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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
最終シーズン-決戦編-
428/450

第四百二十八話 しくジル!





誰が!?

―前回より・雪原と化したエクスーシア王国―


 供米達に続いて戦場に馳せ参じた面々は、各々の個性が爆発したような技の数々で敵勢を蹴散らし殲滅していく。


「行け、ティタヌス!例の新機能を見せてやれ!」

「了解したッ――ぬんッ!」

 猫系禽獣種の工学者・九条チエの指示を受けた角竜系地龍種の巨漢・ティタヌスが両腕を掲げれば、彼等を取り囲む敵兵達の身体が手も足も出ぬまま宙へ浮き上がる。

「ぬわはははははぁ!完璧だぞティタヌス!新機能"エア・グラヴィティ・ジェイル"は成功だ!雑兵共め、旅先で荷物を丸ごと盗まれた哀れな旅行者のように為す術もなくもがくがいい!」「あー……九条?取り込み中すまない、一つ聞いていいか?」

「ん~?何だティタヌス?今の私は最ッッ高に機嫌がいいからなぁ!答えられることなら何でも答えてやるぞ!どうした?何が知りたい?今日の夜食か?溜まりに溜まった仕事を二時間で片付けた超絶マル秘テクニックか?私が今穿いてる下着パンツの色か?」

「いや、その三つではないな……三つ目に至っては聞こうとも思わんし」

「照れ隠しはわかるがツれない事を言うな、私とお前の仲だろう?そりゃ確かに穿いとらんノーパンだが」

「いや、照れ隠しではないんだが……というか穿いてないノーパンとはどういうことだ!?どこぞの胡散臭い健康法か!?この雪深い中でそれは寧ろ逆効果だろ!」

「健康法というか、単に穿き変えるのが面倒だっただけだ。それで、聞きたい事とは何だ?」

「あぁ、そうだった。九条よ、一つ聞いていいか?」

「いいぞ、何だ?」

「うむ。九条よ、お前が開発したこの"エア・グラヴィティ・ジェイル"という新機能で敵兵達を無力化し拘束できたのはいい。いいんだが……奴らはこれから生け捕りにでもするのか?」

「おいおい、馬鹿を言うなティタヌスよ。こいつらは本来ならば死んでいなければならなかった命だ。ならばそれをわざわざ生かしておく義理などあるまい?」

「そうか……では九条よ、もう一つ聞こう。"エア・グラヴィティ・ジェイル"で拘束したあの雑兵共を、お前は如何にして始末するつもりだ?」

「……おいティタヌス、お前どこか不具合でもあるんじゃないか?そんなもの、お前の全身に組み込まれた武装でどうにでもなるだろうが。当たり前の事を言うんじゃない」

「そうか……当たり前のことか……では九条、今度は私からお前に一つ確かなことを教えてやろう」

「何だ?」

「お前の言う"組み込まれた武装"なんだがな……――一切動かせんのだ」

「!?」

「いや、厳密に言えば私の全身に於ける機械部分のほぼ全てと言うべきか。ともかく生命維持と会話に最低限必要な以外の全機関が動かん」

「ば、馬鹿なっ!そんな筈はない!ちゃんと何百回とテストしたんだぞ!?不具合なんてある筈が――「ないならこの状況は何だ?」

「……ぐぬぅ」

「ぐうの音も出んか……それで、これからどうするんだ?機能を解除し迎撃するか?」

「馬鹿言え!回りに浮いている雑兵共の殆どは飛行種族や飛び道具持ちだぞ!そんな状況で下手に解除なんてしたら私どころかお前までミンチだぞ!そもそも今でこそあの雑兵共はAGJこれの効果にビビって攻撃して来ないようだが、思い切った奴が対物狙撃銃やロケット投弾発射器ランチャーでも撃って来たらそれで終わ――「「九条さん、伏せて下さい!」」――……り?」

 上空より突如として響き渡る声に思わず顔を上げた九条の視界に、月明かりに照らされる『葉脈種と外殻種の中間』とでも言うべきヒューマノイド型の何かが目に入る。異形ながら引き締まりつつも豊満という女性的なスタイルをしたそれは一見ただの化け物に見えたが、九条は先程耳にした声だけでその正体を瞬時に(しかしまた、半信半疑に)見抜いていた。

「飛鈴に、高志!?」

 九条がその正体に気づくが早いか、宙に浮く植物とも羽虫ともつなかない化け物――もとい、ガルグイユの要領で融合・一体化した高橋飛鈴と高志・カーマイン――の背から蔓とも節足ともつかない細長く鋭い器官が無数に伸び、宙に浮かんだまま無力化されっぱなしの敵兵達をこれでもかと言わんばかりに悉く刺し殺した。


「――っと、ざっとこんなものかしらね」

「九条さん、ティタヌスさん、お怪我はありませんか?」

 優雅に雪原へ降り立った飛鈴と高志は、一切無駄のない動きで融合を解除する。

「あぁ、別に私達は問題ないが……」

「さっきの姿は何だ?まるで草のような虫のような……」

「大したものじゃありませんよ。以前バシロさんからああいった芸当も可能なのだというお話を聞いて、以前からあれこれと開発を続けていただけのことです」

「まだ名前さえ決まってませんけど、言わば二人の愛の結晶?みたいなものなんだと思います」

「愛の結晶、か。そこいらの女が言うとこの雪原以上に寒いが、お前が言うと重みがあっていいなそれ」

「それは私も同感だが九条よ、とりあえずAGJこれを解除していいか?いい加減この姿勢で居るのも辛いんだが」

「あー、構わんぞ。いっそお前をAGJ発生装置として運用しつつ飛鈴と高志に迎撃させる案も考えたが、それだと多分高確率で私が死ぬしな」

「いや、お前も戦えよ……仕事終えた後『今回は私も戦う』などと言ってはあれこれ作ってたろ……」

「無論戦うさ。但し私はこの通り貧弱故、戦果には余り期待するなよ?」

次回、増援ラッシュはまだまだ続く!

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