第四十話 きじょ?きじょ!
繁さーん、必殺技考え終わりましたー?
―前回より―
「(最早こいつで行くしか手はねぇ!)」
繁は独自の構えを取り、猛スピードでラクラへ向かう。それを悟ったラクラは慌てて右手でたたき落とそうとするが、飛ぶ繁は溶解液で巨大な手の平をも、まるでそれが存在しないが如くに通過する。
激痛に顔をしかめるラクラは、思わず股間から手を離していた事に気付き、ブルマをも失い更に惨めな姿になった事からの恥辱で更に赤面、思わず泣き出しそうになる。
というか、公衆の面前に醜態と下着を晒す羽目になったラクラは、既に涙目になりつつある。
しばしば、涙は女の武器であると言う。
諸説あろうが、大方都合が悪くなったらとにかく泣いておけば周囲が味方になってくれて、結局事は自分に都合良く進むという意味合いだろうと作者は推測する(そして恐らく、そんな真似を好んでするはさぞ人間性が無く低俗な女であろうとも作者は推測する)。
女に限らず、目の前で他人に泣かれると躊躇いが生じるのは、人として当然であろう。
しかしながら、カタル・ティゾルに来る前から繁の人としての基軸に大きな歪みや狂いが生じている事は読者諸君もよくご存知かと思う。そしてそんな繁を前にして『女の武器』なる概念は、当然全く意味を為さない。
即ち繁の猛攻が、ラクラの涙なんてもん如きで止まる筈もない。
繁はそのままラクラの首筋を幾重にも切り結び、噴水のように勢い良く吹き出る鮮血と、その持ち主が苦しみ悶える姿を尻目に巨大痴女の頭上へ舞い上がる。
繁はそのまま遥か上空で位置を見計らい、手頃な所で口吻から勢い良く溶解液を吐くと同時に空中で一回転。瞬時に溶解液噴霧を止めて体勢を立て直す。
細い糸となった溶解液はラクラの巨体を中心線で真っ二つに切り裂く。
この一撃で既に出血多量に陥り、加えて脳組織を破壊されたラクラは絶命に至った。しかし、ここで終わらせる繁ではない。
立て続けに繰り出された溶解液は空中で箱型に変形。垂直に落下する溶解液の膜はラクラの骨だけを残し、その他を悉く溶かし尽くす。更に箱型溶解液の二発目が崩壊寸前の白骨を消し去る。
「碧細縄、緑鉛二段柩」
等と技の名を言ってみた繁であったが、その名は場の勢いで付けたものだった(つまり、後々変更される可能性が高いという事で、使われない可能性もある)。
何はともあれ、こうして東ゾイロス高校で多発していた謎の殺人事件は幕を閉じた。
繁達は一先ず予め録音しておいた音声を流し、小樽兄妹と別れて一度ラビーレマを去った。後日、報告と謝罪を兼ねて東ゾイロスの理事長・緒方の元へクリムゾンを送り込んだ繁だったが、緒方の言葉は三人にとって予想外のものであった。
―後日・ラビーレマ某所―
『と、言うわけでございまして……事件そのものは解決したのですが、校舎はあのとおり散々な有様でして……』
「そうでしたか……でも安心しましたよ」
『安心?』
「はい。だって、スタッフの皆様は全員ご無事なのでしょう?」
『えぇ。それはもう、ただでは死にませんから』
「ならいいんです。お話を聞く限りでは、主犯格の二人も退治出来たそうですし」
『しかし、よろしいので? 彼は事件解決に際して、校舎を破壊してしまった事を酷く気に病んでいるのですが』
「構いませんよ。元よりあの校舎は大部分を取り壊して立て直す予定だったんです。それに、そんな些細な事を気にしていたのでは、あんな規模の学校で理事長なんてやって居られません」
理事長から許され、更に約束通りの報酬を受け取った三人は心の底から安堵した。全員が全員、多少の差こそ有れど理事長に文句を言われると思っていたからである。
そして今回得た報酬に適当な手紙を沿え、兆眼紫円陣で地球の信頼できる機関へ送り込む。
こうして、三人の企画は今回も無事成功を収めたのだった。
―事件解決より数日後・あるチャットルームにて―
軍神内藤[そんな事があったもんだから、俺としても気の抜けない事態になっててよ]
飛舞椿[成る程。それは確かに恐ろしい……某は一応、小型の飛竜程度なら全裸に丸腰でも追い返す自身はあるが、お主のような状況なら二秒で逃げ出すぞ]
淫乱毒飯[あなたねぇ、それ自慢になってないわよ?]
