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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン3-イスキュロン編-
57/450

第五十七話 これは軍人ですか? 13.はい。学者と巨人です。


一方その頃、ラビーレマでは……

―前回より・ラビーレマは列甲大学工学部研究室―


[――お掛けになったお電話番号は、現在使われておりません―]


「クソッ!やっぱり駄目かっ!」

 小柄な猫系禽獣種の女が、苛立ちの余り携帯電話を床に投げつける。

「どうした九条?」

「退屈で仕方がないから電話でカーマインの奴でもいじろうかと思ったんだが、奴の携帯に繋がらんのだ!」

 身体の各部位が機械的なパーツで被われた角竜系地竜種の大男の問いに、禽獣種の女・九条は答えた。

「何だそれは……大体お前、退屈とはどの口が言うか」

「この口だが? 仕方ないだろ、やる事が無くて暇でならんのだからな」

「暇? 暇だと? お前、今月中に目を通しておかなければならない書類がどれだけ残っているか、解っているのか?」

「勿論だ。私を見くびってくれるなよ、ティタヌス」

「じゃあ幾つだ?」

「218だ。内112は他大陸からで、更にその内40はイスキュロン軍からのもので間違いない」

「そこまで的確に覚えていられるなら何故全く手を付けない?」

 ティタヌスの問いに、九条は心底呆れたような表情で言った。

「……? おいティタヌス、お前大丈夫か? まさかエラーでも引き起こしたんじゃないだろうな? こんなにいい天気だというのに、崇高な学術の叡智をただ金儲けの為に活用したがる連中の寄越した書類に目を通すなんて真似をするなんてことが、許されるとでも思っているのか?」

「少なくとも仕事をさぼってまで暇を持て余していると主張し、相手の迷惑も顧みず嘗ての後輩に嫌がらせの電話をしようとするよりはずっと推奨されるべき行為だと思うがな」

「固いなティタヌス」

「お前がそうしたからな」

「装甲や筋繊維のみならず思考まで固くくなりよってが」

「思考の固さは元々だ」

「柔軟な思考の欠如は思わぬ所で仇になるぞ」

「柔軟と怠惰はヤムタ神話の姉妹神程にも異なるだろうが」

「ヤムタ神話の姉妹神……確か、姉の方がこの世に厄災をもたらした邪神で、妹は六栄神の一柱で武神と対を成す太陽神だったか?」

「そうだ。名前は忘れたが、同じ六栄神の中に夫が居るらしい。確か冥界を支配する女神の弟で天空神だったか? まぁいい。とにかくだな九条、早くこの仕事を片付けたらどうだ?」

「いずれやるさ。覚えてないのか? 私はその都度やる気の有無が変動するんだ。だから今やったとしてもろくな結果は得られまい」

「子供でも言わないような屁理屈を大の大人が真顔で言うな」

「気にする事はない。どうせスタイルはガキのままだ」

「体形が何だ」

「それに女というのは心の何処かでいつまでも若くありたいと願っているものだ。不本意ながらな」

「普段からろくに化粧もしないお前が言っても説得力がないな」

「真の理系女は原則化粧などせんのだ」


 そう言って九条は愛用のコンピュータを立ち上げる。


「だからお前――「勘違いするな。純粋に後輩の事が心配になっただけだ」

「……携帯電話が繋がらない程度でか?」

「程度とは何だ? かなり深刻な問題だぞ? 奴は電話に出なかった事こそあるが、繋がらなかった事は一度たりともない」

「機種変更をしたまま報告をし忘れたという可能性は?」

「ないな。奴が他に類を見ないくそ真面目な奴だという事はお前もよく知っているだろう? 仮に奴が携帯電話の機種変更をするとすれば、『機種変更しました』という連絡は来ない。来るのは『機種変更します』という連絡だ」

「つまり、事前に連絡が来ると」

「そうだ。しかしここ最近、奴からは何の連絡もない。となると考えられるのは、携帯電話が破損したか、私に無断で解約したかだ。我ながら言うのもアレだが、私は奴から徹底的に恐れられているようだ。私の目が届きそうにないような所でも、不用意な行動は控えているらしいしな」

