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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
408/450

第四百八話 戦うゲスト様-同時多発対巨大戦、長文!-

もうこれ後半のがメインやな……

―前回より・聖地ロコ・サンクトゥス平原―


「行くぞオラァァァァァァァァァァァ!」

「「「「「【【【うぉぉぉぉぉおおあああああ!】】】」」」」」

「チームさとてん、突撃ィィィィィ!」

「「「【【【【おぉぉぉおおおお!】】】】」」」

「クォルルルルロァァァァァァ!ファオワァァァァァ!」


 作戦により二手に分かれた一行は、それぞれ先陣を切った大士とダカートの怒声が如し掛け声を合図に左右から挟み撃ちにするようにしてドラゴマンドラへ突撃する。対するドラゴマンドラは困惑しながらも力任せにそれを迎え撃つわけだが、それらの攻撃は悉く回避され空を切ってしまう。というのも彼らはただただ回避に専念していた為であり、そこに攻撃の意志はない。突撃した十名(実質17名)の主目的とは"挑発による陽動"――即ち、作戦の下準備に過ぎないのである。


「クヮガ!ガヮッ!ファゴヮッ!」

「うぉっ、とっ、っぶなッ!ちょ、凛ちゃん!早く!早く糸!糸でこいつの口を!」

【急いで下さい凛さん!私の運気を上げる力があれば食べられはしませんが、それでも何が起こるかわかりません!】

「解りました!綺絲さん、行きますよ!」

【あいよ、任せなさいッ!】

 ドラゴマンドラの鼻先で噛み付き攻撃を誘うように逃げ続けるアルティノは、灯の持つ運気向上の神通力でどうにか生き延びている状態であった。その上にて浮遊する凛は綺絲の協力を得て太く寄り合わされた太い縄を瞬く間に造り上げて輪を作り、それをドラゴマンドラの大顎に引っ掛ける。

「来たッ!行くわよ刹那!」

【はいよッ!】

 それを察知したシャアリンが刹那より借り受けた力で地面から太い樹木の根を生やしドラゴマンドラの下顎と首から後ろ全般(四肢指先一本一本から尾の先端部まで)を地面に固定。同時によくしなる太めの高木を十数本生やし上顎に掛けられた蜘蛛糸の縄をも引っ張るように絡め取る。

 結果としてドラゴマンドラはその大口を無理矢理こじ開けられた挙げ句全身を拘束され身体の自由を奪われてしまった。

「行け、風間!あの巨大なサンショウウオの化け物にお前なりの盛大な引導を渡してやれ!」

【行くのよ玲瓏ちゃん!彼もまた悪によって操られてしまった、救われるべき哀れな生命いのちの一つ!せめて最期くらい、苦しませないように天へ帰してあげて!】

「言われなくてもそうしてやらァ!」

【任せて!】

 聡子と宵闇の言葉を受けた大士と玲瓏は、こじ開けられたドラゴマンドラの口から体内へと飛び込み胃の中へと侵入。胃液に電流を流し電気分解を起こさせ水素と酸素に分離させ、更にポイントで購入した可燃性ガスを充満させる。

「さあ、これで終いだぜイモリ野郎!」

 そう言って大士が取り出したのは、これまたポイントで購入した使い捨て式のオイルライターであった。

「ブッ飛びやがれィ!」

 叫ぶ大士はライターを掲げ力一杯点火。小さな炎が上がり、火の気を得た可燃性ガスは燃え上がり、酸素と水素は化学反応を起こし爆発。ドラゴマンドラの巨体は(頭や尾、四肢等の突出部を残し)内側から炎を上げて吹き飛ぶ(一方爆発を起こした張本人である大士と玲瓏は鎧に備わった防御システムにより無傷で生還)。細切れになって尚活発にのたうち回る肉片や突出部は聡子によって処理され、ドラゴマンドラの肉体は完全に消滅した。


◆◇◆◇◆◇◆◇


【何故ッ……何故この私、スミロドゥス・ギルティアがッ……】


 月光達の猛攻により瀕死の重傷を負ったスミロドゥスは、今にも事切れそうになりながら尚も闘志と戦意を途絶えさせぬよう言葉を紡ぐ。


「何故こうなったか、じゃあ?それはな、これこそが正しい結末じゃけぇじゃ、アホ猫。おめーはやはりギルティアとは名ばかり、ヴェルゼンにも劣る愚物じゃて。こうして戦って、改めて確信したわい」

【そん、な……馬鹿なっ……私が、ギルティアで、なく……ヴェルゼン以下だ、などッ……】

「おン?まぁだそんな事気にしとったんか。とっくに答えへたどり着いたか、くだらんと割り切って忘れとるかのどっちかと思っとったんじゃが……何じゃ、殺しの道具に育てられた畜生の割に妙な所でバカに繊細じゃのう」

