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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
77/450

第七十七話 狐医者(元)の発案:前編




初の前後編!

―前回より・翌日―


「さぁ皆、張り切って行くわよ!」

『はい、ドクター!』

「勿論だぜェ!」

「は、はい……」

「兄さん、落ち着いて下さい…」

「(……何で私がこんな洒落た店なんぞに……)」


 ノモシア都市部にある若者向けに作られた服屋の店内を突き進むのは、繁を除くツジラジメンバーの六名。その先頭を意気揚々と歩くのはニコラであり、彼女を初めとする六名がこうして服屋を訪れる事となったそもそもの言い出しっぺもこの不老不死の狐であった。


―第三者視点での回想―


 事の起こりは午前10時頃、香織が自宅の居間で何を準備すべきかと計画を練っていた頃にまで溯る。


「うーん……悩むなぁ。行き先はリゾートとして名高いアクサノで、しかも作戦には地方自治体のバックアップがつく上にバカンスのオマケ付き……となると準備についても真剣に考えないと……」

 香織は愛用のノートパソコンを起動し、アクサノという大陸について根底から調べを進めていた。地域ごとの気温や気候や地形の特徴から、宗教観や特産品等の文化的特徴、主要な生物相に至るまで、緻密かつ迅速に情報を収集・分析していく。更にそこから得た情報を頼りに通販サイト等を駆使し、状況に応じた品々の平均価格を見定めていく。


良し(ベネ)、この分なら90万で十分足りそう。余った分でちょっとした買い物とかするのもありかもね。さて、そうと決まればお店の方に確認を――

「香織ちゃぁああああああん!」

「!?」

 香織が携帯電話を取ろうとした瞬間、居間に飛び込んできた者が居た。不老不死から来る凄まじい生命力に定評のある医学系雌狐こと、毒蛾のヴァーミンを持つニコラ・フォックスである。

「ニ、ニコラさん!? 一体全体何がどうしたの!?」

「香織ちゃん、今暇!? 時間ある!?」

「え? ま、まぁ、時間ならあるけど」

「オッケェイ! そんじゃ決まりねっ!」

「は!? 何が!?」

「良いから良いから、とりあえず来なさいな」

「え!? あ!? え!?」

 言われるがまま、ニコラは強引に香織を引っ張っていこうとする。持ちうる異能と種族故であろう、ニコラの身体能力は香織を上回る為、引っ張られるとどうしようもない。

「自分で言うのもなんだけど、年寄りの言うことは大概聞いといて損無いわよ。認知症とか例外はあるけどね」

「え、いや、それは確かにそうだけど……一体何!? 何ゆえ私は腕を掴まれてる訳!?」

「何でってあーた、そりゃ香織ちゃんにも来て欲しいからよ」

「何処へ!? っていうか私携帯も財布も持ってないし、何よりパソコンの電源切ってないんだけど!?」

『それならば私が済ませておきました。それと、携帯電話とお財布です。どうぞ』

「あ、有り難う。っていうかこの流れは何!? 私どうなっちゃうの!?」

「良いから良いから」

 ニコラの手で半ば強引に連れ出された香織は、同じようにして連れ出された桃李とリューラと共に近所にある若者向けの服屋へと辿り着く。聞けばニコラが三人を連れ出した目的は、アクサノの海で着る為の水着を買いに行く為であった。曰く『気の利かない作者が水着回のチャンスをくれる事はもう無いかも知れない』との事。これに対し三人は『海水浴に行くつもりはない』として水着は不要だと告げたのだが、半ば暴走気味のニコラに加え、(純然たるシスコンめいた感情故に)桃李の水着姿に釣られた羽辰や、更には行き過ぎて歯止めが利かなくなったバシロによって強引に押し切られた結果、されるがままに服屋へと連行されてしまったの。


 かくして話は冒頭のシーンへ舞い戻る。


―服屋―


「つか、清水や桃李は良いとして私は出歩いたらヤバくねぇか……? 外じゃ変則結合でどうにかなったが、素顔晒してちゃ流石にバレるんじゃ……」

『心配要りません。こちらのお店はドクターのご友人が経営されておりまして、現役ギャングから脱獄囚、犯罪組織の幹部まで受け入れる事をモットーにしておりますので』

「それでよく商品券やらクーポンやらポイントカードの対応店舗になれたね……」

「まぁ、んな事ぁ表沙汰んなってねぇしな」

「何にせよ洒落込む事には不慣れですし、ここはドクターに従っておきましょうかねぇ」

「任せなさい。あたしの取り分であんた達にとびきり良い奴買ってあげるから」

 そんなこんなで女性用水着コーナーに辿り着いた六名は品定めを開始した。

『では私は暫く休ませて頂きましょうかね。こういうものは女性だけの空間で選んでこそと思いますし』

 そう言って桃李の体内に戻ろうとする羽辰を、バシロが引き留める。

「そりゃ甘ェぞ羽辰ッ! こういうモンは男の目ってのが重要になるんだ! だよな、医者先生!?」

「そうね! 心理学も囓ってるから言うけど、男女で観点が違うっていうのを単なる安易なスラングと割り切るのは些か間違いなの!」

『つまり、どういう事でしょう?』

「要するに野郎は女の服選びに同行すべきだって事だよ! 取り分け亭主とか彼氏とか兄貴なんつう、関わりの深い奴だと尚良し!」

「生まれてこの方彼氏も出来ず家族は異世界、従兄弟もこの場に居ないのが一人いるけんだけど?」

「それは何て言うのかしら……そう、アレよ! サプライズって奴よ!粗筋とか伏線とかの情報を知るのは大事だけど、所見でネタバレばっかりってのも駄目でしょ?」

「まぁそれは確かに言えてるし、そもそも落とす必要性のある男も居ないし、何か良い感じのを適当に……」

「そうだな……何か適当にサイズ合いそうなの選んどくか」

「えぇ。それがいいでしょうね」


 かくして三人は水着選びを開始する。

因みにこの辺りで言及しておくと、ツジラジメンバー女性陣の体格を体積順に並べると以下のようになる。

リューラ(1)<香織(2)≦桃李(3)≒ニコラ(4)

1.バシロ抜きにしても元々背が高く筋肉量も多い。というか高身長・性欲旺盛・両性具有と三拍子揃った軍人キャラな辺りで巨乳確定なわけであって。

2.彼女の容姿は大体某蒼い対戦格闘ゲームに登場する憲兵部隊所属の中尉(声:●井麻●)だと思えばいい。但しその戦闘スタイルや作中での動向、根本的な性格は似ても似つかないが。

3.あくまで若干の差であると想定する。但しゴキブリをシンボルとするスピードキャラなので、作者の中では細身のイメージが固まりつつある。

4.元々肉体派でなく、僅かながら狐の遺伝子が入っているため細身である。

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