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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第四百話 戦うゲスト様-大乱戦-




激戦未だ終わらず!

―前回より・聖地ロコ・サンクトゥス平原―


 魂魄融合術式により更なるパワーアップを遂げた亜塔、零華、アンズ、玲、エルシトラ、高宮、真壁の七名は、各々が得た新たなる力を手に戦場を駆け巡る。


 ガランの魂を得た亜塔は暗緑色の鱗を持つ獰猛な竜人へと変じ、禁忌丸を嘗てガランの振るった恒星龍神剣を思わせる深紅の大剣に変化させ、単体でオリバー・クラッカーの体を脳天から両断。立て続けに一目で分かる共通点が"兎も角訳の判らない姿をしている"ぐらいしか思い浮かばないテラーギガスの群れを残光の一撃で吹き飛ばし、素手素足やズボンの尻を突き破って生えてきた太く頑丈な尾による打撃でさえ小型の生体兵器を一撃で葬り去る(因みにこの赤い大剣はちゃんと原作『獣道-白ノ刹那-』に出てくるのでチェックしてみよう。つーかチェックしろ)。


 アイルの魂を得た零華は彼の臣下・永谷の形質をも獲得した事により全身に白くきめ細やかな鱗を持つ蛇亜人と化し、またアイルの使った花弁のような翼での高速飛行でヴェスピナエやファルコニフォルメス、セキュリティ・フライ等の飛行型生体兵器を次々と屠っていく。亜塔同様尻からは短パンを突き破って白蛇のしなやかな尾が生えており、亜塔のそれを棍棒とすれば零華のものは鞭のようであり、華奢な敵ならば絞め殺す事もできる。夫同様彼女の愛刀・血風丸もまた(目視では分かり辛いが確かな)変化を遂げており、振るう度に鳴り響く音はより甲高くなっていた。


 柵木の魂を得たアンズの姿は、タウルでない骨格構造とある程度成熟した体格、及び服装や武装の差を除けばまさしくかの小柄な老狐の再現といえた。九本ある尻尾からのレーザーに肉体の粒子化、多彩な変化といった技を駆使し―しかしそれらに依存せず、基軸にはあくまで自身のアイデンティティである剣術を据えて―華麗かつ迅速に敵を駆逐していく。


 紀和とファープの魂を得た玲の姿には一見何の変化も見られなかったが、彼女の全身は血肉や体毛から衣類に至るまでその全てが固体と液体の性質を兼ね備えたものに変質しており、斬撃や打撃等の一切を意に介さぬまま華麗で無駄のない気功と体術で(主には人間大の)生体兵器を次々と打ち倒していく。そんな彼女の戦いに彩りを加えるのは体内で生成される三色の炸裂細胞と、それを自由自在に変形させるファープの記憶である。死によってスラッグと引き離された彼の中にも、あらゆる武器を吸収し自身の一部として駆使したという記憶はしっかりと残されているのである。


 ハ・セゥの魂を得たエルシトラは白い外骨格と赤い目を持つ妖艶なムカデの亜人となり、ロコ・サンクトゥス平原の大地そのものを自在に操り戦場を荒らしていく。範囲こそ狭かったがその威力は絶大で、彼女の周囲にはほぼ常に大地から作り出された剣や弓、槍等が舞い踊り迫り来る敵を迎撃・殲滅していく。その攻撃はグゴンや辿晃にも例外なく及び、大層不愉快がった二匹はこれら武器を機銃や光線で撃墜せんとしたが、例えどんなに砕かれようと瞬時に復活してしまうので二匹のストレスは溜まる一方であった。


 他の面々が次々と自身にとっての"因縁の相手"へ力を貸す中、それらしい相手が特に思い浮かばなかった三入と神下は、戦場に介入する権利を得ながら自分自身は非力であることをもどかしく思っていた高宮と真壁に目を付けた。彼らの魂を得た二人の刑事は、それぞれ"蛇の鱗を持ち地中をも水中であるかのように高速で泳ぎ回る雪豹"と"金属の外骨格を持ち炎を操るヤモリ"へと姿を変え、爪と牙による素早い斬撃や火炎攻撃により眼前の未確認超存在を撃破していく。後に二人は『この時ばかりは稚児のようにはしゃがずにはいられなかった』と語る。



 だが勿論、戦いの主役は彼等ばかりではない。


 理華、ドロール、グリス、エリニムといった面々の手にした刃は一振りでタウロークス・ブーリン三頭の首を落とし、麗のガリバーハンドは生体兵器を撲殺するばかりでなく音術によって寄り集まった小型種を一瞬にして掃討しうる力を秘めたイオタの攻撃範囲拡大にも貢献する。