「当時の記録を確認した所、スミロドゥスこれの飼育と訓練を担当していた者は知能強化訓練の一環として『地平の旅人』のテレビアニメを見せていたそうです」

「ほう、そうか」

「っていうか月光様、自分で振っておいてその言い草はあんまりでしょう」

「気にすんな遥、年寄りってなぁそういうもんなんだよ」

「……今一釈然とせんが、まあええ。ともあれお前がその事を未だ気にしとるんなら、理由を教えちゃらん事もねえ。まあ、理由と言うてもしょーもねぇ事なんじゃけどな?」

【勿体振って……いないで、早く教えなさいッ!何故私はギルティアどころかヴェルゼンにさえ劣っていると、そう断言できるのです!?】

「おうおう、年寄りをそう急かすもんじゃねぇわい。つうか態度が気に入らんのぅ、益々ギルティアとは程遠いわ――【早くなさいッ!】――おーびっくりした。怖ぇのう、一瞬失禁チビるかと思ったわい。ほんまお前、繊細なんか野蛮なんかどっちかにせぇよ。まどろっこしーのぅ」

「いや親父、尺とか時間的にもそろそろシメねーとヤバいぜ」

「ん、そうかの。ほんなら言うたらぁ。バカ猫よ、儂がお前をギルティアらしゅうねーと言うたんは……お前が悪に従ったけぇじゃ。本家ループリングならばそんな失態は犯さんかったであろうにな」

【私が……悪に?何を馬鹿げた事を言っているのです?確かに私は中央スカサリ学園という偽りの主に仕えては居ましたが、それらとて決して悪などではなかった筈で――「馬鹿げとんなぁお前じゃて。そこに気付けんかった時点でお前の"ギルティア"という種小名は馬子の衣装になったんじゃっつうのよ」

【な!?】

「お前は生まれながらに至高の知能と高潔な精神を持って生まれて来た。ならば、国の為と宣い戦を企て、その為に数多の化け物を生み出し、それらにより破壊活動や大量虐殺を繰り返す学園の行いを疑い、反旗を翻すぐれーの事ぁできた筈じゃ。お前の前任者であるフォルティドラコネムと同じよう――否、それ以上にな。まぁ反旗を翻すまでは行かずとも、『地平の旅人』のアニメを見て育ち、内容を理解するほどの知能があったなら疑うぐらいはできたじゃろうに」

【……】

「お前はそれすらせず愚直に学園を盲信し続けた。故にその行い、ギルティアとは言えんのよ。例えるならヴェルゼンか、その相方のオーガティス程度のもんじゃろうて。まぁオーガティスとは若干違うかもしれんが」

【……ならばそう言えばいいでしょうに、何故あれら以下と言ったのです?】

「何故ってそりゃお前、そんな"悪"である学園さえ見捨てて新しい主に鞍替えしたけぇじゃろ。ヴェルゼンはどうしようもねぇ奴じゃったが、恩人であり主であるインフィナイトへの忠誠だきゃあ忘れんかった。相方オーガティス共々馬鹿やらかしはしたが、それもまたインフィナイトへの忠誠が拗れた故。一方お前はどうじゃ?蘇るなり辿晃の傀儡となり、学園への忠誠なぞ元から無かったように捨て去っちもうてから、忠臣の"忠"の字一角目さえありゃあせん」

【また馬鹿げた戯れ言を!それは私が辿晃様の眷属であるが故の必然――「でもねぇじゃろ」

【ッ……!……どういう事です!?】

「いやぁ、どういう事も何も……そこに"眷属故の必然"なんぞありゃせまぁ。何せお前、自動的にじゃのーて自分の意思で辿晃に従っとるし」

【……何故そんな事が断言できるのですか!何故!?】

「そら断言できるわ。何せ――「何せ親父は熟練の魔術師だからなぁ。洗脳とかそういうのを見破んのも得意なんだよ」

「そ、そうそう。そうじゃぞ鬼王。故に――「故に口ぶりや目付きから、今のお前が何によってそこに立ち、何によって行動するのか、それを察する事など容易いのだ……」

「お、おぉ~……何時になくハキハキした喋りじゃなエスカ。上がり症のお前がそこまで成長してくれたんは本当嬉しいぞ」

「勿体無きお言葉にございます……」

「ええんじゃよ。まぁ何じゃ、つまり儂は――「つまり月光様はある意味他人の心を読めるのよ。アバウトだけどね。つまりあんたの心なんてお見通しってワケ」

「……うん、まぁそんな所じゃな」

「おい親父、この流れで何泣いてんだよ?大丈夫k――「えぇい気にするでねぇ!大丈夫じゃねーけど大丈夫じゃ!」

「(何があったんだよ……)」

「つまりなバカ猫よ、お前はその気になりさえすりゃ自らの意思で辿晃を噛み殺し引き裂くぐれーはできたんじゃ。もし仮にお前が真に学園の、フリサリダの忠臣であったならな……が、お前はそれをせず辿晃側についた。理由はどうあれ、そんなんじゃギルティアどころかヴェルゼンとも言えんの――【黙りなさぁぁぁいッ!】

