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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
最終シーズン-決戦編-
442/450

第四百四十二話 元王女のショグウ





●●●!?殺された筈じゃあ……

―前回より・嘗てエクスーシア王国であり、また戦場であった雪原の一角―


「一体何がどーなってんだァ?」

詳細よく理解わからんが、どうやら敵幹部クラスの生き残りが居たそうだぞ」

「えっ!?幹部クラスの生き残り!?そんなまさか!」

「信じられないでしょ?俺も最初はそう思ってましたけど、事実生き残ってたんですよ幹部クラスが。それも結構有名な奴!」


 ふと『殺され損ねた敵軍幹部クラスが未だ生き残っており、その処遇について軽い対立が起こっている』との話を耳にしたショーン、ランドルフ、大樹の――傍目から見ると一人と一頭と一鉢にしか見えないがこれでも一応全員"人"扱いである――三人は、話を持ってきた張本人である影貴一座の若き二枚目男優キシメテ・スーティ(大変好色な色男として有名)に案内され、対立の現場へと向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「だからこの場で極刑に処すべきだと言ってるじゃないですか!」

「もう無力なんだし投獄して無期懲役が妥当だろ!」

「いやそれ私らがあれこれ言っても始まらないですしここはやっぱり裁判所に任せる方向でですねぇ!」


 キシメテの言うとおり、現場では主にアクサノ防衛隊隊員やクロコス・サイエンスの社員等といった面々を中心とした対立が激化の一途を辿っていた。その中心に居たのは第四百三十六話にて『面倒だし勝手に死ぬだろうから』という理由でニコラに放置され、結局思考を止めたまま事実上の戦争終結げんじてんまでズルズルと生き残ってしまっていたセシル・アイトラスであった。

 元々家系ぐるみで方々から忌み嫌われていた彼女の処遇については(上記台詞の通りに)三通りの意見が挙がっていた。『生前の罪を含まずとも危険かつ有害な存在であるためこの場で即刻抹殺すべき』との主張を掲げる『極刑派』、第二に『何らかの方法で蘇生された挙げ句戦いを強いられたという境遇を考慮し無期懲役に留めるべき』との主張を掲げる『投獄派』、『如何なる理由があるにせよ他の敵軍敗残兵同様その処遇は裁判所に任せるべきであり戦場で決めていいものではない』との主張を掲げる『裁判派』という三つである。

 当然この場合裁判派の意見が最も正当である筈なのだが、二派はそれぞれ『無力とは言え相手は飛姫種であり、連行中に何をしでかすかわからない。また、減刑の選択は王政への敗北を意味する』『倫理と人権の面から見てここで最低限の保護を確定させねばならない』と主張した(則ち両派共に一切退き下がらなかった)為に議論は泥沼化の一途を辿っていた。一方の当人セシルにとっては処遇がどうなろうが知ったことではなかった為に、脳内で現実逃避の妄想に耽っていた。


 そして議論が長引きかなりの時間が過ぎた頃、現場に思いがけない闖入者が現れた。


「皆様、お待ち下さいませっ!」


 大声を上げて現れたのは、セシルを始め今回の戦争で雪原に蘇った敵軍勢を蘇生させた張本人――屍術者のガステであった。


「その女の処遇を決める前に、どうか私の言い分を聞いて頂きたい!」


―同時刻・テリャード城内―


「インゲニウム・カルディナーリス・コムモドゥム・フルーメン!」


 和訳すると『天才・枢機卿・贈り物・流れ』となる横文字の羅列ならべられた必殺技らしき名詞(?)を叫んだコリンナの手元から、よくわからない電撃と光線の入り混じった大掛かりな攻撃魔術が放たれる。


「んなっ!手当たり次第ラテン語を並べたような技名の癖になんて威力よ!?」

「隙だらけで大振りだが太さと出力は桁違いかよ畜生が!」


 一方、繁と香織の二人はそんなコリンナの攻撃魔術を尽く回避し続けた。年齢おさなさ故か性格おごり故か、はたまたその両方どちらもか、ともかく外見の派手さと破壊力ばかりを重視したコリンナの魔術を避けるのはさほど難しくもなかったが、その分掠りでもすればそれだけで全身が吹き飛ぶ破壊力はどうあっても軽視バカにできない。故に(回避こそ容易だったものの)二人がコリンナへ素のまま接近することはかなり困難で、実質不可能にも等しかった。


「(まぁアレクスかヘルクルの形態を出せば幾らかは持ちそうだけど……)」

「(奴らの実力を軽視するわけじゃねえが、何処まで耐えられるか……)」


 故に二人は必然的に距離を取った戦い方を強いられたのであるが、そうなってくるとまた別の問題が浮上してくる。それというのはつまり――


「(奴の頭にダメージが行かねぇように攻撃しなきゃならねぇ……ってのがまた)」

「(あいつ、ただでさえ小さくて素早いんだもん。その上"頭に攻撃当てるな"ってのはねぇ……)」


 そう、魔術により"次元の門"を開き地球に帰還する為には神性種の新鮮な脳を傷のない状態で確保する必要があり、この為迂闊に頭を攻撃してしまうとそれだけで脳が使い物にならなくなってしまう危険を孕んでいたのである。


「(まぁ、逆の縛りよかマシだがな……総面積で言やぁ手足や胴体のが上だしよ)」

「(寧ろ、やろうと思えばそのくらいはどうってこともないのよね……)」


 ただ、その危険を回避することは(上にある二人の独白モノローグから分かる通り)さほど困難でもなく、二人は巧みな連携で着々と隙を突き(かつ、その頭を傷付けないように)コリンナを追い詰めていく。その後、調度よく弱った所で首を刈り頭部ごと脳を回収する――これこそ襲撃以前から二人が考えていた"地球帰還への脚本シナリオ"であった。


 だがその"脚本"は、追い詰められたコリンナの思わぬ行動――というよりは、二人どころかカタル・ティゾルの何者もが知り得なかった"神性種という種族の隠された驚くべき側面"――によって、思いもよらない方向へ拗れてしまう。

次回、セシルの末路とコリンナの本領!

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