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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン3-イスキュロン編-
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第六十一話 メオトでかますぜリューラちゃん!




外野「来た!リューラさんとバシロさんの合体コンボだ!」

―前回より―


 香織の魔術により校内へ散り散りに突入した繁一行は、秋本の作戦により校舎内へまばらに配置されていた愛人達との交戦を始めていた。


―歩兵科戦闘実習用アリーナ―


「行くぞバシロ!」

「合点承知の助ァ!」


 実習用アリーナに解き放たれた数奇なコンビ―リューラとバシロは、待ち構えていた女生徒―何れも小学生かと見まごうほどに小柄で童顔な三名を相手に構えを取る。

「あんたたちね! 最近ちまたを騒がせてるテロリストってのは!」

 女生徒の一人である小さな弓を構えた尖耳系霊長種が言う。

「テロリストぉ? そいつぁ心外だなぁ。私達は只の個性的なラジオDJだぜ?」

「うそおっしゃい! どこの世の中に、肩からおばけが生えたラジオでぃーじぇいがいるのよっ!?」

「おい、俺はこいつの相方だぜ? お化けなんてふざけた呼び方は止してくんな」

「全くだ。体型のみならずボキャブラリーまで貧困とあっちゃあ、国立士官学校の名が泣くってもんだ」

 心底嘲るようなリューラの喋りに、女生徒達は腹を立てた。

「なんですってえ!? かおの右はんぶんがくさってるどぶすのあんたにいわれたくないわ!」

「もういちど言ってみなさいよこのおばさん!」

「そうよそうよ! おっぱいなんてしょせんしぼーじゃない!」

 ここまで罵られれば普通は誰しも苛立つくらいはしそうなものである。しかし流石は一介の中学生から国立士官学校特待生を経て陸軍少佐にまで成り上がり国民から英雄視されるに至ったリューラとでも言うべきであろうか、女生徒三人の言葉を見事に聞き流している。

「はぁ、お前等なぁ……私の顔半分が腐ってるとかはまだ良いとして、『乳も所詮は脂肪』とかもうギャグとしても古すぎてツッコミも出ねーぞ?」

「言えてんなァ。近頃の貧乳は養豚アニメでももっとマシな事言ってるぜ」

「まぁどうしても突っ込んで欲しいってんなら、お前等のアナルなりヴァギナなりに私のイチモツをぶち込んでやっても構わねぇがな」

「おいおい、あんな肉のねぇギツギツそうなロリで良いのかよ?」

「ぶっちゃけやだな。冗談抜きで願い下げだ。やっぱアナルは辻原、ヴァギナは清水のが良いや」

「アレ、冗談じゃ無かったのかよ……」

「冗談でこんなネタなんぞ言えるわけねーだろ。まあもっと理想的な奴が出てきたらそっちにシフトしてーが。私は腐ってもイスキュロン民だぜ?愛って奴は、尊重しねぇと――なぇぃっ!?」

 その瞬間、リューラの左耳を一本の矢が掠めた。

「てンめェよくも俺の相方目掛けて矢なんぞ放ちやがって! 話し中には矢放っちゃいけねぇって学校で習わなかったか!?」

「ふふん、寧ろそこを狙えと教わったわ!」

「マジで!? そんなフリルまくりリボンまくりの服着てる癖にそこまで知恵回るとか異常じゃね!?」

「なによ! 服装はべつに関係無いじゃない!」

「そうよそうよ! わたしたちのお洋服や鎧は、リボンからパンツまでみんな教頭先生が選んでくれた最高級品なのよっ!?」

「えっ、なにそれきめえ! あの教頭、そんな変態めいた真似までしてんのッ!?」

「きもいとはなによ!あんたたちの方がよっぽどきもちわるいじゃない!」

「そうよそうよ!じゅようもないようなキャラクターのあんたたちにきもいなんていわれたく――

 防御力の全く無さそうな白いビキニアーマーを着込んでいた鬼頭種女生徒の顔面へと、蛍光灯三本が一斉に叩き込まれた。蛍光灯は砕け散り、幾つもの巨大な破片が少女の顔面に徹底して―額や頬、更には眼球までも―突き刺さっていた。

「いやあああああああああああああああああああああっ!」

 余りに衝撃的な有様に、へたり込んで泣き叫ぶ尖耳種の女生徒。しかしその隣に居た揚羽蝶系外殻種の女生徒は、醜態を晒す同級生を尻目にピンク色をしたハート形の巨大な宝石(実際はガラスやアクリルの塊であろうが)の埋め込まれたステッキを掲げる。