 ソレンネ・パッツィーアに乗り込んだ高雄は相変わらずオリバー・クラッカーを様々なプロレス技で軽々と屠り、聖羅率いる犬神軍団は彼女の忠臣犬丸を筆頭に持ち前の嗅覚や聴覚でステルス・ビーストの擬態を見破り袋叩きにする。エルマの魔術も衰えておらず、寧ろより磨き上げられたかのような鋭さを見せる。イリアとその恋人シルナスが中世西洋らしい激しくも気高い武器術を披露すれば、アリシスは精霊達の神秘的な力により戦線を圧倒。それを見て対抗心が燃え上がったのは同じく中世西洋的な原理に基づく存在の使途精霊や唱道者の面々、並びに本籍を同じくする戸田・月読兄妹の他、ヒーロー的存在への羨望強き風間大士(と、彼の覇気に乗せられた仲間三名に妖怪五柱)である。各々の個性がこれでもかと言わんばかりに炸裂したその戦いぶりにはさしもの生体兵器郡も為す術がなく、雀の涙程だがグゴンや辿晃さえ恐怖させた。


 と、このように異界からのゲストばかりピックアップされがちだが、それ以外の面々も当然負けてはいない。


 命懸けの上下級生達まで巻き込んで死線を潜り抜けた末に無事ルラキの生存を確認した王将と"巻き込まれた下級生"こと心愛、つばさ、奈々、秋、星月の五人も機動隊や陸兵に混じる形で戦いに馳せ参じていた。その中でも王将の戦いぶりは凄まじく、彼に窮地を救われた機動隊員・陸兵の男女数名が彼に本気で惚れかけたと後に語っている。学生達に負けてはいられないと奮起したランゴやエリヤも互いの長所を活かし短所を補う抜群の連携で戦線を圧倒、申し訳程度の贖罪に尽力する。


 ドサクサに紛れて戦場へ入り込んだ月光は避難したダンパーやハルツ、並びにヴェインの魔術で異空間に逃れていた息子や部下達と合流。事情説明後組織のトップ二名をより安全な場所へ避難させた後喜々として戦に加勢――しようとしたらしいがその前に一人息子の鬼王から散々どやされたという。


 ザトラの使い魔達は主の指示に従いルラキに力を貸した。彼等の中には嘗て何れかのカドム・イムが作り上げたという武器が各自一つずつ封印されており、彼等は鎧のような形状のそれらを解放(則ち、実質的にはそれら武器へ変身)しルラキに装備される形で乱戦に加わったのである。


 そしてまた―今回は何かと影に隠れがちであるが―ツジラジ製作陣も各々の性格や能力のままに暴れ回っていた。

 繁が爪牙虫で弱体化させ等打槍ズムワルトで叩きのめし溶解液で仕留め、香織が『列王の輪』に備わる(高雄に貸しているソレンネ・パッツィーア以外の)各形態で戦場を荒らし回り、ニコラは破殻化し蛾型弾幕を放ったり爆生し糸を放ち主には敵勢を撹乱。

 揃って異形の姿を取った小樽兄妹は持ち前の機敏さを軸に据え次々と敵兵を葬っていき、ガルグイユと化したリューラとバシロは"攻撃性のないものもあるが全部で40以上ある"と自負する夫婦奥義を駆使し、体内に様々な武装を有するも自らの意志で扱った経験がない為戦闘に不慣れなケラスをリードするように進んでいく。

 仲間のヴァーミン保有者に倣い化け物に変身した春樹は自らの"星界を這う砦"と融合。どこか神々しくもある異形の半機械"ヨグソトホト"へと変化。扱い慣れてきた夜魔幻としての力を解放し赤い骨の姿となった璃桜共々、半ば力任せにグゴンへ突撃する。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【死ねや老害ニートがぁ!】

「我が血を継がぬ失敗作よ、滅びなさい!」

 荒ぶるフォルティドラコネム・ウェールスの打撃はあと一息の所で辿晃の身体を掠め、その隙に辿晃が放った光弾は突如どこからか引き寄せられるように飛んできたウィドラクネの身体を吹き飛ばすも実質不発に終わった。「くっ……それがヴァーミンとか言う異能ですか。害虫というだけあり下賎なものと割り切っていましたが、実際相手にすると本当に下賎で忌ま忌ましいッ!」

【ありがとうよォ、今にも殺したくてしょうがねえおめーからの罵声は最ッ高の褒め言葉だ!如何にもその通り、こいつが噂に名高いヴァーミンのトリを飾る十番目、百足センチピード様よォ!その能力ってなぁ頭と察しのイイ奴ならとっくに気付いていようが――】

 両腕を振り上げたフォルティドラコネムの頭上に、死亡した生体兵器の死骸―それも、オリバー・クラッカーのような大型種やガラテゥイデアのような全体が硬く所々鋭利な部分のあるものばかり―が浮き上がる。相手の意図を察知した辿晃はそれを回避しようとするが、何故かその場から動けず手こずってしまう。

【――"引力"って奴でなぁ?】

 不敵かつ恐ろしげな笑みを浮かべたフォルティドラコネムが突き上げた両腕を振り下ろすのと同時に、浮き上がった大量の死骸が辿晃目掛けてなだれ込む。

【まぁ厳密には"引力"つーより"接合"なんだがよ、こういう使い方もできるって話だ】

次回、小型生体兵器全滅に伴い動き出すものとは……

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