「おうおう、逆ギレかい。いよいよ下郎じゃのう」

「……散々煽っておいてそれはないでしょう、月光様……」

「気にすんなエスカ、年寄りってなぁそういうもんなんだよ」

「……またも今一釈然とせんが、まあええ。ともあれ奴を始末したらにゃな。エスカ、っちもうてくれ」

「何故私が……」

「そこは月光様がらなきゃ締まらないんじゃないですかね」

「気にすんな二人共、年寄りってなぁそういうもんなんだよ。まぁ俺も親父が行くべきとは思うが」

「しょーがねぇのう、ほんなら儂がるけぇお前ら動画頼んだぞ。編集してサナギテレビのほんわかホームビデオ大賞に送るけぇ」

「また送んのかよ……」

「ったりめーじゃ。今年こそ金賞取っちゃるんじゃけぇ――っと、ほんなら行くどー!」

「おーぅ」

「ちゃんと撮れよー?」

「撮る撮る撮るって。バッテリ満タンだから早く行ってこいって」

「おっしゃぁぁぁぁ!」

【ガァァァアアア!】

「出でよ、無情刺殺柱ムジョウシサッチュウ!」

【ガッ――ギガボバァァァアアッ!】

「ン願わくば、ァ汝の罪が祓われん事をッ!」

 飛び掛かるスミロドゥスを魔術の光柱で刺し貫いた月光は、調子に乗ったザトラ並に芝居がかった動作で決め台詞を口にする。

「ふん……決まったぞい。あとは編集して投稿するだけじゃな。お前ら先行っとけ、儂そこいらで適当に小便してくるけぇ。眠気覚ましにコーヒー飲んだらカフェインがやばい」

「おう。んじゃ後でなー」

 適当に息子達を見送った月光は、刺し貫かれ息絶えたスミロドゥスの死体へ向き直って座り込み、物言わぬ獣に語りかける。


「そういやアホ猫よ、こりゃあ言い忘れっちもうたことじゃが、そもそもお前とヴェルゼンでは境遇がまるで違えんじゃ。奴めは過去に度を超した痛みと苦しみを負い、それ故に自らの救い主であるインフィナイトを主として、また●(※)として崇めとった。故に奴は、最後までインフィナイトの忠臣たり続けたんじゃ。然し一方、お前は生体兵器として何不自由なく満たされた状態で育てられた。故にダンパー達から向けられた期待と愛情をそこまで重んじる事ができんかったんじゃ。恵まれた境遇がその者にとってええ結果となるばかりではねえということの、まさに典型じゃな。本当にどこまでも哀れな獣よ……月並みな話になるが、せめて儂の一撃でお前の罪が祓われんことを祈る。そして今後この世に産まれるであろうお前のような立場の者が、嘗てのお前のような過ちを二度と犯さず、犯したとしても省み改め、る事を説に願っとるぞ。或いは、もし奇跡が起こり、何物かによってその機会が与えられるのならば――"スミロドゥス"よ、お前自身も然りじゃ。嘗てのような過ちを二度と犯さず、犯したとしてもそれを省み改め義のために生き、されど他者の傀儡ともならず己の信念を貫き通したならば、お前は真にその"ギルティア"という種小名を名乗るに相応しい存在となれよう。例え何処かで迷走したとしても、踏ん張りゃイセリナやフジキ、オザキやアンファースぐらいは軽かろう。気を抜いてもヴェルゼンは確実じゃ。堕落してもまずデストヴァールとかラーゼルには先ずなるめえ。儂の言う"ヴェルゼン以下"はアホやハゲより格段に上じゃから――「おーい親父ィー、小便終わったかー?」――おう、今途切れた所じゃ。待っとれ、今行くわい」

 立ち上がった月光は、翼を広げながらスミロドゥスの死体に別れを告げる。

「ほんじゃあの、アホ猫。地獄に行ったら閻魔さんによろしく伝えてくれや。『舌抜き用ペンチ、予備五十本ぐらい用意しとけ』ってなぁ。そこにおったんがミノス王なら『処刑用ローラーのメンテと補強をしっかりしとけ』でもええぞ」

 聞き手など居るはずのない軽口を叩きながら、月光は飛び立つ。




【ええ、ではしかと伝えておきましょう。鎗屋元理事長】




 ふと、月光はそんなスミロドゥスの穏やかで優しげな言葉を聞いた気がした。



「ふふん……独り言の後に幻聴たぁ、幾ら魔術で若返ったとは言え儂もジジイじゃのう、やっぱり歳には勝てんわい」

皆、とりあえず『地平の旅人』を読もう。小説家になろうここにあるから。ヴァクロなんかより無茶苦茶読みやすいから

※…月光曰く「そこは本編を読んで欲しいから伏せ字じゃ」とのこと

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