 ドレス風のなりもあって、どうやら魔術師――軍用魔術科の生徒であるようだった。

「よくもぷりてぃをっ! くらいなさいっ!」

 少女がステッキをバトンのように振り回し、両手で振り下ろすと、その先端部からハート形のエネルギー体が発射され、リューラとバシロに襲い掛かる。

 無数のエネルギー体は甲高く無駄にポップな音を立てて連鎖的に爆発した。

 この魔術は女生徒オリジナルの攻撃系魔術であり、厄介な詠唱が無く発生も早い癖に絶大な破壊力を誇っていた(また、本当に蛇足であるが先程言及された「プリティ」というのは蛍光灯を投げつけられて無惨な姿で絶命した鬼頭種の本名である)。

 女生徒は勝利を確信した。竜種さえも仕留められる程の破壊力を誇る自身の必殺技を受けて尚立っていようなど、並大抵の生物には不可能だと信じて疑わなかったからである。

「さぁ、いくわよふぇありい。教頭先生にこのことをおはなしして、ごほうびをもらいにいきましょ」

 揚羽蝶系外殻種の女生徒は、生き残った仲間の名を呼んだ。しかし妙なことに、仲間からの返答がないばかりか声も聞こえない。というか、気付けばその場には彼女一人以外に士官学校の女生徒の姿は無かった。尖耳種の「フェアリイ」どころか、「プリティ」の亡骸までもが、忽然と姿を消していたのである。

 女生徒の脳裏を、最悪の事態が過ぎる。そして次の瞬間、彼女の眼前に湿って黒ずんだ塊が落ちてきた。それを見て、女生徒は絶句し思わず尻餅をついてしまう。

「こんな……こんなこと……」

 嘘だと思いたかった。しかし見まごう筈もない。彼女の眼前に落ちてきたのは他でもない、嘗ての仲間「フェアリイ」と「プリティ」の生首だったのである。

「ぇ……ぅぅ……ぁ……」

 恐怖の余り声も上げられない女生徒の眼前へ、更なる絶望が訪れる。

「「よう、大丈夫か?」」

 そんな声を伴って現れた黒い何かによって目の前の生首二つが叩き潰され、血肉や骨の破片が飛び散る。

 女生徒が恐る恐る顔を上げると、そこには自分の必殺技に敗れ去った筈のリューラとバシロの姿があった。女生徒が声も出せない程怯えているのを良いことに、二人は一方的に話を進めていく。

「まさかお前があんな技を持ってようとは、流石に驚かされたぜ」

「だがツメが甘かったなァ、クソガキ。身体が羽化してようが、頭はまだまだ幼虫じゃねえか」

「うちの宿六は変幻自在でよ、ガキ二人程度引っかけて釣り上げるワイヤーぐれえ幾らでも繰り出せる」

「そいつで釣ってきたテメェの仲間二人を盾にすりゃあ、あんな攻撃系魔術如き幾らでも防げんだよ」

「まぁ、あんな貧相なガキ程度最初はすぐぶっ壊れるかと思ってたんだが……」

「テメェ等のダッセェ服だの鎧だの、よく見りゃ一丁前に防魔仕様の合成繊維とか耐魔合金で作ってあるじゃねーの」

「しかもノモシア貴族・上級士官御用達の最高級ブランドの作った最新作とはよ。そりゃあお前、そんな装備がありゃあの程度の攻撃系魔術じゃそう簡単にゃ壊れねぇわな」

「良い教頭を持ったな、テメェ等……いや、パトロンか?」

「ま、どっちでも良いけどよ。私等にゃ関係ねーし」

 リューラの左腕が、女生徒の襟首を掴む。

「「どのみちテメェを殺すっつー予定は、今ここで片付けなきゃなんねーしなァっ!」」

 二人の叫びと共に、女生徒の身体は中高く放り投げられる。そして急降下を始めたその身体に、リューラの右腕―バシロを受け入れ、彼と同化したが為に哺乳類とも爬虫類ともつかない異形のそれに変貌している―による回し蹴りが入らんとする。

 それと同時にリューラの長ズボンの裾から伸びてきた針金のようなバシロの触手が、太股から裾の辺りまで、右脚の(すね)を縦断するように真っ直ぐ伸びたファスナーを開く。

 開かれたファスナーの中から現れたのは、バシロが変形した大振りな回転鋸の刃であった。内部機関が無いにもかかわらず、どういうわけかその黒い刃は高速で回転している。

「「夫婦奥義之八(めおとおうぎのはち)ッ! ――『斬筋断骨脚(ざんきんだんこつきゃく)』ゥゥゥゥッ!」」

 そんな二人の雄叫びと共に叩き込まれた臑の一撃は、女生徒の外骨格、脊椎、筋繊維、神経組織、主要臓器を綺麗に切断。リューラが一回転し脚を振り抜くと同時に刃は引っ込み、バシロの触手によってファスナーが閉じられる。

 かくしてアリーナを舞台にした二対三の勝負は、かくも奇妙で何とも豪気な(自称)夫婦の圧勝に終わる。中等部所属の愛人三名が死亡した秋本軍は、彼自身を含め残り46名となった。

次回、戦いは更なる激化を見せる!

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