夢私刑[嬢ちゃんのスッパなら興味あるが、流石にそれは逃げた方がいいぜ]
軍神内藤[おい、幾ら仲間内限定だからってチャットでセクハラは止せよ]
淫乱毒飯[まぁ、文字だけだとどうしても冷たく見えちゃうのよねぇ]
夢私刑[そうか……すまねえな、嬢ちゃん]
飛舞椿[いや何、気にするな]
――入室:侵略頭足類――
侵略頭足類[やぁみんな]
侵略頭足類[相変わらず楽しそうで何よりだよ]
飛舞椿[これはこれは、管理人殿]
夢私刑[おお、××の旦那じゃねぇすか]
淫乱毒飯[今日はどうしたんですの?]
軍神内藤[また何か、新発明の話か?]
侵略頭足類[いやぁ]
侵略頭足類[実を言うとホラ、この間ラビーレマでツジラジの生放送があったろう?]
軍神内藤[あぁ、あれか]
飛舞椿[あの番組、賛否両論あるでしょうが某は好きですね]
夢私刑[それで、ツジラジの生放送がどうかしたんで?]
侵略頭足類[その放送の途中、クブスの女が裏切ったろう?]
淫乱毒飯[ラクラ・アスリンって奴ね?]
夢私刑[正直クブスにゃロクな記憶がねーんだよな]
飛舞椿[確か、神の暗示で巨大化したんでしたっけ?全く馬鹿馬鹿しい話です]
軍神内藤[……いや待て、何かオチが見えたぞ…]
飛舞椿[?]
軍神内藤[おい××、あのラクラって馬鹿唆して自滅させたの、お前だろ?]
飛舞椿[えっ]
淫乱毒飯[なにそれ]
夢私刑[こわい]
侵略頭足類[流石だね○○君。確かに僕はあの馬鹿の夢に侵入し、奴に嘘の情報を掴ませ仲間殺しを行わせた]
軍神内藤[やっぱりか]
侵略頭足類[いやぁ、あの馬鹿が想像を遥かに絶する他に類を見ない無知無学の腐れ産廃ダッチワイフで助かったよ]
侵略頭足類[それにどんな馬鹿だって、他人に言われただけで仲間を殺すのに躊躇いを見せないなんて、頭おかしいんじゃないのかあのダッチワイフのゴミクズは。軍人や暗殺者でもあるまいし生意気なんだよ]
侵略頭足類[まぁ、そもそもクブスそのものがニートや汚職官僚も下回る社会ゴミの集まりなんだよね。連中なんてその程度のもんなんだよ]
侵略頭足類[調べた所ホリェサ・クェインはクブスの中では一応一般人相当の人格者だったんだけど、ラクラ・アスリンは下っ端も下っ端、最下位のクズでね。早急に駆除する必要性があったんだ]
侵略頭足類[その為に僕は奴の夢に入り、適当な薬を乱雑にぶち込んでやったのさ。結果的に種族・服装が変化し妙な能力も得たらしい。だが死んだ。当然だ。元よりクブスには救いなんて決して訪れないんだからね]
侵略頭足類[何より、あんな生物とも定義出来ないゴミは早急に駆除すべきでもある]
軍神内藤[何故だ?]
侵略頭足類[何故って、]
侵略頭足類[それはもう]
侵略頭足類[決まりきった事じゃないか]
夢私刑[どんなんで?]
侵略頭足類[恐ろしいからだよ]
飛舞椿[恐怖、ですか?]
侵略頭足類[そう。恐怖だよ。こう言うのは女性に対して失礼かも知れないが]
淫乱毒飯[別に良いわよ]
侵略頭足類[なんというか、こういう極端な事はあまり言いたくないんだけど、女性というのは、種に関わらず総じて恐るべき存在だろう?
あのクズだって曲がりなりにも雌だったんだ。用心に越したことは無いさ。
ああ、女性とはかくも
蟷螂のようであり、
蜘蛛のようであり、
蜂のようであり……
いやぁ、身の毛もよだつ恐ろしさだよ]
次回、シーズン3がスタート!