第四百二話 戦うゲスト様-使徒の名を持つもの:後編-
現れた四匹の"使徒"とは!?
―前回より・聖地平原―
「刮目なさい!これぞ我が最秀の子"スプレーマントロプス・フルーメン"の成熟せし姿――その名も"アポストルス"ッ!」
辿晃の声に応じてそれぞれ北東、南東、南西、北西へ円を描くように現れた使徒の名を持つ四匹の化け物は皆一様に白磁のような色合いで光沢のある外皮に覆われており、その点こそ四匹全てに共通していたし、また"原型"とされるスプレーマントロプス・フルーメンから引き継がれた形質であろうことも分かりはした。だがそれ以外に目立った共通点は殆ど見られない。強いて挙げるならば、有機生命体のような衣装が見られるというぐらいの事であろうか。
【ンヌゥ……此処ガ娑婆トイウモノカ……】
北東に現れたのは、フォルティドラコネムを上回るほどの巨体を誇る竜種のような"アポストルス・サルワートル"であった。但しフォルティドラコネムと違ってその背に翼はなく、骨格も四足と亜人の中間―即ちタウル風の構造をしていた。
【予想シテイタヨリ……空気ガ澄ンデルノネ……】
南東に現れたのは、サルワートルより若干小ぶりな(しかしそうは言っても当然かなりの巨体を誇る)鳥のような化け物"アポストルス・パトリオータ"。一見只の巨大化し過ぎて嘴に歯まで生えた海鳥のような姿であるが、その翼は二対(即ち四枚)あり、足も三本という異形ぶりを誇る。
【サテサテ……敵兵ノ数ハット……】
南西に現れたのは、四匹の中で最も小柄な(とは言えその身の丈は4mを超える程の)亜人(細かく言えば食肉類の獣人)めいた姿をした"アポストルス・オールドー"である。触手のように動き回る尾の数は9や10どころではなく、少なく見積もっても20はあると思われる。
【喰ッ……喰喰ッッ……喰喰喰ゥッ……】
北西に現れたのは、先程のオールドーとは打って変わって四匹の中で最も(グゴンやドラゴマンドラさえ上回るほどに)大柄な"アポストルス・ウィクトル"であった。足の数が減り太くなったゲジのようなこの化け物は掠れたような声で奇妙な呻き声を上げていた。
◇以下、ツジラジ製作陣によるしょうもないコント◆
「おいおい、何だよあのバケモン共は……もう何か特撮怪獣映画の域じゃねーか」
「これは身長40mを超える巨大戦力の投入が求められるレベルなのだ」
「その半分のなら居るけど今すぐポンと出すってわけにもいかないわねー」
「では仕方ありませんね」
『ニコラさん、お願いします』
「いや、あたし巨大化なんてできないんだけど……」「そこはもう香織が巨大化の魔術かけるから大丈夫だろ」
「いやだから何であたし!?それっておかしくない!?」
「いやぁ、こういう身体張った真似はやはりニコラさんでないと」
『某市長へのアピールも兼ねて』
「よくわかりませんけど、絵描きさん達からも人気なんですしここで頑張った方がいいと思います」
「いや身体張りはするけどそれとこれとは別でしょうが!あと人気関係ないし!」
「うーん、巨大化は消費やばいからあんま使いたくないなぁ」
「ほら!香織ちゃんもこう言ってるし!」
「というかニコラさんが巨大化したとしてそんなに意味はないような気も」
「ぶっちゃけ戦力としては微妙だろ。巨大戦力ならもう黒い奴で足りてるし」
「よっし!吸血生物達いいこと言った!はいこれで巨大化無し!巨大化無しッ!」
「どれだけ巨大化するの嫌なんですか、ニコラさん……」
かくして二匹から八匹へと四倍に増えたロコ・サンクトゥス平原の化け物共を相手取る最終決戦の火蓋は切って落とされた。高宮と真壁を除く機動隊と軍部による混成部隊(王将達六人を含む)はハルツとダンパーを守りながら戦線を離脱。二人を一時的に拘留した後、化け物共の攻撃が平原全域及びその周辺地域に及ぶことを想定し平原へ観戦に訪れていた者達や周辺都市の住民を一斉に避難させる。
一方のロコ・サンクトゥス平原ではツジラジ製作陣とゲスト達、並びに成り行きでそれらとの結託が決まった50名を超える大人数(直接戦っていない者も含めれば70名超え)が八手に別れて化け物共との戦闘を開始する。
「【覇道蒼炎輪ッ!】」
「灰になれや!ゲヘナバーストォ!」
「【静涙白輝陣ッ!】」
「行けィ、不凍の水弾!」
「【葉弾連舞-細刃花弁】!」
「行っくよー!順風春一番っ!」
「【雷電爪牙殺!】」
「【天冥断罪丸!】」
「【縦横緊縛剛縄!】」
「【前鬼爆砲ッ!】【後鬼破鎚ッ!】」
グゴンの力により復活した上に心なしか(ただでさえ巨大であるのに)更に一回り程巨大化したらしい両生類・ドラゴマンドラへ向けて方々からそれぞれ思うままに必殺級の大技を放つのは、唱道者三人に使徒精霊三柱とチームさとてんの四人という十名(装備化された妖怪達も含めれば十八名)であった。予期せぬ猛攻を受けたドラゴマンドラは一時こそ困惑したがすぐに体制を立て直し(同時に以前のものとはまた違う十の記憶を思い出しながら)、大口を開けて威圧的に吠える。
〈小賢しい餌共め!貴様等の終着は儂の胃袋じゃあ!〉
老いて尚益々獰猛な彼の台詞を和訳するなら、ざっとこんな所だろうか。
次回、壮絶なバトルは尚も続く!