「……調べたのか?」

「私を誰だと思っている? 大学園都市最強の工学部生たる称号『不動の歯車』を得た最初の女学生、九条チエ様だぞ? 舎弟の見張りも満足に出来ないでどうする」

「舎弟だったのか……」

「あぁ、奴――高志・カーマインは私の舎弟第一号だ。だからこそ私は――な、何だこれはっ!?」

「どうした、九条?」

「おいティタヌス、これを見ろ!」

 ティタヌスは九条の指し示した記事に目を見やる。

「カーマインが行方不明……だと? しかも彼の自宅周辺には特殊なセキュリティシステムが展開されており捜索の目処も立たず、か。とんでもない事になってしまったな……」

「あぁ。奴の家に罠を張ったのは勿論私だが、まさかこんな事になろうとはな」

「お前だったのか!?」

「ああ、私だ。こんな事もあろうかと罠を展開しておいた甲斐があったというものだ」

「お前は一体何を言っている!? 自分が何をしたか解っているのかっ!?」

「解っているとも。警察の捜査を妨害してやった」

 九条は笑い混じりに軽々しく答えた。

「笑い事ではないだろう!?」

「いいや、笑い事だ。奴の家には、この一件に関わる重要な証拠が眠っている。そしてその証拠、使いようによっては事件解決に向けての強力な手掛かりとなる!」

「……だったら尚更警察を初めとする公的機関に譲り渡した方が良かったのではないか?」

「おいおいティタヌス、お前はそれでも私の部下兼最高傑作か? 重要かつ強力な証拠だからこそ、尚更警察には手渡せんだろうが。奴らは公務員だ。本来の力こそ強力だろうが、それを発揮する機会は極めて少ない。それ即ちパワーバランスという奴でな、公務員の中間管理職というのは上司の命に背いてまで己の意志を貫き通すなんて真似はそう出来んのだ」

「ではどうする? まさか我々だけで事件を解決するつもりか?」

 不安げに問うティタヌスに、九条は言う。

「馬鹿を言え、誰がそんなエネルギーの浪費などするものか。証拠は我々の手中へ確保し、警察より確実にこの一件を解決出来るであろう組織に明け渡すさ。如何なる法にも縛られず、ただ己の意志を貫き通し常に十割の力を出し切ることの出来る存在にな」

「そんな都合のいい組織があるのか? まさかギャングや新興カルト教団の類じゃないだろうな? 弱音を吐くようで悪いが、私はあの手の連中に関わるのはご免だぞ」

「アホか。私だってその程度の奴らにこんなに凄い玩具を暮れてやるつもりなど無いわ。例え奴らに数兆積まれて懇願されようが願い下げだ。ギャングも新興カルトもクソ喰らえ!」

「ほう、よくぞ言ったな九条。改めて思う、お前の部下で居て良かったと」

「ッフ、そうだろうそうだろう?何せ私は女性初代の『不動の歯車』だからなぁっ!」

「それで、お前が頼み込むという組織とは何だ?」


臣下ティタヌスの問いかけに九条は、自信満々の笑みで答える。


「ああ、それか。何、お前も知っている筈だ」

「ほう」

「つい最近どこからとも無く沸いて出た、不定期放送のラジオ番組(・・・・・)だ」


 それを聞いたティタヌスは、深々と頷いた。


「そうと決まればティタヌス、長旅の準備だ。昼食後14:23発のフェリーでイスキュロンへ向かい、そのまま砂上船でデザルテリアまで向かう」

「随分と急ぐんだな」

「当たり前だ。そうこうしている間に舎弟が殺されてしまうやもしれん。そうなっては私の名に傷が付く」

「成る程な」

「デザルテリアへ到着次第高志の家で証拠となるものを粗方回収し、ツジラ一味(・・・・・)を探り当てて用件を話しブツを突き出す」

「その後は?」

「無論、奴らに同行し士官学校を探る他あるまい。ツジラ・バグテイルはヴァーミンの保有者であり、その相方の青色薬剤師は古式特級魔術の使い手だ。それに奴らの組織にはあのニコラ・フォックスも居る! つまり知識人としてこれに接触しない手はない!」

「確かに、お前ならそう言い出すだろうとは思っていた。だが仮に、断られた場合はどうする?」

「その点は問題ない。組織のアテはもう二つある」

「……流石だな、九条。それでこそ我が主だ」

次回、九条と繁、奇跡の出会い(予定)!?

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