表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
418/450

第四百十八話 第六の地





シーズン6完結!

―前回以降の話―


 辿晃の死はそのまま量産された小型アポストルスの死滅に直結し、エレモスを古代より蝕んでいた二大害悪とその血を継ぐ者達はカタル・ティゾルから跡形もなく消え失せた。同時に夜は明け、繁達は録音音声を流しつつ足早にその場から姿を消した。

 それからはあれやこれやとややこしい事が山積みになっていたが、エレモスがカタル・ティゾルの第六文化権として他大陸政府から正式に認可された事を皮切りに、それら諸々の問題は信じがたいほど円滑に進み、事態は驚くべき早さで収束に向かっていくこととなる。


 次に辿晃とグゴンに操られていたダンパーとハルツだが、幾ら操られていたとは言え組織ぐるみで大勢の人々を手に掛けたことは紛れもない事実である。その事は本人達が一番よく理解していたらしく、二人は保護された後警察へ自首。全ての罪を打ち明けた事で正式に逮捕され、後に(各世代・地域・業界を代表する有志をそれぞれ特定の場所に集め、その場所同士をテレビ電話で法廷と繋ぐという間接的な形式でこそあったものの)実質的にほぼ全てのエレモス民を裁判員として招いたに等しい凄まじい規模の裁判が執り行われた。

 全大陸民に向け、ダンパーとハルツは口を揃えて『償いになるのならば如何なる罰をも甘んじて受けさせて頂く。但し、もし叶うのならば生き残った部下達には再起のチャンスを与えてやって欲しい』と主張。裁判員達からは様々な意見が飛び交うも、最終的に(二人及び二人の部下達の内今回の戦争に荷担した者達全員へ)下った判決は驚くべきものであった。

 その判決とは即ち"終身刑"なのであるが、牢獄は刑務所ではなく両組織の敷地内であり、そこに"収監"された彼らは二十四時間三百六十五日――命が果てるその日まで――あらゆる動作に於いて徹底した監視と管理を受けながら、それぞれの組織(即ち中央スカサリ学園とクロコス・サイエンス)の維持に貢献し続けるのだという(無論、敷地内から勝手に出ることは許されず、その他諸々の規則に違反した場合は通常の終身刑が適用される)。この判決は『中央スカサリ学園とクロコス・サイエンスの存在はエレモスに必要不可欠であり、これら組織の維持にはガロン・ダンパー及びミルヒャ・ハルツの存在が必須である』という各界代表者の意見に基づくものであった。この判決に二人を初めとした"戦犯"達は法廷にて感動の余り数分にも渡って泣きながらただ礼を言い続けたという。


 続いて本件に於ける代表的な被害者である為に裁判に於いて"特別裁判員"という特殊な地位を与えられたルラキ、エリスロ、王将と、戦犯であり被害者でもあるセルジスについて。

 秘宝回収作戦失敗の後フォルティドラコネム・ウェールスと恋仲になったルラキは裁判後『どうせもうヒトの社会になど戻れはしないだろう思い込んでいた為にフォルティドラコネムと身を重ね、彼の子まで産んでしまっている』という衝撃的な事実をあっさり公言(また、フォルティドラコネムはこれに補足する形で『身体の大きさが違いすぎて無理だろうとお互いセックスは諦めてたが、ある日何故か気合いで二足竜属種ヒト型になれるようになってた』とも公言。後日ダンパーが『その様な能力など設定していない』と証言した事も相俟って更なる波乱を呼んだわけだがその辺りは割愛)。 ともあれ『名誉学生とまで讃えられた女生徒が(辿晃及びグゴンの遺伝子こそ継いでいないものの)戦争の遺物と言えなくもない生命体との間に子を成した』という事実に変わりはなく、報道陣が無駄に騒ぎ立てたこともあり人々はおぞましいスキャンダルを懸念したが、驚くべき事に彼女の両親やその他親戚達は二人を盛大に祝福。フォルティドラコネムを新たなるカリスト家の一員――即ち婿養子――として迎え入れた。これに合わせて彼は自身を産み出したダンパーの元へ出向き罪の償いとして自分に新しい名をつけるよう要求。ダンパーは熟考の末メサ・エレモスの遺作である演劇の台本に登場する"救世の竜"に因んで"マシュクルーツ"という新しい名を彼に与えた。"フォルティドラコネム・ウェールス"改め"マシュクルーツ・カリスト"は、持ち前の戦闘能力を生かし生体災害応戦士として各地で活躍を続けている(そしてまた数年後には彼の妻ルラキも夫と共に戦場へ身を投じることになるが、それはまた別の話)。

