表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
最終シーズン-決戦編-
446/450

第四百四十六話 Q.これは危機的状況ですか?C.はい、きっと終わりが見えて来たんです。





本日は怒涛の二話連続更新!

―前回より・テリャード城内―


「……っは、クソっ……何故、こんなっ……」

「ぅ……しげ、る……脚が……」


 散々に傷付き疲れ果て、悉く追い詰められた二人は、ただただ床に倒れ伏したままであったが、それでも彼らの戦意は完全には失われていなかった。その証拠に繁は動けない程の疲労と右足の石化に蝕まれながら尚も強気に異形の化け物コリンナを睨みつけ、比較的傷の浅い香織は彼の元へ必死の思いで這い寄り魔術で石化を解除しにかかる。


「待って……すぐに、治療なおしたげるから……じっと、して、て……」

「……っ、すまねえ……こんな、肝心な所で……」


 だがそのような精神状態に反して、二人の肉体は既に限界に達していた。その最たる要因は外傷ではなく疲労であり、防ぎようのない強力な攻撃を回避しながらの攻撃という行為による体力消耗は、二人の想定を遙かに超えた凄まじいものであった。


{(ふん……外来異物ゴミクズの分際で神性種カミたるこの私をこうまで手古摺てこずらせるなんて……でも、もうそろそろ限界のようね)}

 未だ化け物の姿を維持し続けるコリンナは、正面上半分に備わった裂け目のような口を動かし言葉を紡ぐ。

{いいこと異物ゴミども?幾ら虫けらレベルの知能さえない、超が付くほどの愚か者のあんた達でももう理解できていることだと思うけど、もう勝敗は目に見えているわ。私は勝ち、あんた達は負ける。それがこの戦いに許された唯一絶対の結末なの。わかるでしょう?もう自分達には毛ほどの勝ち目もないって。わからないなら教えてあげるわ。あんた達には勝機かちめ希望のぞみ救済すくいもないの。仲間が助けに来てくれるとか、そういうことも考えないことね。私がこの姿になった余波で、城の周囲は強力な障壁が展開されているのと同じ状況――つまり、何物も城に入れず、また城を破壊することもできなくなったからよ。障壁を破壊・解除しようものならどんなに腕の立つ魔術師でも半日はかかるわ。けど、私の発動した術はあと半日どころか一時間と待たずに発動するの。つまり、どうあっても私の勝利は揺るがないってことよ。あんた達はただ、私に負け、死に、新世界の礎となるの。それが末路。抗うことなんてできやしない、決定事項なのよ}

 口の中に備わった宝玉のような眼球で二人を侮蔑的に見下ろしながら、コリンナは思わせぶりに『でも……』と切り出す。

{もし仮に、あんた達が自分の罪を認め反省するというのなら、多少の情けも考慮するわよ?望むなら楽に殺してあげるし、何なら新世界で唯一絶対の支配者になる私の傍に、侍従かペットとして置いてあげたっていいわよ?}


 侮辱とも思える誘いに対する二人の返答は、思わぬものであった。


「……へ、へは……世界を統べる女神の側近か。確かに悪かねえな……」

「なら……罪を認めて、反省するから……願いを聞いてよ、女神様……」

{いいわよ。言ってごらんなさい、絶対なる神の力でどんな願いでも叶えてあげるわ}

「そうか……」

「なら、願うよ」

 女神と呼ばれたことで気を良くしていたコリンナだったが、二人が口にした"願い"は、彼女の予想だにしない(そしてまた、読者にとっては予想通りの)ものであった。


「「女神様、どうか今すぐ死んで下さい」」

「首吊りでも練炭でもリスカでも硫化水素でも」「なんでもいいですから早く死んで下さい」

「お前みたいなゴミ以下の何かなんかの手下になるなんて」

「真っ平御免の願い下げなんです」

{――っ!?}


 その"願い"は当然のようにコリンナを激怒させ、怒り狂った彼女は四本の腕を斧に変化させ二人の頭目掛けて振り下ろす。


 だがその刹那、室内全域が光源不明の白く眩い光に満たされ、繁と香織は意識を失った。

―果て―


《目覚めよ……幼き邪神達よ……目覚めるのだ……》


 妖艶ながら威厳に溢れた低く渋い男の声に促されるままに、二人はブランク・ディメンションを思わせる謎の真っ白な空間で目を覚ます。


「ん……ここは一体……何だ?」

「……てか、何が起きてんの?」

《目覚めたか、幼き邪神達よ》

「「!?」」

《おっと、驚かせてしまったかな?だとしたらすまない》

「あー……いや、それはまあいいんだけど……」

「お前は一体何モンだ?姿が見えねえ所からして明らかに怪しいが……」

《確かに私は怪しい者だが、害を為すつもりは毛頭ない。寧ろ君らを助ける為、君らの意識だけをここに招き入れた。他の何を疑ったとしても、これだけは信じてほしい》

「あぁ、分かった。信じよう」

「まぁ、そこまで言うんなら信じるけど……あんた誰?」

《私の名は"グラーフ"。諸事情あって詳しくは明かせんが、本来の君らとは根底からして異なる存在であるとだけ言っておこう。》

「OK、グラーフ。それで、今回俺らを招いた目的は何だ?」

《うむ。単刀直入に言うが、君らにある力と権利を授けに来た。コリンナ・テリャードを殺しきる為のものだ》

「コリンナを?あんた、あいつとどういう間柄なの?」

《それも詳しくは明かせんのだが、浅からぬ間柄――それも、あまりいいものではない――とだけ。深い詮索はしないでくれ。ともあれ奴の存在は君らのみならず我々をも脅かす。故に奴は君らの手で死なねばならん。それだけだ》

「ん、まぁそう言うなら詮索しないけど……その力と権利っていうのは?」

《先程も述べた通り、どちらもコリンナ・テリャードを殺しきる為のものだ。力と権利では作用が異なる為、君らにはそのどちらかを選んで貰うことになる》

「ほう。具体的にはどんな奴だ?」

《一言で言えば"確実ではないが十分に奴を直接殺しきれるだけの力"と"奴の誕生と君らの召喚及びそれに付随する出来事の全てを無かったことにリセットできる権利"だ。どちらを選ぶも君らの自由だが、どちらかは必ず選ばねばならない》

「そう、か……どっちも一長一短だな。質問いいか?」

《構わない》

「じゃあ"権利"についてだが、それを選べば俺達は地球に帰れるんだな?」

《ああ。君らが召喚される一秒前へ迅速に送り返そう》

「記憶はどうなるの?」

《形式上、召喚されて以降の記憶は消去せざるを得ない。君らを知るカタル・ティゾル民についても同様だ》

「俺達が関わって来た出来事をリセットしたとして、関わってきた奴らはどうなる?」

《どうなると言っても、なるようになるだけだ。君らと出会わずそれまで通りの生活を送っていくことになる》

 一見何気ないようなグラーフの一言は、その実二人の迷いを断ち切る決め手として機能する。


「そうか……」

「なら、選択肢は一つね……」

《ふむ。では答えを聞こう。君らが選ぶのは、"力"か"権利"か》


 その問い掛けに、二人は口を揃えてはっきり答える。


「「力 だ」よ」

次回、本日中にも更新予定!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