第四百十六話 戦うゲスト様-変貌-
このままサクサク進められるか……!
―前回より・聖地平原―
機転を効かせた風間大士とフォルティドラコネム・ウェールスの活躍により無事助け出されたセルジスは程なくして意識を取り戻し、『一先ず保護すべき』という事で高宮と真壁により近隣住民の避難施設へ送り届けられていった(高宮と真壁に力を貸していた三入と神下は二人がセルジスを送り届けた時点で時点で魂魄融合術式が限界に達したため他の面々より先に臨母界へ帰還した)。
「さて、そんなわけでそろそろ最終決戦――あの己天辿晃とかい老害ニートをみんなで刺身にする流れ――が来たんだけども、ここで私が召喚した異界の皆にとってあんま洒落にならない事実が発覚したので一応伝えとくわ」
「洒落にならない事実?」
「うん、実はねぇ……何か大人数かつ長時間固有効果を維持し過ぎた所為か、システムの方がそろそろ限界みたいなのよ」
「えーっと……」
【それって】
【つまり】
「理解りやすく言うともう暫くしたら皆、この世界から消滅しちゃうのよね」
『『『『『えぇぇえええっ!?』』』』』
「おいどういうこったそりゃあ、聞いてねえぞ!?」
「そういう事は事前に言っておいて下さいよ!?」
「お兄ちゃぁん……あたしこんな三流駄文の中で死ぬのやだよぉ……」
「泣くんじゃないアリシス、大丈夫だ。いざとなったらサマエルを蠱毒成長中に嗾けてでもそのシナリオは歪めて見せる」
「いや、それは流石にやめなさいよ……」
「というか、暫くとはどのくらいだ?」
「限界まで何もせずじっとしていたとして半日、まともに戦えば三時間も持たないんじゃないかな。あぁでも安心して、消滅ったって皆が元居た世界へ強制送還されるってだけだから。拠点に置いてある荷物とかポイントで買ったものとかも所定の場所へ配送しておくし、アフターケアはちゃんとやるから」
その言葉を聞いた異界民達は一先ず安堵するが、それでもまだ不安はあった。それというのは則ち、"自分達が消滅するより前に辿晃を倒せるか"という事である。然し香織は不安がる彼らに『皆が使命感に駆られたり気負ったりすることはない。今まで通り全力で戦ってくれていればそれでいい』と伝え、異界民達の士気を高めていく。
「さて、それじゃ早速はいt――「何をゴチャゴチャと喋っているのですッ!?」――っ危なぁー。無視されたからって殴ることないじゃん?死ぬかと思ったわー」
「まだそのような減らず口を……いいでしょう、ならば嫌でも己の立場を思い知らせてやろうではありませんか!」
振り下ろされた触手を最低限の動作で避けた香織の軽口は辿晃を更に苛立たせ、肉体の変異を更に加速させる。脈打つ度に体組織は不定型に肥大化し、大がかりに形を変えながら何ともつかない異形の器官を成していく。樽のような四角柱型をした胴体の頂点からは曲がりくねった細長い首に支えられた平坦なヒトデが如し頭部のようなものが三つも出現。十本の足に裂け目が入り、内部から現れる血管のような触手五本の先端部はそれぞれヒトの眼球、耳、鼻、手の指、舌のようなものへと変形していく。
四画樽それぞれの面に(ちょうど変異前の辿晃を埋め込んだような)目鼻等細部の簡略化された女体らしき器官が浮かび上がったかと思えば、それらの周囲から面の一つごとに一種類の腕か脚のようなもの――長毛に覆われた筋肉質な猿の腕、硬質な鱗に覆われた爬虫類の前足、角質の鱗と鋭い爪を持つ鳥の脚、それそのものが刃物であるかのような鎌状の節足――がそれぞれ八本生え、更にそれぞれの下部から大腸とも産卵管ともつかないうねる太い管が五本ずつ発生。立て続けに上部の"角"から原始的な昆虫(具体的に言えばアニメカゲロウ目)のそれを思わせる巨大な翅が一対ずつ形成されたところで辿晃の変異は完了する。余りに急激であった為かその身体は不安定で、安定させるのに暫くの時間を要するのか辿晃は未だ身動きを取れずにいる。
「何なのよ、あれ」
「何ってそりゃお前、あのコテン何とかって奴の最終形態だろ」
「然しわけわかんねぇな……」「っていうか、キモい……吐きそう……」
「えっ、変身系界隈だと周一でああいうのと戦ってるんじゃないの?」
「いや、幾らゲラムでもあんな悪趣味でセンスねー構成員はいねーよ」
「ダムラスもね……幾ら宇宙ってついても海賊であって魔女軍団とかじゃないから……ゥぷ」
「あぁもう、大丈夫ですか?エチケット袋使います?」
「一応貰っとくわ……」
「っていうか、あんなんどう倒せっていうのよ……」
「清水さん、作戦はあるんでしょうね?まさか無策なんて言わないでよ?」
「え?あぁ――大丈夫大丈夫、作戦ならもうできてるから」
「と、言うと?」
「表面の肉を削り取って中の生徒会長を救出後、適当に私刑って殺す。以上」
「うわぁ、想像以上にストレートで行き当たりばったりな作戦……」
「っていうか、生徒会長助けなきゃダメ?」
「ダメ。だってほら、変異前に言ってたじゃん、生徒会長にはまだ使い道があるとか何とか」
【言ってたっけ?】
「言ってた言ってた。風間君が飛び蹴り入れたから途切れちゃったけど確かに言ってた」
「それで、奴は生徒会長をどう使うというんだ?」
【あら聡子ちゃん、気付かない?】
「閻魔殿はお分かりなのか?」
【えぇ、ぼんやりとだけどね。聞くにあのお人形さんみたいな生徒会長の女の子は凄い魔力を持っていて、それで古代の機械を動かしたりできるのよね?だったらあいつはあの子を魔力の電池みたいに使ってるんじゃないかしら】
「ご明察、ほぼ宵闇さんの言う通りだろうね」
「魔力タンク……そうか、それで幾ら痛め付けても傷が再生していたのか!」
「あくまで推測だけどね。とりあえず生徒会長がどの辺りに囚われてるかは私の方で探知済みだから」
「俺が溶解液でその部分を削り取り」
【再生するより前に俺が引き寄せる】
「という作戦で行ける筈。さ、そうと決まれば戦闘開始と行こうか。そろそろ奴が――「クォワァァァァアアアアァァァッ!」――動き出したから」
かくしてエレモスを舞台にした最終決戦の火蓋は切って落とされるのである。
香織「あ、あと言い忘れてたんだけど消滅は致命傷一歩手前とか瀕死ぐらいのダメージ喰らっても適用されるから気をつけてねー」
ゲスト各位『『『『【【それを早く言えー!】】』』』』