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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
最終シーズン-決戦編-
443/450

第四百四十三話 Q.これは何ですか!?A.コリンナ・テリャードです……多分





雪原に現れたガステは言う。

―前回より・嘗てエクスーシア王国と呼ばれた雪原の一角―


「皆様、お待ち下さいませっ!その女の処遇を決める前に、どうか私の言い分を聞いて頂きたい!」


 生き残ったセシル・アイトラスの処遇をどうすべきかとの議題で対立が巻き起こる雪原の一角にて、突如その場へ割るように大声を上げて現れたのは、セシルを始め今回の戦争で雪原に蘇った敵軍勢を蘇生させた張本人――屍術者のガステであった。

 突如として現れた得体の知れない人物に、議論は中断され一同はどよめき立つ。


「な、なによあんた!?」

「いきなり現われて話を聞けだと!?」

「だったらせめて名前を名乗れよ!」

「そうだそうだ!お前何者だ!?」

「おっと失礼、申し遅れました。フリーの屍術者をやっております、ティキ・ガステと申します」

「フリーの屍術者?」

「はい。つい先ほど――凡そほんの数十分前――まで宮仕えだったのですが、務める意味が無くなったので上司に無断で辞職してきまして」

「それ、辞職じゃないじゃろ……まぁええわい。んで屍術者のガステとやら、お前の言い分とは何じゃ?」

「はい。では先ず、私が何者であるかからお話いたしましょう」


 ガステの語った自身の素性――自身が元はテリャード城に仕えており、王女コリンナの意思に従い大量蘇生を行った張本人であるということ――は、一同を大いに驚かせた。だが一方のガステはそんなことなど想定の範囲内だとでも言わんばかりに話を続けていく。その内容を要約すると以下のようになる。


・蘇生された者達の扱いは"起動屍"である。

・ここに来たのは自身の罪をできる限り償う為。

・今現在、テリャード城内では辻原繁と清水香織がコリンナ・テリャードと闘っている。

・コリンナは世界を作り変える魔術を発動すべく特殊な部屋におり、二人へそこへ入る方法を教えたのは自分である。槍で足を貫かれた時はどうなるかと思ったが、素直に情報を話すと言ったら槍を抜いてくれたばかりか治癒魔術で健康な状態にまで戻してくれた。

・そもそも自分はコリンナに対しての忠誠心など『自身の先祖がはるか昔世話になったから』という最低限のものしかなく、病弱な恋人を人質に取られ(自分に不利な動きをすれば恋人を殺すという術をかけられ)無理矢理従っていたに過ぎない。

・しかしエクスーシアの外れに入院していた恋人は魔術のコストにされ消滅してしまい、同時に術の効力も失われた。術の失効を悟った時点で最低限の忠誠心分働いたらあとは裏切る予定だった。


「で、ようやく本題である"セシル・アイトラスの処遇"についてお話しできるわけですが……」

 そう言ってガステが取り出したのは、ヒト一人ならただの一突きで殺せそうな短刀と皺だらけの風変りな紙切れであった。そして彼がそれら――より厳密には、皺だらけの紙切れ――を取り出し掲げた瞬間、その場の一同は思わず絶句する。


「そ、その紙は、まさか……!」


 果たして紙の正体とは何なのであろうか。


―同時刻・テリャード城内―


「……っぐ……は、ぁ……ぅう……」


 繁と香織の連携により首から下を散々痛め付けられたコリンナは、顔面や頭部には一切傷を負わないまま瀕死の重体に陥っていた。


「さ、て……これであとは奴の首を刈り取って供米神官とこまで戻るだけだな……」

「はぁ……長かったー。本当長かったわー。でもこれで漸く地球に帰れる……」

「異界ともこれでお別れか。いざ目の前に来ると何か寂しくなっちまうなぁ」

「でもほら、帰らないって訳にはいかないんだから。私達はあくまで地球人、カタル・ティゾルにとっては異物なんだしさ」

「そうだな……んじゃ、さっさと奴の首を――{その必要はないわ、異世界からの異物ゴミども}

「「!?」」

 繁の言葉を遮るように、音声加工で歪められたかのような不気味な女の声が響き渡る。咄嗟に二人が声のした方に目をやると、既にそこでは何とも信じがたいものが佇んでいた。


{M#YY$&D%@……J!!B%F?GG?#……}


 そこに佇んでいたのが、コリンナ・テリャードと思しき何かであることは確かであった。

 然しながら彼女の肉体――或いは彼女そのもの――は既にわけのわからない原理によって物理の法則を逸したかのような変質を始めており、モゴモゴと動くその口と思しき部位からは、この世の如何なる知的生物にも発音できなさそうな言語による詠唱らしきものが呻き声のように漏れ出ている(その声とは無論先程繁の発言を遮った"音声加工で歪められた不気味な女の声"と同質のものである)。そしてその"呻き声のような謎の詠唱"に合わせてコリンナの体はどんどんヒトをかけ離れた異形のそれと化していき、詠唱が完了するのと同時にその姿はヒトはおろかまともな動物とさえ思えないような、無機的とも有機的とも言い難いデザインの化け物とも言い難い何かと化してしまった。


「ちょ、これってどういう……」

「何が、どうなってやがる……?」


{さあ、覚悟なさい異物ゴミども。お前らはここで私に殺され、新たなる世界の礎となるのよ}

次回、紙切れの正体とコリンナの本領!

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