着予定時刻は?」

「天候や竜種の行動ルートを伺いながら行くから奇跡的に早くても翌朝5時ぐれぇになるらしい。寧ろ到着遅くなった方が空から夜明けとか見られたりしてな」

 更に繁は机の上に白い紙袋を置いて呼びかける。

「あとアレだ。今日はお前らに渡したい物があるんだよ」

「渡したい物?」

「あぁ。実は午前中に出掛けたのは俺の仕込み手甲鉤を作ってくれた職人の爺さんに(シロ)を支払いに行ってたからなんだが、実はその職人が気前良くてな。手甲鉤だけじゃ割に合わんと、何かの入った紙箱をくれてな。中身が何かは俺もまだ見てないんで知らんが、丁度六つあったしお前らにやろうかと思ってな」

「おぉ~、流石は辻原。黒っ腹だな!」

「……それを言うなら太っ腹じゃねぇか?」

「しかし自営業の武器職人ですか。近頃少なくなったと聞きますが、居るところには居るものですねぇ」

「自営業っつうか、客に要求する代が現物なあたり事業っつーより道楽なのかも知れんがな」

「つまり物々交換な訳ね。でもそんなにいい物持ってたの?」

「いや、代の価値は爺さんがそれを見てどんだけ感動したかによって決まるらしい。クソ王女の玩具にクェインの頭蓋骨とスナハンザキの歯、あとバカの目玉とか持ってったら大喜びでな」

 そう言って繁は、紙箱を仲間達に配っていく。香織には赤を、ニコラには黄色を、桃李には黄緑を、羽辰には青緑を、リューラには銀を、バシロには黒を手渡した。

「中身は各自部屋で開けてくれ。取説が入ってるらしいから扱いには困らんだろうが、くれぐれも部屋で試したりすんなよ?あの爺さんの事だ、火器の類だと壁ぐらい簡単に吹き飛ぶだろうからな」


 カドムが繁を通じて仲間達に贈った武器とは、果たして一体如何様なものなのか? それはまた、次の機会に。


―翌日・22:39―


 殆どの面々が未だ外出中或いは準備中である中、一人早々に準備を終えた繁は屋外の開けた土地―迎えの航空機が来る事になっている場所で夜空を眺めていた。


「奇妙なもんだな。異世界だけに星の並びも違うっつうのに、星座の位置関係やそれに纏わる神話は地球と似通ってやがる。もや二つの世界には何か関係性が……なんて考えてるとキリねぇわ。さて、そろそろ戻って荷物の確認でもすっか」


 繁が立ち去ろうとした時、彼の背後からふと声がした。


「ツジラ・バグテイル殿ダナ?」

 声のした方を振り向けば、そこには哺乳類とも爬虫類とも鳥類ともつかないヒューマノイドが佇んでいた。全身茶褐色の羽毛に包まれ、爬虫類然とした細長い頭部、手足にある禍々しい鉤爪や細長い尾を持つそれは地球で言う恐竜―それも知性と戦闘能力に定評のあるドロマエオサウルス類に似ていた。彼の骨格は辛うじて人型だったが、下半身を覆う黒のダメージジーンズが無ければ大抵の者は地上棲若しくは樹上棲の竜種と勘違いしてしまうだろう。


「如何にもバグテイルは俺だが、あんたは?」

「俺ノ名ハヌグ。元ハアクサノ航空防衛隊三等空佐ダッタガ、任期ヲ終エタ今ハセルヴァグルニアル児童養護施設・コチョウランニ勤メテイル、シガナイ地龍種ノ男ダ」

「つまり、神官の旦那が言ってた迎えのモンか」

「ソウダ。ツイ先程、予定シテイタルートニ不備ガ発生シタタメ急遽着陸場所ヲ変更シタノダ」

「それは大変だな。フライトに支障は?」

「殆ド無イ。タダ、現地ヘノ到着ハ若干遅レルダロウガナ」

「そうか、なら良い。しかしまた、随分と早い到着だな」

「ウム。俺ハ他人―トリワケ客人ノ類ヲ待タセルノガ嫌イデナ、行動ハ迅速ニ行イ、アラユル不測ノ事態ニ備エテイルノダ」

「素晴らしい心がけだ。大概の奴には中々出来るもんじゃねぇ」

「オ褒メニ預カリ光栄ダ。デハ、俺ハマダマシンノ点検ガ残ッテイルノデソロソロ行カネバナラヌ」

「そいつぁ丁度良い。俺も今し方戻って荷物の確認をと思ってたんだ」

「デハマタ、出発時刻ニ会オウ」

「おうよ」


 かくしてヌグは航空機へ、繁は家へと戻っていった。そして同日23時、ツジラ・バグテイルこと辻原繁とその仲間達を乗せた旅客用の大型ヘリコプターに乗り込んでアクサノへと旅立っていった。

次回、遂にアクサノへ!事件解決・遺産回収・南国旅行を無事果たせるか!?

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