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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
最終シーズン-決戦編-
422/450

第四百二十二話 ラブシーンっぽいのを書くのがこっ恥ずかしかった私はすぐさま描写の省略を決意しました




合流したけれど……

―前回より・公的機関施設の会議室―


「で、こうやって皆一同に会することができたわけだけど……」

 公的機関の特殊部隊長であるという桐生時子に案内されるまま通された部屋で他の面々と無事再会を果たした香織。出迎えてくれた仲間達は皆一様に元気そうで、特に目立った外傷も見受けられなかった――ただ一人を除いては。

「……とりあえず聞いて良いかな、繁」

「何だ?」

「あんた、一体何があったの?何か見るからにただ事じゃなさそうだけど」

 香織の言う通り、ツジラジの司令塔(但し本人は断固として『ネタ出しと雑務担当の下っ端』を自称)である我等が主人公・辻原繁の容態はどう考えても"ただ事"などではなかった。片腕はギプスで固定され、頭や胴には包帯が巻かれ、顔にも医療用のガーゼが貼り付けられ――要するに絵に描いたような"怪我人"であった。しかしそれでも繁は余裕を見せながら軽口を叩く。

「何ったって、まぁアレだ。見た目ほど大した事ァねぇ。ただ、買い出しの帰り道にいきなり対人麻酔弾が飛んで来たもんで片手間に全部撃墜してたら特殊部隊みてーな奴らに取り押さえられてな」

「あー……」

 そういえば時子が言っていたような気がする。『繁だけは普通に仕留められる気がせず、多少荒手を使わざるを得なかった』と。

「もしかして俺を大量殺人犯と分かって消しに来たのかと思って軽く蹴散らしたんだが、その隙に麻酔弾喰らってよ。それでも捕まって堪るかーってんで流れは無茶しなきゃいけねーよなと思って追い払おうと適当に暴れ回ってたらまぁ大陸の素人坊主が酔拳失敗したみてーな有様になっちまって、木に脚はぶつけて臑打つわ、蹴躓いて石に頭ぶつけちゃ出血するわ、ズムワルトのエネルギー反射ミスって腕の骨に軽く亀裂走るわ肋骨折れるわ散々で、結局意識失うまでに全身ボロボロよ。手当て受けたんで動き回るに支障はねえが……」

「あれ、でも見た感じそれくらいの傷なら普通の魔術衛生兵が三人くらい居ればポンと治療できそうだけど」

「あ、やっぱそう思うか?思うよな?何せ攻撃系が駄目な以外はほぼ完璧な魔術師だもんなお前って。いや、俺も奴らにそう言ったんだよ。『そんな怪我ぐれー治癒魔術か体組織再生薬でどうにかしてくれ。民間の病院とか高校の医務室じゃあるめぇし世界の危機なら高い薬も使い放題だろ』ってな。だが奴ら曰く、魔術師も薬も専門の部署から許可取らなきゃ使わせてくれねーだとかで結局こんな手当てんなっちまってよ……ったく、真剣マジんなって世界の危機をどうにかしようと頑張ってるんじゃなかったのかよっつー話だぜ」

「うわぁ、それは酷い……公僕の帽子を脱ぎきってないじゃん……」

「どっちかっつうと公僕の帽子の上から規則違反者の帽子被ってる感じじゃね?まぁどっちでもいいや。とりあえず香織、お前の魔術で傷回復してくんねぇか。医者からは俺の生命力なら二日で完治すると言われたが、コトがコトならそんなに待っちゃいられねぇ」

「言われるまでもなくそうしようと思ってた所よ」

「有り難え」


 香織の治癒魔術により傷を癒された繁は、自ら包帯やガーゼを引っぺがしギプスから手足を引き抜き健康に戻った自身の身体を動かし筋肉や間接を慣らしていく。


「よし、問題なく動くな。助かったぜ香織、お前はやっぱ最高だ」

「いいっていいって。身内同士だし助け合って当然でしょ」

「それで、これからどうすんの?」

「今すぐテリャード城を攻めますか?」

『それとも一休みしますか?』

「流石に今すぐは出撃ねえよ。とりあえず何かしら計画を練るのが先だ。報酬も決めんといかんし、あと皆がいいってんなら送別会もやりてぇと思うがどうだ?」

「私は別に構わねえが……意外だな、繁からそんな言葉が出るたぁ」

「だよな。お前の事だからてっきり収録優先して送別会なぞ後回しか中止にするかと思ってたが」

「心外だな。俺ぁそんなデジタルじゃねえぞ。今回が最後の収録タタカいだ、決意を固め未練を残さねえよう、お前らと一緒に過ごす時間は少しでも多く取りてえのさ」

「そう聞いてると何か繁が僕らリーダーみたいに思えてくるのだ」

「何を仰有います春樹さん、彼こそはまさしく我々の指導者リーダーではありませんか」

「いや、俺はあくまでネタ出しと雑務担当だよ?そもそもこんな我が儘で計画性のない奴がリーダーやってたらここまで来れてねーだろ?」

「(貴方のような雑務担当がいますかって突っ込みたい……突っ込みたいけど突っ込んだら負けなんだろうなぁ……)」

 そんなケラスの独白モノローグを察した香織が彼女の肩を叩き『気にしないであげて、あいつって昔っからああなの』という旨の言葉を呆れ気味に首を振るジェスチャーで伝えたのはその直後の事であった。


 その後、テリャード城襲撃の時刻は装備調整等の準備時間も考慮し翌日の夜に、報酬は『ツジラジ製作陣に属するカタル・ティゾル民八名が以後安定した生涯を送る上での全面支援』に決定。続いて時子の部隊によって回収されていた送別会用の購入物や部隊の金で新たに手配した品々で準備を進め、その日の夕方から施設内で送別会を開催。公的機関の金を注ぎ込んだ事もあり送別会は当初予定していたものより遥かに豪華なものになり、十人は掛け替えのない一時を楽しんだ(が、その描写は諸事情により割愛させて頂く)。


 また、送別会が佳境に差し掛かった辺りでこっそり部屋を抜け出した二人の地球人――もとい繁と香織――は、互いばかりか仲間達や世界の運命すらも懸かってしまった最終決戦を前に胸中に秘めていた想いを告白。物静かで薄暗い部屋の中で抱き合い軽く唇を重ねる事で互いの間柄を"親戚同士の親密な二人組"から"相思相愛の正式な恋仲"まで発展させたというが、これもまた詳しい描写は敢えて割愛したい。

 それでも明らかにしておくべきことがあるとすれば『貞操を捧げ合うのは全てが解決してから』という意見の合致から二人が情事の類に至らなかったことと、そんな二人の様子を影ながら覗き見ていた仲間達八名が(半ば無理矢理連れて来られた璃桜とケラスを除いて)その事を気取った二人により(あくまで最終決戦に影響が出ない程度にだが)徹底した制裁を受けたということぐらいであろう。

次回、臨母界に突如異常気象が!

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