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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
最終シーズン-決戦編-
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第四百二十六話 ヨミガエル





降車した一同を待ち受けていたのは……

―前回より・エクスーシア王国はテリャード城の近辺―


 あれから後、一行は放屁の件を必死で誤魔化し取り繕わんと慌てふためくコリンナを無視してジープのエンジンを止めて下車。特に意味もなく横一列に並ぶ。


―城内―


「んー……全員出てきたか。しかも無意味に並びやがって、コリンナ様をナメてやがる……」


 城の窓から外の様子を気取ったガステは、別室の放送席にいるコリンナと手持ちの携帯端末にて連絡を取ろうとする――が、幾ら連絡を試みてもコリンナはそれに応じなかった。というのも彼女は未だに放屁の羞恥心を振り払おうと自分自身へ弁解の言葉を言い聞かせるのに夢中であった為、端末の呼び出し音にまるで気付けなかったのである。


「クソ、コリンナ様が出ない……一体何があったというんだ?……兎も角このままじゃいかんよな……仕方ない。確実に怒られるだろうけど覚悟の上だ……俺がアレを動かすしかない……」


 再び携帯端末を手に取り電話機能を起動したガステは、コリンナの持つそれとは異なる連絡番号を入力。繋がったかどうかも確認せずに、ただ一言『行け』とだけ命じる。直後はっと我に返ったコリンナが電話越しにガステを怒鳴り付けたのは言うまでもない。


―城外―


「おいおいおい、何なんだよこりゃあ!?」

「こいつら、一体どこから!?」

「しかもどっかで見たような顔ぶれがチラホラと……」


 ガステが連絡先の何者かに『行け』との命令を出したのと同時に、何処からともなく姿を現した正体不明の軍勢が車から降りた一同を取り囲む。それらは一見無作為に集められた集団のようでありながら何らかの法則性らしきものを感じさせ、宵闇故に不確かながらその容貌は(多少の差こそあれ)一同の記憶に何らかの形で訴えかけてきそうなものばかりであった。


「はて、どこかで見たような……」

『確かあれは……』


 一同が困惑する中、放屁の羞恥心から立ち直りガステへの説教を終えたらしいコリンナの声が響き渡る。


『聞きなさい愚物共!今日はわざわざ殺されに来たあんた達に特別な贈り物を用意したわ!それは――


「何だ?蒸したヤム芋か?」

「いや、どこの妖怪調理師熊猫キミノスキナタベモノナァニよそれ」

「もんじゃ焼きじゃないの」

『「あれって手渡しできるような代物じゃないでしょう』」

「スープの黒いラーメンじゃね?」

「その枠はゲストじゃねーだろ」

「じゃあ白いご飯の入ったマヨネーズとか?」

「せめて逆にしましょうよ……」

「っていうかとりあえず食べ物ネタから離れませ――『哀れで無惨な死よッ!今あんた為を取り囲んでいるのはその実行者――もとい、今まであんた為が生放送と称し繰り返してきたテロ行為の被害者達ッ!死して尚衰える所を知らないあんた達への憎悪を見込んで私が蘇らせた最強の超大隊!まさにあんた達を殺すのに打って付けの戦力って訳よ!』


 そう、コリンナの言う通り今現在一同を取り囲んでいるのは、嘗て彼らが六大陸をマタに駆けては殺してきた者達――ノモシアはジュルノブル城に仕えていた衛兵や王宮魔術師、イスキュロンはデザルテリア国立士官学校にて暗躍していた者達、アクサノのみでの活動ながら国際的に悪名が知れ渡っていた海神教の信徒達、奇妙な着ぐるみを身に纏う真宝軍の兵士達、エレモスの大地を恐怖に陥れた"未確認超存在"ことゴノ・グゴンや己天辿晃の眷属達――であった。


 そしてまたそれが"大隊"と銘打たれている以上"兵士"や"士官"を率いる"司令塔"或いは"指導者"クラスの者達も当然ながら蘇生されていた。



 ジュルノブルの兵達が取り囲む中には、アスル・ミラグロとはまた違ったPSを身に纏ったセシル・アイトラスが佇む。


 各軍勢の集まる隙間には、嘗てクブス派残党として暗躍していたホリェサ・クェインとラクラ・アスリンが存在感を放つ。


 揃いも揃って蘇生された愛人四十八人を率いるようにして、秋元・九淫隷導・康志が蜷局を巻き身構える。


 海神教の信徒達に守られるようにして、同組織最後の信帝であった地球外生命体のラト・ルーブが触手をうねらせる。


 夜間の戦場には不釣り合いな可愛らしい着ぐるみに身を包んだ兵士達の中には、樋野ダリア率いる"議会"の面々と真恋双の姿がある。


 多種多様な姿をした眷属達――但しその中にスミロドゥスやドラゴマンドラ、アポストルス達の姿はない――の群れを統括するのは、ゴノ・グゴンの骨格に己天辿晃の皮を被せて触手を生やし痩身させたような異形の化け物。



 歴代の強敵(と書いた所で"トモ"などとは決して読まないような面々)が、揃いも揃って手下を率い、ただ一方へと視線を向け続ける。

 年齢も、性別も、種族も、国籍も、思想も、趣味趣向も、性癖も、その他何一つとして完全に一致することがなく、本来ならばその心が一つになることなど決して有り得ない彼らの――本来ならば断じて一方を向くはずのない――視線。その向く先に居たのは、高々十人ばかりの彼らにとって共通の"滅ぼすべき宿敵"にして"殺すべき怨敵"。

 それを見据えた者達の心は雪原の上で一つとなり、共通の目的を見出すに至る。その目的とは即ち、この十人の敵――否、"十匹の害虫"を駆除ころすという、至極単純なものであった。

 取り囲む全員から殺意を向けられた一同は、その圧倒的な数量と気迫に気圧され、揃いも揃って勝利はおろか生さえも諦めてしまいそうになる。これぞまさしく『現実とはサディストである』という一説を体現する状況といえた。

 一同が活気を失い閉口するのと同時に、コリンナの嘲りや罵りの言葉が響き渡る。最早希望も救済もなく、このまま一方的な虐殺が繰り広げられるだけなのか?


 否、そんなことはない。そも、現実は"サディスト"でこそあれ断じて"非情"などではなく、またこの場合に於けるサディストの意味合いは単なる嗜虐嗜好ではない。


 その証拠に、"救済"はすぐさまその姿を現した。


『さぁて!長話はこれくらいにしてさっさと片付け――「そうはさせんぞ!」――な、何!?』

 拡声器を通して発せられるコリンナの発言をそれに勝るとも劣らぬ恐るべき声量で掻き消す、雄々しい中年男の肉声。敵勢のみならずツジラジ製作陣一同までも困惑する中、それに乗じるかのように中年男は叫ぶ。

れぃ、ライコーダ・・・・・!遠慮は要らん、お前の新技とくと見せてやるがいい!」

「了解ダ、神官・・ッ!天雷波テェンレイボー!」

 中年男に続く形で獣じみた恐ろしげな声が叫んだかと思えば、虚空に生じた雷電が海神教信徒十数人を一瞬で焼き払い、消し炭にしてしまう。すると敵勢の騒ぎは更に酷くなるわけだが、その一方ツジラジ製作陣一同の騒ぎは沈静化に向かい、寧ろ彼らは安堵し始めた。何故であろうか?


 それ即ち、彼ら十人の内八人がその声に聞き覚えがあったからに他ならない。

次回、まさかの王道展開!

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