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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第四百十五話 戦うゲスト様-決戦へ-





やっとここまで来れた……

―前回より・聖地ロコ・サンクトゥス平原―


「くたばりやがれ、クソ老害がァァァァァ!」

「くぎゃらばぁあああああああ!」

「シャバラァァァァァァァァァァァ!」

噴破フンハァッ!斉哉セイヤァッ!」


 フォルティドラコネム・ウェールスの突き上げた拳は、その一発で辿晃を空高く垂直に殴り飛ばす。一方、殴り飛ばされた辿晃は上空で待ち構えていたルラキとランゴによってこれでもかというぐらいに切り伏せられ、傷の再生こそさせながらも体勢を整える余裕さえ失い無抵抗のまま落下する。

 当然その隙をフォルティドラコネムやルラキ、及びランゴやエリヤが逃す筈はなく、落ちてきた所で間四人(およびエリヤが精霊盾リュウマイの固有効果で呼び出した使い魔(ファミリア)達)による袋叩きを敢行。ある程度叩きのめした所でフォルティドラコネムが景気付けに力一杯蹴り飛ばす。


「っぐ……ぬぅぅ……馬鹿な……この私……絶対にして、至高の神である……己天、辿晃がっ……」


 蹴り飛ばされた辿晃は最早死骸同然といった有様であったが、尚も生命力と根性の尽きない彼女は体組織を修復し立ち上がろうとする。


【おいおい、しぶてーなァ】

「末尾に括弧書きで"笑"か"自称"の字が必須とは言え、やはり曲がりなりにも神を気取っているという事なんじゃないの」

「とは言えどうしようか。あれでは幾ら殴ってもキリがないぞ」

「うぅむ……どこかに弱点がある筈なんだが……」

「くっ……死さえ超えられぬ下等生物の分際で減らず口をぉぉぉぉっ!」

「「【「っ!」】」」

 右半身の約四割を修復した辿晃は、地中に張り巡らせていた植物の根を思わせる触手で四名の足元を拘束、人体程度なら一撃で断ち切る(実質的には"叩き割る"のだが、余りにも粗のない断面故実質的に"切断"である)触手を振り下ろす。全く予想外の出来事であった為に(また、高を括って話し込んでいた為に)出遅れた四名はそれでも多少の負傷を覚悟の上でそれを防ぎにかかる――が、その刹那。

「あギャあ!?」

 振り下ろされた触手の大半が、一瞬にして消滅した。常軌を逸した激痛に辿晃は慌てて触手を引っ込める――のと同時に今度は背後から魔術か何かによって爆発され肉を刔られるような痛みが走る。

「な――ァっガぁぁぁああ!?」

 痛みに悶えのたうちながらも傷を修復させつつ、辿晃は不意打ちを仕掛けてきた敵を視認・迎撃せんと辺りを見渡す。その有様は彼女を恨む者からすれば酷く滑稽に見えたのであろうが、無論辿晃自身としては命懸けである。

 そしてそうこうしている内に、いつの間にか彼女は大勢の敵――則ちツジラジ製作陣及び番組ゲスト、中央スカサリ学園及びクロコス・サイエンスが嘗て保有していた戦闘集団の幹部格及び関係者、鎗屋悪鬼衆及び生臭刑事二名――に取り囲まれていた。


「な――馬鹿なッ、これは一体!?」

「ふん、無様なものだな己天辿晃ッ!神を気取った貴様がよもや、哀れな道化に成り下がろうとは!否、最早これでは道化以下――言うなれば賭場で全財産を使い果たした低脳な遊び人同然ッ!最早貴様に残されたのは、いつ死ぬかも解らぬボロボロの肉体のみ!伝説たる大樹の下へ貴様を呼び出す相手は栄光に満ち溢れた輝かしき勝利などではなく、苦痛と不条理に塗れた悍ましき敗北なのだぁっ!」

 ルーナックがルラキの装備と化している(すなわち自由に身動きが取れない)のをいいことに好き放題まくし立てるザトラの芝居がかった口調は逼迫した状況の辿晃を余計に苛立たせ、彼女に想定より早い段階で"切り札"を使わせるに至る。


「――ッ……ふッ――ゥー……ヴぉろえばッ!」


 少しばかりえづくような声を上げた辿晃は胸の辺りに口のようなものを開き、今の今まで大事に保存しておいた"それ"をこれみよがしに吐き出した。


「……!?」


 そして吐き出されぶら下がる"それ"を見たルラキは面食らい絶句したが、そうなるのも無理はなかった。

 何を隠そう辿晃が吐き出した"それ"とは、彼女が"根源"こと"ジェニティガサリゴ・エカセルスィ"という仮の姿から真の姿である"己天辿晃"へと変異する以前に取り込まれた二人の内一人――もとい、ルラキの幼馴染みにして親友のセルジス・ズィリャ・プロドスィア――だったのである。


「――え……セル、ジス……?」

「あぁ、そんな名前でしたかね?まぁ、どんな名前であれ私にとってはただの裏切ったゴミに過ぎませんが……何時までも体内へ余計なものを留めておくのも何ですし、邪魔なので出しました。もう片方エリスロはまだ使い道もあるのです――「どりやァ!」――がぶふっ!?」


 突如うなじへ飛び蹴りを受けた辿晃は、思わず口にくわえた逆さ吊りのセルジスを離してしまう。折角の人質を逃してたまるかと慌てて触手を伸ばす辿晃だったが、意識のない羽毛種の身体はそれよりも早く不可視の引力によって奪われてしまう。

「(っく、まさか人質を持ち去られるとは……これはもう、使うしかないようですね……我が真の切り札をっ!)」

 心中にて密かに決意した辿晃の身体が、発作でも起こすかのように激しく脈打った。

ネタバレ:飛び蹴りぶち込んだのは大士

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