 ルラキの親友であるエリスロは、あれから後すぐさま意識を取り戻したという。そして自身に纏わる衝撃的な真実を知ったわけであるが、彼女はそれらをさして気に留めもせず生徒会長としての活動を続行しつつ、学生生活の傍ら戦争の被害に遭った者達の為に尽力。中央スカサリ学園の教員を目指し日々勉学と鍛錬に励む日々を送っている。

 ルラキやエリスロと親しい間柄にあり、二人同様本件の最大の被害者である王将もまた二人と同様に中央スカサリ学園へ学生として残り、学生剣士として更なる高みを目指しつつ未来に向かって思いを馳せ、努力を続けているという(昨今の悩みは将来の夢が多すぎて決めかねている事だとか。曰く『本格的にスポーツ剣術を極めてプロ選手になるというのが中学時代からの目標だったが、この事件に巻き込まれた経験を考えると警察官や生体災害応戦士も捨てがたい』との事)。

 やむなき理由があったとは言え実質的に戦犯であり被害者でもあるという微妙な立ち位置にあったセルジスは審議の結果実質的な無罪判決となり、四年間ある程度の監視下に置かれるだけという軽い罰で済まされた。また、事件後二百九十八話にて宣言した通り王将、ルラキ、エリスロを誘って外食に行った際は店とその場に居合わせた客から盛大に歓迎されたとか。また、本件終了後に王将と恋仲になったらしい。


 王将に協力した五人の後輩達――雨内心愛、空知つばさ、早乙女奈々、米沢秋、山下星月――は事件終了後それぞれの家族から散々に叱られたが同時に讃えられもしたようで、その後もありのまま、悠々自適な日常を送っているという。


 繁達に続いてその場から逃げ出した鎗屋悪鬼衆をエレモス民は英雄と讃えたが、社会からの賞賛や英雄視など柄ではないという考えを持つ彼らは再び闇に紛れ、少人数ながら騒がしく好き勝手に過ごしている。


 ザトラと彼女の使い魔達の消息は鎗屋悪鬼衆以上に知れないが、ダンパーは『彼女らならば、きっとどこかで生きているのだと、何となくだがそう思う』と語る。


 手隠師団の中で唯一生き残った如月。ドサクサに紛れて戦場から逃げ出した彼は、半年間に渡る一人旅の末に妹を殺した真犯人を突き止め、差し違える形で復讐を果たし息絶える。路地裏へ静かに横たわっていた彼の死に顔を見た検死官は自らの手記にて『信じがたいことだが、これは彼にとって最も望んだ結末だったのだろう』と書き残している。


 最後に、未確認超存在を追う内にロコ・サンクトゥス平原での戦争にも参加してしまっていた二人の刑事――高宮と真壁について。事件解決に伴い二人が未確認超存在などというものを追い回す必要性はなくなった。これにより二人は漸く捜査三課に復帰できるのだろうと思い込んでいた――が、それは所詮思い込みに過ぎなかった。本件を受けて警察側は新たに『超常現象課』を設立し、高宮と真壁をその課長へと任命したのである。三課への復帰を心待ちにしていた二人は当然これを拒否せんとしたが、大陸首脳陣からの直筆嘆願書なるものを突き付けられたことで拒否権は失われ、二人の生臭刑事は引き続き奇妙なものどもとの戦いに身を投じることとなる。



 かくして実に158話にも及んだエレモス編は、どうにかこうにか丸く収まり終了する。




 然しながら時を同じくして、水面下ではある脅威が蠢きつつあった。



 その脅威とは、ある二人の地球人にとって因縁深き"かの王国"の――

次回より最終シーズン開始!

え?ランゴとエリヤの末路?素で忘れてたから思い浮かんだら活報か何かで書くわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