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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
最終シーズン-決戦編-
435/450

第四百三十五話 理系達の決戦:前編




あっけましておンめでとーごっざいまぁぁぁぁぁぁっす!

―前回より・雪原と化したエクスーシア王国―


 前回までは都合により(?)サブキャラクターである増援達の活躍ばかりを描いてきたが、だからといって我等が(一応の)主人公である辻原繁と(どういうわけだか)彼を慕う仲間達――通称"ツジラジ製作陣"――が戦場に於いて全力でなかったということは断じてなく、寧ろツジラジ製作陣こそが現状の最前線に立ち各軍勢の中枢を叩くべく雑兵共を蹴散らしていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ぐぎゃああ!」

「ぶばらぁあ!」

「じゃべへっ!」

「ぎょぼろっ!」

「さぁさ退いた退いたッ!退かなきゃ死ぬよ!退かなくても死ぬよ!但し退いたほうがもしかしたら逃げられるかもしれないだけお得だよっ!」


 金色の蛾型弾幕と藪医者リリーの光刃でジュルノブルの兵士達を蹴散らし進むのは、ツジラジ製作陣へ最初に加入したカタル・ティゾル民にして狐系禽獣種の元開業医ニコラ・フォックス。嘗て逆恨みにより不老不死不妊の身体にされながらも、それを逆手に取り診療所営業の傍ら人体実験と書籍出版で食い繋ぎつつ王家と戦い続けていた彼女が狙う標的は、ジュルノブルの城主エスティ・アイトラスの一人娘にして飛姫種のセシルただ一人であった。


「っく……ニコラ・フォックス!我がアイトラス家に仇なし王家を崩壊に導いた忌まわしき雌狐よ!よもやまだのうのうと生きていたとは!」

「生きてて悪かったねぇ!でも生憎、自分の意思だけで今も生きてるわけじゃなくってさぁ!どっかの誰かさんがかけてくれた呪いのお陰で、今の今まで不老不死で通って来てっからさぁ!死にたくても死ねないんだよッ!」

「ならば殺さずして徹底的な敗北を味わわせるまでですわ!己の愚かさに後悔なさい!」


 強気に叫ぶセシルだが、た無理な蘇生と強引なPS因子復元の後遺症か美しい金色だった彼女の髪は色褪せたような淡いピンク色に変色し、肌の色も死にかけの重病人のようになっていた。だがそれでも彼女は嘗ての愛機"アスル・ミラグロ"の後継機であるPS"アルカ・ガルデンヌ"――後継機とは言うものの、鈍い灰銀色をしたプレートアーマーのような外観、緑色の光によって成された三対の翼を思わせる飛行ユニット、鋭い角の生えた兜、巨大な斧を武器とする戦闘スタイル等、前身アスル・ミラグロとは似ても似つかない代物――を身に纏い、眼前の敵を打ち倒さんと向かっていく。


 もう親も、家も、国も関係ない。

 自分一人だけの為に四肢を振るう戦いの味を、彼女は確かに噛み締める。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「行きなさいアスリン・・・・!裏切り者の糞虫どもを叩き潰し、我々(クブス)の栄光を取り戻すのです!」

「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!ク゛ワ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!」

 嘗てラビーレマは東ゾイロス高等学校校舎内に潜伏し生徒を襲っていた"クブス派"が残党たる水色の身体をした流体種ホリェサ・クェインに命令・・されるまま、同じくクブス派残党たる兎系禽獣種ラクラ・アスリンは、喉を嗄らし潰すかのような勢いで知的生物ヒトとも兎ともつかない奇声を発しながら"裏切り者の糞虫ども"こと小樽兄妹――兄・羽辰と妹桃李の二人――に襲い掛かる。

「おやおや、"糞虫"はともかく"裏切り者"は酷くありませんかMr.クェイン?」

『裏切り者は寧ろ貴方今嗾けた淫乱兎だと思うんですが――「ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」――おっと危ない』

「ア゛ガッ!?」

 飛び掛かるラクラの顎へ、瞬時に変異した羽辰の右足による蹴りが炸裂し彼女を吹き飛ばす。同時に桃李も身体を変異させるが、その姿は破殻化や爆生によるものではなく、かつて紀和室見との戦いで咄嗟に開花させた新たなる姿――則ちコックローチの幻想体であった。


『と、桃李……その姿はまさか……』

「えぇ、クロコス・サイエンスの戦いで偶然獲得したものです。以前はよくわかりませんでしたが、何度か試して漸く使い方を察しましてね」

「はッ!糞虫らしく小細工ですか!その心がけは素晴らしい!アスリンに飛び掛られた時の反撃カウンターもその判断も!でェすがッ、然し、まるで全然ッ!強化蘇生によって更に強靭になった我々を屠るには程遠いんですよねェッ!ハァ!」

 クェインが両腕を掲げるのと同時に、彼の全身へ禍々しい文様が浮かび上がった。

「真の紳士は時に敵対者に対しても情けをかけるサービス精神が必要だという!ならば私もそれに習い、糞虫どもに紳士的なサービスをして差し上げましょうッ!行きなさいアスリン!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」

『ふん、変態バスタードが紳士を気取りますか』

「いいでしょう、ならば我々もサービス精神を以て痛めつけ、蘇ったことを後悔させてやるまでです」

 声高らかにのたまい身構えた桃李の姿が、彼女の呼吸に合わせて徐々に変化し始める。それこそはコックローチの幻想体が持つ、何とも風変わりで強大な能力の片鱗であった。

次回、あっさり決着(させたい所なんです)!

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